インタビュー
[TGS 2014]小島秀夫監督が語る「METAL GEAR SOLID V」「P.T.」そして「Silent Hills」。合同インタビューをレポート
今回の東京ゲームショウで小島監督は,KONAMIブースのステージにいたと思ったら,その直後にはソニー・コンピュータエンタテインメントブースでイベントに登壇し,またすぐにKONAMIブースに戻るといった様子。「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」(PC/PlayStation 4/PlayStation 3/Xbox One/Xbox 360)や「P.T.」「Silent Hills」など,話題作に多く関わっていることもあり,大忙しという印象だ。
そんな慌ただしいスケジュールの合間を縫って行われた合同インタビューでは,これらのゲームについて興味深い話を聞くことができたので,その模様をレポートしよう。
小島秀夫氏(以下,小島監督):
バディについては,勘違いされている人もいるかと思います。METAL GEARシリーズはもともと,1人で潜入するストイックなゲームじゃないですか。その中で登場するバディは何なのかというと,「連れて行きたい人は連れて行く」という戦略を選べる要素です。
デモプレイでお見せしたように,連れて行けばサポートしてもらってプレイヤーがおいしいところは持っていくようなプレイもできますし,一緒にガンガン行くこともできます。
とはいえ,あくまでメインは「自由潜入」なので,その手段のひとつとしてバディがあるという感じです。バディを連れて行けるようになるかも,人それぞれですしね。
――バディに出会わないこともあるとおっしゃっていましたよね。
小島監督:
そうです。それと,「クワイエットは味方なのか」とがっかりした人もいると思いますが,(クワイエットが)助けてくれるかどうかもプレイヤーの行動の結果でそうなっているだけです。
――今回は,自由潜入という大きなテーマがあります。そして,オープンワールドのフィールドが採用されている。その中でバディというAIを動かすのは大変なことでしょう。なぜそこまでしてバディを用意したのでしょうか。
小島監督:
(当時も)頑張って作りはしたのですが,変なところでスネークがかっこ悪いローリングをしたりとか,当時のAIはしょぼかったじゃないですか。でも,一緒について来てくれるっていう心強さもあり,やっぱりAIっていうのは,ゲームデザイナーとゲーマーの夢だったんですね。だから,今回もオープンワールドでなんとかできないかと,ずっと実験していました。
とくにMETAL GEARシリーズの場合,潜入しているのにAIが敵に見つかったり,敵を倒そうとしたらAIが勝手に撃ってしまったりすると困る。だから,普通のFPSのようなAIはやめて,先に行って索敵するとか,ちょっと離れたところから狙撃するといった,少し離れた距離感のAIを実装しています。
小島監督:
それは明日(※20〜21日開催のステージ)で分かります(笑)。
クワイエットは,敵か味方か分からないキャラクターとして登場するので,基地では良い扱いを受けていないんです。でも,任務では頑なにプレイヤーを守ってくれます。それに対して,プレイヤーは何かを思うかもしれないし,そんなこと考えずに胸元ばっかり見ているかもしれない。
こういった点で,プレイヤーによって何度も一緒に連れて行きたくなったりして,バディとの付き合い方が変わっていくと思います。
――ちなみに,バディって倒されることはあるんですか?
小島監督:
死にますよ。
――え,負傷してマザーベースに戻るとかではなく?
小島監督:
いえ,死にます。本作はストーリーどおりにリニアに進めるゲームじゃないので,バディがいなくても進行できますから。
――とはいえ,昨日のデモプレイを見る限り,クワイエットはものすごく強そうで,そうそう倒されはしなさそうでしたが……。あの強さなら,バディを連れて行くとゲームはかなり楽になるんですか?
小島監督:
確かに昨日は一緒にどんどん倒していましたが,その結果,任務の評価は「E」でしたよね。これは,敵に見つかり倒しすぎたからで,結局はバディも使い方次第なんですよ。
――なるほど。いくらクワイエットが強くても,ただ戦わせればいいというわけじゃないんですね。
小島監督:
自由潜入といいながら,なるべく見つからない,殺傷しないほうが評価が高いというのは,ちょっと変かもしれないですけどね。でも,どう潜入するか,どう戦うかはプレイヤーの自由ですので。
――あの露出はそういう理由だったんですか?
小島監督:
ちゃんとゲーム中でも理由があります。露出が多いということは,ゲーム中でも皆さんと同じようにキャラクター達が言うんですが,なぜあの格好をしているのかは,ゲームを進めていくと分かるでしょう。
――デモプレイでは,ロボットアームの機能も披露されました。あれはいろいろな種類の腕を装備できるんですか?
小島監督:
ありますよ。マザーベースで開発して,付け替えられます。
――装備やバディの要請は,デモプレイではポイントを消費して行っているように見えましたが,あれは溜めたポイントを使ってミッションを有利にしていたということですか?
小島監督:
そうです。戦争するにはお金が必要ですから。ゲーム中,受注したミッションを達成するとお金がもらえるので,それを使ってマザーベースを拡張したり,新兵器を開発したり,あるいはミッションに必要な輸送機を呼んだりすることになります。
――昨日のステージでは,実際にアフリカに行って取材したとお話されていました。テレビで見るイメージとは違うかもとのことでしたが,実際のアフリカは,どういったものだったんですか?
小島監督:
ただ,だからといってここに分かりやすいランドマークを足して映画っぽい地形にすると,フォトリアルじゃなくなってしまうんですよね。
――今回はオープンワールドのゲームですから,そこはリアルさを重視したのでしょうか。
小島監督:
難しいところですね。映画のセットみたいになると変に見えてしまいますが,ランドマークがまったくないと,どこを歩いているのか分からなくなってしまいます。テストをしてみても,「マップが分かりにくい」という人もいれば,「もっと分かりにくくしてほしい」という意見も出るので,悩みながら作っています。
小島監督:
出どころが分かっていると怖くないんですよ。情報がまったくない,何もわからない,そして何もないからこそ怖いという体験を作りたかったんですが,そのためには,あの手法しかなかったんです。
――ただ,未知の恐怖という意味では,Silent Hillsであることがバレてしまっているわけで,同じやり方は通用しなくなりましたよね。それを踏まえたうえで,Silent Hillsで怖さを求めるにあたって,どういったゲームにしたいとお考えですか?
小島監督:
単純にSilent Hillsのリブートをしても,怖くないですよね。たとえば,「三角頭」が登場するとしても,もはやどんな出現をしても怖いと思えない。あの怖さを超えるなら,冒頭は(今までの)サイレントヒルとは違う展開にするしかないと思っています。
それで驚いて,叫んで,笑ってもらって,「怖いけど,これサイレントヒルじゃないんじゃ?」と思わせて,でもやっぱりサイレントヒルになっていくという構成を考えています。
小島監督:
あの人は何でもしようとしますよ。ちゃんと作りたい人というのか,脚本,デザイン,演出と,全部やりたがるんです。僕もそういうタイプなので,「ここをやるのは俺!」と取り合いになってしまいますね。
――昨日のステージでは,テレビドラマのように何段階かに分けて展開していくとお話していましたが。
小島監督:
ええ。ひとつ考えている手法があるんです。
METAL GEARのようなAAAタイトルは世界中で売れるので,ハイリスクハイリターンではありますが,お金や時間をかけて開発できます。映画でいえば「スパイダーマン」のような作品ですね。でも,そんなことは日本の開発会社ではなかなかできません。
とくにホラーは,お金をかけないで作るジャンルなんです。ハリウッドでもホラーは,5〜10億円で作って400億円ぐらい儲ける。一方アクションの場合は,作るのにお金がかかるし,企画を始めて公開するまでに3〜4年とかかりますから,なかなか企画も立てにくいものです。
そこで,ハリウッドの頭の良い人達は,最近はテレビシリーズをやっているんですよ。1話完結の1シーズン12話で構成を考えておいて,視聴者の反応を見て続けるかどうかを判断する。こうすることで,リスクを回避できます。だから今はテレビに注力していて,映画のクオリティを超える作品が出てきているんです。
――なるほど。
小島監督:
とくにSilent Hillsの場合は,怖くても次が気になるという内容にできれば良いので,こういった展開は向いているんじゃないでしょうか。もちろん,怖いだけでなく,最終的には胸が熱くなるようなゲームを目指して開発していきます。
「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」公式サイト
「P.T.」公式サイト
4Gamer「東京ゲームショウ2014」特設サイト
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- 編集部:御月亜希
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