インタビュー
「オーバーウォッチ」,ゲームディレクターJeff Kaplan氏に新ヒーロー「アッシュ」や,リーグのシーズン2について聞いた
会場では,合同インタビューの形で,ゲームディレクターのJeff Kaplan氏に,新ヒーローやオーバーウォッチリーグシーズン2の話を聞けたので,その内容をお届けしよう。
――新ヒーロー「アッシュ」の開発経緯を教えてください。
Kaplan氏:
コミュニティの間で,武器をメインに戦う“ウェポンベース”のヒーローが望まれていました。今存在するヒーローの中では,マクリーが中距離,ウィドウメイカーが遠距離となっていますが,アッシュはその中間で戦えるヒーローだと考えています。
アッシュはこれまでのヒーローと違い,過去に公開した短編アニメーションに登場したキャラクターです。彼女がレバーアクションのライフルを使うヒーローであることは,その時点で決まっていました。
加えて,その武器をどう生かすかということ考えると,プロジェクタイル(発射型)でなく,ヒットスキャン(即着弾型)がいいだろうと考え,現在の形になったわけです。
――マクリーとはどういった関係にあるのでしょうか。
Kaplan氏:
2人の関係は今後,少しずつ明らかになっていきます。彼女は,マクリーより少し年上(39歳)であり,デッドギャングのリーダーかつ創設者でもあります。初めてアッシュとマクリーが出会ったときは,もっと若かったのですが,現時点では2人の間に恋愛感情があったかなどは分かりません。
ただ,過去に2人の間でいざこざがあったことは間違いないので,そういった部分は,ゲーム内の掛け合いなどで,少しずつ分かってくるでしょう。
――先日公開された短編アニメーション「Reunion」は,どういったメッセージが込められているのでしょうか。
Kaplan氏:
開発陣が幼少期から見ていたマカロニ・ウェスタンのオマージュであり,ラブレターでもあります。マクリーという西部劇のヒーローがいるので,いつか作りたいと考えていました。
また,デッドロックギャングという名前は昔から出ていたのですが,なかなか詳しく語られることはなかったので,そのバックストーリーを今回の短編アニメーションを通して伝えたかったという意図もあります。
――短編アニメーションの最後では,エコーを救出しましたね。
Kaplan氏:
オーバーウォッチ再結成のためにウィンストンが送ったメッセージは,もちろんマクリーも受け取っています。ただ,自身がオーバーウォッチに戻るのではなく,エコーをオーバーウォッチに戻すのが一番の最善作だというのが,マクリーの考えでした。なので,ウィンストンに対する返事が,エコーの開放だったということを,このアニメーションを通してファンの方にも伝えたかったのです。
――ファンの間では,彼女がアテナなのではという説も流れましたね。
Kaplan氏:
アテナもエコーと同じくAIのヒーローなのですが,まったくの別人です。もともと,アーノルド・ツァンというリードアーティストが描いたコンセプトアートの中でエコーのデザインは公開されており,その時の彼女の胸にはアテナのロゴがあったんです。
ただ,別バージョンではシンメトラが所属しているヴィシュカーのロゴに変わっていたりと,我々も設定を決めていませんでした。あれは単に,アーノルドが空いたところを埋めるのにロゴを入れていただけで,今回のアニメーションを公開する時点ですっかり忘れていました。ただファンは覚えていたので,これがアテナだと勘違いさせてしまったわけです。
――執事オムニックのボブが誕生した背景を教えてください。
Kaplan氏:
オーバーウォッチにおける未来感の中に,オムニックが存在します。そういった存在と,アッシュのようなステレオタイプのキャラクターを同時に出すのは面白いことだと考えました。
また,オーバーウォッチの世界では,人類とオムニックの対立が再激化しようとしており,いずれくる抗争を描くにあたって,なるべくオムニックのキャラを追加したかったというのもあります。
――アッシュとボブのどちらをプレイアブルにしようか迷いましたか。
Kaplan氏:
アッシュとボブのデザインを担当した2人のスタッフは,どちらもボブをアルティメットで召喚するというアイデアを持っていました。短編アニメーションも,アッシュのほうが印象に残るキャラクターになっていたので,そういった部分も踏まえて,アッシュがプレイアブルキャラクターとして選ばれた形です。
――アッシュの執事であり,育ての親であるという以外で,ボブのキャラクター設定やバックストーリーがあれば教えてください。
Kaplan氏:
実のところ,ボブというのは本来の名前ではありません。彼の正式名称は,Big Omnic Butlerであり,アッシュはその頭文字を取ってボブと呼んでいます。
アッシュはとても裕福な家庭に生まれていますが,両親からは放置されていて,誕生日を祝ってくれたのもボブだけでしたし,警察にお世話になったときも迎えにくるのはボブでした。なので,アッシュにとってボブは心の支えになっているキャラクターなのです。しかし,主従関係にはあるので,アッシュがボブと接するときは,命令口調になっています。
――アッシュに合わせて悪ぶってる感じが面白いなと。
Kaplan氏:
面白い考え方ですね。ボブは一切しゃべらないのですが,もしかしたら彼の中で「別にこんなことやりたくないのに」と思っているかもしれません。ただ,基本的にボブはアッシュの命令どおりに動くので,たとえばアッシュが消防士や宇宙飛行士になろうと思っていたら,ボブも必ず彼女の側にいて,同じ職についていたと思います。
――パブリックテストリージョン(PTR)に実装されるのは,いつ頃でしょうか。
Kaplan氏:
早ければ来週の月曜日までに実装したいと考えていますが,まだ確定はできません。
――BlizzConの直前に公開されたワールドカップ ビューアですが,どういったコンセプトで開発されたのでしょうか。
Kaplan氏:
もっと多くのプレイヤーに,自由な視点で試合を見てもらいたいと思ったのが1つです。もう1つが,オーバーウォッチにおけるeスポーツの発展には必要だと考えたからです。
なかでもインスタント・リプレイは,カメラを自分で動かせますし,チームファイトがあるところまで飛ばすこともできます。また,自分の好きな選手の視点で試合を見ることもでき,自分がプレイするときの参考にもできます。今はワールドカップ限定ですが,いずれは通常のマッチでも使えるようにしたいです。
――インスタント・リプレイのデータはどういった構造になっているのでしょう。試合のリプレイという割には,大きなデータをダウンロードしているようには見えません。
Kaplan氏:
動画データをダウンロードしているのではなく,そのマッチにおけるプレイヤーの動きなどをデータとして読み込んで,クライアントで再現しているのです。今は別クライアントですが,今後はオーバーウォッチのクライントだけでビュアーを使えるようにしたいですし,コンシューマ版にも実装したいと考えています。
――「コール オブ デューティ」にも似たような機能がありますが,参考にしましたか。
Kaplan氏:
オーバーウォッチにあるキルカメラとハイライトは,コール オブ デューティからインスピレーションを受けて作っています。
インスタント・リプレイについては偶然似たものになっただけですが,Treyarchがブラックオプス4を開発する前から彼らと話をしていて,彼らがネットワーク内でどういったことをやって,あのキルカメラを再生しているのかなど,そういった技術的な情報交換はしています。彼らは,Activision Blizzardの仲間でもあるので,お互いに良い関係を築けていると思ってます。
――先日,新たに8チームが発表されたことで,オーバーウォッチリーグは20チーム体制になりましたが,シーズン2が開始されるまでに増えることはありますか。
Kaplan氏:
シーズン2までにこれ以上チームを増やす予定はないです。8チームを追加するだけでだいぶ冒険的ではあるので,今のところは20チームで行う予定です。
――シーズン1を終えた感想と,次期シーズンに向けた抱負を教えてください。
Kaplan氏:
Blizzardが自ら主催し運営するリーグを,12チームで発足できたことを誇りに思っています。また,チームのみなさんも,コーチを呼んだりサポート用のスタッフを呼んだりしてくれて,とてもよいシーズン1を成し遂げることできました。
視聴するという観点でも,ストリーミングはもちろん,現地にいって応援する人も多かったです。グランドファイナルがニューヨークのブルックリンで行われたんですが,2日間ともチケットが完売するほどの盛況で,シーズン1は大成功だったと考えています。
シーズン2に関しては,新たに追加される8つのチームの活躍を楽しみにしています。また,シーズン1を経験したことで,リーグ自体を成長するための土台を築けたと考えているので,その経験を生かすことで,シーズン1よりさらなる成功を目指せるのではと考えています。
――ヒーローのストーリーは,過去のお話ばかりですが,新しい物語などは期待できますか。
Kaplan氏:
もちろん,いろいろと予定はしています。今回公開された短編アニメーションでも,ウィンストンのリコールに応じたマクリーと,今まで語られなかったエコーという新ヒーローが登場しました。このように,ウィンストンの呼びかけに応じたあとの物語も増え始めているところなので,今後に期待してください。
――Breast Cancer Research Foundationと提携してチャリティーが行われましたが,その経緯を教えてください。
Kaplan氏:
オーバーウォッチを通して,乳がんの認知度を上げ,いずれ撲滅できればと思いました。その背景には,開発陣の家族の中に,乳がんを患ってしまった人がいたというのもあります。
提携先にBreast Cancer Research Foundationを選んだ理由は,乳がん撲滅のために動いている団体としては一番大きなところだったからです。ですので,彼らと組んでピンクマーシーを実装しました。
――今後もそういった取り組みは行われていくのでしょうか。
Kaplan氏:
今回の取り組みをとおして,オーバーウォッチのコミュニティの力を実感できました。なので,今後も別のチャリティなどで,同じような施策を行うことは常に考えています。
――ありがとうございました。
「Overwatch」公式サイト
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(C)2015 BLIZZARD ENTERTAINMENT, INC.
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