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GIGABYTE「AORUS GeForce RTX 2080 XTREME 8G」レビュー。大型クーラー搭載のゲーマー向けカードは総合力の高さが見どころだ
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印刷2019/02/16 00:00

レビュー

大型クーラー搭載のゲーマー向けカードは総合力の高さが見どころ

AORUS GeForce RTX 2080 XTREME 8G

Text by 宮崎真一


 今回取り上げる,GIGA-BYTE TECHNOLOGY(以下,GIGABYTE)製の「GeForce RTX 2080」(以下,RTX 2080)カード「AORUS GeForce RTX 2080 XTREME 8G」(型番:GV-N2080AORUS X-8GC,以下 AORUS RTX 2080 XTREME)は,その名のとおり,GIGABYTEが展開するゲーマー向け製品ブランド「AORUS」(オーラス)の新作だ。

AORUS GeForce RTX 2080 XTREME 8G
問い合わせ先:CFD販売(販売代理店) 050-3786-9585(平日10:00〜12:00,13:00〜18:00)
実勢価格:11万〜13万3000円程度(※2019年2月16日現在)
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 「Founders Edition」の北米市場におけるメーカー想定売価が699ドル(税別)のところ,国内では税込12万〜13万5000円程度という価格で搭載カードの販売が始まったRTX 2080だが,その後,店頭価格は少しずつ下がってきた。2019年2月中旬現在の中心価格帯は10万3000〜11万5000円程度だが,ブランドや仕様にこだわらなければ9万円台前半から半ばで購入することも不可能ではなくなってきているという状況である。

 その中にあって,AORUS RTX 2080 XTREMEの実勢価格は11万〜13万3000円程度(※2019年2月14日現在)。安価なショップでは中心価格帯での購入が可能になってきた選択肢というわけだが,さて,その価値はどこにあるのか。テストを通じて詳しくチェックしていきたい。


実測30cm弱長のカードを大型クーラー「WINDFORCE STACK 3X」で冷却するAORUS RTX 2080 XTREME


カード長は300mm弱といったところ
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 AORUS RTX 2080 XTREMEのカード長は実測で約294mm(※突起部除く)。RTX 2080のFounders Editionは同267mmだったので,それと比べると30mm近く長い。
 さらに,マザーボードへ装着したとき垂直方向へブラケット部から約16mmはみ出ており,さらにクーラーも3スロット仕様となるため,端的に述べてかなり大きなグラフィックスカードということになる。

カードは長いだけでなく,“幅”と“高さ”もかなりのものだ
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カードの表面と裏面。NVLinkインタフェースがあるところは,NVLinkブリッジに干渉しないよう,GPUクーラーが少し削れたデザインになっている。カード背面側の補強用兼放熱用金属プレート部には光るAORUSロゴマークもあった
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 実測重量は約1120gと楽に1kg超え。これだけ重いとマザーボードに装着したときにスロットへかかる負荷が大きくなってしまうということなのだろうが,AORUS RTX 2080 XTREMEの製品ボックスには標準で「支え棒」となるカードホルダーが付属している。組み立て式の簡単なものだが,ないよりはあったほうがいいに決まっているわけで,これはありがたい。

カードホルダーは組み立て式の簡単なものだが,意外としっかりしている。長期使用を見据えるとかなり重宝するアイテムだ
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WINDFORCE STACK 3Xのメリット。100mm角相当のファンを3基搭載しながらカードの全長を300mm以下に抑えられ,かつ冷却能力は向上するという
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 カバー部がかなり独特な3スロット仕様のクーラーには,「WINDFORCE STACK 3X」の名前が付いている。STACK系のWINDFORCEクーラーは,直径の大きなファンを重ねて配置することで,エアフローが及ばない部分を最小化し,一般的なファン配置と比べて最大2倍の冷却能力を実現するというのがそのコンセプトだが,今回のWINDFORCE STACK 3Xだと,100mm角相当のファンを3基採用したうえで,中央のファンを残る2基よりも一段低いところへ配置して一部のブレードを重ねる実装だ。

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中央のファンを逆回転させることで,エアフローを整える効果を生むことができ,高い冷却能力につなげているという画像
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中央のファンは残る2基と重ならないよう,一部が削れたような形状だ。両端のファンは1枚置きに羽の中央に光沢処理がライン状に入っている。パイプのようなものも見えるが,これについては後述

AORUS ENGINE。ファン回転数の制御以外に,動作クロックの設定,動作クロックおよび電圧のモニタリングなどを行える。右下に並んだアイコンの一番上が「Semi Passive」になっている状態だとセミファンレス動作になる
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 3基のファンはGIGABYTEが「3D Active Fan」と呼ぶ,いわゆるセミファンレス機能に対応しており,標準ではGPUの温度が55℃以下のときにファンの回転を止める仕様になっている。
 ただし,専用のユーティリティソフトウェアである「AORUS ENGINE」を導入すれば,「FAN SPEED」メニューからファンの挙動は弄れる。工場出荷時設定である「AUTO」から「MANUAL」に変更すると回転数をスライドバーから1刻みで40〜100%に固定可能。また「CUSTOMIZED」を選択すれば,温度と回転数の関係を示すグラフ上をクリックすることで,温度条件ごとのファン回転数を指定できる,といった具合である。

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AORUS ENGINEの右下部最上段の3D Active Fanアイコンをクリックして「Active Fan」に変更する,ファンが常時回転し続けるようになる
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AORUS ENGINEのFAN SPEEDスライダーからファンの回転数を60%固定に指定したところ
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CUSTOMIZEDから折れ線グラフを表示させると,それこそファンが回転を始める温度を48℃以上にする,なんてことも可能だ

搭載する3基のファンでは,ブレードの1つにLEDが埋め込んである
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 なお,WINDFORCE STACK 3Xでは,ファンの中央部とファンブレード,GIGABYTEロゴ,そしてエジプト神話に登場する神「Horus」(ホルス)に由来するAORUSロゴのところにLEDが埋め込んであり,その光り方や色は専用アプリケーション「RGB Fusion 2.0」から制御できる。
 ファンブレード部のLEDは,ファンごとに1本ずつ用意されており,これが外周部にあるリング状のイルミネーションを実現する仕掛けだ。

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LEDを制御するRGB Fusion 2.0。ちなみに同アプリケーションを起動すると,工場出荷時設定の光り方に戻せなくなる。工場出荷時設定はDAZZLINGに近い光り方だが,若干異なっており,このあたりは改善を望みたい
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ちなみにこちらが工場出荷時設定における光り方。色は橙だ
 バージョンB19.0116.1で確認した限り,光り方は,

  • 常時点灯となる「STATIC」
  • ゆっくり明滅する「PULSE」
  • 速く点滅する「FLASH」
  • 2回の点滅を繰り返す「DOUBLE FLASH」
  • 色が順繰りに切り替わる「COLOR CYCLE」
  • ファン外縁部の3か所がライン状に光り,それが回転しているように見える「CLAWS」
  • 左のファンから順に色が変化していく「COLOR SHIFT」
  • ファン外縁部が6つのラインに分かれ,それが回転する「DAZZLING」
  • 色を2つ指定するとそのグラデーション状に光る「GRADIENT」
  • ファン外縁部が7色に虹色に光る「RAINBOW LOOP」
  • 3色のグラデーションで光る「TRICOLOR」
  • 中央のファン外縁部は虹色で光り,残る2基のファンは順次色が変わる「WAVE」

の計12とおり。色はカラーチャートもしくはRGB値か16進数のカラーコードで約1677万色から設定可能だ。ちなみに3D Active Fanでアイドル時にファンの回転が停止した場合,ファンのLEDも消灯する――それ以外のLEDは設定どおり光り続ける――仕様となっている。

左はDAZZLINGに設定した例。右は背面のAORUSロゴ部で,色は設定に連動するのだが,点滅(≒暗転)は非対応だった
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こちらはSTATICで赤(左),緑(中央),青(右)と色を変更したところ
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補助電源コネクタの配置
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外部出力インタフェース。「A1」「A2」とあるブロックは上段か下段のどちらかにケーブルを差すともう片側が無効になる仕掛けだ。切り換えるときはPCの再起動が必要になる
 補助電源コネクタは8ピン×2構成で,8ピン+6ピン仕様だったFounders Editionからは電源供給量の強化が見られる。なお,補助電源コネクタは,マザーボードに装着したときの垂直方向を向いた実装だが,一段奥まったところの配置となるため,カードの横幅に対応できるPCケースであれば,補助電源ケーブルはほぼ問題なく取り回せるはずだ。

 外部出力インタフェースはDisplayPort 1.4a×3,HDMI 2.0b Type A×3,USB 3.1 Gen.2 Type-C×1という構成。Founders EditionからHDMIが2つ増えた格好だが,同時に利用できるのは,

  • DisplayPort×1+HDMI×3+USB×1
  • DisplayPort×3+HDMI×1+USB×1

のどちらか5系統までになるので,その点は注意してほしい。


GPU以外の冷却にも注力したWINDFORCE STACK 3Xクーラー。電源部は12+2フェーズの豪華な作り


 グラフィックスカードのクーラーを取り外すのはメーカー保証外の行為だが,今回はレビューのため特別に取り外してみよう。

GPUクーラーを取り外したところ。GPUとメモリチップ,電源部と各デバイスをしっかりと冷却する設計は好印象だ
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 すると,6mm径のヒートパイプ7本がGPUのダイに直接触れるような構造が見て取れる。厳密には両端の2本だとGPUのダイと完全に触れていないが,中央の5本は完全に触れる仕様だ。ヒートパイプが,2か所ある放熱フィン部へ熱を運ぶようになっているのも分かるだろう。
 また別途,メモリチップおよび電源部の熱を熱伝導シート経由でヒートシンクで受け,それらの熱も放熱フィンへ運ぶ仕様なのも確認できる。

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金属板のところにも熱伝導シートが貼ってあった。メモリチップの熱を受けているようだ
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GPUクーラーのカバーを取り外してみたところ。ファン中央部のLEDユニットがどうなっているかを確認できる
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クーラー本体を真上から。ヒートパイプの流れと,放熱フィンがかなり複雑なデザインであることが分かる

 続いて基板だが,電源部は12+2フェーズ構成。RTX 2080のFounders Editionは8+2フェーズ構成なので,電源周りにはかなりの強化が入っていると言っていいだろう。

基板のGPUパッケージ実装面とその背面。前者には多くのデバイスがひしめきあっており,後者にも少なくない部品が載っている。なお,右の写真で左下に見える接続端子はAORUSロゴを光らせるLED用のものである
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 その電源部には,フェーズごとにMOSFETとドライバICを1パッケージにまとめたON Semiconductor製「FDMF3170」を採用。このFDMF3170は,電流および温度センサ機能も搭載しているので,いわゆるDrMOS(Driver MOSFET)な存在だと紹介して差し支えない。
 なお,電源部に搭載されるコンポーネントは,すべてGIGABYTE独自の品質規格「Ultra Durable」に準拠する,高品質なものだそうだ。

12+2フェーズ構成の電源部。「GeForce RTX 2080 Ti」のFounders Editionの電源部が13+2フェーズ構成だったので,電源部の規模においてはそれに迫るレベルということになる
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基板の背面側には,電圧および電流のモニタリング用チップであるON Semiconductor製「NCP45491」(左)や,導電性高分子タンタル固体電解コンデンサ(中央),整圧用チップとして機能するGreen Solution Technologyの「GS9216」2基(右)などを実装していた
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 搭載するメモリチップはMicron TechnologyのGDDR6「MT61K256M32JE-14」(チップ上の刻印は「8RA77 D9WCW」,14Gbps)。8Gbit品なので,8枚搭載することでメモリ容量8GBを実現している。

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MT61K256M32JE-14メモリチップ。GDDR6だ
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RTX 2080 GPU。刻印は「TU104-400A-A1」だった


ブーストクロックは1890MHz。NVIDIA Scannerも利用可能


 AORUS RTX 2080 XTREMEは,メーカーレベルで動作クロックの引き上げられた,いわゆるクロックアップモデルである。ベースクロックは未公開ながら,ブーストクロックは1890MHzと,リファレンスの1710MHzから180MHz,Founders Editionの1800MHzと比べた場合は90MHz高くなっている。
 一方のメモリクロックは14140MHz相当。先ほど搭載するGDDR6メモリが14Gbps対応だとお伝えしたが,つまりは若干のクロックアップ仕様というわけだ。

NVIDIAコントロールパネルから動作クロックを確認したところ。ブーストクロックが1890MHz,メモリデータレートが14.14GHzとなっている
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AORUS ENGINEで動作クロックを追ってみると,テスト中に2GHzを超えている場面が多々見られた
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 ちなみに後述するテスト環境において,テスト中におけるAORUS RTX 2080 XTREMEの動作クロックをAORUS ENGINE(Version 1.52)から追ってみると,最大では2010MHzに達していた。工場出荷時設定のままで動作クロックが2GHz超に達するというのはなかなかインパクトがある。

 また,Turing世代で新たに実装されたオーバークロック最適化機能とも言える「NVIDIA Scanner」(以下,Scanner)は,AORUS ENGINEから利用できる。
 AORUS ENGINEのブーストクロック調節項目である「GPU BOOST」にある[AUTO SCAN]をクリックするとScannerが立ち上がり,クロックの最適化が入る仕様だ。
 このGPU BOOSTでは,「MANUAL」からスライドバーを操作することで,−1000MHzから+1000MHzまで1刻みでブーストクロックを調整することもできる。ちなみに直下の「MEMORY CLOCK」ではメモリクロックも10140MHz相当〜26140MHz相当の範囲を2刻み,「GPU VOLTAGE」ではGPUのコア電圧を現在の電圧に対する%表記で0〜100%の範囲から1刻みで調整可能だった。

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Scannerを実行すると,コア電圧と動作クロックの自動最適化が入る。ただ,工場出荷時設定はグラフに表示されないので,実際どの程度向上したかは分かりづらい
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動作するかは別として,ブーストクロックは最大で2890MHzに設定することが可能だった


Founders Editionとの性能差を確認。Scanner実行後の状態でも検証してみる


 テスト環境を紹介していこう。
 今回,比較対象にはRTX 2080のFounders Editionを用意。つまり,大型クーラーの採用とクロック引き上げを行ったAORUS RTX 2080 XTREMEに,事実上のNVIDIAリファレンスカードと比べてどの程度の性能を期待できるか確かめてみようというわけである。
 また,工場出荷時状態でScannerを実行した状態でのテストも実施することにした。簡単に利用できるScannerの効果も見ておきたかったからだ。

 テスト環境はのとおり。用いたグラフィックスドライバは,テスト開始時点の最新版となる「GeForce 417.71 Driver」となる。
 OSのWindows 10には「October 2018 Update」を適用したうえで,とくに断りのない限り,「電源プラン」は「高パフォーマンス」を選択し,最も高い性能を発揮できるようにしている。

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 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション22.1準拠。RTX 2080がハイエンド市場向けということもあり,テスト解像度は3840×2160ドットと2560×1440ドット,1920×1080ドットの3つを選択した。


Founders Editionとのスコア差はあっても2%程度。Scannerの効果も限定的


 以下,グラフ中に限り,AORUS RTX 2080 XTREMEを「GBT 2080 XTREME」,AORUS RTX 2080 XTREMEへScannerを実行した状態を「GBT 2080 XTREME SOC」,RTX 2080のFounders Editionを「RTX 2080 FE」と表記することを断ったうえで,「3DMark」(Version 2.7.6296)の結果から順に見ていこう。

 グラフ1は「Fire Strike」における総合スコアをまとめたものだ。AORUS RTX 2080 XTREMEとRTX 2080 Founders Editionのスコア差は最大で約2%といったところになる。
 前述のとおり,GPUのブーストクロックはAORUS RTX 2080 XTREMEが1890MHzなのに対してRTX 2080 Founders Editionが1800MHzなので,その差は90MHz。メモリクロックにも大差はないため,そこまで劇的な違いにはなっていないというわけだ。なお,工場出荷時設定に対してScannerを実行した効果は無視できるレベルだった。

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 Fire Strikeの総合スコアから,GPUテスト「Graphics test」のスコアを抜き出したものがグラフ2となる。
 AORUS RTX 2080 XTREMEとRTX 2080 Founders Editionのスコア差はここでも最大で約2%なので,総合スコアを踏襲する格好となった。Scannerのスコアに与える影響がほぼないことも確認できる。

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 次にグラフ3はFire Strikeの総合スコアから「CPU test」の結果を抜き出したものだが,今回のテストにおいてはCPUを揃えているため,スコアもきれいな横並びとなっている。

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 やはりFire Strikeから,GPUとCPUの双方に負荷をかける「Combined test」の結果がグラフ4だが,ここでもAORUS RTX 2080 XTREMEとRTX 2080 Founders Editionとのスコア差は最大約2%となった。Scanner実行時のスコア向上が工場出荷時設定比でプラス1%なのも変わらずだ。

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 では,DirectX 12のテストでは何か変わるだろうか。3DMarkから「Time Spy」の総合スコアをまとめたものがグラフ5だが,AORUS RTX 2080 XTREMEとRTX 2080 Founders Editionとの差は約1%と,さらに詰まった。
 ただその一方で,Scannerを実行するとスコアは工場出荷時設定に対して1〜2%程度高くなった。わずかながらも,Time SpyのほうがScannerによるクロック引き上げの効果は大きく出ているわけである。

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 グラフ6はTime SpyにおけるGPUテストの結果を抜き出したもので,ここだとAORUS RTX 2080 XTREMEとRTX 2080 Founders Editionとのスコア差は最大約%にまで広がっている。また,Scannerの効果はとくに描画負荷の低い条件で大きめに出ており,AORUS RTX 2080 XTREMEの工場出荷時設定だとTime Spy“無印”でRTX 2080 Founders Editionと横並びになってしまうところ,Scanner実行時は約2%高いスコアを維持できたのも見てとれよう。

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 Time SpyのCPUテスト結果をまとめたグラフ7だと,Fire Strikeのそれと同様,CPUを統一しているため,スコアに違いは生じていない。

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 ここからは実際のゲームアプリケーションを用いた比較に移ろう。
 グラフ8〜10は「Far Cry 5」のテスト結果だ。ここでは2560×1440ドット以下でAORUS RTX 2080 XTREMEがRTX 2080 Founders Editionの平均フレームレートを若干下回ってしまった。
 どうしてこうなったかは正直分からないのだが,解像度が上がるとスコアが揃うことを考えると,描画負荷が低めの条件だとブーストクロックの入り方にブレが大きくなって,結果,スコアが低くなったのではないかと考えている。Scannerの実行によってブーストクロック周りの挙動を最適化すると,RTX 2080 Founders Editionと比べて1〜3%程度高い平均,そして最小フレームレートを示せるようになったのが,その根拠だ。

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 続いてグラフ11〜13は「Overwatch」の結果だが,本作はゲームの仕様上,フレームレート300fpsが上限となるため,1920×1080ドットではスコアが頭打ちになってしまっている。
 そこで今回はそれ以上の負荷条件で比較していくことになるが,AORUS RTX 2080 XTREMEはRTX 2080 Founders Editionに対して平均フレームレートで約3%高いスコアを示し,Scannerを実行するとそこからさらに1〜2%程度高くなり,最大で約6%のスコア差を付けるに至った。Far Cry 5と同じく,Scanner実行時は最小フレームレートの向上率も大きめだ。

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 グラフ14〜16の「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)では,負荷の高まりに応じてAORUS RTX 2080 XTREMEとRTX 2080 Founders Editionのスコア差が開いていく。1920×1080ドット条件ではCPUの相対的なボトルネックによりほぼ横並びとなるところ,3840×2160ドット条件だとAORUS RTX 2080 XTREMEの工場出荷時設定はRTX 2080 Founders Editionに対して平均フレームレートで約7%高いスコアを示す。さらに,最小フレームレートだと大差ないのだが,Scannerを実行するとここが伸びるといった具合である。

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 「Fortnite」の結果がグラフ17〜19だが,ここでのスコア傾向はどちらかといえばOverwatchに近い。AORUS RTX 2080 XTREMEとRTX 2080 Founders Editionの平均フレームレートほぼ横並びだが,Scannerを実行することで,平均,最小フレームレートともRTX 2080 Founders Editionとの間でスコア差が開いていく。

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 グラフ20〜22は「Middle-earth: Shadow of War」(以下,Shadow of War)のテスト結果だが,ここでのスコアはFortniteのそれに近い。AORUS RTX 2080 XTREMEとRTX 2080 Founders Editionはほぼ横並びで,Scanner実行後のAORUS RTX 2080 XTREMEでは平均フレームレートが約4%,最小フレームレートが1920×1080ドット条件で約3%上がった。

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 グラフ23は「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)の総合スコアをまとめたものだが,ここだとAORUS RTX 2080 XTREMEはRTX 2080 Founders Editionに対して1〜2%程度高いスコアを示す一方,Scannerの効果は工場出荷時設定に対して1%未満といった具合になった。3DMarkに似たスコア傾向とまとめることができるだろう。

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 そんなFFXIV紅蓮のリベレーター ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものがグラフ24〜26となる。
 ここで興味深いのが,3840×2160ドット条件でAORUS RTX 2080 XTREMEの最小フレームレートがRTX 2080 Founders Edition比で約6%,Scanner実行後のAORUS RTX 2080 XTREMEがRTX 2080 Founders Editionに対して平均フレームレートで約4%,最小フレームレートで約9%高いスコアを残したところだ。とくに最小フレームレートの約9%というのは――わずか3fpsではあるものの――相応に意味のある違いと言えるのではなかろうか。

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 グラフ27〜29は「Project CARS 2」のテスト結果だが,ここでAORUS RTX 2080 XTREMEとRTX 2080 Founders Editionの間には平均フレームレートで0〜3%程度,最小フレームレートで3〜6%程度のスコア差が生じている。Scannerを実行すると,とくに平均フレームレートへプラスの影響が出ている点も押さえておきたい。

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消費電力は上がっているが,温度や静音性の観点では扱いやすい


 AORUS RTX 2080 XTREMEはメーカーレベルのクロックアップモデルであるだけに,Founders Editionと比べて消費電力がどれだけ上がっているかというのはやはり気になるところだ。そこで,「4Gamer GPU Power Checker」(Version 1.1)を用い,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ実行時におけるカード単体の消費電力推移をまとめてみることにした。

 テスト結果はグラフ30のとおりだ。グラフ画像をクリックすると横に引き伸ばしたものを表示するようにしてあるので,ぜひそちらも合わせてチェックしてもらえればと思うが,Founders Editionの場合,350Wを超えるケースが5回だけで,400Wに達することはまったくないのに対し,AORUS RTX 2080 XTREMEは工場出荷時設定で350W超えが19回を数え,400Wを超える局面も1回生じた。クロックアップ,そして豪華な電源部の採用を考えるに,やむを得ないトレードオフといったところか。
 なお,NVIDIA Scannerを実行してブーストクロックを最適化すると,350Wを超える場面は25回を数えた。消費電力が増えているのは明白だ。

※グラフ画像をクリックすると拡大版を表示します
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 グラフ30におけるスコアの中央値をまとめたものがグラフ31である。AORUS RTX 2080 XTREMEとRTX 2080 Founders Editionのスコア差は約9Wで,消費電力は確実に上がっていることが窺い知れよう。
 なお,Scannerを実行しても中央値はさほど上がっていないことからは,Scannerによる消費電力の増大があくまでもピークのほうを左右しており,中央値への影響はそれほど大きくないことを確認できる。

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 念のため,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いてシステム全体の最大消費電力も計測したものが,グラフ32である。
 ここでのテストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。さらにゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。

 結果はグラフ32のとおりだ。ピークを取得するこのテストでは4Gamer GPU Power Checkerでのテストと比べてスコア差が広がるのだが,ただ,それでもScanner実行時の消費電力は2〜7W程度しか増えていない。Scannerを実行することのデメリットはほぼないと言っていいのではなかろうか。

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 GPU温度を通じて,GPUクーラーの冷却性能も確認しておきたい。ここでは,温度約24℃の室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,「GPU-Z」(Version 2.16.0)から温度を取得することにした。
 AORUS RTX 2080 XTREMEとRTX 2080 Founders Editionとでは,温度の制御法もGPUクーラーも異なるため,横並びの評価に意味はない。それを踏まえたうえでグラフ33を見ていくと,AORUS RTX 2080 XTREMEのWINDFORCE STACK 3Xは高負荷時でも73℃と,RTX 2080というGPUの温度をしっかり抑え込んでいるのが分かる。キーワードてんこ盛りのWINDFORCE STACK 3Xクーラーだが,その冷却能力は優秀だと言い切ってしまっていいだろう。
 なお,アイドル時の温度が高めなのは,3D Active Fanが有効になっていてファンの回転が止まるためだ。

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 最後にWINDFORCE STACK 3Xの動作音を確認しておきたい。今回はカードに正対する形で30cm離した地点にカメラを置き,アイドル状態で約1分間放置した後,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチを約4分間実行したときの様子を,合計約5分の動画にまとめることにした。

 その結果が下のムービーだ。最初の1分間はファンが停止しているため,聞こえる音はCPUクーラーや電源ユニットなどによる環境音のみとなる。
 そしてその次が要注目なのだが,ベンチマークを実行しても,ファンが回転を始めるまで40秒以上かかるのだ。前述したように,ファンはGPUの温度が55℃を超えないと回転しない。つまり,それだけ7本のヒートパイプがGPUの熱を十分に逃がしており,温度が上がりにくいということなのだろう。
 そして,ファンが最高回転数に達するベンチマーク実行3分後(=ファイル冒頭から4分後)では,それなりの動作音が聞こえるものの,その音量レベルは小さい。PCケースに入れてしまえばまったく聞こえないと言っていいレベルで,非常に静かなクーラーと言ってしまって構わない。



「見た目どおりの圧倒的な性能」に期待は禁物ながら,RTX 2080カードとしての総合点は高い


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 以上,AORUS RTX 2080 XTREMEを見てきた。メーカーレベルのクロックアップモデルであり,かつその大仰な見た目もあって,圧倒的に高い性能を期待する読者も多いと思われるが,残念ながらその点に過度の期待は禁物だ。Scannerの実行によってブーストクロックの最適化を図ることはでき,その効果も多少は得られるが,それでも違いを体感するのは難しいだろう。
 自己責任でブーストクロックを弄るなら,そういうときに効果の大きくなるScannerと組み合わせることでまた別のシナリオはあるかもしれない。しかし,「ゲームで長時間使っていく」前提に立ったとき,手動でのオーバークロックにリスクがあることを体験的に知っているであろうゲーマーに,自己責任の行為をお勧めできるかと問われれば,ノーと言わざるを得ない。

 その点において,AORUS RTX 2080 XTREMEの見どころというのは,大がかりな電源周りがもたらす安心感と,大がかりなクーラーがもたらす高い冷却能力と静音性,そしてかなり柔軟にカスタマイズできるLEDイルミネーション周りということになるはずだ。

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 冒頭でも触れたとおり,AORUS RTX 2080 XTREMEの実勢価格は11万〜13万3000円程度(※2019年2月16日現在)と,ショップを選べばRTX 2080搭載カードの中心価格帯で購入できるようになってきた。GIGABYTEは独自の4年保証も提供しているので,長く使えて質が良く,見た目も派手なRTX 2080カードを探しているのであれば,AORUS RTX 2080 XTREMEは一考の価値があるとまとめたい。

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