レビュー
ついに登場した900番台エントリーミドルの実力検証
GeForce GTX 950
(ASUS STRIX-GTX950-DC2OC-2GD5-GAMING)
GTX 950の登場で,第2世代Maxwellアーキテクチャが,ようやっとエントリーミドルクラス市場へもたらされることになるわけだが,その実力はいかに。今回4Gamerでは,ASUSteK Computer(以下,ASUS)製の搭載グラフィックスカード「STRIX
●参考:GTX 950リリース後のデスクトップGeForce製品ラインナップ
※価格は北米市場における,リファレンス仕様もしくはそれに近いモデルのメーカー想定売価
- GeForce GTX TITAN X:999ドル
- GeForce GTX 980 Ti:649ドル
- GeForce GTX 980:499ドル
- GeForce GTX 970:329ドル
- GeForce GTX 960:199ドル
- GeForce GTX 950:159ドル
- GeForce GTX 750 Ti:119ドル
GM206のフルスペック比で75%のGPU規模
メモリ周りの仕様は上位モデルと同じ
NVIDIAは,GTX 950の発表に合わせて,「GeForce Experience」のアップデートもアナウンスしている。それら発表に関するレポートは米田 聡氏が行っているので,ぜひそちらをチェックしてもらいたいと思うが,本稿ではGTX 950というGPUに絞って,まずは新情報をまとめてみよう。
2基あるGPCの両方で1基ずつ無効化されているのか,片方のGPCがフルスペック,もう片方で2基無効化という仕様を許容しているのか,NVIDIAは明らかにしていないが,いままでのNVIDIAがとってきた方針から推測する限り,「混在しており,性能は変わらない」ということになると思われる。
クロックの話が出たついでにGPUコアクロックも見ておくと,GTX 950はベース1024MHz,ブースト1188MHz。GTX 960は順に1126MHz,1178MHzなので,ベースクロックは100MHzも低いが,ブーストクロックはむしろ少し高いことになる。GTX 950の場合,SMMが2基無効化されている分,TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)の余剰枠が増えるため,動作クロックが上がりやすいということなのかもしれない。
STRIXブランドのGTX 950カードの長さは約219mm
「OC」「Game」「Silent」と3つの動作モードを搭載
そのカード長は実測約219mm(※突起部除く)。GTX 750 Tiリファレンスカードの同146mmよりは長いものの,いわゆるミドルクラスのグラフィックスカードとして見れば,十分にコンパクトなサイズと言っていいだろう。ちなみに,基板長自体は約210mmで,そこから約9mm,GPUクーラーが後方へはみ出す格好になっている。
80mm角相当のファンが2基搭載されるGPUクーラーは,「DirectCU II」のブランド名が与えられたもの。ファンブレードのエッジに突起を設けることで,エアフローを向上させているという。
STRIXブランドのグラフィックスカードということで,GPU温度が61〜65℃まで下がったときにはファンが停止する仕様は健在だ。
機能面では,「OC Mode」「Gaming Mode」「Silent Mode」という3つの動作モードが用意され,ASUS製オーバークロックツール「GPU Tweak II」(Version 1.0.2.4)から選択できるようになっていたのが目を引く。動作モードを切り替えると,ベースクロックは1165MHz,
ちなみに,カードのデフォルト状態となるOC Modeで確認したところ,ブースト最大クロックは1468MHzに達した。大型のGPUクーラー搭載により,動作クロックはかなり高いところまで到達するようになっているようだ。
GTX 960やGTX 750 Ti,R7 370,R9 270と比較
GTX 960のテスト設定に注意
テストのセットアップに入ろう。
今回,比較対象として用意したのは,表1で挙げたGPUだ。ただし,GTX 960カードである「GV
GTX 950@1075MHzは,ベースクロックがリファレンスより高いだけでなく,組み合わせられるGPUクーラーの優秀性もあって,NVIDIAが想定しているリファレンス仕様よりも高いブーストクロックになると思われるが,それでも,参考にはなるだろうという判断である。
そのほかテスト環境は表2のとおり。OSには64bit版Windows 10 Proを用い,そのうえで4Gamerのベンチマークレギュレーション17.0へ準拠してテストを行うが,「Core i7-6700K」のレビュー記事でも触れたとおり,「Crysis 3」がうまく起動しないため,本タイトルのみ省略することをここでお断りしておきたい。
テストに用いた解像度は,1680
なお,これは筆者のGPUレビューにおいてはいつものことだが,組み合わせるCPU側の自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」は,テスト状況によって効果が異なる可能性を排除すべく,マザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化している。
GTX 960との違いは10〜15%前後か
R7 370やR9 270より“速い”結果に
性能検証のグラフでは,GTX 950の2条件を一番上に並べ,その次にはGeForceとRadeonをモデルナンバー順に並べてあるが,グラフ画像をクリックすると,解像度1920
グラフ1は「3DMark」(Version 1.5.915)の総合スコアをまとめたものだ。
ここでGTX 950
GTX 650にとって“重すぎる”Fire Strike Extremeだと,同GPUは大きくスコアを落としているが,GTX 950だとそんなことはないのもポイント。GTX 950が,GTX 650でもちゃんとスコアが出ているFire Strikeで,NVIDIAの主張する「3倍」に近い,約2.8倍のスコアを示している点にも注目しておきたい。
なお,STRIX GTX 950 OCのクロックアップ効果は,GTX 950@1075MHzに対して約4%。効果はあるが,劇的ではないといったところか。
続いて「Far Cry 4」の結果がグラフ2,3となる。Far Cry 4でGTX 9
ただ,R7 370に対しては5〜7%程度しかリードを保てておらず,R9 270にはわずかながら逆転すら許してしまった。R7 370とR9 290が256bitメモリインタフェースを持ち,179.2GB/sというメモリバス帯域幅を持っているのに対し,GTX 950だと128bitメモリインタフェースであり,NVIDIAのいう「実効メモリバス帯域幅」であっても140.8GB/sに留まるというのが,Far Cry 4のような,テクスチャメモリヘビーなタイトルではスコアを左右しているという理解でよさそうである。
そんなFar Cry 4における傾向を派手にしたようなスコアになったのが,グラフ4,5の「EVOLVE」だ。
GTX 950@1075MHzは,GTX 960の82〜85%程度に落ち着いているのだが,「Graphics Core Next」アーキテクチャベースのRadeonが高いスコアを出す傾向にあることも手伝って,R7 370に並ばれ,R7 290には置いていかれている。GTX 950@1075MHzがリファレンス仕様のGTX 950よりも高いスコアになっている可能性が極めて高い以上,EVOLVEではR7 370に軍配が上がりそうである。
「Dragon Age: Inquisition」(以下,Inquisition)のスコアがグラフ6,7で,ここではGTX 950@1075MHzが対R7 370で14〜20%程度,対R9 270で7〜13%程度のスコア差を付けた。全体的に,3DMarkのスコアと近い傾向にまとまっているといえそうだ。
グラフ8,9は「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)の結果だが,GameWorksタイトルとしてGeForceへ最適化されていることもあり,GTX 950@1075MHzのスコアは優秀だ。GTX 960と比べて86〜94%と,ここまでの結果と比べてスコア差が詰まっている理由は「GPUコアクロックの高さによるものか?」くらいしかいえないが,R7 370に対して23〜44%程度,R9 270に対しても21〜39%程度高いスコアというのは,ゲームエンジンレベルの最適化効果と断言してしまっていいように思う。
最高品質の1600
なお,平均フレームレートでスコアを確認したいという人のため,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチにおける平均フレームレートベースのグラフもグラフ8’,9’として用意してみた。興味のある人は合わせて参考にしてほしい。
性能検証の最後は,グラフ10,11の「GRID Autosport」だ。ここにおけるGTX 950@1075MHzとGTX 960の関係は,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチとよく似ている。
GTX 950@1075MHzが,R7 370に対して13〜29%程度,R9 270に対して9〜22%程度高いスコアを示すことと,ただしメモリバス帯域幅の問題から,高負荷設定時は総じてスコア差を詰められ気味であることも押さえておきたい。
GTX 960との消費電力差はそれほど大きくない?
DirectCU IIクーラーの静音性は良好
GTX 950のTDPは90W。GTX 960の120Wと比べると30Wも低くなっている一方,置き換え対象となるGTX 650の64Wや,下位モデルとなるGTX 750 Tiの60Wと比べると,ざっくり1.5倍程度に達する。TDPというのは,あくまでカード設計のための目安であって,消費電力そのものの指標ではないのだが,それでも,GTX 950がどういうスコアに落ち着くのかは気になるところだ。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を比較してみよう。
テストにあたっては,ゲーム用途を想定して,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。
その結果はグラフ12のとおり。まずアイドル時のGeForce各製品はどれも60W前後で,ほぼ同じ。続いてアプリケーション実行時だと,GTX 950@1075MHzは,GTX 960比で10〜21W低い一方,GTX 750 Tiと比べると48〜59W,GTX 650に対しては53〜75W高いという結果になった。
繰り返すが,GTX 950@1075MHzではリファレンス仕様のGTX 950よりもクロックが高くなっているため,その分,消費電力も上がっているはずで,ある程度は割り引いて考える必要がある。ただ,そうだとしても,
GPUコアの温度も確認しておこう。ここでは「GPU-Z」(Version 0.8.5)を用い,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」とアイドル時のそれぞれの時点の温度をスコアとして採用した。テスト時の室温は24℃で,システムはケースに組み込まない,いわゆるバラックの状態に置いてテストを行っている。
その結果がグラフ13だ。注意してほしいのは,カードごとに温度センサーの位置が異なり,もちろん搭載されるクーラーも異なるため,横並びの比較に意味はないこと。あくまでも,STRIX
しかも,その動作音は,筆者の主観であることを断ったうえで述べると,かなり静か。STRIXシリーズの新作らしい,静かなグラフィックスカードに仕上がっている印象だ。
このクラスは結局のところ価格次第だが
現状ではGTX 960が強力なライバルに!?
しかも市場を見渡すと,GTX 960搭載カードが,当たり前のように2万3000〜7000円程度(※2015年8月20日現在)で販売されている。この状況で,GTX 960に性能が近いとはいえ,確実に低いGTX 950を指名買いする人がいるかというと,正直,大いに疑問だ。
気が早い話ではあるが,年末商戦期に向かって,実勢価格が2万円を下回るようになってくると,GTX 950というGPUは評価されるようになるのではなかろうか。面白い位置づけのGPUとして扱われるようになるかどうかのカギは2万円というラインにあるとまとめておきたい。
NVIDIAのGeForce製品情報ページ
ASUSのGeForce搭載グラフィックスカード製品情報ページ
NVIDIA,159ドルのエントリーミドルクラスGPU「GeForce GTX 950」発表。同時発表された「GeForce Experience」のアップデートも要注目だ
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GeForce GTX 900
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