インタビュー
元DHARMAPOINTの梅村氏に聞くこれまでとこれから。新しい場所で氏が目指すデバイスの姿とは
果たしてなぜ氏はD
なぜ梅村氏はDHARMAPOINTを辞めたのか
4Gamer:
お久しぶりです。お元気そうで安心しました。
お久しぶりですね。以前と比べて相当痩せた点にご注目ください(笑)。
4Gamer:
(笑)。
さて,果たして何から伺うべきかと考えていたのですが,避けることはできない話から聞かせてください。なぜ梅村さんは,ほかの主要メンバーともども,2013年9月末をもってD
梅村氏:
もうお話しちゃっていいのかな。一言でまとめるなら,「母屋がアウトだった」ということです。僕達はクラストという会社に所属していたわけですが,実際には給料の遅配があったり,末期には開発費の入金が行われず,個人で一時的に立て替えする必要が出てきてしまったりという状況でした。
4Gamer:
そんな状況だったんですか……。
梅村氏:
いまだから言いますが,前にいた会社は,工場への支払いをちゃんとできたことが一度もありませんでした。そういうことさえできなかったんです。
先ほどのご質問にお答えすると,実のところ,僕達は「離脱した」のではなく,「解雇された」んですね。「事情があって会社は潰せないため,社長以下数名を残して会社は残すけれども,活動はしない」という決定の下での動きということになります。
もっとも,会社がああいう状況だったので,解雇されなかったとしても,遅かれ早かれ辞めていたとは思いますが。
4Gamer:
そうだったんですね。梅村さん達が離脱された後,いくつかのショップにまとまった数が入荷したりするケースがあったんですが,あれは何だったんでしょう。
梅村氏:
辞めることになる直前に,某ショップさんにキーボードをまとめてお渡しするとか,某通販サイトで全部売るとかも考えたんですが,できませんでした。僕達が辞めたあと,実質的な営業活動は何もしていないはずなので,おそらくは,それまで製品を仕入れてくださっていた店舗さんが独自に動いた結果なのだと思います。
4Gamer:
一部では,梅村さんがお辞めになった原因は,DRTCM38に関連したトラブル対策で運転資金が枯渇したとも噂されていました。そういうことはなかったということですか。
梅村氏:
それはまったくありませんでした。むしろ,トラブルが解決して,当時のDHARMAPOINTメンバーの間では「さあ,海外にも展開しようか」という話すらあったくらいです。
4Gamer:
離脱ではなく,旧シグマA・P・Oシステム販売(以下,シグマ)からクラストへ移管されたときのような話はなかったのでしょうか。
ありました。ただ,僕の記憶する限り,掲示金額はちょっと法外なものだったんですよ。
一応,ブランド譲渡で動いていたはずの役員もいたのですが,蓋を開けてみると金額だけ提示していてほかは何もしていなかったり,なんてこともあって,僕ら側が(D
4Gamer:
つまり,いまもDHARMAPOINTというブランド自体は,休眠状態のクラストにあるということですね。
梅村氏:
ですね。残っていますね。可能性だけの話をするなら,今後,D
4Gamer:
無関係,という話が出てきたところで聞いてしまうのですが,海外のメーカーから「DRTCM37」や「DRTCM38」とそっくりなマウスが出ていますよね。先方は「オリジナルだ」と言っていますが(関連記事)。あれって,いったい何なのでしょう?
僕が離れてからのことなので「分からない」としか言えませんが,D
もっとも,そこで揉めたり,話が止まったりしているうちに,金型を保管している会社に「アレと同じのって作れないの?」という話がいくというのは容易に想像できますね。
4Gamer:
場合によっては「これ流用しようぜ」となってしまったりすることがあるわけですか。
梅村氏:
そうですね。というか,D
梅村氏がビット・トレード・ワンに入社した経緯,そしてそこで目指すもの
4Gamer:
ともあれ,あれから11か月――ほぼ1年ですね。梅村さん自身は何をされていたのでしょう。先ほど痩せたとおっしゃっていましたが。
そうですねぇ。主にやってたのは「ARMA 3」ですかね(笑)。それから,BRZRKさんがステージ上で活躍されているのを見学したり。
4Gamer:
お恥ずかしい(笑)。
梅村氏:
あとは,娘が通っている小学校の教室が学級崩壊してしまいまして,親としてその対策に動いたりもしていました。
簡単に言うと,家族のために働いていた,といったところでしょうか。
4Gamer:
そういうこともあったのですね……。
当然,その間にも何らかの形で就職活動はされていたと思いますが,最終的にビット・トレード・ワンさんに入社したのはいつ頃なのでしょうか。
梅村氏:
今年の2月1日です。「とりあえず正月までは何も仕事しない」と決めていたので,それから動いた,といった感じですね。実際には,正月休み明けくらいから,入社する前提でいろいろ動いたりはしていましたが。
正直にお話すると,D
4Gamer:
いまのお話ですと,ビット・トレード・ワンさんと梅村さんの間には以前から関係があったと思うんですが,どういうつながりがあったのでしょう。
梅村氏:
DHARMAPOINTの外部委託開発先の一社でした。
4Gamer:
以前から仕事上のお付き合いがあったというわけですね。
本日はビット・トレード・ワンの阿部社長にも同席いただいているところで,大変失礼な質問をしてしまうのですが,梅村さんと以前からお付き合いのあったビット・トレード・ワンとは,いったいどんな会社なのでしょう?
基本的には,売り上げの半分以上が受託開発です。受託開発では,ソフトウェアもハードウェアもやっていまして,USB接続型デバイスの一点モノ,といったものも扱っています。
ただ個人的には,デバイス関連も含め,コンシューマ向けの製品を扱っていきたいとずっと思っていて,梅村さんがいれば助けてくれるのではないかと,お声がけした次第ですね。
4Gamer:
Webサイトを拝見しましたが,事業としては受託開発と……。
阿部氏:
電子工作系のキットを売っています。もう1つがコンシューマ向け製品で,これが三本柱になります。
4Gamer:
ただ,売り上げの半分以上が受託開発となると,ほぼ,大黒柱が1本ということになりますよね。そんななかで,自社ブランドの製品をコンシューマ向けに展開する意図は何なのでしょうか。
阿部氏:
その答えはシンプルで,受託開発は先が見えているからです。結局のところは「人月の世界でしか売り上げが成立しない」ので。
会社の事業規模をこれまでよりも大きくしたいと思ったら,自社製品が必要不可欠なんですよ。
ただ,うちの会社のスタッフは,受託開発のプロフェッショナルが多い。なので,これから自社製品に力を入れていくとなると,梅村さんのような人が絶対に必要というわけです。
4Gamer:
となると,梅村さんはそのコンシューマ部門で採用された,ということですか。
阿部氏:
いえ,そこまで社内で明確にパートが分かれているわけではないですね。
梅村氏:
基本的にはハードもソフトも全部やってますね。
4Gamer:
チームが分かれているというより,皆で一斉にやろうという感じですか。それだと受託開発の受注状況次第でフレキシブルに人員を動かせますね。
となると,すでに梅村さんが受託開発で何かハードウェアを作ったりもしている?
梅村氏:
割と作ってますね。
阿部氏:
ですね。
とある博物館があるのですけれども,そこから「電車のコントローラ」の依頼を受託しまして。一点モノのUSBデバイスを作ることってあまりないんですが,それを梅村さんに作ってもらいました。
4Gamer:
2月の入社から考えると,すでに1つ,ゲーム用……かどうか分かりませんが,ゲームっぽいデバイスの実績が生まれているわけでね。
阿部氏:
ただ,弊社としてゲーム関連のデバイスは初めてではないんですよ。以前4Gamerさんに載せていただいた製品がありまして(と,製品を鞄から出す)。
梅村氏:
なんかアピールしたいらしいですよ。
(取り出された「Horizontal Controller Special Version」を見て)あ! これは覚えてますよ。そうか,これビット・トレード・ワンさんでしたか。
阿部氏:
4Gamerさんのこの製品の記事を見て,梅村さんが受託開発先として声をかけてくれたのではないかと。
USB接続のいわゆるパドルコントローラですが,ゲーム用のデバイスといえばそうでして。
4Gamer:
確かにそうですね。ビデオ編集とか,ゲーム用途以外のニーズも多そうですが。
(ボタンをポチポチ押しながら)これ,アーケードのスタートボタンに使われているやつですよね。
阿部氏:
そうですね,24φのスタートボタンです。
梅村氏:
これセイミツさんの部品を使っているんですよ。実は,DHARMAPOINT時代にアーケードスティックをやろうかという話をセイミツさんと話していて,そのとき教えてもらったんですが。
阿部氏:
搭載されているパドルのエンコーダも非常によいものを使っているので,昔出ていた「アルカノイド」用コントローラと比べても,感触はかなりいいのではないかと思います。
ともあれ,これを取り上げていただいたのが,そもそもの始まりになっているのではないかと考えているんですよ。
4Gamer:
まさかウチの記事が……。
ちょっと話を戻しますが,阿部さんのほうでD
それは僕から回答させてください。
いくつかの会社さんからお声がけをいただいていたという話は先ほどしましたが,その中身は「D
でも,僕としては,家族の問題もあるんですけど,それとは別に,もともとがマウスやキーボードなど以外もいろいろ手がけていたので,広く扱えたほうが楽しいだろうなという思いはありました。
4Gamer:
つまり,ビット・トレード・ワンでは,D
梅村氏:
とくに最近は,ゲーマー向けの周辺機器を扱うメーカーさんがたくさん出てきましたけど,大きく分けるとRazerスタイルか(昔の)SteelSeriesスタイルって感じですよね。ルックス重視か実用性重視か,という。それにちょっと飽きたというか。
あと,いまBRZRKさんが「Red Bull 5G」の帽子被ってますけど,昨年のRed Bull 5Gを観戦しに行ったとき,「これがあるべき姿なんだろうな。ジャンルを規定するのではなく,皆がプレイしているタイトルで戦うべきなんだな」と思ったというのもあります。
ゲーマーとして楽しむ部分だけなら,僕もずっとARMAシリーズをプレイしていますし,FPSでいいんですけど,ガチでFPSだけやって「これがe-Sportsなんです」って言い切るのはどうなんだろうと。
4Gamer:
競技性があれば別にFPSじゃなくてもいい,というわけですね。D
梅村氏:
何というか,黒を基調にして,“中二病”を煽るだけ煽っていくスタイルはもうちょっとイヤだなあというのがあったのかもしれません。
DHARMAPOINTの各製品に「プロダクトノート」を付属させていたのは,「もっと違うところを見ましょうよ」という思いがあったんですよ。他社とは違うスタイルを提供したかったというか。
4Gamer:
シビアな質問で恐縮ですが,それはうまくいったと思いますか?
梅村氏:
うまくはいかなかったですね。最終的にD
4Gamer:
それを踏まえて,これからキーボードを皮切りに,ビット・トレード・ワンから製品が出てくるわけですが,全体としてはどういう方向を目指すのでしょうか。今までの話からすれば,当然のことながら「FPSのコアゲーマー」はターゲットから外れそうですが。
阿部氏:
「広げていきたい」ですね。これ(と言ってHorizontal Controller Special Versionを指差しつつ)もある意味でゲーマー向けの周辺機器ですし。いま考えている製品も,「ゲーマー向け周辺機器」のジャンルを広げられる製品だと思っています。
……どうしてもニッチになっちゃうかもしれませんが。
4Gamer:
王道を狙う気はない,ということですか。
阿部氏:
いや,これが本当の意味での王道だと思って,いま動いています。
梅村氏:
FPSを王道とする考え方にはしたくないということです。
4Gamer:
たとえば,Red Bull 5Gということを考えるなら,アーケードスティックなりゲームパッドなりが重要になりますよね。あるいはステアリングコントローラか,極論をいえば「ゴルフゲーム用コントローラ」という可能性すらあるとは思いますが,そういう感じの方向性なんでしょうか。
梅村氏:
いえ,そうではないですね。というか,Red Bull 5Gの他に影響を受けたのがOculus VRの「Rift」なんですね。
4Gamer:
また方向性のずいぶんと違うものが出てきました。
梅村氏:
プレイして観戦してみんなが楽しいという衝撃をRed Bull 5Gで受けて,Riftは個人的に楽しんで衝撃を受けたんですよ。一時期,Riftだけ持っていろいろなところへ出かけたりもしていました。
……いま方向性が違うという話が出ましたが,僕のなかでRed Bull 5GとRiftは地続きになってるんですよ。Red Bull 5Gを見て,Riftを装着して,「こりゃもうキーボードとマウスじゃないよな」と。これが「違う方向へ行きたい」という衝動の根拠ですね。
マウスとキーボードに人生の大半を捧げてきましたが,今後,それが絶対なものでなくなっていくのは確実な気がします。なので,いまアーケードスティックなりなんなりを挙げていただきましたが,正直,何を出すことになるかは,まだ分かりません。こんなこと言っておきながら一発めはキーボードですし(笑)。ただ,いろいろな方位には向いておきたいなと考えています。
昔はもっと多種多様なゲーム用の入力デバイスがあったと思うんですよ。カプコンの「ロストワールド」の「ローリングスイッチ」とか。個人的には,そういう特殊な入力デバイスが少なくなってきているのは寂しいと感じますね。
4Gamer:
確かに,今のゲームって「決められたデバイスでこうプレイするんだ」というのが定着している感じがしますよね。
ただ,そういう,特定用途向けのデバイスって,金型だなんだと,かなりの制作コストがかかりますよね。それこそ海外ではKickstarterでファンディングしたりしていますが。
梅村氏:
おっしゃるとおりで,Kickstarterはポイントになると思います。
僕らのようなハード屋の仕事って,金型とか研究開発とかの資金集めが,仕事の大半になったりするんですよね。それまでは大量生産で動いていたので,それに向けて会社の予算を確保するのが重要だったわけですが,そろそろ流れは変わってきているのかなと感じています。
BFKB113PBKはDHARMAPOINT時代のアイデアを
ビットフェローズ風に仕上げたもの
ここからは新製品のお話をしたいわけですが,先日発表されたのは,パンタグラフ式でNキーロールオーバー対応のキーボード「BFKB113PBK」でした。
なぜパンタグラフを,というのが,この製品について一番聞きたいところであるわけですが。
梅村氏:
それはもう,昔からやりたかったからですね。物理的なストロークが少ないから,動作も早いだろうと。
あと,パンタグラフのキーボードはノートPCユーザーに利用者が多いので,似た操作性を実現するキーボードは用意すべきだろうと,自分の中に,義務感に近いものはありました。
4Gamer:
アイデアとしてはどれくらいの期間抱えてましたか?
梅村氏:
DHARMAPOINTがクラストへ移管されたときくらいからでしょうか。実のところ,仕様はずいぶん前に決まっていて,「どうやって作ろうか」という話にまで進んでいたんですよ。まあ,お金の話で……という感じなんですが。
4Gamer:
となると,今回のBFKB113PBKはD
梅村氏:
いえ,そうではありません。機能的にはいろいろ削っています。
4Gamer:
それはつまり,先ほどおっしゃっていたように,コアゲーマー向けの機能を削って,広く使ってもらえる方向へのシフトが入ったと?
梅村氏:
そうですね。かなり“ノーマルに”なっていますね。
4Gamer:
具体的には何がカットされているんですか。
梅村氏:
最大のものはマクロですね。マウスの機能でマクロを動かすものがあると思いますが,アレのキーボード版というか。最大の目的は,日本語配列のキーボードでFPSをプレイするときに最大の鬼門である[半角/全角]キーの動作を英語キーボードの[~]キーに変えられるようにすることでした。
4Gamer:
うわ,それは欲しい(笑)。
梅村氏:
[半角/全角]キーは[Windows]キー以上に最悪ですからね。それを物理的に切り替えてしまうという機能を予定していました。
4Gamer:
そういう仕様を省いてピュアに仕上げていると。10キーが付いているのもコアゲーマー向けではなくなったからですか。
梅村氏:
いえ,そこは単純に「使ってるといろいろ必要だな」と。
4Gamer:
ARMA 3でも10キーは使いますからね。
梅村氏:
そうですね。首の向きとかサイトの切り替えで使ったりしますもんね。
4Gamer:
やっぱりFPSじゃないですか(笑)。
梅村氏:
いやいや(笑)。これは正直な話で,まずはビットフェローズとして,スタンダードなキーボードを出す必要があるという話です。
4Gamer:
もう1つの特徴であるNキーロールオーバーについてはいかがでしょう。同時押しは何キー対応なんでしょうか。
ここについては,社内的に「USB接続で全キー同時押しができるじゃないか」という話が出たんですが,「何に使うのよ」と。指は10本しかありませんし,どうでもいいことをアピールしても仕方ないのでやめましょうということになりました。
4Gamer:
BFKB113PBKの公式仕様としては,Nキーロールオーバーで,10キーの同時押しには確実に対応できるという感じですか。
梅村氏:
「ロールオーバー」の解釈自体がいろいろあるので,そこは何とも言えませんが,僕としては10キー同時押しができればNキーロールオーバーという解釈をしています。もっとも,ハードウェア的には,だいたい30キーくらいの同時押しに対応していますが。
4Gamer:
もう1つ。これはプレスリリースだとあまり強く押し出されていませんでしたが(と持ちながら)けっこうな重量がありますよね。
梅村氏:
そうですね。個人的には軽くしたいんですけど,キーボードにはある程度の重量が大事だとも思いますし。
4Gamer:
DHARMAPOINT時代のように,ウエイトをわざわざ載せているといったわけではないんですね。
梅村氏:
ですね。に何か特別なものを入れているというのはないですね。
4Gamer:
プロダクトノートはいかがでしょう。今回は付属するのでしょうか。
梅村氏:
恨み節になりそうなのと,キーボードの今までの経緯を説明したりする必要が出てきそうなので,ちょっとなあと。何かしら違うものがあれば書いてもいいのかなと思いますが。
少なくとも当面は復活しないということですね。
あともう1つ,これは先ほどの話を受けてのものですが,今回のBFKB113PBKは,黒と赤を基調としたキーボードです。これは梅村さんの言う「“中二病”を煽るだけ煽っていくスタイルはもうちょっとイヤだなあ」とは矛盾しませんか。
梅村氏:
確かに,そこは微妙に中二病入ってますね。
阿部氏:
ただ,いま“普通の”ディスプレイって黒じゃないですか。個人的には,ディスプレイが黒である以上,キーボードも黒くあるべきだと思います。
4Gamer:
個人的には,フレームがつや消しのほうがよかったかなとも思いますが。
梅村氏:
え,ツヤありのほうがカッコよくないですか?
4Gamer:
人によっては「指紋がベタベタ見えるのは嫌だ」というのもあったりしますし。
梅村氏:
ああ,それはありますね。
4Gamer:
なんというか,梅村さんの中でのせめぎ合いが見えますね。BFKB113PBKには,梅村さんが否定していたものの一部が息づいているという。
梅村氏:
自分で否定して自分でやってるという感じですね(笑)。
4Gamer:
そこに何か意図はあるんでしょうか。
梅村氏:
それはもうカッコイイからですよね。
中二病は……中二病は……中二病は好きです! 僕以外の中二病が嫌いなんです!!
阿部氏:
アンチ中二病という中二病ですね(笑)。
4Gamer:
ところで,製品そのものの話からは少し離れますが,製品型番はD
梅村氏:
はい。
DRTCMがビットフェローズの「BF」になったと。ビット・トレード・ワンさんのWebサイトを見る限り,前からあったブランドのようですが。
阿部氏:
コンシューマー向けの製品をブランド化したほうがいいだろうということで,立ち上げたものです。
梅村氏:
なので,ビットフェローズというのは,必ずしもゲーマー向けの製品ブランドというわけではありません。
4Gamer:
ちなみにビットフェローズとはどういう意味でしょうか。
阿部氏:
フェローズ(ferrous)は「鉄」の意味です。鉄って面白くて,熱処理の仕方でテイストが変わったりするので,処理の仕方でいろいろ変わってくるのを見せたいというのがあります。あとはそれに,仲間という意味のフェロー(fellow)もかけてますね。
4Gamer:
コアゲーマー向けと限らずに,ゲーマー向けのブランドを立ち上げるという選択肢はあったようにも思うのですが。
梅村氏:
そこは単純に,先にもお話したとおり,ゲーマー向けデバイス以外もやりたかったからです。なので,ビットフェローズをいまからゲーマー向けブランドとして一本立ちさせたいかというと,そうでもありません。
4Gamer:
ワンブランドがいいのか,マルチブランドがいいのかというのは,議論が分かれるところですよね。
阿部氏:
ブランドについて僕は詳しいわけではないのですが,ワンブランドで,ビットフェローズで全部やるというのもアリなんじゃないかとは思います。
4Gamer:
型番に戻ると,後ろのPBKってどういう意味でしょう。パンタでブラック?
梅村氏:
です。
4Gamer:
命名法則はDHARMAPOINT時代とほとんど同じですね。
梅村氏:
僕らはあんまり型番に頭を使わないんですね。あとは,営業担当が分かりやすくしておくといった感じで。
4Gamer:
多くのゲーマー向けブランドは,オリジナリティのある名前を付けるじゃないですか。蛇だったり。日本語のものも増えていますよね。
なんでもいいんですけど,たとえばBFKB113PBKではなくて,“暁113”とかでもよかったようには思うんですが,そうしなかった理由みたいなものはあるんですか。
カッコいいですねそれ(笑)。
いや,実のところ,シグマ時代には,ゲーム関連をやる前からマウスには名前を付けたりしていたんですよ。ルシール,ファティマとかいった女性名を。なので「もういいかな」というのもあったりします。
あとはグラフィックスカードみたいに型番で呼んでほしいなと。
4Gamer:
DRTCM37と38のときにおっしゃっていましたね(関連記事)。
それは「サンナナ」「サンパチ」で達成されましたが,今回のBFKB113PBKはこう呼んでほしいとかありますか。
梅村氏:
BFKB113PBKとフルで。
次に予定している製品はまさかの……!?
4Gamer:
今後の話も聞かせてください。ひとまず,次はどんなものを出す予定でしょうか。
梅村氏:
これですね(と,次に予定している製品を机上に置く)。
4Gamer:
え? あれ? これって……。
梅村氏:
だいたい年末か年をまたいでというタイミングで発売したいなと考えています。
4Gamer:
これまで1時間以上語ってきた内容をすべて粉砕するモノが出てきてしまったわけなんですが……。これ「DRTCKB109UP1」ですよね。
梅村氏:
ですねえ。「ゲーマー向け周辺機器やりたいよねぇ」っていう(笑)。あと,いろいろとご要望が多くて。
黒地で,側面の赤い帯……。ビットフェローズロゴがあるのを除くとDRTCKB109UP1そのものですが,これはどうしたものでしょう。要するにリバイバル,ということなんですか。
梅村氏:
そうですね。
4Gamer:
ロゴのシルク印刷以外はまったく同じなんですか?
キートップのフォントが変わっていますし,ケーブルも一部アップデートが入っています。あと,DRTCKB109UP1で「まぶしい」と言われた青色LEDのインジケータは光量を抑えました。
一方で赤いプランジャーはそのままです。これ,DRTCKB109UP1でわざわざ赤くしたんですけど,それも踏襲しました。
4Gamer:
それにしても,序盤のお話からして,もう“D
梅村氏:
個別に色々やらせてもらえればなぁと思っています。
4Gamer:
けっこうなんとかなるものなんですか。
梅村氏:
クラストが権利を主張しているものとか,先ほどお話したキーボードのように“流れて”しまったものもあるんですが,それ以外は。金型を持っておくには維持費がかかるので,それが流れる前に買い取れれば,金型モノでもチャンスはあります。
あとは,その製品にどれだけ再販の要望があるかですね。
4Gamer:
ちなみにビットフェローズ版DRTCK109UP1の型番はどうなるんでしょう。
梅村氏:
おそらくBFKB109UP1になると思います。
4Gamer:
ちょっと短くなりました。
梅村氏:
タクティカルとかがなくなりましたからね。
4Gamer:
あまりの衝撃でいろいろ頭から飛んでいるんですが,先ほど「後で聞こう」と思っていたことを,忘れる前にここで聞かせてください。
第1弾,そしていま見せていただいた第2弾のキーボードも,10キーのあるフルキーボードです。D
梅村氏:
そうですね。着脱云々というよりは,ゲーマー向けの10キーパッドを用意したほうがいいと思いますね。
フフッ,アレがね。
梅村氏:
アレが。いろいろあります。
4Gamer:
え,もう検討してたりするんですか?
阿部氏:
いや,何といいますか(と梅村氏に目配せしながら)。
4Gamer:
しかし,ゲーマー向け10キーパッドって想像つかないですねえ。
梅村氏:
純粋なマクロパッドでもいいんじゃないかなとは思いますね。「ゲーマー向けキーパッド」って,やたらとゴツかったりするじゃないですか。そうではなくて,普通のPC環境に置いても違和感がないようなものを考えてはいます。
4Gamer:
新製品のヒントも出たところで阿部さんに伺いたいのですが,梅村さんに期待していることや,ビット・トレード・ワンでこういうデバイスを作っていきたいという展望があればお聞かせください。
先ほどの話ともかぶりますが,「広げていきたい」んですね。
僕達がもともと持っている,受託開発や,一品物の経験を,コンシューマ市場で広げていきたい。先ほどお見せしたパドルコントローラも,梅村さんに見てもらって,再スタートを図りたいとも考えています。
4Gamer:
すでにリリースされた製品を監修し直して,新製品として出す可能性もあると。
阿部氏:
このパドルコントローラは,コンシューマ向け製品を作ったことがないときの製品ということもあり,いまあらためて見てみると,残念なところもあります。それを見直していく過程のなかで,もっといろいろできるようになるんじゃないかなと。
4Gamer:
とりあえず,盤面をアルミにするところからですかね?
阿部氏:
ですね(笑)。今はステッカーなので,そういったところから見直したいなと思います。
4Gamer:
梅村さんはいかがでしょう。
梅村氏:
そうですね。中二病をこじらせない程度に,ゲーマー向け周辺機器をいっぱい作りたいですね!
4Gamer:
(笑)。
梅村氏:
もともとDHARMAPOINTって,トイレットペーパーからCPUまで扱う,多国籍企業的なイメージでスタートしたんですよ。そういった感じで,いろいろやりたいなと考えています。
4Gamer:
DHARMAPOINTのファンに向けたメッセージってありますか。
梅村氏:
「ご期待ください!」ですね。ゆくゆくはMADE IN JAPANのマウスとかもやりたいです。
4Gamer:
おお。それは大きく出ました。道筋は見えているということですか。今度はファームウェアも内製できますしね。
梅村氏:
はい。昔に比べればそういう体制は整っていますね。ただ,パワーはあるんですが,お金がないので,そこをクリアしないと。
阿部氏:
マウスを国産でやろうとすると,なかなか。アルプス以来になるんじゃないでしょうか。
梅村氏:
最近のマウスだと,マウスパッドのキャリブレーション機能が実装されていたりして,すごく面白いですね。国産云々は別にしても,そういうのをやっていきたいと思いますので,ご期待くださいということで。
4Gamer:
DHARMAPOINTの流れを汲まない製品はいかがでしょう。
ゲーム系(の企画)が動いてますね。
4Gamer:
もう少しヒントを……。
梅村氏:
ゲーム系の何かです(笑)。「でもこれを出したらマルチプレイヤーのゲームが崩壊するかもしれないなぁ」という感じのですね。
4Gamer:
今までになかったようなモノなんですね。
阿部氏:
多分ないと思いますね。
4Gamer:
それって,据え置き型ゲーム機に対応させることは?
梅村氏:
もちろんできますね。
4Gamer:
何だろう?
阿部氏:
あははは。
4Gamer:
それはいつ頃,詳細が明らかになりそうでしょうか。
阿部氏:
どうですかねぇ。
梅村氏:
また全然関係ない製品の開発も控えていますから,次の次くらいでしょうかね。
阿部氏:
現在のステータスは,一度試作ができて,ちょっと残念なデキになって,次の試作基板ができあがりつつあるという感じです。
4Gamer:
分かりました。それ以上は聞かず,楽しみにしておきます。本日はありがとうございました。
(インタビュー:佐々山薫郁&BRZRK,構成:BRZRK)
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