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印刷2016/08/30 12:01

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「Vainglory」を開発したSuper Evil Megacorpのキーパーソンにインタビュー。 「ゲーマーをリスペクトすることが成功のカギ」

 gamescom 2016のTwitchブースに,モバイル向けのMOBAタイトルとして成長を続ける「Vainglory」(ベイングローリー。iOS/Android)が展示されていた。本作の開発と運営を行うSuper Evil MegacorpのCOO兼エクゼクティブディレクターのクリスチャン・セガストラル(Kristian Segerstrale)氏に話を聞く機会を得たので,その内容を紹介しよう。

昨年同様,Twitchブースの招待作品としてフィーチャーされていた「Vainglory」。その開発,運営を行うSuper Evil Megacorpのクリスチャン・セガストラル氏
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「Vainglory」公式サイト


 セガストラル氏は,2007年に起業したPlayfishの創立者の1人で,同社はFacebookゲーム市場の黎明期に「Who has the Biggest Brain?」をヒットさせたことで知られる。2009年に,Playfishは約3億ドルという高額でElectronic Artsに買収され,その後,Electronic Artsのモバイルゲーム担当副社長として活躍していたが,2013年に「League of Legends」のRiot Gamesのほか,Rockstar Games,Blizzard Entertainment,Insomniac Gamesなど,名だたるメーカーの出身者らとSuper Evil Megacorpを立ち上げた。わずか10年ほどで,波瀾万丈の経歴を歩んできた人物でもある。

 Super Evil Megacorpは2014年9月に開催されたAppleの「iPhone 6」発表会において,「Vainglory」の制作をアナウンスし,美しいグラフィックスと本格的なゲーム性によって大きな注目を集めた。
 日本では2015年4月にiOS版が,Free-to-Playタイトルとしてリリースされた。爆発的な出だしに比べれば現在,落ち着いた感はあるものの,確実にサービスを進化させており,熱狂的なファンも少なくない。今回は,そんな「Vainglory」の現状と今後を,日本のモバイルゲーム市場を絡めて聞いた。

最新アップデートで追加された,魔導師サムエル
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4Gamer
 本日はよろしくお願いします。ところで,対戦型モバイルゲームとしてすっかり定着した感のある「Vainglory」ですが,ここまでの1年半ほどの道のりは,どのようなものだったのでしょうか。

クリスチャン・セガストラル氏(以下,セガストラル氏)
 そうですね。1年前まで,「Vainglory」はコア向けゲームとしてデザインされたままでした。チュートリアルを含めてゲームの導入部分がうまくできておらず,多くの人にダウンロードしてもらっても,あまり続けてもらえなかったと思います。
 そうした部分を改善しつつ,AmazonやSamsungといったメーカーの協力を得て,ゲーム大会を開くなどしてコアゲーマーのコミュニティを刺激し,サービスを成長させることができたと思っています。一部の格闘ゲームを除いて,あまりe-Sportsが盛んではないとされていた日本市場でも7月30日,イベント「RAGE」の第2回を盛況のうちに終えることができました。
 ゲームサービスが軌道に乗り,コンテンツが拡充し,コミュニティも定着していくなか,過去数か月ほど我々がフォーカスしているのが,どうすれば一度失ったゲーマー達にもう一度プレイしてもらえるかということです。

4Gamer
 具体的に,どのようなことをされているのですか。

セガストラル氏
 大きな改善点としてはBOTをフィーチャーして,オンラインモードをプレイしたくないという人であればシングルプレイキャンペーンを楽めるようになったことが挙げられます。
 これは,日本のゲーマーの皆さんの要望を反映させたことなのですが,2人のBOTを自分のチームに入れ,3人のBOTで構成される敵チームと「大乱戦」モードをプレイできます。実際にほかのプレイヤーと戦う前の練習としても使えますので,より安全でプレッシャーのない環境でゲームに慣れることができます。
 さらに,クエストシステムを採用することでアイテムを入手できるようにしていますし,ビデオチュートリアルなども各地域向けにローカライズしています。友人を誘ってプレイするには,ちょうど良い環境になったのではないでしょうか。

4Gamer
 日本のコミュニティからの声を吸い上げて,ゲームを改良しているとは驚きました。

セガストラル氏
 日本のプレイヤー数は,グローバルで展開している「Vainglory」全体からいえば,けして多くはないかも知れませんが,モバイルゲーム市場において日本のゲーマーは最も洗練された層であると我々は確信しています。本作を日本でプレイしている皆さんが,1日平均125分という長いプレイ時間を記録しているのもその証でしょう。そのため,日本市場専門のコミュニティサポートチームも設置しており,Twitchやニコニコ動画などでもらえるコメントにまで細かくチェックしているのです。
 現在はチャットのときの漢字が見やすくなるような調整を行っており,9月か10月のアップデートで,日本の皆さんに喜んでいただけるものを公開できると思っています。

4Gamer
 おお,それはファンには嬉しい話ですね。アップデートというと,近日中に行われるアップデート(記事掲載時点で実装済み)の概要を教えてください。

セガストラル氏
 はい。サマーシーズン最後となるこのアップデート(v1.21)では,闇の魔法を操る魔導師サムエルが新たなヒーローとして登場します。非常に強力な催眠魔法を持っており,DPS(秒間に与えるダメージの平均値)も高いので,チームに必ず入れておきたいヒーローになるかも知れませんね。
 また,最後のサマー限定スキンであるサマービーチ・ケストレル壊れた人形アルファII北風ライムIIIなどのほか,イベントで入手できるフィンの限定スキンも用意しました。デイリー,ヒーロー,シークエンス,そしてコミュニティの4つのカテゴリーに分けられたクエストがあります。

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4Gamer
 ところで,なぜモバイルプラットフォーム限定のMOBAゲームを企画したのでしょう。

セガストラル氏
 モバイルゲームという市場ができて10年近く経ちますが,本格的なゲームはまだそれほど多くない気がします。また,新たな世代のゲーマー達はPCやコンシューマ機よりもタッチスクリーンのスマートフォンやタブレットに慣れた人が多いのです。モバイルプラットフォームにもプレイヤーを熱中させるMOBAタイトルがあっても良いんじゃないか,というのか最初のデザインコンセプトですね。
 最近は誰でもスマートフォンを持っているでしょう。ゲーマー達が自分の機器を持ち寄って対戦したり,トーナメントが可能になるというのは大きな魅力です。

4Gamer
 なるほど。

セガストラル氏
サマーアップデートv1.19で追加されたヒーロー,ライラに扮するのはVaingloryコミュニティのジア・ジェム(Jia Jem)さん
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 「Vainglory」はコア向けに作られた,というお話を最初にしましたが,モバイルゲーマーでも骨のあるゲームをプレイできてしかるべきだと考えたわけです。これまで,他愛ないグラフィックスと,課金することによってゲームを有利に運べるPay-to-Win型のビジネスモデルが市場を占拠していました。スポーツでは,金を掛けたからといって必ずしもチャンピオンにはなれません。ゲームでも,お金をかけるほど有利になるという状況は防がなければならない。カジュアルにプレイする人でも,そういうビジネスにだまされていてはいけないのです。
 ゲーマーをゲーマーとしてリスペクトすることが,すべてのカギだと我々は思っています。彼らは,常により良いものを求めており,我々ゲーム開発者もそれに応えなければいけないのです。

4Gamer
 「Vainglory」はグラフィックスレベルも頭一つ突き抜けてるという印象ですが。

セガストラル氏
 はい。PC向けに出さないという決定を下しているだけで,グラフィックスからエフェクト,アニメーションまで,PCで出せるほどのレベルにあると思っています。モバイルゲームでここまで完成度の高いゲームを楽しめるということを,より多くの皆さんに感じてほしいですね。

4Gamer
 「Vainglory」が,MOBAやe-Sportsの人気を日本で育てることができるでしょうか。

セガストラル氏
 そう思っています。9月には,「Vainglory」の日韓対抗戦も行われますし,そうしたコミュニティの広がりを通して,さらに日本でも本作の楽しさが伝わっていけばと願っています。

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