インタビュー
2015年にPC版とスマートフォン版のプレイヤーで戦える「覇王戦」が実現――「モバノブ」プロデューサーインタビューを掲載
※プラットフォームを越えた対戦など一部コンテンツは,統合後しばらくしてからプレイ可能になる予定だ
今回4Gamerでは,「モバノブ」のプロデューサーを務めるコーエーテクモゲームスの藤田一巳氏およびモブキャストの杉野範和氏に,サービスインから半年経った本作の現状やサーバー統合に至った経緯,そして気になる今後の展望などを聞いてみた。なお,モブキャスト側のプロデューサーは,以前インタビューに応じてもらった前プロデューサーから新プロデューサーに変わっているが,その理由についても教えてもらった。
「モバノブ」公式サイト(PCブラウザ版)
「モバノブ」公式サイト(スマートフォン版)
急激なプレイヤー増加と,その裏で発生した解決すべき複数の問題
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。今回は,「モバノブ」の現状と今後の展開について教えてほしいのですが,その前に杉野さんが新たにモブキャスト側のプロデューサーに就任した経緯を教えてもらえますか。
実は「モバノブ」の展開と,杉野さんの起用は密接に関係しています。順を追って説明しますと,5月にスマートフォン版,6月にPC版をサービスインして約半年が経過した中で,想定どおりの部分とそうでない部分がありました。
4Gamer:
それはどのような部分でしょうか。
藤田氏:
想定どおりだったのは,モブキャストさんの「モバプロ」や「モバサカ」で使われているMSGE(Mobcast Social Game Engine)と,戦国物の相性が良かったということです。実際,「モバプロ」や「モバサカ」のプレイヤーの皆さんは,最初から「モバノブ」のシステムを理解して遊んでくださいました。
4Gamer:
同じMSGEを使ったゲームなので,扱うモチーフが違っても理解が早かったわけですね。
藤田氏:
はい。逆にPC版のお客様,つまりmy GAMECITYのお客様は,時間の経過に伴ってカードの性能が変動するという仕様や,デッキを組んだあとオートで合戦が進行するといった部分が従来のコーエーテクモゲームスのゲームと異なるので,慣れるのに少々時間が掛かっていたようです。ですが,これは想定の範疇でした。
4Gamer:
では,何が想定と違ったのでしょうか。
藤田氏:
モブキャストさんは,MSGEを使ったタイトルをこれまで足掛け4年にわたって展開しています。そしてその間,時間を掛けて各タイトルで発生した問題を一つ一つ解決してきました。
ところが「モバノブ」は,サービス開始から短期間で一気にお客様が30万人を越えてしまったため,これまでは一つ一つ解決してきた問題が,本作では複数同時に発生してしまったんです。それによって,諸々の対応が遅れてしまい,10月には売上も下がってしまいました。
4Gamer:
10月にはスマートフォンでのダウンロード数が50万を突破したということで,むしろ好調に思えていたのですが。
藤田氏:
好調ではあったのですが,サービスに問題が起こっていたんです。10月上旬に「ちょっと変だぞ」というフェーズがありまして,問題点を分析してみると,リーグの中でお客様同士が本当に競い合えているか,上位リーグをどう扱うかといった“マッチングの問題”や“レアカード付与の問題”,お客様に自身の実力を確認していただく“イベントの実施”,“休眠プレイヤー対策”をどうするか……といった解決すべき課題がいくつも同時に発生していました。
一つ一つの課題に対する解決手段はある程度見えているのですが,とにかく数が多いので,優先順位をどう付けるべきかの判断が難しかったんです。
4Gamer:
それは……同時にすべては対応できそうにないですね。
藤田氏:
そこで杉野さんが登場するわけです。前プロデューサーには,ゲームの立ち上げを盛り上げる施策を多数展開していただき,実際に短期間で多くのお客様を獲得できました。それを受けて,今後,しっかりしたサービスを提供すべく,よりMSGEの運用に長けた人材にプロデューサーをお願いできないかと,私からモブキャストさんに直接打診していたんです。
実はモブキャストさんも「モバプロ」などの経験から,サービスのフェーズに合わせて「最初にゲームを作る人材」「ローンチにあたって思い切った施策を展開できる人材」,そして「MSGEの運用を熟知し,発生しうる問題に対応できる人材」といったように,段階的にプロデューサーを交代していく計画を立てていたんですよ。
4Gamer:
なるほど。つまり,プレイヤー数の増加に合わせて次のフェーズに入り,杉野さんがプロデューサーに就任することになったと。
そういうことです。藤田さんがおっしゃったように,モブキャストでもプロデューサーの交代は当初から計画していました。
4Gamer:
想定以上にプレイヤー数の増加が早かったため,プロデューサーを交代して,体制を整えるタイミングがズレてしまったわけですか。
藤田氏:
はい。想定以上のお客様にプレイしていただきましたが,そのままでは,その多くのお客様に飽きられる可能性があります。そこで早期に問題を解決するため,両社が協力したということですね。
4Gamer:
とはいえ,かなり大変だったのではと思います。
藤田氏:
ですが,コーエーテクモゲームスとして「信長の野望」という看板を使う以上,「うまくいかなかった」というわけにいきませんから。
4Gamer:
それは,そうですよね。ところで話の流れからすると,杉野さんはもともとMSGEを使ったタイトルのサービスに携わっていたわけですか。
杉野氏:
私自身はプラットフォーム部門のサードパーティ担当でした。ですが,MSGEはモブキャストが開発したものですから,当然ノウハウは社内で共有しています。
もう少し突っ込んだ話をすると,「モバノブ」はもともとスマートフォンアプリを手がける新規事業部門の管轄だったんです。しかしお話してきた問題を解決するには,プラットフォーム部門の管轄である「モバプロ」などのノウハウが必要でした。そこで「モバノブ」をプラットフォーム部門の管轄に移すとともに,サードパーティ担当としてコーエーテクモゲームスさんにお邪魔していた私がプロデューサーに選ばれたわけです。
藤田氏:
コーエーテクモゲームスとしても気心の知れた人材で,MSGEのプラットフォーム運営に詳しい杉野さんに,ぜひとお願いしました。
「覇王戦」投入でマンネリ感を打破
目指すは「モバプロ」からの脱却?
4Gamer:
10月の危機を乗り越えるために,「モバプロ」などの施策を適用したというお話ですが,具体的に何をされたのでしょうか。
お客様が抱く不満の根本となっていたのは,歯応えのなさからくる飽きでした。たしかに,何となくやっていても自動的に合戦に勝ててしまうのでは,「モバノブ」の存在意義がなくなってしまいます。ですから両社で,どう対応するかをかなり相談しました。モブキャストさんには,さまざまな施策とチューニングをお願いしつつ,既存のお客様に対するイベントも増やしましょうと,かなり無茶なリクエストもしましたね。
4Gamer:
その一つが,誰が本当に強いのかを決定する「覇王戦(※)」の実装ということですか。
※覇王戦:合戦の最上位リーグ「天下統一戦」で,その週にリーグに残留できたプレイヤーから32名を1単位としてグループを分け,さらに各グループごとに4名1組としたリーグ戦を実施。その後,リーグ戦を勝ち上がった8名によるトーナメント戦が行われ,そのグループの覇王が決定するというもの
杉野氏:
そうです。理由としては,まずお客様の楽しみとして,誰が真の強者かを決める必要性が出てきたことが挙げられます。加えて,従来よりランクの高い最上位の合戦を作ることで,上位ランカーの活性化を図るという目的もありました。 またこれらは,モブキャストの提唱するSVS(Social Victory Space「人と人が競い合いを楽しむ空間」をメインターゲットとする対戦コンテンツの概念)のコンセプトとも合致します。
4Gamer:
実際に「モバノブ」に覇王戦を実装してみて,感想はいかがですか。
杉野氏:
「やってよかった」というよりは,「やらなかったら本当にマズかった」と思っています。
藤田氏:
杉野さんのおっしゃるとおりです。以前お話したとおり,私は毎朝5時に「モバノブ」にログインしているのですが,覇王戦実装以降,その時間のアクティブプレイヤー数が目に見えて増えました。また土日の動きがまるで変わりましたね。
4Gamer:
「モバノブ」は日曜が各期の始まりで,カードの能力が変動しますから,以前だと金土は動きが少なく,日曜日に新しいカードを求めたり陣形を変えたりするプレイヤーが多いというお話でした(関連記事)。
藤田氏:
ええ。それがいまは,金曜日や土曜日にカードを入手するお客様が増えたんです。と言うのも,金土に入手したカードは,日曜日になると1期経過したことになり,それだけ早く能力のピークに近づくんですよ。ピークが近づくほど武将の能力は上がりますから,強くなる事に対するお客様のニーズがそれだけ高まったという事になります。
杉野氏:
これは覇王戦対策に伴うものですが,週後半におけるお客様の活性化は予想以上でしたね。
藤田氏:
そもそもリーグ最上位の「天下統一戦」は,戦場ごとに上位二人しか翌週の天下統一戦に残れない過酷な争いです。三位以下となったお客様は1ランク下のリーグ「戦国大名戦」で戦うことになるのですが,天下統一戦に昇格できる方々ですから,とくに勝ちを意識しなくてもいずれ上位に入ります。そうして覇王戦実装前は,なんとなく昇格と降格を繰り返していたんです。
4Gamer:
昇格と降格が一定サイクルで繰り返されてしまうわけで,マンネリ感が生じてしまっていたわけですね。
藤田氏:
そうです。これは,オートで合戦が進行するがゆえの問題でもありました。その状況を覇王戦が見事に打破したわけです。
そのせいか,リーグ内でも1戦ごとの勝負で「勝ちたい」というお客様が増えました。これは,ただオートで放置するのではなく,1戦ごとに武将を入れ替えたり,陣形を変えたりして,勝ちに行く傾向が強まったことからも見て取れます。また継続率に関しても,覇王戦をスタートした11月24日以降はそれ以前より高くなっています。
藤田氏:
ただ「モバプロ」などと比較すると,覇王戦にこだわるお客様の割合はまだまだ低いと言えます。ですが,いまは毎週のようにこの割合が増えている状況なので,数字を見るのが楽しいですね。
本当に「もっと早く入れておけばよかったのに」と思うことしきりです。……もっとも,やらなければならないことがありすぎて,あれ以上早い時期の実装は無理だったのですが。
4Gamer:
とは言え,きちんと結果が出せたわけですよね?
藤田氏:
はい。そこはモブキャストさんに感謝しています。とくにコーエーテクモゲームスからのわがままをただ聞くだけでなく,モブキャストさんとして「こうしなければ良くならない」ということをハッキリと言っていただけるのがありがたいですね。それが確実に結果として表れていますから,どんどん信頼が強固になっています。
4Gamer:
では,プレイヤーからはどのような反響がありましたか。
杉野氏:
お客様のコミュニティも活性化しており,先ほど申し上げたように,1戦ごとのこだわりが見られるようになっています。ゲームのサービスに携わる人間としては,うれしいかぎりですね。
藤田氏:
コーエーテクモゲームスに寄せられるリクエストでは,これまでだとシステムに対するものが多かったんですよ。それが今では,「史実に忠実かどうか」「この武将なら,こうあるべきではないか」といった指摘が増えています。
4Gamer:
プレイヤーの要望も次の段階に入った感じですね。
藤田氏:
ええ。そういう意味では,覇王戦実装以降,ただお金を投じて勝つというのではなく,「戦国時代のセオリーや知識を交えて勝負したい」「この武将を,こう使いたい」という傾向が強くなっているように思います。ですので,ゲームを作っている私達の意識も変わってきていますね。
杉野氏:
そうですね。もともとモブキャスト側にも「信長の野望」をはじめ,戦国時代が好きなスタッフがそろっていますから,いまは,より戦国時代シミュレーションにこだわったゲームにしていこうという意識が高まっています。
4Gamer:
ゲームとしては,より「信長の野望」の色が濃くなっていくと。
藤田氏:
そうなります。「モバプロ」や「モバサカ」から脱却した本当の「モバノブ」を確立していくにあたり,今後どういう方向に進んでいくべきなのか。お客様とのコンセンサスが取れてきたという段階ですね。
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(C)mobcast inc./コーエーテクモゲームス All rights reserved.
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