プレイレポート
日本語版「Sid Meier's Civilization: Beyond Earth」のプレイインプレッションをお届け。2014年秋の夜長の友達は,これに決定だ
そんなある日,パブリッシャの2Kで「Beyond Earthが試遊できるんですがどうですか」というメールをもらった。そりゃもう! と,矢も盾もたまらず日本オフィスを訪ね,2時間ほどプレイさせてもらった,今回はそんな,「とりあえず(日本語版)Beyond Earthを触ってみた」といった感じのインプレッションをお届けしたい。試遊に使われたのはPC版で,リリース前ということで,掲載した記事とは違う部分が製品版に出てくる可能性のあることは,あらかじめご了承願いたい。
「Sid Meier’s Civilization: Beyond Earth」公式サイト
古代文明はもう古い。これからは惑星開拓だ
まずは,そもそもCivilizationってなに? という人もいると思うので,簡単に説明したい。イヤというほど知っている,という向きは読み飛ばされたし。
Civilizationはターン制のストラテジーゲームで,プレイヤーは「ある文明(勢力)における不老の指導者」となり,自分が選んだ文明を世界最高の存在へと押し上げることを目指す。
文明は基本的に国家単位で選択でき,イギリス,アメリカ,フランス,ドイツ,日本,アステカ,ギリシアなど,それぞれに個性豊かな文明が多数揃っている。
ゲームは紀元前数千年からスタートし,だいたい21世紀末くらいまでには決着するという時間軸で,1ターンの長さは固定ではなく,ゲーム開始直後は1ターン数十年〜数百年単位で,最終ターン近くになれば1年〜数年単位で経過する。現代社会は,変化が早いのだ。
ゲーム要素としては,都市の建設とマネジメント,文化/経済の発展管理,科学技術の研究,軍隊の育成と戦争,市民の幸福度管理など多岐にわたる。「そんなにたくさん,全部管理するとか無理」と思える規模だが,難度を下げればいくつかの要素は無視できるので,段階的にゲームの全貌を把握していくことも可能だ。
このためプレイヤーの立場も「文明の指導者」ではなく,「惑星にやってきた植民者達のリーダー」となる。とはいえ,ゲームとして目指すことはCivilizationの伝統を受け継いでおり,要は同じ惑星に降りてきたほかの植民者達を,軍事,経済,文化,技術などを通じて圧倒すればオッケー,というわけだ。宇宙の果てまで来ても,人類は闘争を止められないようだ。
シリーズ従来作との違いなどをサクッと
Beyond Earthのマップは,ヘクス(6角形のマス)で敷き詰められている。「シヴィライゼーション4」までは,日本のストラテジーゲームでもおなじみの正方形のマスが敷き詰められていたが,「シヴィライゼーションV」からヘクスになっているので,最近のプレイヤーにとって違和感はないだろう。マップ上で軍事ユニットがスタック不可(1マスに1ユニットしか入れない)なのも,「シヴィライゼーションV」のシステムそのままだ。
科学技術開発のシステムも,少し変わった。これまでは「古い技術」→「新しい技術」へ進んでいくテクノロジーツリー形式だったのだが,Beyond Earthは新たに「テクノロジーウェブ」になり,中心から周辺に向かって技術を伸ばしていくという構造になっている。
システム的には,これ以外にも「アフィニティ」という新概念が重要になる。これは,「シヴィライゼーションV」の「社会制度」に似たもので,惑星開拓に対する自勢力の基本姿勢のようなものだ。とりあえず試遊で分かった範囲で言うなら,軍事ユニットの進化と直結しており,それだけでも文字どおり「生死に関わる」問題といえる。
どんな技術を開発していくかによってアフィニティが変化するほか,技術開発に伴う「イベント」における選択肢によっても変化するようだ。
さらに,プレイヤー勢力の設定が非常に細かく行えるというのも,本作の大きな特徴だろう。シリーズ従来作では,たくさんの個性的な文明が用意されており,プレイヤーはそこから1つを選ぶだけだったが,Beyond Earthで選べる勢力は8つしかない。
選択の幅が大幅に減ったのかといえば,そうではなく,その勢力を多彩にカスタマイズできるため,最終的な組み合わせは膨大なパターンに達するはずだ(たぶん数千とか数万とか,そういうオーダー)。
もちろん,この膨大な組み合わせの中には「ゲーム的に言えば不利」なものもあるだろうし,純粋に効率を追えば,ある程度のパターンに収束すると思われる。
だが,バリエーションとして例えば「植民者の民族」や「出身階級」などが具体的に選べるため,「スラブ人が宇宙開拓の覇者になる未来を作りたいんじゃー!」といった欲求を満たすという方向性でも大いに楽しめそうだ。少なくとも筆者は,のっけからその多彩で具体的な選択肢の組み合わせをいろいろ想像して大いに楽しませてもらった。
惑星開拓は厳しい。厳しすぎる
というわけで,いよいよプレイを開始した。
プレイ感覚は,「シヴィライゼーションV」をプレイしたことがあれば,ほとんど違和感なく進められるという雰囲気。また「初心者ガイダンス」が本作にも実装されており,どんな技術を開発すべきか,何を生産すべきかなどのアドバイスをくれるので,とりあえずそれに従って進めていけば,いきなり手詰まりという事態には陥りにくい。
だが,なんというか,都市の周辺にものすごい数のエイリアンがうごめいており,おまけにマップには「瘴気」が漂っているマスもあり,ここに入ったユニットはダメージを受けてしまうなど,環境は非常に過酷だ。惑星開拓は厳しい。
この段階で,プレイヤーには大きく2つの方針がある。1つは,「汚物は消毒だ!」と心のなかで叫びつつ,エイリアンを駆除し,科学の力で瘴気を消していく方針。もう1つは,「森にお帰り」と心のなかで呟きながら,エイリアン達と共存していくという方針だ。
そこで筆者は迷うことなく前者を選んだ。野蛮な未開の暗黒世界に文明と叡智の光をもたらすのは,高度な文化を築いた人類の使命ですからね,ええ。
従来作でいう「中立文明」もあるようだ。交易したいところだが,なにせエイリアンが多過ぎ。なおこの都市は,やがてエイリアンによって滅ぼされた。ナムサン |
「美徳」は,「シヴィライゼーションV」でいうところの「文化」によるボーナスに近いイメージ |
シリーズ従来作には「蛮族」というNPC勢力がおり,プレイヤーの文明に攻撃してくるわけだが,その「蛮族」気分でエイリアンと戦おうとすると,こちらが大宇宙の厳しさを教育されることになる。
今回の試遊,ゲーム難度は最低ないし割と下のほうであったはずだが,イメージ的には従来作でいう難度「皇子」くらいの蛮族強度だと感じられた(エイリアンがアグレッシブに攻めてこないのが,せめてもの救いだ)。
そんな状況だから,なかなか他勢力と接触しない。というかおそらく,同じ方針を採った勢力は同じようにエイリアンに苦しめられているらしく,従来作でいう「斥候」的なユニットが視界に入ってくることすらないのだ。
しかも地形が全体的に険阻だ。マップ上には侵入不能なエリアが比較的多く(ランダムジェネレートなので,今回がたまたまなのかもしれないが,探索エリアを広げてもやっぱり全体に険阻だった),エイリアンの巣に踏み込んでいこうにも,チョークポイントを巡る消耗戦に陥りがち。
ならば射程の長い兵器でつるべ撃ち……と思ったが,エイリアン側も飛行ユニットや,長射程を持ったユニットを繰り出してくる。エイリアンのくせにずるい。正々堂々と戦え。
敵の数が問題なのであれば,こちらも数を用意すれば良いのだとばかりに植民都市を増やしにかかったのだが,ここでもまた難問にぶつかる。
Beyond Earthの植民都市は,作った瞬間には機能してくれず,いわば「都市レベル0」の期間がしばらくあって,その間,都市では生産も何もできないのだ。
このため,新都市を建設→その都市に設備やユニットを一気に「購入」という常套手段が使えない。むしろ,1レベルに成長しようとしている都市であってもエイリアンは「コレおいしそうです」とばかりに攻撃してくるので,防衛のための部隊を用意する必要がある。大事なことなので2回言うが,惑星開拓は厳しい。
瘴気を広範囲に除去してくれる軌道ユニットの打ち上げ。文明万歳! |
技術開発が進むと,その技術を「どう特化させるか」的な選択肢が出現 |
ともあれ,苦戦に苦戦を重ねながら,なんとかエイリアン戦争は前向きに進み始めた。軌道ユニットを発射して広範囲に瘴気を消し去り,都市の周囲には電磁フェンスを設置してエイリアンの接近を防ぎ,そうやって作った地歩の内側から遠距離兵器でエイリアンを撃って,わが開拓団は文明圏を広げていく。しかし,そうやって人類のための戦争を続ける筆者に,不思議なイチャモンをつける者が現れた。
「あなたの労働者が,我が領域近くの瘴気を除去しているので,やめさせてください」
なんですと! こっちは人類が快適に生活できる世界を広げるために費用を使って瘴気を排除してるんだぞ。その何が悪いというのか?
まあ,察しのいい人なら分かると思うが,我が開拓団の隣人はアフィニティとして「Harmony」を選び,つまり「エイリアンとの共存」を目指しているのだ。彼らにとって我々は,一定の知性を持つ野生生物を殺す殺戮者,惑星固有の貴重な自然を破壊する非文明人であるわけだ。
だがしかし,未知なる大宇宙の脅威に比べれば,人類のもたらす脅威は知れたもの。我ら人類は,こういう「不幸な,しかし妥協できない行き違い」が発生したときに,何をすればいいのかよく知っている。
というわけで,筆者の軍は国境の空白地帯を跋扈するエイリアンを駆逐し,「エイリアンとの共存」などという非現実的で非生産的な夢物語を掲げて人類の生存に重大な危機をもたらそうとしている「ならず者勢力」を制裁するための戦争を開始したのだった。
アルファ・ケンタウラーなら“マストバイ”
かくして,いざ他勢力との戦い,というところで,あっという間の2時間が経過した。あー,楽しかった。
実は今回の試遊,個人的な目標としては「神経ステープラー」があるかないかという,分かる人には「そこだよ! そこが重要なんだよ!」と叫びたくなるポイントを確認したかったのだが,それが分かるところまではプレイできなかった。残念。
ただ,Beyond Earthの精神的前編である歴史的傑作「アルファ・ケンタウリ」(「シヴィライゼーションII」のエンジンを使って作られた,アルファ・ケンタウリ星への入植をめぐるストラテジーゲーム)と異なり,本作においては「健康度」というのが住民管理パラメーターになっている印象がある。このため,もしかしたらステープラーはないかもしれない。ま,なかったらなかったで,秒速でMODが作られると思うので,別にいいんですが。
秋の夜長の友は,ほぼ本作で決定したと見て良さそうだ。そんな2時間だった。詳しくは,いずれレビュー記事などでお伝えしたいと思うので,楽しみにしていてほしい。
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