イベント
「FFアギト」のWindows 10版が発表。開発者に次期Windows対応を訴えたMicrosoftのイベント「de:code 2015」基調講演をレポート
その初日にあたる5月26日には,基調講演が行われ,次期Windowsである「Windows 10」と,そのアプリケーション実行環境である「Universal Windows Platform」,そしてクラウドプラットフォームである「Microsoft Azure」(以下,Azure)に関する技術が紹介された。
開発者向けイベントということで,直接ゲーマーに関係する話題は少ないのだが,いくつか興味深い情報も公開されているので,本稿では基調講演の概要についてレポートしたい。
開発者にUniversal Windows Platformへの対応をアピールするMicrosoft
冒頭では,日本マイクロソフト執行役でデベロッパー エバンジェリズム統括本部長の伊藤かつら氏と,同社副社長の平野拓也氏が登壇。平野氏は,MicrosoftのCEOであるSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏の発言を引用しながら,Microsoftがいかに変化したかについて語り,「この地球上のすべての人,すべての組織に,さらに多くを達成する能力を与える」ために,さまざまな製品やソリューションを提供するのがMicrosoftの役目であるとアピールした。
両氏は,Azureに実装される新機能を紹介したうえで,Azureのユーザー事例として,トヨタ自動車(以下,トヨタ)の最高情報責任者である友山茂樹氏をゲストに招き,トヨタによるAzureの活用例を披露した。
友山氏が披露したデモでは,地図上にConnected Carの位置をリアルタイムに表示する様子が披露された。地図をスクロールさせていくと,表示範囲にあるConnected Carの位置が示されるほか,指定した範囲に存在するConnected Carの平均車速といった各種データを,リアルタイムに変化するグラフで表示するといったことも可能であるそうだ。
開発者支援を担当するSardo氏は,Windows 10上に構築されたアプリケーション実行環境であるUniversal Windows Platform(以下,UWP)の特徴と利点を説明した。
UWPとは,Windows 8.xにおけるモダンUI環境を発展させたものと考えれば分かりやすい。Sardo氏によれば,Microsoftは最終的に,全世界にある10億台の機器でWindows 10を動かすことを目標としているという。10億台という数は壮大に聞こえるが,現時点でWindowsが動作しているマシンは全世界で15億台もあるというから,スマートフォンやタブレット端末,据え置き型ゲーム機であるXbox Oneなども含めれば,不可能な数ではないだろう。
Windows 10が成功するためには,UWP用のアプリケーションを増やすことが急務である。そこでMicrosoftは,UWP用アプリケーション開発を促進するために,従来からあるアプリケーション開発手法に加えて,Windows以外のプラットフォーム向けに作られたアプリケーションを,容易にUWP用へと変換するさまざまな手段を提供しようとしている。その1つとして紹介されたのが,WebアプリケーションをUWP用アプリケーションに変えたり,AndroidやiOS用アプリケーションをUWP上で動作させる「UWPブリッジ」という機能だ。
基調講演では,UWPブリッジのデモとして,WebGLを使って作られたフライトシミュレータをUWP用アプリケーション化する様子が披露されている。
「ファイナルファンタジーアギト」のWindows 10版も発表
4月末に行われたBuildの基調講演では,スクウェア・エニックスがDirectX 12対応のグラフィックスデモ「WITCH CHAPTER 0[cry]」(以下,WITCH)を披露したことが話題となった。de:codeの基調講演でも同じデモが披露され,WITCHの制作チームを率いたスクウェア・エニックスの田畑 端氏により,その概要が説明されている。
WITCHの概要は,こちらの記事に詳しくあるが,約1100万ポリゴンで構成されるキャラクターをリアルタイムレンダリングで動作させるもので,髪の毛だけでも約600万ポリゴンを使い,人間の頭髪と同じ本数を生成しているそうだ。
実際に描画しているマシンは,GeForce GTX TITAN Xの4way-SLI構成に,動作クロック3GHzのCore i7や容量64GBのメインメモリを搭載するというもの。現行の据え置きゲーム機どころか,ハイエンドのゲーマー向けPCをもはるかにしのぐモンスター級のマシンだ。これだけのハードウェアを要求するデモは,そのままゲームとして実用化できるようなものではないわけだが,あえて技術的な限界を突き詰めるために,MicrosoftやNVIDIAの協力を得て開発したと,田端氏は述べていた。
ちなみに,WITCHはもともと,ゲーム用としてDirectX 11ベースで作っていたものを,デモ用としてDirectX 12に移植したものだという。開発にはプレビュー版のWindows 10とDirectX 12を使用しており,ハードウェアや開発途上のDirectX 12対応ドライバは,NVIDIAから提供されたそうだ。ただ,キャラクターやシーンといったアセット類の制作は,DirectX 12に直接対応したツールがまだないため,DirectX 11版で行ったとのことだった。
基調講演の概要は以上となる。de:codeは開発者向けのイベントであるため,基調講演の内容も開発者向けの機能が中心で,Windows 10そのものの新機能解説やリリース時期といった話題はなかった。しかし,Windows 10対応アプリケーションを拡充するための準備が,着々と整いつつあることは明確に伝わってきた。あとは実際に,どれだけ多くの開発者を引きつけられるかにかかっている。開発環境の整備には定評のあるMicrosoftの手腕に期待したい。
de:code 2015 公式Webサイト
- 関連タイトル:
Windows 10
- 関連タイトル:
ファイナルファンタジーアギト
- この記事のURL:
(C)SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
CHARACTER DESIGN:TETSUYA NOMURA