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  • 発売日:2014/11/26
  • 価格:基本プレイ無料+アイテム課金
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今泉 潤氏にインタビュー。gumi入社からFuji&gumi Gamesゲーム開発プロデューサーまでの経緯に見えた,バイタリティあふれる人物像
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印刷2016/06/22 00:00

インタビュー

今泉 潤氏にインタビュー。gumi入社からFuji&gumi Gamesゲーム開発プロデューサーまでの経緯に見えた,バイタリティあふれる人物像

物語を描き切ることがゲームを面白くする


4Gamer:
 今泉氏にとってゲームを面白くする大事なことって何でしょうか?

今泉氏:
 最近気づいたのが,広げた物語はとにかく描き切るということですね。なので今回はちゃんと描いていこうと思っています。描き切ったあとに需要があれば2(ツー)的な話をしていこうと。オンラインゲームで続編を別のアプリとして出すというのは絶対に無理じゃないですか。
 本当は「ファントム オブ キル」の地上世界編も売り切り制の別アプリにしようと思っていたんですけど,中に入れちゃったんですよね。

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4Gamer:
 課金額に関係しないシステムですよね。

今泉氏:
 そうです。無課金システムですよ。

4Gamer:
 いわゆるコンシューマゲームっぽさもありながら,お金を取らないという。

今泉氏:
 あれが本来のシミュレーションRPGの遊び方じゃないですか。そういうのを皆さん忘れてるなと思っていて,あとは映像も作りながら,ストーリーを描きたかったんですよね。

4Gamer:
 ああ,つまりそれこそが,今泉さんの本当にやりたかったことなんですか。

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今泉氏:
 「ファントム オブ キル」はネオ東京みたいな見え方にしたかったんですが,中世ファンタジーの世界観がないと広く受け入れられないなと思って,中世の世界で地上世界があるという世界観を構築しました。でも中世の世界で女の子が甲冑を着ててもなぁと考えたので,ジーパンや制服を現代的な要素として取り入れたのが,ロンギヌスやレーヴァテインなんです。

4Gamer:
 そういう意味では,「誰ガ為のアルケミスト」が完全に中世風ですよね。


今泉氏:
 「誰ガ為のアルケミスト」は本格の王道で行こうと考えていたんですけど,どうやって違和感を出すかというところは“線”なんですよね。映画の「トロン」のようなちょっと近未来的な要素も見た目として分かるようにできるよね,という。

4Gamer:
 そして「シノビナイトメア」は打って変わって和風ときましたね。

公式サイト
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今泉氏:
 「シノビナイトメア」を作りたいと思ったのは,日本人の文化として分かりやすいですし。
 やはり手に取ってもらう動機は必要だと思うので,ほかと比べてどうやって違和感を出すかというところから僕は入るんですよ。

4Gamer:
 そういえば「ファントム オブ キル」とは違って,「誰ガ為のアルケミスト」と「シノビナイトメア」では,ユーザー自身が主人公として描かれていないのはなぜでしょうか。

今泉氏:
 ユーザー自身が主人公というのは,モバイルゲームの悪しき風習の1つだと僕は思っています。ドラマを描きたいと思ったら葛藤を描きますよね。主人公が葛藤して前に進むか,後ろに引くか。そういった葛藤が生まれたときの選択肢がドラマを生むんです。
 しかし主人公がユーザー自身だとしゃべりませんし,葛藤が描けなくて,周囲が進めるしかない。そうすると何の成長も描けないし,周りが促していかないと話が進まない。
 ドラマが描けない原因は3つあって,1つはこの主人公の葛藤が描けない。
 2つめはコンプガチャ問題によって連携スキルが実現できない。たとえば本当ならロギとディオスが連携スキルを撃つべきで,そこにドラマがあると思うんですよね。これが課金キャラ同士だと実現できないので,主人公達は無料で手に入るようにしたかった。
 3つめはキャラを殺せない。課金で得たキャラが死んで2度と使えなくなったらまずいじゃないですか。負けて悔しくても最後に勝てるから楽しいわけです。今は1回負けたら諦めちゃうことが文化としてあるじゃないですか。最近はゲームでも漫画でもアニメでも時代による違いを感じますね。ファミコンの時代なんてすぐ死んでたし,僕がやった「ボンバーキング」ってソフトも爆弾置いたら離れないと死んでましたから。「魂斗羅」なんかもすぐ死にましたね。えっ,もう死んだの? みたいな。
 そこから,“こうしたら死なないんだ”を見つけていったのに,今は死んだ瞬間にクソゲーと言われるんですよね。

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4Gamer:
 解決法はガチャ,ということになってしまうんですかね。

今泉氏:
 そうなんですよ。やはり全体的に楽というか。でも,そういう時代だから合わせて行かなきゃいけないんですけど,古き良き要素というのを何となくゲームに取り入れています。「誰ガ為のアルケミスト」は,僕がTwitterを通じて「1章の2話で死にます」とつぶやいたのに,「クソゲー」とか「2話がムズすぎる」とか言われまして。
 世界観に浸ってほしいという意味でスキップ機能をあえてつけなかったら「リセマラできねえ」って不満がでるし。リセマラしないでどのキャラ育ててもいいんだよと思っていても,やっぱり伝わらないしなぁと思い,スキップ機能はすぐに実装しましたけど。

4Gamer:
 そういえばチュートリアルも,ほぼないようなものでしたね。

今泉氏:
 プレイしたら分かってもらえると思ったのですが,厳しいご意見をたくさんいただきました……。

4Gamer:
 そちらもすぐに対応されましたね。

今泉氏:
 ええ,先ほど言ったとおり,ユーザーの言うことは聞きます。作っているときは「スキップ機能なんていらない」と言いながら好きにやるんですけど,ユーザーからの厳しいご意見があれば「申し訳ございませんでした。私が間違っていました」と。

4Gamer:
 「ファントム オブ キル」の地上世界編もチュートリアルは作られていませんよね。あちらもクレームが出たら対応されるんでしょうか。

今泉氏:
 地上世界編は,無課金モードなんで「クレームは引き受けない」つもりです。ストーリー更新が遅いと言われても,無料なんだから知りません。……とはニコ生などでも言い切っているんですけど,そういうわけにもいかないので(笑)。ちゃんとやっていきます。

関連記事:イベント「ファントム オブ キル ―SHOUT ZERO VR―」でVR体験にチャレンジ。目の前に広がるのは,2200年の荒廃したシブヤ
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4Gamer:
 先日実施されたVRイベントは,ファンと直接触れ合う貴重な機会だったと思いますが,終えてみての感想はいかがですか。

今泉氏:
 印象的だったのが,ゲームを長く遊んでいるというファンにどのくらい遊んでもらえているのか聞いてみたら,3か月と返されまして。3か月続けることが長いんだと思いましたね。
 今のユーザーって,たぶん無料でガチャを引けるまでやって,そこで好きなキャラが出るか,気に入ったキャラをリセマラして出すかできなかったら,諦めて別の新しいゲームに移って無料の範囲を遊んでいく……というのを繰り返しているんですよね。

4Gamer:
 男性キャラクターが大きくピックアップされていることも見どころですけど,かなりの冒険だったのではないでしょうか?

レーヴァテイン(ZERO)
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今泉氏:
 結局,男性を描かないと,マーケティング的見地でいくと萌えゲーだと思われるんですよね。もっと「AKIRA」みたいな世界があるのに……。
 ちゃんと押井 守さんのムービーでも地上世界をパッと見せるようにしていたんですけど,やっぱりキャラクターのほうにばかり目線が行ってしまった。
 支えてくださってるユーザーの期待を裏切るわけにもいかないので,男性キャラの出し方にはとても気を使いましたね。なのでちゃんと出そう,描こうと考えてプロジェクトZEROという形で発表しました。

4Gamer:
 藤原竜也さんを起用されたのも,ファンの年代に合わせた形でしょうか。

今泉氏:
 そうですね。とにかく「誰でも知っている人」というのが1つの勝負所だったので,加えて「アニメっぽい人」かつ,僕は演劇プロデュースもやっていたんで「芝居がしっかりしている人」じゃないと嫌だ。そこで誰だろうと考えて,藤原竜也さんにたどり着いたんです。やってくれるかなと心配しながらオファーを出してみたら,引き受けていただいて。

4Gamer:
 ゼロはレーヴァテインの兄ということですが,これは元々あった設定なんでしょうか。

今泉氏:
 あとから足した設定ですね。地上を描きたいと思ったときに地上世界の構想はあったんですが,じゃあキル姫のルーツをどう描くのかというときに,1個のサンプルとしてあった兄妹愛を交えるのが,すごく印象に残りやすくて分かりやすいと思ったんです。

4Gamer:
 メインヒロインだと思っていたティルフィングがちょっとかわいそうですが。

今泉氏:
 レーヴァテインが1番人気なのもあって意図的な部分はあるんですが,ティルフィングは,地上世界編でもセリフがありますし,重要なストーリーテラーとしての役割を持っていますよ。

4Gamer:
 決してないがしろにされていないようで安心しました。

今泉氏:
 ティルフィングは特別な意味を持つキャラなので,そうじゃないキャラというとレーヴァテインが1番描きやすかったんですね。

4Gamer:
 せっかくですので,「誰ガ為のアルケミスト」のキャラクターもちょっと掘り下げてみたいと思います。あちらも特徴的で,死後の世界から仲間を召喚しているという設定なんですよね。

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今泉氏:
 あの設定もいろいろ考えていて,各ユニットはあの大陸のどの時代でいつ死んだのか,いつ召喚されたのかというのを大切にしています。召喚されるのは,生前の魂レベルが最高だったときの姿なんですが,記憶は最初から最後まで持っていて,自分がどう死んだのか分かっているんです。
 この時代のあの人はある騎士団の団長で,そのライバルがこの人で,ここと戦争してこうなって,どうやって最後を迎えたのか。複数のキャラストーリーからそういう部分が見えてくると,物語が立体的になると思うんですよね。

4Gamer:
 実装が予定されているキャラクタークエストでは,そういった面がより詳しく明らかにされるんでしょうか。

今泉氏:
 はい。主人公を作ってしまった手前,主人公を好きになってしまう人が多くなるので,ほかのキャラクターをどう掘り下げていくかというのが課題としてあります。キャラクタークエストがその役割を担うというのは分かりやすいですし,世界観を補完する意味のあるものになればいいなと思っていますね。

4Gamer:
 性能面でクロエとヴェテルが比べられると,ヴェテルは魔法剣士のジョブがあるから優秀だという話になりがちですが,今後の差別化は考えているんでしょうか。

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今泉氏:
 マスターアビリティなどで個性を出していければと思います。ほかにも,特定のジョブで装備できる「武具機能」というものを先日実装し,装備面でもキャラの個性を引き出せるようにしましたが,これまた波紋を呼んでいます。

4Gamer:
 新しい試みを理解してもらうにはもう少し時間がかかりそうですね。

今泉氏:
 息の長いタイトルにするべく,そういった機能を盛り込んでいるんですが,ユーザーからは短期的に見られてしまいがちです。「誰ガ為のアルケミスト」は,ちょっとガチャゲーっぽくないところもあって,それは良いことなんですけど,事業としてはセールス面の波をつくることも意識しなければならないので,どうしたらいいんだろうと悩んでいます。

4Gamer:
 マルチプレイも非常に魅力的なコンテンツだと思うんですが,こちらが本格的に拡張されるのはもう少し先でしょうか。

今泉氏:
 もちろん僕はギルドやレイドなどいろいろほしいんですけど,武具の実装までが初期の構想で,今はようやく機能が整ってきたところです。どういうのが求められているのかを僕が把握しきれていないのと,不具合やAIがイケてないといった対応すべき点も多いので,これからという感じですね。


「シノビナイトメア」のインスピレーションはアニメから?


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4Gamer:
 3作目の「シノビナイトメア」についても,あらためて詳しくお聞かせください。今作はシミュレーションRPGではなく,ダンジョン探索型RPGなんですね。

今泉氏:
 ドラマを描くにはRPGが1番良いので,そこは外さなかったんですが,中でも戦略性が高いRPGといえば,僕にとってはダンジョン探索型RPGだったんです。ここでアイテムを使って良いのか,ボスまでどれだけ歩かなきゃいけないのか,宝箱を取るのか取らないのか,遠回りするのかしないのか。要は運用ですよね。ダンジョン内でのマネジメントというのがゲーム体験として面白いと思うんです。

4Gamer:
 ローグライク風のRPGという認識で大丈夫そうでしょうか。

今泉氏:
 そうですね。戦いと探索の両方に運用という戦略性があったら面白いよね,という発想から生まれたゲームです。
 スキルを発動させるためのチャクラというリソースが,ギミック満載のダンジョン内に散らばっていて,遠回りしてでも回収するか,最短ルートでボスを目指すかといった判断を求められたり,敵の弱点を突くと有利になるというお決まりのバトル要素を派手に演出したりしています。
 僕は,シミュレーションゲーム,とくに“マス”のあるゲームばかりが好きで,そういった意味では,ローグライクゲームのダンジョンにもマスがありますからね。「シノビナイトメア」は1年以上前から開発しているんですけど,バトルだけではありふれたゲームだったので,ダンジョンという要素を新たに盛り込んでみたんです。

4Gamer:
 今泉さんは,少年時代からゲームに没頭されていた……みたいな人物に見えませんが,わりとコアなところを攻めてますね。

今泉氏:
 でも僕はそんなにゲーマーじゃないと思うんですよね。外でよく遊んでいたし,プレイするゲームも限られていましたし。アニメも「ドラゴンボール」や「ドラえもん」なんかは見ていましたけど,コラボをするために真面目にアニメを見始めたのが,昨年からですもん。

4Gamer:
 雰囲気的にそうなんじゃないかと,正直疑っていました。

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今泉氏:
 dアニメストアに入会して,そこから初めて「化物語」など,いわゆる今風のアニメをいろいろ見始めましたね。「魔法少女まどか☆マギカ」や「PSYCHO-PASS サイコパス」みたいな虚淵さん系とか,あと「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」とか「心が叫びたがってるんだ。」とかも参考になっています。

4Gamer:
 今泉さんから見ても,そういったものは映像作品として面白いんですか。ほら,アニメの面白さって世間一般的には理解されがたいものじゃないですか。


今泉氏:
 いや,面白いですよ。ただアニメの設定も,やっぱりゲームっぽいですよね。

4Gamer:
 昨今はネトゲを題材にしたアニメも多いですよね。

今泉氏:
 多いですよね〜。ビックリしたのが,完璧な主人公像が最初から描かれているんですよね。

4Gamer:
 まさにジェネレーションギャップといったところでしょうか。

今泉氏:
 僕のアイドルは浅倉 南ちゃんなんで,見てないふりしてずっと好きでいてくれみたいな気持ちがあるんですが,やっぱ昭和的なんですよね。カッコいい男性像も冴羽リョウだったりするんで。

4Gamer:
 タガタメのアガサも今風のヒロインではないですもんね。

今泉氏:
 そうなんですよね。作家も昭和の人間ですから(笑)。

4Gamer:
 主人公になびくわけでもなく,自分の信念で動いていますし。

今泉氏:
 やっぱり魔獣やおじさん,イケメンといった男性がいて女性が引き立つというのが王道だと思うんですよね。「ファントム オブ キル」は,女の子ばかりだったんで男性キャラが入ってどう見られ方が変わるんだろうと期待しています。

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4Gamer:
 某アイドルゲームで男性キャラのユニットがお披露目されたときは会場の空気が凍りつきましたが,結果としては成功を収めたと思うので,そういう変化が必要なのかとは思います。

今泉氏:
 「ファントム オブ キル」でもやっぱり最初は皆さん引いてましたよね。「えー,男性キャラがいる。大丈夫なの!」って。

4Gamer:
 とくにファンの声が辛辣だと,胃が痛くなる毎日ですね。

今泉氏:
 そうなんですよ! Twitter(@imaizumijun)とかでも書かれるわけですよ。イベントでファンと撮った記念写真がアップされると,「遊んでるだけで金がもらえるなんて,お前はホントにクズだな」とか言われますが,まあまあ辛いぞこの毎日はと(笑)。

4Gamer:
 はっはっは(笑)。

今泉氏:
 僕なんかは出してるばっかりで枯れていく一方なんで,インプットする時間も必要だなと思いますね。

4Gamer:
 この業界でアウトプット(ゲーム開発)を続けられて大分経ちますが,この業界に飛び込む前と飛び込んだ後でどんなイメージの変化がありましたか。

今泉氏:
 映像制作も辛いですし,ゲームにはまた別の辛さがありますが,ドラマとゲームのものづくりで生まれる過程はある意味一緒だったりするなぁと思うんですよね。シーンやテーマを思いついたときに,こういうシチュエーションでキャラをどう動かして,どういった台詞を発するのかといった部分は共通しているとも言えなくないんです。ただし,ゲームは作って終わりではないので,頭をリセットする瞬間がありません。

4Gamer:
 リリース後も重くのしかかりますね。

今泉氏:
 そうなんです。数学を一日中やったあとみたいに,脳みそがすごく疲れます。チョコがめちゃくちゃ食べたくなりますし。
 でも終わらないからこそ嫌いになれない。置いといたままにしておけないから,あれどうしよう,これどうしようとずっと考えています。


メジャー感がゲームの段階を引き上げる


4Gamer:
 映像とゲームの関わり合いについて,今泉さんはどういったお考えなんですか?

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今泉氏:
 僕自身が映像業界の人間だったから感じる部分もあるんでしょうが,映像における注目度の力というのは,すごいものだと信じています。人間って知りたいものしか知ろうとしないので,能動的に取りに行かなければならないメディアから情報を得られる人って,実は少ないんですね。
 だからIPは分かりやすいんです。たとえばサッカーゲームであれば,「メッシ」のカードはレアだと何となく思いますよね。メッシは現実世界で活躍できている選手だし,メッシのカードを使ってゴールを決めれば,いつかのメッシが現実世界で決めたゴールの風景が頭の中に思い浮かぶじゃないですか。
 それと同様に,「ドラゴンボール」なら「悟空」のカードが強い,そして「親子かめはめ波」のカードはレアで,セルを倒したときのシーンを思い出せる。これは,映像や漫画といった,ゲーム画面以外のところで補完されたものがあるからなんです。

 ストーリーや文脈が存在すれば分かりやすいですが,オリジナルはこういったところから生み出すべきです。ひと目でキャラクターが分かったり,世界観からドラマ性を感じたり,キャッチコピーなども含まれますが,僕がビジュアルに気を使う理由はここにあったりします。

4Gamer:
 おっしゃるとおり,映像の力はゲームにも大きな影響を与えると思います。しかし僕からすると,映像というのは,ニコニコ動画やYouTubeにいいようにやられている印象を受けます。たとえば,テレビというメディアを使うにしても,そんな中でどうやって戦っていくのかが,とても気になっているんです。

コンセプトフィルム完成披露試写会で挨拶を行った藤原竜也さん(関連記事
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今泉氏:
 僕もテレビ業界の人間ではないので好き勝手に言うと,ニコニコやYouTubeってある種のマイナーというか,インディーズ的な文化です。そして人と人とのコミュニケーションや,共演者とのコミュニケーションがコンテンツになっているところがあると思います。
 一方でテレビというのは,メジャー的である種の「これが俺だ」という押しつけができるメディアです。コミュニケーションというよリ,作品という側面があると思っていて,そこが両者の違いじゃないでしょうか。
 コミュニケーションって1つのエンターテイメントだと思うんですけど,それがかつて「月9ドラマを見ていないとクラスで話に入れない」だったのが,今は「同じゲームを遊んでいないとクラスで話に入れない」みたいなことになっている。そうなってしまったのがなぜなのかは,単純な話ですよね。ゲームは時間に縛られないし,いつでもあるからです。
 テレビは,その辺りの対処というのは難しいでは……とは思うんですけど,でもテレビにしか実現できないことは間違いなくあって,たとえばテレビCMとモバイルゲームの相性はすごく良い。やっぱりメジャーなものには強みや価値といったものがあるんですよ。
 今回,「ファントム オブ キル」のプロモーションで藤原竜也さんを起用して,メジャー感が大事だなと僕も強く思いました。藤原竜也さんが出ているゲームというだけで「すげえ!」となるんですよ。この辺をうまく使い分けていくことが,仕事のヒントになっていたりはしますよね。

4Gamer:
 ゲームもエンターテイメントの1つなのに,ドラマや映画に比べるとずっと下に見られがちですよね。これを引き上げてくれるのも,実はテレビなんじゃないかと思っているんです。

今泉氏:
 そうなんですよ。やっぱり,メジャーなコンテンツにすることだと思うんですよね。僕は,ゲームをコミュニケーションツールから1つの作品に引き上げなければと思っています。モバイルゲームからオリジナルコンテンツを生み出すことが使命だと思っていて,僕はそれを狙いたいんです。
 だから世界観はちゃんと作りたいし,ちゃんとしたスタッフで作りたいし,オリジナルにこだわります。アニメなどを通じて知った人から「元々はゲームだったんだ」と言われるような作品にしたいですね。

 モバイルゲーム原作のストーリーって,物語も主人公もユーザーの趣向を狙いすぎていると思います。コンテンツとしてちゃんと成立させて,オリジナルとして広がっていって,今度はこのオリジナルが英語圏の世界で勝つ。それがモバイルゲームの価値というか,日本がステップアップするために必要なことだと思います。マイナーではなく,メジャーにしなければならない。そういった意味ではテレビの力も借りながら,海外に発信できたらいいなと思います。

 でも,これは狙って達成できるものではなく,「当たるかどうか」なんて分かりませんが,「外れないだろう」というものを作り続けて収益を上げる。そして,たまたまヒットしたり,暴風警報で風に煽られてホームランになったりしない限り,大ブレイクなんてのはありえないので,とにかく作り続けることが大事ですね。当てに行って当てたことないですし。

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4Gamer:
 もはや精神力との戦いですね。

今泉氏:
 そうなんですよ。とにかく持久力。「SHIROBAKO」とかには励まされますよね。

4Gamer:
 話が若干脱線しますが,SHIROBAKOのどこに共感されましたか?

今泉氏:
 半年間,ずっと3Dで車輪しか描かせてもらえなかったり,私の未来は夢に近づくのか遠ざかるのか分からなかったりといったシーンがあって,僕も映像業界に居たのですごく共感しましたね。エンディングテーマの,毎日を必死に頑張るしかないみたいなメッセージに「そうだよなぁ」と思ったりもして。

4Gamer:
 ……このままアニメ談義にも華を咲かせたいところなんですが,そろそろお時間のようなので,最後の質問とさせてください。もし3作品とも落ち着いたら,今度はどんなタイトルを作ってみたいですか。

今泉氏:
 僕の作るゲームって,あれだけメジャー感が大事だと言っておきながら,どれもマイナーなんですよ(笑)。なので次は,子供向けのゲームを作ってみたいですね。できれば老若男女が遊べるノスタルジーな作品を作れればいいなと思います。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。


──2016年4月18日収録

「ファントム オブ キル」公式サイト

「誰ガ為のアルケミスト」公式サイト

「シノビナイトメア」公式サイト



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