インタビュー
「デモンゲイズ2(仮)」の開発がスタート。前作の大きな壁に続編でどう立ち向かうのか,角川ゲームスとエクスペリエンスのキーパーソンに聞いた
その情報を入手した4Gamerでは,さっそく角川ゲームスに乗り込み,「デモンゲイズ2(仮)」はどんなゲームになるのか,開発進捗はどうなっているのかなど,現在分かっていることについて,角川ゲームスの安田善巳氏,エクスペリエンスの千頭 元氏および安宅元也氏の3名にあれこれ聞いてきた。
「デモンゲイズ Global Edition」公式サイト
角川ゲームスとエクスペリエンスが共同開発する意味をきちんと出したい
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。今回は,すでに開発に着手しているという「デモンゲイズ2(仮)」についてお聞きしたいと思うのですが,実際,どのくらいまで進捗しているのでしょう。
今は,どのくらいの規模感にしようか,どこをターゲットにするのかといった,そもそもの部分を決めている段階ですね。と言うのも,前作の「デモンゲイズ」でかなりプレイヤー層が広がったので,今回の取り組みは,エクスペリエンスとして初めてと言っていい大きな展開へのチャレンジになるからです。より多くの方に楽しんでいただくにはどうすればいいのか,今まさに悩んでいるところですね。
もちろん,「こんなことをやりたい」という細かい項目は,たくさんリストアップしていますよ。
安宅元也氏(以下,安宅氏):
「デモンゲイズ2(仮)」の開発は,これまで以上に慎重に進めている感じがありますね。前作は,ダンジョンRPGのコアなファンだけでなく,より多くの人達にプレイしていただけました。そういった方の声を活かして,さらにプレイヤー層を広げるにはどうすればいいのかと考えると,やはり悩みます。
安田善巳氏(以下,安田氏):
前作は,角川ゲームスとエクスペリエンスさんとで「RPGの面白さはどこから生まれるのか」を考えるところからスタートしたんです。その結果,いいゲームに仕上がるだろうという感触があり,実際にそのとおりになりました。
今回は,その前作がライバルになりますし,この2社で共同開発するという事自体が大きな話題になりましたから,今回もそういった驚きを提供したいですよね。ですから,正統進化というだけでなく,プラスαで我々が一緒に開発している意味をきちんと出していきたいです。
4Gamer:
「デモンゲイズ」の続編を作るという話は,いつ頃から出ていたのですか。
千頭氏:
話自体は,前作の発売直後からしていました。ただエクスペリエンスも角川ゲームスさんも企業ですから,当然,ほかのプロジェクトが並行して進行しています。その中で,ようやく実現できそうだというタイミングが訪れたわけです。本格的に話を詰め始めたのは,2014年の初めになってからですね。
4Gamer:
分かりました。
それでは,角川ゲームスとエクスペリエンスが再び共同開発に取り組むことになった経緯について,あらためて教えてください。
安田氏:
まず個人的な話をすると,千頭さんや安宅さんとお話していると,ゲームに対する考え方が僕自身に近いということを感じていました。
4Gamer:
どんなところが近いのでしょう。
お二人にも僕にも,「ゲームというのは楽しく遊べてナンボ」という考えがあります。少し具体的に申しますと,探索と冒険,戦闘とパラメータのマネジメントがゲームの最大の面白さであり,その部分をしっかり作っていこうと意識して作ったのが「デモンゲイズ」でした。
今から思えば,「デモンゲイズ」の前に角川ゲームスでリリースした「円卓の生徒 The Eternal Legend」の時点で,もう我々の方向性は決まっていましたね。エクスペリエンスさんの「円卓の生徒」(PC/Xbox 360)をどうやってパワーアップし,より良い形にしていくかを一緒に考えたんです。走り幅跳びでいえば,ちょうどそこが踏み切りのタイミングだったと言えるでしょう。
4Gamer:
そして「デモンゲイズ」で大きく飛躍したと。
安田氏:
ええ。そして今,その「デモンゲイズ」が大きな壁として立ちふさがっているわけです。ともあれ今回の取り組みでは,エクスペリエンスさんがこれまで丁寧に作ってこられたゲームをきちんと要素に分解し,どう組み立て直していくのか,あるいは開発チームとしての得意不得意を踏まえて,どうパワーアップするかといったことなどを検証していきます。
ストーリーを前作から引き継ぐか,同じ世界の新しい冒険を描くか
4Gamer:
それでは「デモンゲイズ2(仮)」の内容についても教えてください。今のところ,ストーリーや世界観はどのくらい決まっているのでしょうか。
千頭氏:
ゲームの続編には,前作のストーリーを引き継ぐケースと,世界観は地続きだけれど,ストーリーはまったく別というケースがありますよね。「デモンゲイズ2(仮)」では,今,まさにその二つの意見のどちらを採用するか割れているところです。
4Gamer:
つまり,オズを再び主人公として描くのかどうか,ということですか。
千頭氏:
ええ。再びオズを主人公として時を少し進めたストーリーにするか,それとも前作と同じ時間軸で,異なる大陸を舞台にするかという感じですね。どちらのほうが,実際に前作のファンの皆さんに喜んでいただけるかというと……。
何も考えずに普通の続きものにするなら,前作からストーリーを引き継ぐほうがいいんじゃないか,となりますよね。
4Gamer:
ただ,それだと前作を遊んでいない人が手に取りにくくなるんじゃないでしょうか。
千頭氏:
そのとおりなんです。またオズが一度強くなったあとの話なので,展開を広げづらいんですよ。
安宅氏:
記憶喪失などの理由で,弱くなって再スタートということも可能ですが,作り手としては,それをやるならもっと違うアイデアで,前作を遊んだ人もそうでない人も等しく楽しめる内容にしたいんです。
4Gamer:
そもそも前作は,オズが記憶喪失の状態から始まっていますから,今回もまたとなるとちょっと無理がありますね……。
千頭氏:
ええ。また安田さんからも,ストーリーを引き継ぐとパンチが弱くて驚きがないという指摘を受けています。そこをうまく消化しないといけません。
安宅氏:
前作でも,安田さんのリクエストから,よりフックのある内容を作り出しましたから,今回も驚きのある展開を生み出したいですね。
千頭氏:
前作のテーマの一つは「ギャップ」だったのですが,同じくらいフックのあるテーマを模索しているところです。
4Gamer:
しかし,前作ではストーリーが大きな役割を担っていただけに,今回どう展開するべきかは確かに難しい課題です。
千頭氏:
前作のストーリーは,ダンジョンRPGをどうやって遊んでいただくかという課題に対して,最もうまくいった部分ですからね。うまくシナリオとハクスラのバランスが取れた展開になりました。
安宅氏:
ダンジョンRPGだとストーリーとシステムが相容れなくなってしまうことも多いのですが,「デモンゲイズ」はうまく融合できましたね。
安田氏:
前作は,本当に情報量のバランスがよかったですね。マップデザインやヒントも含めて,あらゆる要素がバランスよく揃いました。
安宅氏:
前作では,安田さんからいただいたアイデアも,かなり盛り込んだんですよね。ですから「デモンゲイズ2(仮)」でも,いろいろアイデアを出していただこうと。
4Gamer:
安田さんは,何かアイデアをお持ちなんですか。
安田氏:
まさにこれから詰めていく感じですね。前作では,プロデューサーとして,日本にはエクスペリエンスさんという優れた開発会社が存在していることを紹介したいという意識が強かったんです。しかし今や,エクスペリエンスさんを取り巻く状況は良い意味で大きく変わりました。
そこで今回は,等身大で「デモンゲイズ2(仮)」をどうしていこうか考えているのですが……飲み屋では,いろいろ言っていますけどね(笑)。まあ,世界観やストーリーはお二人にお任せして,僕は今回もシステム面に注力しようと思っています。
ストーリーの要だったキャラクター同士の共同生活は再び描かれる
4Gamer:
「デモンゲイズ」では,拠点となる「竜姫亭」の存在がストーリーとシステムをうまくつないでいましたよね。「デモンゲイズ2(仮)」では,再び竜姫亭が登場するのかどうかも気になります。
千頭氏:
実際,そこにも議論があります。前作では竜姫亭における「共同生活」をコンセプトの一つに掲げていましたから,続編でそれを無くしてしまうと違うゲームになってしまいます。ですから,竜姫亭かどうかは分かりませんが,同じような場所を用意することにはなるでしょう。
安宅氏:
竜姫亭は,「古きよきラブコメ」を描くために用意したんですよね。その路線を引き継ぐのであれば,竜姫亭もしくは似たような場所を,もう少し違う路線でいくなら,また違った場所を作るでしょうね。
そういった路線がどうなるかはともかく,拠点にはシステム的な要素を追加する予定です。
4Gamer:
竜姫亭と,その管理人には前作の根幹に関わる謎も隠されていましたよね。それが再び登場するとなると……。
安宅氏:
前作を遊んだ人にとっては,「またか」となりますよね。
4Gamer:
あるいは,ほかに竜姫亭のような場所があるとなると,そこの管理人もまた……という勘ぐりにつながってしまいそうです。
安宅氏:
でも,それはそれで面白くできそうですね。
4Gamer:
それでは管理人以外の登場キャラクターはどうでしょう。
千頭氏:
ラブコメで思い出したんですが,前作では恋愛関係上のライバルが登場しないんですよ。「めぞん一刻」で言えば,こずえちゃんにあたる存在とか。
安宅氏:
三鷹さんもいないですね。
千頭氏:
「デモンゲイズ2(仮)」のシナリオでは,そこを強化したいという話をしています。
4Gamer:
前作のキャラクターは再登場しますか。
千頭氏:
メインキャラになるかどうかはともかく,登場させたいですね。やはり前作のあとの動向など,何かつながりを求めるファンの方は多いですから。
前作を楽しんだ方に向ける要素となると,やはり何かしら“おいしい”関連性が必要だと思うんですよ。その中でも,キャラクターの登場はかなりおいしいんじゃないかと。
4Gamer:
キャラクターが再登場するとなると,時系列的には前作のあとの話になるのでしょうか。
安宅氏:
個人的には,そうしたいですね。
安田氏:
共同生活というと,ちょっと昭和っぽいですから,少し時代を進めるとなると……。
4Gamer:
シェアハウスとかですかねえ。
ちなみに,いきなり時代が進んで舞台がSFっぽくなるとかはないですよね。
千頭氏:
それは,さすがにないです(笑)。
安宅氏:
どういう形になるかは別として,共同生活の温かさみたいなものは残したいですね。
4Gamer:
前作のストーリーを引き継ぐにしろ,新しくするにしろ,現段階で決まっている方向性などはありますか。
安宅氏:
それについては,何よりもまずスケール感をアップしたいという話をしています。
安田氏:
たとえば「デモン」についてなど,前作にはストーリーを掘り下げる材料も結構ありますからね。
安宅氏:
確かに前作のデモンはユニットという感じが強いですから,もう少しストーリーに関連するような存在にしてみてもいいかもしれません。
ストーリーとシステムの双方で「デモン」の存在がより重要になる
4Gamer:
ちなみにデモンは,前作のものも登場するんですか。
安宅氏:
キャラクターと同様,前作を楽しんだ方向けに,同じような形で出したり出さなかったり……という感じですね。
前作での人気の有無や能力的な部分を踏まえて,一部を入れ替える予定です。今回はデモンに注力したいと考えているので,おそらく最もリソースを割く部分になるでしょうね。
4Gamer:
デモンについては今後の情報公開に期待しつつ,ゲームシステムに関してはどうでしょう。
千頭氏:
当然ながら,ダンジョンRPGという部分は変わりません。
4Gamer:
前作ではハクスラ部分に「ジェム」を採用し,狙ったアイテムを入手しやすくしていましたが,エクスペリエンスの最新タイトル「剣の街の異邦人」(PC/Xbox 360/PS Vita)では,それ以上に遊びやすいシステムを構築しています。「デモンゲイズ2(仮)」ではどうなるのか,気になるところですが。
千頭氏:
ジェムを使ったシステムは「デモンゲイズ」の個性ですから,そこを変える予定はありません。ただ,まったく同じシステムを提供するのではなく,前作で寄せられた意見をフィードバックし,より洗練された内容にします。
安宅氏:
システム面は,安田さんがよくおっしゃっているように,簡単すぎても複雑すぎてもいけない「適度」なバランスが重要になるでしょうね。前作は,そこがうまく調整できたので,「デモンゲイズ2(仮)」でそれをいかにブラッシュアップするか,続編としてふさわしいものにするかというのが考えどころです。
安田氏:
そこはもう,常に答えを求め続けるしかないでしょうね。
4Gamer:
それではバトルシステムについても教えてください。前作ではパーティ5人とデモン1体という編成でしたが。
千頭氏:
そこは未定です。「デモンゲイズ2(仮)」では登場するジョブを変えるつもりですし,お話したように何よりデモンのパワーアップや変更を考えてますので。
4Gamer:
前作ではダンジョンRPGの初心者向けに,あえてパーティの最大人数を少なくして,マネジメントをやりやすくしたというお話でしたよね(関連記事)。
千頭氏:
そうですね。また最初から自由にパーティを編成できないようにしたのも,のちの成長を感じてほしいからでした。
4Gamer:
なるほど。そのほかシステム面で,何かお話いただけることはありますか。
安田氏:
バトルに緊張感をもたらしたいですね。「デモンゲイズ」の場合,ある程度キャラクターが育って戦闘方針が決まると,バトルが単純作業化してしまうんです。これは,ほかのダンジョンRPGも抱えている課題で,手前味噌ですが,その中でも「デモンゲイズ」は頑張っているほうだと思います。
4Gamer:
緊張感をもたらすことで,作業感を解消すると。
ええ。僕自身が,千頭さんと安宅さんの作ったゲームとして初めて遊んだ「ウィザードリィ エクス」に立ち戻って考えると,雑魚モンスターと戦っていても緊張感があったなと。即死したり,睡眠や毒など状態異常で危機に陥ったりで,油断するとパーティの半分が倒されていたんですよね。
しかし,そんな風にHPとMPと回復アイテムの量を確認しながら,まだ奥に進むか,それとも引き返すかというマネジメントを緊張感をもって行うことが本当に楽しかったんです。そこで「デモンゲイズ2(仮)」でも,より多くの人をターゲットにしているとは言え,もっとエクスペリエンスさんの持ち味として緊張感をアピールしていったほうが,僕としても面白いですし,実際に遊んだ人からの評価も高くなるのではないかと。
4Gamer:
最近の作品では「剣の街の異邦人」がそうなっていますね。
安田氏:
しかし「デモンゲイズ」のファンが,そうした緊張感をどこまで許容してくださるのか。支持する人は絶対にいるでしょうけれど,そうでない人からは「理不尽なクソゲーになった」と言われてしまうかもしれません。そこはしっかりと,試行錯誤してみる必要がありますね。
安宅氏:
確かに作業にならないように,かと言って安易に難度を上げて「無理ゲー」と呼ばれないようにするというのは,この十年来ずっと考え続けている課題です。
安田氏:
おそらく今回は,デモンの使い方が鍵になるでしょうね。ダブル召喚とか,デモンゲイザー同士の戦いとか,前作とは異なる運用方法が登場すると思います。
4Gamer:
全般に,前作よりも難度が上がりそうなイメージですね。
千頭氏:
前作を楽しまれた方にとっては,同じ難度だと物足りなくなってしまうでしょうから,多少難しくなるとは思います。もちろん,戦闘のどの部分で難度を上げるか,あるいはマップのどこで上げるかという具体的な内容を詰めるのはこれからですが。
安宅氏:
同じ作業に見えても,やれることの幅が広がることによって,相対的に難度が上がるという考え方はアリだと思います。たとえばダブル召喚でデモンが2体になると,それだけマネジメントすることが増え,難しくなるわけです。そんな感じで新しい要素の運用に難しさが入れば,それをうまく使えなければどんなにレベルが高くとも死んでしまうということもあるでしょう。
ジョブとスキルは前作からイメージが変わるくらい一新
4Gamer:
それではジョブやスキルについても教えてください。先ほどの話では,ジョブが変わるということでしたが。
千頭氏:
ジョブだけでなくスキルも一新する予定です。全部変えてしまうのは難しいかもしれませんが。
少なくともイメージがまったく変わるくらい,手を入れたいですね。スキルとその構成,ジョブのイメージが変わると,ダンジョンRPGファンには「遊んでみたい」という欲求が生まれますから。
4Gamer:
エクスペリエンスのタイトルだと,定番と言っていいようなジョブもありますけれども。
千頭氏:
今回は,あえてやらない方向で考えています。
4Gamer:
そうなると,たとえば今までのファイターの役割を,ほかの前衛系ジョブが担うわけですよね。
安宅氏:
ええ。ただ,これまでのエクスペリエンスのタイトルには,あまり中間職が存在しなかったんですよ。実際にどうなるかはまだ分かりませんが,たとえば魔法戦士のような中間的な存在を作ることで,戦士でありつつほかの役割もできるというアプローチもアリなんじゃないかと思います。
4Gamer:
どうなるか楽しみですが,世界観に合わせてジョブを設定しなければならないので,いろいろ大変そうですね。
千頭氏:
まあ,最初に「デモンゲイズ」を作るときも大変でしたから。
4Gamer:
ゲーム全体のボリュームはどうでしょう。続編というとボリュームアップを期待してしまいますが。
千頭氏:
まず,ダンジョンの数が前作より少なくなることはありません。またダンジョンはすべて一新されます。その一方で,前作をプレイした方の傾向を踏まえると,ダンジョンの数を増やしすぎるとあまりよくないという分析もしています。ですから,今のところは前作プラスαくらいのボリュームと捉えていただけるといいんじゃないかと。
4Gamer:
個人的には,もう少しボリュームがあると嬉しいのですが。
千頭氏:
食い足りないくらいがちょうどいいんじゃないかとも考えているんですよね。
4Gamer:
前作はエンディング後のダンジョンが結構アッサリしていたので,強くなったキャラクターでチャレンジできる要素がもっと欲しかったなと。
安宅氏:
ダンジョンRPGでは,エンディングを迎えてからが本番とおっしゃる方も少なくないですからね。エンディング後かどうかは別として,前作ではチャレンジ要素が少なかったとは思います。
4Gamer:
「デモンゲイズ」は,エンディングのあともまだ見ぬ装備を求めてやり込むゲームだとは思うんです。ただ,その先の目標が何かあれば,とは感じました。たとえば,苦労して入手したアイテムがないと倒せないほどの強敵とか。
千頭氏:
「デモンゲイズ」の場合,コアなダンジョンRPGプレイヤーは別として,エンディングのあとまでやり込む人はあまりいないだろうと考えていたんです。仮に「デモンゲイズ2(仮)」でエンディング後の要素を増やすとすれば,ほかのゲームだったらそこまでやらない人でも,絶対にプレイしたくなるような仕掛けと内容を用意することになるでしょうね。
4Gamer:
難しい課題ですが,何かアイデアはありますか。
千頭氏:
ええ,おっしゃるとおり,かなり難しいです。そこで前作では,開発上のリソースも限られているので,本編に注力しようと考えたわけなんです。システム的に,うまく勝負したい部分ではあるのですが……。
そこには,やはりサプライズが必要ですよね。
4Gamer:
「迷宮クロスブラッド」では,後日談を見せたりもしていましたけれど。
安宅氏:
少し先のストーリーや世界観を見せていましたね。
千頭氏:
「迷宮クロスブラッド」では,「Generation XTH」のシステムを踏襲しつつ,まったく違う遊び方を目指しました。そういう意味では,成長したキャラクターと蓄積したゲーム内資産を使って別の遊びができると面白いかもしれません。
安宅氏:
単純に敵を強くするのではないものも含めて,難度を上げるアイデアはいくつかあるんですけれどね。でも,違う遊びとなるとすぐには思いつきませんね。
安田氏:
まあ「2」でやり過ぎると,「3」がまた大変になりますから……。
4Gamer:
今,サラッと重要な言葉が出ましたけれど,もう3作めを考えているんですか。
安田氏:
いえいえ。一般的な話として,せっかく1作めがヒットしたのですから,可能なら3部作にしたいという意味ですよ。まだ確定ではありませんが。
千頭氏:
3作めを考えるとなると,「デモンゲイズ2(仮)」でも何か仕込んでおかないと(笑)。
安田氏:
一度は主人公側が攻め込まれないとダメでしょうね。「スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲」みたいに。
安宅氏:
そして3作めでは,ラスボスになったオズをその息子が倒すとか(笑)。
同じことの繰り返しにならないよう正統進化すべき部分は丁寧に作る
4Gamer:
イラストは,基本的に前作と同じ方が担当するのでしょうか。
千頭氏:
いろいろ議論があったのですが,メインキャラに関しては,前作と同じがいいだろうと。前作でそこが気に入ったという方なら,もう一度それを楽しみたいでしょうから。
ほかのイラストに関しては,少し雰囲気を変えるつもりです。今回は新たなコンセプトを取り入れるので,描き手が同じでも,表現が違ってくると思います。とくに頭身は変わりますね。
安宅氏:
前作の頃と現在とでは,PS Vitaのユーザー層も変わっていますからね。そういった部分も加味して変更を検討しています。
4Gamer:
前作では,少し幼い感じのイラストでしたよね。
千頭氏:
そうですね。ですから今回は,少し年齢が上がった感じになると思います。
4Gamer:
音楽は今回も神保直明さんが担当するのでしょうか。
千頭氏:
その予定です。
4Gamer:
前作ではボーカル曲に音声合成ソフトの「IA」を起用していましたけれど。
安宅氏:
もともとはサウンドディレクション担当の私のアイデアですが,神保さんも,これまでコーラスやクワイアといった形で使っていた電子音声とは別のチャレンジをしてみたいとおっしゃったんです。
千頭氏:
ただ,非常に賛否が分かれたので,今回も音声合成ソフトを使うかどうかについては悩んでいますね。
安宅氏:
気に入っていただいた方もいれば,「この曲があるからゲームをプレイしたくない」とまでおっしゃる方もいるんです。双方に対して何かしようとすると,なかなか悩ましいですね。
千頭氏:
ここまで極端に好き嫌いが分かれたケースは初めてなんですよ。「曲が嫌いだからゲームもやらない」という人がいる一方で,「よかった」という声は今まで以上に多かったんです。だから「剣の街の異邦人」では2バージョン用意したんですが,正直,それはあまりやりたくないですよね。
4Gamer:
サウンド関連で言えば,エクスペリエンス作品の効果音は,長らく変わっていない気がするのですが……。
安宅氏:
タイトルごとに,少しずつリニューアルはしているんですよ。ただ,そうなると大半は変わっていないので,全部,前と同じように聞こえてしまうんです。
千頭氏:
神保さんにも「賞味期限,切れてますよ」と言われていますからね(笑)。
安宅氏:
新鮮味が薄れているのは私自身も感じていますので,何とかしたい部分です。
4Gamer:
そのほか,「デモンゲイズ2(仮)」で変更する部分,あるいは変更したい部分はありますか。
千頭氏:
基本的に,同じことを繰り返さないようにしようという話はしています。イラスト,アニメーション,効果音と,正統に進化すべき部分は,丁寧にやりたいですね。
4Gamer:
DLCで,新しいキャラクターのポートレートを提供したり,クエストを配信したりといった,これまでのエクスペリエンスではやってこなかったような取り組みはありますか。
千頭氏:
まだDLCまで話が進んでいないというのが正直なところですが,ポートレートのシステムは変わる予定です。
安宅氏:
たとえば前作のシステムだと,好みのポートレートがなければ選びようがないですよね。そこで,よりポートレートに幅を持たせるようなことを考えています。それが新しいシステムになるかどうかは,まだ分かりませんけれど。
千頭氏:
もともとエクスペリエンスのタイトルではアバターを採用していて,それがポートレートになりましたよね。今回,さらに新たなタイプの仕組みを作りたいと。
「デモンゲイズ」自体,ダンジョンRPGの面白さを伝えるべく作ったゲームですから,今回はキャラメイクの面白さを伝えたいんですよ。それはダイスロールでパラメータを決めていくような部分も含めて,ただ「絵が可愛いから,これでいい」で終わらないような仕掛けを用意したいです。もうアイデアはあるんですが,技術的,時間的に実現できるかどうか分からなくて。
プラットフォームは当然PS Vita。気になる発売日は2015年末よりあとに
4Gamer:
さて,ここまで仮に「デモンゲイズ2(仮)」と呼んできましたけれど,実際,タイトルはそのままでいくのでしょうか。
千頭氏:
たぶん,「2」とは付けないと思います。ほかのメーカーさんもそうですけれど,やはり「2」と付くと,前作を遊んでいない人に手にとっていただくときのハードルが高くなってしまうんですよね。それに面白さの枠も,ある程度想像されてしまいます。
4Gamer:
シナリオのプロットも手がけている安宅さんは,何かアイデアはありますか。
安宅氏:
いやもう,ゲームの名前については千頭を含めスタッフ一同,本当に悩みますね。
千頭氏:
前作は結局,安田さんに決めていただいたんですよね。
安宅氏:
そう,いろいろ案を出した中で,安田さんが「デモンゲイザー」に注目したんですよ。「これは悪くない。でも『デモンゲイズ』のほうがよくないか」と。
安田氏:
ああ,ありましたね。そういうやり取り。
千頭氏:
まあシナリオの内容次第という部分もありますからね。まだシナリオができていない今の段階では何とも。
4Gamer:
なるほど。それではプラットフォームや発売時期などはどうでしょう。
千頭氏:
プラットフォームは,当然PS Vitaです。ひょっとしたら,ほかでの展開もあるかもしれませんが,まずはPS Vita向けに注力します。
安田氏:
こうして続編を出せるのも,PS Vitaユーザーさんが応援してくださったおかげですからね。
千頭氏:
また発売時期は,ゲームの規模がどうなるかで大きく変わるので,今は何とも言えないんですよ。
4Gamer:
今が2014年の半ばになりますから,これまでのお話のような進捗状況だと2015年以降ということになりそうですね。
千頭氏:
ええ。今のところ,早くても2015年末,あとは内容次第で後ろ倒しになるようなイメージです。
4Gamer:
ちなみに「デモンゲイズ」は“Global Edition”も発売されましたけれど,海外からの反響はいかがですか。
安宅氏:
Twitterへの書き込みがあったり,ファンサイトがあったりと全般に好評です。
安田氏:
海外には,JRPGが好きな方がたくさんいらっしゃるんですよ。とくに「デモンゲイズ」に関しては海外メディアの評価が高く,また実際にプレイした方からも好評で,続編を望む声も多いんです。
4Gamer:
当然,続編も海外でリリースされますよね。
千頭氏:
ええ。海外で何が好まれるかも研究していますから。
ただし,だからといって日本にいる「デモンゲイズ」ファンの皆さんが敬遠するような内容になる可能性はないです。まずは日本でのヒットを目指します。
安田氏:
海外のJRPGファンも,それを望んでいますからね。彼らは,「自分達にない感性で作られているからこそ,いいんだ」と言うんです。角川ゲームスでは,「デモンゲイズ」を始め,そういったゲームにチャレンジしていきたいですね。
4Gamer:
それでは最後に,「デモンゲイズ2(仮)」に期待する人に向けてメッセージをお願いします。
安宅氏:
今,「デモンゲイズ」に寄せられた意見をどうやって次に活かしていくか検討しているところです。お話してきたとおり,前作のヒットが最大の壁になっていますから,うまく乗り越えたいです。
千頭氏:
「デモンゲイズ」は,角川ゲームスさんと共同開発した初のタイトルでした。そのため,お互い様子見したり遠慮したりしていた部分があったのですが,今回は経験を積んだことにより,それぞれが100%,120%の力を出して取り組めますので,より面白いゲームになると思います。もう少しお待たせしてしまいますが,ぜひ期待してください。
僕は以前から,エクスペリエンスさんはいつか成功するだろうと思っていたんです。と言うのも,物作りに対する姿勢が真摯ですし,コツコツ丁寧にやっている会社でしたから。なので,角川ゲームスと共同開発した「デモンゲイズ」でヒットを飛ばしたことは本当に嬉しかったですし,こんなステキな運命にめぐり会えて,ユーザーの皆さんには感謝,感謝,ただひたすら感謝という気持ちです。
実は角川ゲームスも,エクスペリエンスさんと一緒に仕事をすることで,ゲーム作りに対する考え方が変わったんですよ。角川ゲームスは設立以来,グローバル展開を強く意識しながらゲームを作ってきましたが,エクスペリエンスさんのやり方は非常に日本的です。それは決して悪いことではなく,むしろ世界に通じる方法の一つではないかと思えるようになってきました。今回の取り組みでは,それを次につなげるべく,積極的に攻めていきたいですね。
4Gamer:
ありがとうございました。
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