蜻蛉切，千子村正と共に万華鏡のように美しい世界へ。「ミュージカル『刀剣乱舞』 千子村正 蜻蛉切 双騎出陣 〜万の華うつす鏡〜」ゲネプロレポート

　DMM GAMES / ニトロプラスの「刀剣乱舞ONLINE」（BROWSER / iOS / Android）を原作とした「ミュージカル『刀剣乱舞』」（以下，刀ミュ）シリーズ最新作，「ミュージカル『刀剣乱舞』 千子村正 蜻蛉切 双騎出陣 〜万の華うつす鏡〜」が，2023年11月26日から12月31日までIHIステージアラウンド東京にて上演されている（12月31日のライブ配信，ライブビューイングあり）。


　本公演は，刀剣男士の千子村正と蜻蛉切がメインとなる“双騎出陣”の形を取った舞台だ。これに加え今作では，出演者である太田基裕さん（千子村正 役）とspiさん（蜻蛉切 役）が演出を務めていることも見どころとなっている。

　本稿では，関係者・マスコミ向けに行われたゲネプロ公演の模様をレポートする。内容のネタバレになる記述および，写真が含まれるため，これから観劇予定の審神者の皆さんは，2振りの活躍を見届けた後に読んでいただけるとうれしい。

開催概要

ミュージカル『刀剣乱舞』 千子村正 蜻蛉切 双騎出陣 〜万の華うつす鏡〜

上演期間：2023年11月26日〜12月31日
場所：IHIステージアラウンド東京

■出演（敬称略）
千子村正役：太田基裕
蜻蛉切役：spi

柴 一平 他

■STAFF（敬称略）
原案：「刀剣乱舞ONLINE」より (DMM GAMES/NITRO PLUS)
演出：太田基裕，spi
クリエイティブディレクション：植木 豪
特殊演出クリエイター：gash!（CONDENSE／Beat Buddy Boi）
脚本・作詞：：浅井さやか
音楽監督：YOSHIZUMI
ステージング・振付：當間里美
振付：福澤 侑
主催：ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会（ネルケプランニング　ニトロプラス　DMM GAMES　ユークリッド・エージェンシー）

何度ものぞき込みたくなる万華鏡のような物語

　物語は，美しい四季の移ろいを映す窓の前で，千子村正と蜻蛉切が高らかに歌うシーンから始まる。2振りは同じ風景を眺めながら会話しているように見えるが，千子村正がのぞく窓は四角，蜻蛉切がのぞいている窓は円と差があるため，2振りの会話は絶妙にかみ合わない。

　「同じものを見ている」という質朴で誠実な蜻蛉切に対して，「違う者同士が同じものを見るのは本来ありえないのかもしれません」と返すのがミステリアスな千子村正らしく感じた。と同時に，物事にはそういう捉え方もあるのだとハッとさせられる。


　蜻蛉切が去ったあとにその場に残った千子村正は，夕暮れで真っ赤に染まった世界を眺めていた。すると円と四角の窓が重なり，万華鏡のような世界が広がる。吸い寄せられるようにそのなかへと入った千子村正，その姿を見た蜻蛉切は不思議な世界に迷い込んでいくことに……。


　会場であるIHIステージアラウンド東京の大きな特徴は，客席が360度回転する円形劇場ということだ。客席が回転して，大きな月が浮かんだ古代遺跡のような次の場面が現れる光景は圧巻である。ほかにも大きな満月が満ちる空間や，繭のような空間など，想像力を刺激するセットが続々と登場し，その美しさや演出の素晴らしさにも感動してしまった。

　遺跡のような場所で，次々と咲いていく花の音を聞きながら，穏やかな歌声を響かせる千子村正。しかし急激な風によって花は散り，千子村正もまた植物のように固まって彼岸花と化す。花の咲く様子はアンサンブルが球体の光を使って表現，風はコンテンポラリーダンスによって表され，美しい光景に想像力が刺激された。


　同じ場所にたどり着いた蜻蛉切は，彼岸花を見つけ，その正体も知らぬまま千子村正のようだと感じる。そして「まるで……」と口にしたとたんに，千子村正が「私のようですか」と言って動き出し，怪しげな高笑いを上げるのだった。アンサンブルを従えた姿は，千子村正の紋によく似ていて，神々しさを感じずにはいられない。


　全編通して同じ村正の一派として，ずっと千子村正のことを気にかけ続ける蜻蛉切と，それを突き放すように，どこか試すように行動する千子村正。2振りは対話をして向き合い，それぞれの道を進んでいくような終わりがとても印象的だった。


　本公演では，千子村正の自身に絡みつき，鎧のように身にまとわされているさまざまな糸に対する想い，元の主と戦を終わらせるための戦をしてきた蜻蛉切，それぞれの胸の内も曲と共に語られて心臓がギュッと掴まれる気持ちになった。

　物語は2振りについてじっくり語るというよりも，見た者の想像力を刺激する内容だったと筆者は感じた。まるで万華鏡のようにのぞきこむたびに違う姿になり，新たな発見と解釈が見つかりそうで，何度も観劇したくなる。また，審神者の数だけ，物語の捉え方も変化しそうで，いろいろな人と語り明かしたくなった。


　刀ミュの見どころの1つ，時間遡行軍との戦闘シーンももちろん用意されている。狂気的なほどに圧巻の戦いぶりを見せる千子村正，触れるものを両断する研ぎ澄まされた刃を振るう蜻蛉切，2振りの迫力ある殺陣をぜひ楽しみにしてほしい。

2部のライブでは審神者も一緒に歌える曲も！

　2部のライブパートでは，2振りが華やかなパフォーマンスを存分に披露してくれた。ライブ曲は既存曲だけでなく，本公演のための新曲もあるので期待してほしい。1部の物語を紡ぐ歌声も素晴らしかったが，苦悩も多かった2振りだけに，ライブでデュエットを披露する姿はどこまでも楽しそうで，それを見ているだけで幸せな気持ちになる。ライブ衣裳はジャケットスタイルのモダンな洋装で，スタイル抜群な2振りによく似合っていた。


　2振りのデュエットに続いて，蜻蛉切の太鼓パフォーマンスが行われた。太鼓の力強い音色と鍛え抜かれた肉体美は，素晴らしい以外の感想が出てこなかった。パフォーマンスを終えた蜻蛉切が客席を指すと，そちらから千子村正が現れてソロでの歌声を聴かせてくれた。途中から蜻蛉切もパフォーマンスに加わり，2振りが作り出す世界に見入ってしまう。


　楽曲のなかには，審神者が一緒に歌う演出も！　2振りが客席の審神者の練習をサポートしてくれるひと幕もあり，「しっかり歌って，2振りの想いに応えなければ！」という気持ちになった。とても歌いやすく，覚えやすいフレーズなので，観劇予定の審神者の皆さんは楽しんで歌っていただきたい。


　最後は，千子村正と蜻蛉切の双騎出陣のためにアレンジしたおなじみのテーマ曲「刀剣乱舞」を披露し，カーテンコールを迎える。アンサンブルの個性豊かなダンスや，客席から登場して近くで見ることができた時間遡行軍など，刀剣男士たち以外のパフォーマンスも見ごたえがあり，刀ミュが作り出すステージは最高だと噛みしめる公演となった。


　本公演は，動画配信サービスDMM TVにて，2023年12月31日13：00公演（全景映像），12月31日(日)18：00公演 千秋楽（スイッチング映像）のライブ配信視聴が可能だ。チケットは発売中（2024年1月4日18：00まで）で，全景映像2200円（税込），スイッチ映像3800円（税込），2公演セット5500円（税込）となっている。2024年1月1日18：00〜1月4日まで見逃し配信も行われるので，お正月にじっくり見返すのもオススメだ。

　2023年12月31日18：00の千秋楽公演は，全国の映画館にてライブビューイングも行われる（チケット代：税込3800円／全席指定）。12月23日12：00より，ローソンチケットにて一般販売（先着）がスタートするので，気になる人は忘れずに申し込もう。

「ミュージカル『刀剣乱舞』 千子村正 蜻蛉切 双騎出陣 〜万の華うつす鏡〜」公式サイト