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[CES 2016]「VR Ready」ロゴプログラムを開始したNVIDIAのブースに行って,最新のVRコンテンツを「Rift」と「Vive Pre」で体験してきた
CES 2016本会場にあるNVIDIAブースは,Jen-Hsun Huang(ジェンスン・フアン)社長兼CEOによる講演そのまま,自動車関係に特化しているそうなのだが(関連記事),プライベートブースのほうは仮想現実(以下,VR)関係の説明やデモが中心。Oculus VRの「Rift」や,CES 2016に合わせる形でHTCが開発キットとして発表したVR対応ヘッドマウントディスプレイ(以下,VR HMD)「Vive Pre」を装着し,VRコンテンツを体験できるようになっていた。
筆者もそこで実際に体験してきたので,今回は具体的な説明とデモの内容をレポートしてみたい。
「VRには従来比で7倍の描画能力が必要になる!」
いわゆる3D酔いをしにくいVRコンテンツを実現するには,解像度1920×1080ドットで30〜60fpsといった据え置き型ゲーム機の描画能力を超える,高い解像度とフレームレートでの表示が必要になるというのは,よく言われる話だ。実際,Riftの最終製品版「CV1」と,HTCとValveの共同開発により2016年4月に発売予定のVR HMD「Vive」は,いずれも片目あたり1080
据え置き型ゲーム機の仕様を1920
さらに,NVIDIAは,「表示遅延を小さくして,ヘッドトラッキングに応じた違和感のない映像を表示するためには,ユーザーの動きを検出して,それを映像に反映するまでの遅延を20ms以内に収める必要もある」としている。
どちらも非常にハードルの高い要求であり,実現には強力なGPUが必要だ。たとえばRiftの場合,推奨GPUは「GeForce GTX 970」もしくは「Radeon R9 290」以上と,かなり高い(関連記事)。ちなみにCPUは「Core i5-4590」(定格3.3GHz,最大3.7GHz,4C4T,共有L3キャッシュ容量6MB)以上が推奨となっている。
そこでNVIDIAでは,ハードウェアとソフトウェアの両側面から,VRに適したプラットフォーム構築を行う取り組みを行っている。その1つが,CES 2016のタイミングで発表となったVR Readyプログラムである。
発表時点で,PCメーカーやグラフィックスカードメーカー各社が,VR Readyプログラムへの参加を表明しており,その中には,日本でゲームPCを展開しているメーカーやブランドも多い。そういったメーカーから,順次,VR Readyバッジの付いたグラフィックスカードやゲームPCが登場してくることになるのだろう。
また,ソフトウェア面では,NVIDIAが2015年に提供を開始したソフトウェア開発キット「GameWorks VR」を,プライベートブースでは強くアピールしていた。説明員によれば,GameWorks VRを統合したゲームエンジンである「Unreal Engine 4」(以下,UE4)を利用すれば,もともとのプログラムをそのまま実行したときと比べ,VR対応ゲームのフレームレートを50%向上させることさえ可能であるという(関連記事)。
RiftとVive Preで最新VRデモを体験
説明の後は,会場に用意された3種類のVRデモを体験することができた。
というわけでインプレッションだが,Oculus Touchを握った手を敵に向け,あたかも本当に銃を握っているかのように引き金を引く感覚や,敵が撃ってきた銃弾をバレットタイム中につまんで投げ返すというゲーム内容が,シンプルながら実に面白い。ステージやギミックを増やせば,そのまま短いゲームにできるのではと思ったほどだ。
2つめは,Three One Zeroという開発スタジオが制作中のSFアドベンチャー,「ADR1FT」だ。
こちらはRiftと「Xbox 360 Controller」の組み合わせでプレイし,破壊された宇宙ステーションから脱出するというデモ。宇宙服の酸素がどんどん減っていくので,プレイヤーは酸素を補給できるアイテムを拾いながら,宇宙船内を探索していくというものになっていた。
ADR1FTは目下開発中とのことだが,製品化にあたっては,もう少し3D酔いしにくくする工夫がほしいところだ。
最後は,Vive Preでエベレストの登山を体験するというデモだ。ゲームというよりも,一種のバーチャル登山,あるいはバーチャル観光的なコンテンツである。なお,ゲーム画面の撮影は許可されなかったことをお断りしておく。
開発者向けイベントのレポート記事で触れているが,そもそもViveは,高精度なポジショントラッキング機能によって,Riftよりも広い範囲を動き回るVRコンテンツを実現できるという特徴がある。
Vive Preでも基本路線は同じで,今回のデモも,対角線の長さが15フィート(≒3m)ほどある部屋全体を使って,VR空間内で表現した雪山の上を歩き回ることが可能になっていた。
実際のエベレストで撮影された千枚単位の写真を組み合わせて,3Dモデルを作ったというだけあって,ヒマラヤ山脈の風景は壮大なもの。クレバスの上をはしごで渡るシーンなどは,VRデモと分かっていても,恐くて渡れないという人が何人もいたそうなので,高所恐怖症の人にはお勧めできないかもしれない。ゲームではないものの,広い空間を使うVive系HMDの可能性を感じさせてくれる内容だった。
なお,Vive Preについては別途詳しくレポートする予定だ。
VR Readyプログラムの情報ページ(英語)
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