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[GDC 2017]「Overwatch」の動きはこうして作られた。一人称視点にふさわしい表現やグラフィックスを解説したセッションが実施
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印刷2017/02/28 18:43

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[GDC 2017]「Overwatch」の動きはこうして作られた。一人称視点にふさわしい表現やグラフィックスを解説したセッションが実施

画像集 No.013のサムネイル画像 / [GDC 2017]「Overwatch」の動きはこうして作られた。一人称視点にふさわしい表現やグラフィックスを解説したセッションが実施

 詳しく数えたわけではないが,サンフランシスコで開催中のゲーム開発者会議,Game Developers Conference 2017で,もっとも多くのセッションが設けられたタイトルではないかと思われるのが,Blizzard Entertainmentが2016年3月にリリースした「Overwatch」PC / PS4 / Xbox One,邦題「オーバーウォッチ」)だ。
 グラフィックスやゲームシステム,リプレイアビリティなど,9つのセッションが用意されており,さすが,2016年のヒット作という雰囲気だ。原稿執筆時点では分からないが,Game Developers Choice AwardsのGAME OF THE YEARも取ってしまいそうな勢いを感じる。

Matthew Boehm氏
画像集 No.012のサムネイル画像 / [GDC 2017]「Overwatch」の動きはこうして作られた。一人称視点にふさわしい表現やグラフィックスを解説したセッションが実施
 2014年11月のBlizzConでタイトルが発表されてから,発売まで1年以上かかっているので,開発期間は長いはずで,それはもう,話すべきことも多いだろうし,聞きたい開発者も多いはずだ。
 というわけで,そんなホットなOverwatchのセッションの1つに出席した。タイトルは「Animation Bootcamp: The First Person Animation of Overwatch」。内容は,FPSである本作のグラフィックスとアニメーションを振り返るというもので,講演者はBlizzardでアニメーターの仕事をしている,Matthew Boehm氏だ。オープニングでは,「“ベーム”と発音してくださいね」と述べていた。分かりました。

 さて,個人的にはTPSとFPSは,カメラの位置が異なるだけかと思っていた。Overwatchはオンライン対戦をメインとしたFPSであり,敵,もしくは仲間のキャラクター(以下,ヒーロー)の3Dモデルも作られているし,撃ったり飛んだり伏せたりするアニメーションも用意されているので,視線を頭の位置に持って来れば一丁あがりではないかということだ。
 しかし,Boehm氏によればそれではダメだそうで,実際に視点移動だけの映像が紹介されたが,言葉で説明するのは難しいものの,確かに「しょぼい」し迫力もない。つまり,一人称視点では,それに合ったアニメーションが要求されるということだ。というわけで,3Dモデルの腕とか上半身とか,蹴りを入れるキャラクターでは片足などのパーツを使ってアニメーションが再構築されたという。

三人称視点と一人称視点では,キャラクターのアニメーションは異なる
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カメラ位置を単に三人称視点から一人称視点に変えただけでは,物足りない
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 この作業で重要になるのは,武器やキャラクターのデザイナーがアニメーターと緊密にやり取りすることだ。そのヒーローの個性や性格に合わせた銃の持ち方やリロードアニメーションを用意する必要があるというわけで,20人以上のヒーローがいることから,作業量はかなりのものになりそうだ。また,武器の先がレティクルに正確に向いていることも重要だとBoehm氏は述べている。
 そして,モデルの視野(つまりゲーム画面)に占める武器の割合で武器の重みを表し,とくに武器の右側の空き具合には注意が必要とのことだ。背景の画角とキャラクターの視野を個別に調整しつつ,それぞれのヒーローにふさわしい画面を作っていったという。

ヒーローの3Dモデルの一部を使って,新たなアニメーションを制作した
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 とはいえ,例えば右腕が銃をしっかり握っていなくても,プレイヤーから見えないからという理由で,そのままにしておくということもある。
 エイミングでは,ピストルなどの軽い武器はいいが,重量のある武器ほど向けた方向にピタリと止めるのは不自然になり,慣性で若干ふらつくというアニメーションを追加している。しかしこれは,ヒーローによっても異なり,腕力があるほど,ふらつきが少なくなるようだ。
 移動のときには別のアニメーションが必要になり,例えば遮蔽物の背後に隠れるときは,オブジェクトに着いた左手が表示される。高速移動をすれば,それぞれのヒーローにふさわしく武器が斜めに傾くほか,手を大きく振っていたら,その手を描写する必要が出てくる。

高速で移動するときは,それぞれに異なる動きになる。単純に,視点を変えただけではないのだ
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 高速移動時には,バスティオンなら長いストライドで比較的ゆっくり上下し,また忍者のゲンジは小走りなので,小刻みに上下するといった効果も加えなければならない。単に視点を変えただけでないのはウィンストンの例が顕著で,三人称視点で走っているときは頭が大きく上下したりしているが,一人称視点ではそれがなく,その代わり,地面をかく動きをする左手が誇張して描かれている。

銃の反動の表現は,単に上に跳ねるだけでなく,いったん手前にグッと戻ってから,跳ね上がるという挙動になっている
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リロード中は撃てない,ということを視覚的に表現している
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 誇張はまた,メレーアクションにも使われており,よく見ると,繰り出したパンチがゴムのように伸びたりしているのが分かる。
 このほか,銃撃時の正しい反動や,リロード時にプレイヤーの視界を必要以上に塞がないアニメーション,銃以外の武器の動きなどが解説されたところで,時間いっぱいになり,まさに,プツン! という感じでセッションは終了してしまった。広いセッションルームは満員で,多数のビジュアルを用意したBoehm氏の話ぶりも面白かっただけに,30分セッションではなく1時間モノにしてくれればよかったのにという気はしなくもない。

メレーアクションでは,誇張された表現も使われているようだ
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 全体としてゲーム開発に携わるアニメーターに向けた実に細かい説明が多く,おそらく,「なるほど」と思った同業者も多かったはずだ。手を抜くところは,ちゃんと抜くんですね。普通にプレイしていると気にならないが,いろいろな動きが無数の試行錯誤によって決められていることがよく分かったセッションだった。次にOverwatchをプレイするときは,ぜひ気にして見てほしい。

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