プレイレポート
ダンガンロンパの生みの親,小高氏との舌戦バトルが勃発。男色ディーノのカードゲイム「ダンガンロンパ 超高校級の人狼 MANIAX」体験レポート
この「超高校級の人狼」は,「ダンガンロンパ」シリーズの世界観で「人狼ゲーム」(以下,人狼)をヤってしまおうというアンプラグドゲイム(≒アナログゲーム)のことなのね。一応はカードゲイムに属するのかしら。あ,この期に及んで「ダンガンロンパ」や「人狼」の説明はしないわよ。イチゴ大福の美味しさを伝えるのにイチゴや大福から説明するのっておかしいじゃない。
というわけで,この「超高校級の人狼」のどこが人狼でどこがダンガンロンパなのか,その面白さを確かめるべく「超高校級の人狼」を制作したアークライト,発売元のアルジャーノンプロダクト(+カフェレオ)の方々に加え,「ダンガンロンパ」を制作したスパイク・チュンソフトの皆さんと一緒にプレイをしてみたからお伝えするわ。
「超高校級の人狼」特設サイト
「絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode」公式サイト
参加者は以下のとおり。
スパイクチュンソフト 「ダンガンロンパ」企画・シナリオ 小高和剛氏 |
スパイクチュンソフト ディレクター 佐々木駿氏 |
スパイクチュンソフト プランナー 鈴木崇弘氏 |
アルジャーノンプロダクト 蒲 淳志氏 |
アルジャーノンプロダクト 久保嶋愛香氏 |
カフェレオ 村山佐和子氏 |
アークライト 谷本大將氏 |
4Gamer代表 男色ディーノ |
ちなみに,ゲームマスターと呼ばれる進行役は,アークライトの橋本淳志氏に取り仕切ってもらったわ。
まずは肩慣らしに通常の「超高校級の人狼」からプレイ。というのも,実は「超高校級の人狼」自体は2013年10月26日に発売されてるのよ。それを何で今さら? という疑問が生まれるでしょ? それがね,2014年11月28日にその拡張版が発売されたの。もうぶっちゃけて言ってしまえば,今回の記事は「拡張版で何が変わったのか,どんな面白味が加わったのか」っていう,検証でもあるのよ。なので,まずは「超高校級の人狼」の通常版からプレイしてみるというわけね。
ちなみに,私も小高さんも普通の人狼はプレイしたことがあるけど,「超高校級の人狼」はこれが初プレイ。そういう意味でもまずは「人狼」と「超高校級の人狼」(以下,超高校級)の何が違うのかを実際に遊んでみて確かめるのは大事なことだと思うわ。
で,実際にプレイしてみたんだけど,ひとまずざっと以下の点が違うことは感じた。まず,細かいところから違いを述べると,チームの呼び方が違うのね。「人狼」では村人側と人狼側にチームが分かれるんだけど,「超高校級」では村人側=希望サイド,人狼側=絶望サイドと呼ぶの。
これは当然,ダンガンロンパの世界観を踏襲してる。で,ルールも人狼とは若干違う。今回のように参加者が8人だったら,「人狼」では村人側6人,人狼側2人に分かれるのが普通のケース。でも,「超高校級」ではそうではない。希望側が6人かもしれないし,5人かもしれない。というのも,ゲイム開始前にどちらの陣営に属するかの役職カードが配られるんだけど,その役職カードうちから4枚中1枚をランダムに選んで抜いてしまうわけ。だから,敵が多いかもしれないしそうでないかもしれない状態からスタートするの。これが通常の「人狼」とはまた違った疑心暗鬼を生むことになるのね。
「超高校級の人狼」ルールについての補足
本作では,参加プレイヤーの数によって登場する役職が変化する。
今回のように8人でプレイする場合,シロ(≒村人)3人とクロ(≒人狼)1人,アルターエゴ(≒占い師)1人までは必ず登場。残る3人が,シロ,モノミ(≒狩人),裏切り者(≒凶人),超高校級の絶望(≒ハムスター人間)のいずれかとなる。つまり,登場しない役職が生じることがあるわけだが,どの役職が欠落しているかはプレイヤーには分からない仕組みだ。
それぞれの役職が持つ能力も,人狼ゲームとは異なる部分があるが,そのあたりの細かいルールについては,以前に掲載した「こちら」の記事を参考にしてほしい。
次に「超高校級」ならではの要素として挙げられるのがキャラクターの存在。ゲイム開始早々に役職とは別にダンガンロンパ1・2に登場したキャラクターのカードが配られて,プレイヤーはそのキャラになりきってプレイするわけだけど,これがちょっとした発明だと思うのよ私は。
各キャラクターに特殊能力がついてて,それによってダンガンロンパの世界観がうまく引き出されてるんだけど,私が注目してるのはそこじゃない。人狼って,人がいっぱい集まってプレイする遊びだから,当然初対面の人が加わる可能性が少なくないのね。そこで,性格にもよるんだけど仲のいい人達に割って入るのが難しい場合も出てくる。だからこその,キャラクターカードなの。その人の本名でなく,キャラクターネームで呼ぶことで躊躇が減るのね。単純に全員の本名覚えなくて済むっていうこと自体が,多人数でのゲイムではけっこう重要でしょ。世界観も演出できるし仮のキャラクターが与えられることで,ゲイムに参加しやすくなるという,非常に素晴らしいシステムだと思うわ,このキャラクター制度は。
そして,最後にして最大の「人狼」と「超高校級」の違いといえば,アイテムの存在。アイテムカードが2枚ずつ各プレイヤーに配られるんだけど,これが本当にこのゲイムのナニを,いや,カギを握っているって言っても過言じゃないわ。
人狼って,結局各人の思考がベースなって進んでいくゲイムなんだけど,「超高校級」ではその思考に加えて運の要素も加わることになるの。それがこのアイテム。役に立つもの,立たないもの。色々あるわ。希望側にのみ役立つアイテムもあれば,逆のものもある。死んでからも発言できるアイテムなんてのもある。
制作者の橋本氏いわく,「人狼って死んでからはゲイムに参加できなくなって暇になるから,なるべくそこを解消したかった」とのことで,アイテムにはそういう狙いもあるみたい。実際に,この日のプレイでも,私がアルターエゴ(占い師)として絶望サイドの人間をすべてあぶりだすという希望側に圧倒的有利な状況を作り出したにもかかわらず,アイテムによって投票権を増やすアイテムを強奪されて,学級裁判(一人を投票で処刑する会議)の多数決で希望側が負けるという展開もあったわ。
これは,まさに「超高校級」ならではの大逆転劇。アイテムの使い方,あるいはアイテムの運で思考を覆すことも可能なわけね。
そんなこんなでプレイを重ね,最後の方は拡張版「MANIAX」のルールでプレイしてみたわ。要は役職・キャラクター・アイテムのカードが追加されたわけだけれども。ルール的に変更が生じるのは役職の追加でしょうね。
主に影響がありそうな追加役職は「未来機関」と「絶望の残党」。「未来機関」は希望サイドでキャラクターを任意に3名選んでアイテムを与えられるという役職。上で述べたとおり,このゲイムはアイテムが勝敗を左右する部分もあるから,殺されることでゲイム展開が変わるっていう役職なのね。
そして,絶望サイドの役職「絶望の残党」。これが凶悪で,この役職が生きている限り,クロ(人狼)は占われても希望側の判定しかされないというシロモノ。クロのくせにシロモノ。ただ,自分が占われると死んでしまうという特性もあるの。これが意味することは,絶望の残党がいたと発覚した場合,それまでの占いが当てにならないって事になるのね。
絶望なのに希望と判定されるわけだから。これらを総合すると,MANIAXは通常版と比べて希望サイドちょいとパワーアップ,絶望サイドけっこうパワーアップ,と言えるんでしょうね。
基本ルールと拡張版「MANIAX」の違い
2014年11月に発売された「超高校級の人狼 MANIAX」では,以前の基本ルールに加え,さらに「絶望の残党」「ザコケモノ」「未来機関」の3つの役職が登場。本文で男色ディーノが触れているように,より複雑怪奇な状況が発生するようになる。
またキャラクターカードとアイテムカードにも,より“マニアック”な能力を持ったものが追加され,いっそうの推理力が求められるように。とくに絶望サイドに有利に働くカードが多い印象で,希望サイド側はこれまでの定石が通じなくなる場面も出てくる。前作を持っている人はぜひ挑戦してみてほしい。
「ザコケモノ」は,参加プレイヤーが少ないときに登場する絶望サイドの役職だ。これといった能力はないが,1人で孤独なクロにとっては,心強い味方となる |
追加アイテムの中で,とくに強力なのがこの「むらまさ」。「ジャスティスロボ」などによる防衛を無効化し,襲撃失敗を成功に変えてしまう。絶望サイドの切り札だ |
案の定,今回の実戦でも,絶望の残党の存在によりアルターエゴの占いの信ぴょう性が揺らぐという展開も起こったわ。かと言ってべらぼうなパワーバランスの変化ではないから,文字どおり拡張版として考えればいいと思う。考える楽しさが拡張した,と思ってもらえばいいわ。
こうして,「超高校級の人狼」と「MANIAX」を一気にプレイしてみたわけだけれども。配られるカードが多いから,一見ルールが難しいのかな,と思う割に実際にプレイしてみたら意外とそんなこともなく,人狼の延長でしっかりと楽しめたわ。人狼ファン,ダンガンロンパファンどちらの視点から見ても,お互いの良さを殺していない,まさに1+1が4にも5にもなる名タッグになってる。ぜひおススメしたいわね。
そして最後に,原作である「ダンガンロンパ」の企画・シナリオを担当した小高氏に,初プレイの感想や,どさくさに紛れてダンガンロンパシリーズの今後の展望についてのインタビューもしてみたわ。人狼ファンもダンガンロンパファンも読んでもらえればこれ幸い。
皆がアッと驚く「邪道」を作り続けたい――小高和剛氏ミニインタビュー
4Gamer:
「超高校級の人狼」をプレイしてみてのご感想をお聞かせください。
いやあ,面白かったですね。人狼がベースではありますが,これはもう,新しいゲームと言っていいと思います。キャラになりきってプレイできるので,若いダンガンロンパファンなら,きっと楽しめるんじゃないかと。今回は参加者の平均年齢が高かったこともあって,なりきりがちょっと恥ずかしかったですけど(笑)。
4Gamer:
それは確かに(笑)。人狼ゲームに比べると,アイテムなどのルールが増えていますが,そのあたりはどうでしたか。
小高氏:
ルールを聞いたときは難しそうな印象を受けましたが,実際にプレイしてみたら簡単でした。むしろ,ダンガンロンパという入口さえ知っていれば,人狼ゲーム未経験の人でも入りやすい。少ない人数でも遊べるようなので,気軽に遊んでみてほしいです。
4Gamer:
学校の昼休み程度の短い時間でも遊べそうですよね。
小高氏:
ゲームマスターさえちゃんとしてれば,普通の人狼ゲームよりも短時間で遊べると思います。皆さんもぜひプレイしてみてください。
4Gamer:
ぜひぜひ。ところで,そもそものダンガンロンパシリーズには,人狼ゲームをモチーフにした部分があると聞いたことがあります。今回のプレイの中で……例えば今後のゲーム作りに役立ちそうな場面ってありましたか?
小高氏:
それは,難しいでしょうね。学級裁判の空気感なんかは,確かに人狼ゲームにインスパイアされた部分がありますが,あくまで空気感までなので。例えば今日のプレイだと,クロが夜の襲撃対象として自分を選ぶ場面があったじゃないですか。ミスリードを狙ったブラフなわけですけど,あれを“ゲームのシナリオ”として書いちゃうと,すごく嘘くさい。「いやいや,そこは逃げるでしょ」みたいな。
4Gamer:
なるほど。言われてみると確かに。
小高氏:
人狼ゲームをシナリオライターの目線で見ると,あそこはこうした方が盛り上がるのにとか,思っちゃうことはあります。でも,そこはやっぱりアナログとデジタルの違いというか,それぞれの良さなんだと思いますね。
4Gamer:
では,そのデジタル――コンシューマゲーム機版のダンガンロンパについても,少しだけ聞かせてください。2014年にはスピンオフ作品である「絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode」(以下,絶対絶望少女)が発売され,そろそろ「次」を楽しみにしているファンも大勢いると思うのですが,そのあたりはいかがでしょう。
次はナンバリングですね。すでに「3」が動いていることは皆さんご存じかと思いますが,そこはやっぱり素直にやるだけじゃつまらない。何かしらで裏切りを仕込んでいこうと思っています。
4Gamer:
一筋縄ではいかないと?
小高氏:
そうですね。さっきFMW(※大仁田厚が立ち上げたデスマッチメインのプロレス団体)のドキュメンタリーを見ていたのもありますけど,やっぱり自分は邪道が生きる道だと思っているので。
4Gamer:
見ちゃいますよね,アレ。やってることはバカバカしいけど,胸を打たれるというか。
小高氏:
昔の大仁田の試合とか見て,カッコいいなって(笑)。うちの会社は大手とは違うので,王道ではない,ああいう自分なりのやり方を見つけていかなきゃならない。いつの間にか消えてしまうことを避けるためには,大手にはできないような面白がらせ方をしないと。DDT(注:男色ディーノが所属するプロレス団体)だってそうじゃないですか。参考にさせてもらってます。
4Gamer:
おっ,ありがとうございます(笑)。じゃあ,小高さんからみたダンガンロンパシリーズの強みってどういうところでしょうか。その……ほかのゲームと違うところというか。
小高氏:
一番は,作り手のエゴを見たがってくれてるお客さんが多いことじゃないですか。絶対絶望少女も,発表当初は向かい風のほうが強かったですけど,最終的に受け入れられて,支持もされました。こういうワガママを受け入れてくれて,勝負させてくれるファンの皆さんこそが,強みだと思います。
4Gamer:
ちなみに「絶対絶望少女」は,どうしてあの形になったんですか?
小高氏:
スピンオフをやろうっていうのは,「2」が終わった直後くらいに決まっていたんです。でもナンバリングと同じものを作っても面白くないわけで。あとは単純に,自分がアクションアドベンチャーが好きだからですね。世代的に。
4Gamer:
おおっ,例えばどんなタイトルを遊びました?
小高氏:
「メタルギア」とか「バイオハザード」とか「ディノクライシス」とか。当時大学生だったので,自分にとってはあの時代のアクションアドベンチャーが花形ってイメージなんです。
今はスマホやソーシャルが出てきてだいぶ変わってしまいましたが,「絶対絶望少女」ではコンシューマゲームはこうだろ! って意地を見せたい気持ちが強かったんだと思います。
4Gamer:
よく分かります!
小高氏:
まあスピンオフですし,ビジネス的に考えたら,同じシステムを使い回すのが賢いんでしょうけど。 「絶対絶望少女」も,スピンオフなのに今までで一番お金かかっちゃってますし。そういうムダを受け入れて,楽しんでくれるファンがいるっていうのが,作り手からするとすごく嬉しいです。会社的には,どうかなという部分ですが(笑)。
4Gamer:
これだけ人気なら,会社的にも大喜びだと思いますけど(笑)。では最後に,そんなファン達に向けたメッセージをいただいて,締めとさせてください。
小高氏:
そうだなあ……次の「何か」でも,皆さんが「えっ!?」って驚くようなことをやっていくつもりです。やりたいこと,やったら皆が驚くだろうというネタはまだまだ尽きませんので,ぜひご期待ください。ナンバリングの次回作はまだ少し先になりそうですが,それまでは,この「超高校級の人狼」で遊びながらでも,気長に待ってもらえたら嬉しいですね。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「超高校級の人狼」特設サイト
「絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode」公式サイト
- 関連タイトル:
超高校級の人狼 MANIAX
- 関連タイトル:
ダンガンロンパ1・2 超高校級の人狼
- 関連タイトル:
絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode
- 関連タイトル:
ダンガンロンパ1・2 Reload
- この記事のURL:
キーワード
(C) 2015 ALGERNON PRODUCT All rights reserved.
(C)Spike Chunsoft Co., Ltd. All Rights Reserved.
(C)Spike Chunsoft Co., Ltd. All Right Reserved.
(C) 2013 ALGERNON PRODUCT All rights reserved.
(C)Spike ChunsoftCo., Ltd. All Rights Reserved.
(c)Spike Chunsoft Co., Ltd. All Rights Reserved.