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[CES 2015]心拍数&発汗センサー搭載のMionix製ゲーマー向けマウス「NAOS QG」は,13日までKickstarterで出資を募集中
なんとこのマウス,手のひらが触れる部分にセンサーを備えており,ユーザーの心拍数や発汗状態をリアルタイムで検出できるというのだが,果たしてそれでMionixは何をしようとしているのだろうか。
パームレスト部分に2種類のセンサーを搭載
ただし設置場所はまだ検討中
右の写真はそのクローズアップで,白く見える2つの突起が発汗センサー,半透明な残る2つの突起が心拍数センサーだ。
心拍数センサーは,強い光を手のひらに照射し,血管の動きを見るタイプの光学式で,非常に明るい高輝度緑色LEDと小型カメラで構成される。一方の発汗センサーは,2基ある金属製の接点間に生じる電位差を見るものだ。どちらも,センサー自体は汎用的なものを使っているとのことだった。
ただし,説明を担当してくれたMionixのマーケティング担当副社長であるChristoffer Suess氏は,「これは試作品であり,最終版ではない。まだ修正は加わるだろう」と述べる。詳しく聞いてみると,心拍数と発汗の両センサーをどこに装備するのが最適なのか,まだ調整が続いているという。
センサーが手のひらに接触したり,LEDの光で血管を照らし出したりすることで,必要なデータを得るという仕組みである以上,握り方次第では,手がまったく触れないという事態も迎えかねない。とくに「つまみ持ち」への対応は難しそうな印象だが,実際,Mionixのプライベートブースには,CES 2015版の試作機よりも古いバージョンの試作機がいくつかあり,そのうち2つでは,センサーの配置がまったく異なっていた。とにかく握り方のサンプルを多く取らないと,ベターな配置は決まらないと思われるだけに,なかなか難しそうではある。
ともあれ,センサーで取得された心拍数と発汗状況のデータは,USBケーブル経由でPCに送られ,アプリケーション側から確認できるようになる。
下に掲載した写真は,マウスのクリック回数,移動量と合わせて,心拍数や発汗具合を表示するデモアプリケーションのものだ。上から3つめの「HEART BEAT」が心拍数,「SKIN RESPONSE」が発汗状況を示している。
下に示した2枚の写真を見てもらえればと思うが,デモにおけるゲーム画面には,数字の描かれた緑色の円が3つ,オーバーレイ表示されている。これらが,心拍数や発汗状況のスコアだ。円はただ数字を示すだけでなく,平常時は緑色なのが,急激に上昇すると赤色になるといった具合で,視覚的なインジケータにもなっていた。これらオーバーレイ表示は,画面内の好きな場所へドラッグ&ドロップで配置できるという。
オーバーレイ表示はあくまでもNAOS QGのドライバソフトウェアが行うため,ゲームアプリケーション側で対応する必要はないとのこと。イメージとしては,「Fraps」のフレームレート表示に近い。
ただ,Mionixでは,心拍数や発汗具合をマウスから取得するAPIをソフトウェア開発者に公開すると表明しているので,ゲームデベロッパがやろうと思えば,ゲーム側の機能として,これらのスコアを使うことも可能になるだろう。FPSやMOBAの対Bot戦で難度調整を行ったり,ホラーゲームでより効果的な脅かしをしたりするのに使えるかもしれない。
なお,先ほど示したデモ画面で,数字入りの円が3つあり,「心拍数と発汗状況と,もう1つは?」と思った人もいるだろうが,NAOS QGでは,同じ製品を使っている他のユーザーの心拍数や発汗具合をネットワーク経由で取得して自分の画面上に表示する機能も持っている。デモの写真でいうと,画面上にオーバーレイ表示されている3つのスコアのうち,2つはユーザーの心拍数と発汗状況だが,もう1つは,同一のネットワーク内で同じくBorderlands 2をプレイしている,別のプレイヤーの心拍数だ。
筆者はSuess氏に,「MMORPGで仲間が寝落ちしそうなときに,これがあれば『おい! 寝るんじゃない!』と警告できるね」といったところ,大笑いされたりしたが。
チーム戦を有利に導くアイテムとしては,確かに役立つかもしれない。もっとも,活用するためには,チームのメンバー全員が同じNAOS QGを使っていなくてはならないので,ハードルはやや高い。また,一種のハードウェアチート扱いされて,ゲーム大会や競技会では使用を禁止されたりするのではないか,という懸念もないではない。
マウスの進化として,心拍数や発汗を計測するのが正しいアプローチかどうかはともかく,マウスにもさまざまなセンサー技術を取り入れることで,新しい価値を生み出したいというMionixの考え方自体は,同意できるのではないだろうか。
このNAOS QGだが,現在クラウドファウンディングサイトのKickstarterで,10万ドルを目標とした出資を募っている最中である。締め切りは2015年1月13日とのことで,本稿執筆時点では約8万9600ドルを集めている。ただし,残り時間は3日程度しかないので,成功するかどうかは微妙なところだろう。
とはいえ,Kickstarterで目標額に達しなかったら製品化もお流れ,というわけではないらしい。Suess氏は,2015年8月発売予定で,価格は約129ドルと,具体的な数字を上げていたからだ。
Kickstarterのプロジェクトがどうなるかは分からないが,興味を持った人はチェックしてみると面白いのではないだろうか。
KickstarterのNAOS QG取り扱いページ(英語)
PMW3310シリーズ搭載の右手用マウス新モデル「CASTOR」
Mionixのゲーマー向けマウスには,左右対称形状のAVIORシリーズと,右手専用形状のNAOSシリーズがラインナップされているが,CASTORはこれらと異なる形状を採用する,右手用マウスの新シリーズとなる。
搭載センサーはPixArt Imaging(旧Avago Technologies)製の光学式センサーであるPMW3310シリーズを採用するとのことだ。
米国市場では2015年3月発売予定で,メーカー想定売価は69ドル程度とのこと。日本での発売も期待したい。
Mionix 公式Webサイト(英語)
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