プレイレポート
これぞ板垣作品の集大成。「Devil's Third」でシューター史上,“もっとも苛烈”な戦闘に酔いしれよ
2010年のE3で発表されてからはや5年……全世界のファンが待ちわびていた本作を,今回,ヴァルハラゲームスタジオにて,板垣氏本人からゲームの特徴を解説していただきつつ試遊するという貴重な機会に恵まれた。
本稿ではソロプレイからマルチプレイまで,実際にプレイして感じられたDevil's Thirdの魅力をお伝えしていくので,ぜひともチェックしてほしい。
「Devil's Third」公式サイト
テロによる電子兵器の壊滅。
戦争は再び歩兵による至近戦の時代へ……
850年の禁固刑で服役していた元テロリストの主人公・アイヴァンは,合衆国からの依頼を受け,かつての仲間が占拠する宇宙基地の奪還を目指して混沌の戦場へと身を投じていく……。
衝撃的だったのが,2014年のE3で公開されたトレイラーに映し出された,主人公・アイヴァンのビジュアルだ。
スキンヘッドにティアドロップのサングラス,全身に描かれた梵字と,不動明王の刺青……およそヒーローらしからぬ,まさしく“怪貌”と称するにふさわしい容姿からは,「ただごとじゃない」オーラが溢れだしていた。
“キャラ立ち”という面で言えば,ここまで印象に強く残る“華”……というか“アク”の強い主人公は,マッチョなヒーロー像をお得意とする洋ゲーでも珍しいレベルだ。
さて,そんなアイヴァンを操作してさまざまなミッションに挑んでいくソロプレイモードだが,ストーリー自体は実に洋画的というかエンターテイメント性に富んだ展開が数多く盛り込まれている。
派手なアクションがお好みなプレイヤーの期待に,徹底的なまでに応えてくれる内容で,ある意味“様式美”的なシーンにさえ「待ってました!」と拍手を送ってしまいたくなる魅力に満ちあふれている。
マルチプレイ対応のシューターにおけるストーリーは,ともすればオマケ的な位置に収まりかねないものだが,本作は全9章構成となっており,板垣氏曰く「俺がプレイしてクリアまでに15時間程度」とのこと。ボリューム面でもなかなか期待できそうだ。
すべての行動がシームレスに繋がる
革新的プレイアビリティ
特筆すべきは,そのアクションの多様性だ。ジャンルとしてはTPSに属するものの,このプレイアビリティはまさに“革新的”と言うほかない。従来のシューターが持つ魅力と欠点を研究,改善したうえで板垣氏の得意とするメレーコンバットを掛け合わせた本作は,全世界のプレイヤーに新鮮な驚きを提供してくれるだろう。とにかく,戦闘において眼前の敵を屠るために取れる手段が,常識ハズレに豊富なのだ。
真っ当に銃で狙い撃つのはもちろんのこと,懐に飛び込んで白兵戦を挑んだり,忍者のように立体的な動きで攻撃を避けながら翻弄したりといったこともできる。走りながら,飛びながら,滑りながら,転がりながら,あらゆる行動をスムーズに攻撃へとつなげられる点は,格闘ゲームにおける“コンボ”の発想に近いように感じられる。これもかつて同ジャンルで一世を風靡した板垣氏だからこそ,完成させることのできたシステムなのだろう。
……思えば筆者が初めて板垣氏のインタビューを担当させていただいた2010年のTGSにて,本作を「もっとも苛烈なシューター」と称していたが,実際にプレイしてその真意をようやく理解することができた。同ジャンルにおいて“苛烈”という表現がこれほど似合う作品は,ほかにない。
ちなみに,板垣氏はこれらのシステムを総じて「RUNE(Real Ultimate Ninja Engine)システム」と呼んでおり,今後はこのシステムのフォロワーが数多く登場し,そうしたものが「RUNEタイプ」などと呼ばれることになるだろうと予言していた。
確かに,そもそもシューターというのは,タイトルによって細かな違いはあれど,突き詰めれば「位置取り」と「エイム」をゲーム性の主軸に据えたジャンルである。自然と裏取りを狙いながら中〜遠距離での射撃で敵を仕留めるのが主なスタイルとなり,多くの場合で近接戦闘はせいぜいナイフで斬る,突くといった補助的な,あるいはテクニカルなプレイヤーの愛好する手段でしかなかった。
……勘違いしないでほしいのだが,決してそれが悪いという話ではなく,それはそれでシューターの一つの完成形として提示されてきたという認識を,筆者は持っている。
しかし,こうして完成されたゲーム性は安定してファンを楽しませる一方で,それ以上の進化を阻む“壁”にもなっていたのではないか。そこへ,ガツンと壁を蹴破って見せたのが板垣氏であり,Devil's Thirdなのだ。
無数のクランが北米大陸の覇権を巡る
群雄割拠のマルチプレイモード
マルチプレイで楽しめるゲームモードは「演習」と「実戦」に分かれており,演習では全10種類のルールでフリーマッチングのオンラインバトルが楽しめる。
シューターではおなじみのチームデスマッチやバトルロイヤルはもちろんのこと,戦場に空輸される「カーゴ」の確保を目指す「カーゴキャプチャー」,近接武器のみを使用して戦う「クロスファイト」,武器を持たずにスタートして戦場に唯一存在する近接武器の入手を争う「グラディエイター」など,非常にバリエーション豊かだ。
激しい演習で倒し倒されることに疲れたら,地中を移動する巨大ミキサーにフルーツを投げ込んで点数を競うレクリエーション的なルール「カーニバル」で息抜きをするのも良いだろう。なんだそりゃ!
筆者も実際にいくつかのルールを体験することができたが,中でも絶妙なバカバカしさと意外に奥深い競技性が両立しているカーニバルは,仕事を忘れるほど大笑いしながら遊んでしまった。コワモテなビジュアルからは想像できないほどお茶目な面も持ち合わせている板垣氏だが,さすがにこの発想は「どうかしてる」(もちろんいい意味で)。
クロスファイト |
グラディエイター |
クランの最高権力者である「ジェネラル」としてプレイする場合,戦略シミュレーションゲームよろしく,13の地域に分けられた北米マップから好きな地域を選んで自身の設計した「要塞」を建造できるのが大きなポイント。自軍の拠点を防衛しつつ敵勢力の要塞攻略戦を行い,勝利して勢力が大きくなればなるほど占領地域から得られる定期収入が大きくなっていく。そうやって資金を得ることで,さらなる要塞の強化建造,さまざまな支援兵器の導入が可能となるなど戦略の自由度が増していくわけだ。
なお,要塞攻略戦は敵施設の大半を破壊するか,司令部を破壊した時点で勝利となる。逆に自軍の要塞が攻められて施設を破壊された場合は,修復に資金が必要となるので注意が必要。壊し壊されを繰り返し,どちらかが完全に屈服するまで戦いは続く……と,思いきや。なんと,本作には「外交」や「プロパガンダ」の要素まで含まれているというのだから驚きだ。
軍事同盟や不戦協定を結ぶことで,クランを運営する者同士の精神的な駆け引きまで楽しめるほか,戦闘中にビラを巻いて敵兵士を自身のクランへ勧誘することもできる。また,システム的にフォローされているわけではないが,板垣氏曰く「やろうと思えば敵勢力に潜り込んでのスパイ行為も可能」とのことである。
さて,本作における戦闘が一般的なシューターとは一線を画していることについては前述したとおりだが……実のところ,対人戦を行うマルチプレイでこそRUNEシステムはその本領を発揮する。
プレイヤーのセンス次第で千変万化する苛烈なバトルにコントローラーを握る手は汗ばみ,濁流のように押し寄せるアドレナリンに酔いしれる感覚はあまりにも甘美だ。そして,「ただ殺す」のではなく「どう殺す」かが常に問われるあたり,Devil's Thirdは板垣氏の“戦い”に対する美学が詰め込まれた,集大成的作品であると断言したい。
いざ,シューター史上
もっとも苛烈な戦場へ
そして何より,インタラクティブなエンターテイメントであるデジタルゲームにおいて,もっとも重要な“遊びごたえ”の面で言えば,本作はWii Uタイトルの中でもかなり上位に位置する作品であろうと筆者は確信している。
我々は5年待ち,ついにヴァルハラの門は開いた。いざ,シューター史上もっとも苛烈な戦場へと赴こう。
「Devil's Third」公式サイト
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