インタビュー
マーベラスAQLの爆乳プロデューサー,高木謙一郎氏にインタビュー。「デカ盛り 閃乱カグラ」は,「面白いことはいくらでもできる」という考えから生まれた
どのタイトルも,登場人物のほとんどが爆乳の女の子達であるというキャッチーな見た目,それでいて硬派なストーリーとアクションゲームとしての遊びやすさなどが評価され,各方面で人気を集めている。
そして2014年3月20日には,最新作としてシリーズのスピンオフ作品「デカ盛り 閃乱カグラ 本体パックA(半蔵・紅蓮)」の配信が,PlayStation Vita向けにスタートした。4月24日には「本体パックB(月閃・蛇女)」の配信も予定されている(セット購入の場合も,本体パックBがプレイできるのは4月24日以降となる)。
これまでのシリーズとはまったく異なるゲームシステムや,どういうわけだか料理がテーマになっている点など,本作には「なんで?」と気になるところが多い。そういったあたりを,マーベラスAQLの爆乳プロデューサーこと高木謙一郎氏にまとめて聞いてみた。
「デカ盛り 閃乱カグラ」公式サイト
ファンの幅を広げるべく企画された
スピンオフ「爆乳クッキング」
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
まずは,「デカ盛り 閃乱カグラ」という形で,本編とは別のスピンオフ作品を出すことになった経緯を教えてください。
これまでシリーズの本編をニンテンドー3DSで2本,PlayStation Vitaで1本出してきたんですが,このタイミングで本編とは違う新しい切り口で,「閃乱カグラ」を楽しんでいただきたいと考えました。「爆乳ピンボール」「爆乳ドッジボール」「爆乳クッキング」みたいな番外編を,いつかやりたいと常々思っていて……。
それに加えて,「閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-」(以下,SHINOVI VERSUS)が,皆さんの応援のおかげで予想以上の本数を記録できたのもあって。
4Gamer:
あの勢いはすごかったですね。PlayStation Vita本体の値下げとタイミングも重なって,発売日には大手量販店の店頭から姿を消していたほどで。
高木氏:
番外編を出すなら今がチャンスだな,と。
それに,同時期に進行していた「閃乱カグラ2 -真紅-」(以下,閃乱カグラ2)についても,いい感じでクオリティが上がってきていて,少し時間をかけて作り込みたいと考えていたんです。ただ,そうなると閃乱カグラ2の発売予定の8月まで,SHINOVI VERSUSから1年半近くも間が空き,皆さんをお待たせしてしまうこともあって……。
その間シリーズを愛してくださっている皆さんにも喜んでいただける企画をと思い,デカ盛り 閃乱カグラの制作を始めることにしたんです。
4Gamer:
具体的にいつ頃でしょう?
高木氏:
昨年の春,3〜4月頃ですね。
4Gamer:
となると,企画が始まってからちょうど1年で配信開始というわけですね。
先ほどの三つの番外編候補から,今回はクッキングというアイデアが採用されたということかと思いますが,そこにリズムゲームが融合するという仕様は,当時から思い描いていたものなんでしょうか?
高木氏:
アイデア段階での内容は少し違うものでした。ただ,“可愛い女の子が料理をしている姿を楽しむ”という,人間の三大欲求のうち,性欲と食欲の二つを同時に満たせるタイトルとして,面白く仕上げられるだろうという点は,最初からぶれていません(笑)。
4Gamer:
人間の欲求に深く根ざしたコンセプトだったんですね。言われるまで気付きませんでした。ちなみに,料理というテーマ自体は,すんなり決まったんでしょうか?
高木氏:
ええ。各キャラクターの好きな食べ物については,公式サイトのプロフィールにも記載してありますしね。
それだけでなく,1作目からみんなでわいわい太巻きを食べるシーンがありますし,“食”については今までのシリーズで少なからず触れてきたこともあって,すんなり決まったという印象です。
4Gamer:
発表当初は,ファンから「キャラソンを作りたいだけじゃないの?」なんてツッコミもありましたが,そこの真偽はいかがでしょう?
高木氏:
そこですか!(笑)
「だけ」ではないですが,我々がいろいろと作りたい中の一つに,キャラソンは入っていましたね。今回は各勢力のリーダー4人と大道寺先輩&凛が歌入りなんですが,閃乱カグラならではの内容になっていますので,ぜひお楽しみください。
“見たい”という欲に勝てるかどうかの
男の闘いが繰り広げられていく
4Gamer:
今回パッケージではなく,ダウンロード販売のみとしたのはなぜなんですか?
閃乱カグラという名前は,徐々に認知されてきていると思うのですが,“美少女アクションゲーム”という少しニッチなジャンルなんです。パッケージだと,興味を持っていても手を伸ばしにくいと感じる方もまだいらっしゃると思います。
そこで,もう少し手軽にこの世界のノリを感じてもらえるタイトルがあってもいいかなと考えて,今回はダウンロードでAとBの二つのパックを,それぞれ2315円(税別)という手に取りやすい価格で提供させていただくことにしました。
ちなみに,セットのほうがお得です(※)。
※本体パックA+Bセットの価格は現在3889円(税別)。ただし2014年4月24日以降は,4167円(税別)となる
4Gamer:
店頭で「閃乱カグラください!」と言わなくて済むうえに,価格的にも手を出しやすくした,と。
となるとこれは,閃乱カグラシリーズファンのみに向けた作品ではなく,まだ接したことのない人も視野に入れているということですか?
高木氏:
ええ,そういうことです。
4Gamer:
でも,そういう人がこのデカ盛り 閃乱カグラの内容を見たら,ビックリしそうです。
高木氏:
確かに(笑)。今まで見たことのないインパクトのある作品に仕上がったと思います。
4Gamer:
これまでのシリーズって,女の子が可愛くて,お色気があって,おバカなノリを前面に押し出していますが,実際にゲームで遊んでいると,それらを忘れてついつい熱中してしまうようなものでしたよね。今回の場合は,どんな楽しみ方になると想定していますか?
高木氏:
リズムゲームですから,曲に合わせて楽しく遊ぶというのが基本です。
……でも,リズムゲームの後ろで料理をしている女の子のいろいろなところがチラチラと見えるわけですよ。そこで気が散ってよそ見をして,ミスをしてしまうというところが,僕は面白いと思っているんですよね。
4Gamer:
見たいけど見ちゃうとうまく操作できないし,ゲームに集中しようとすると,今度は背景が気になって気が散るというあたりですね。
高木氏:
ええ。僕らはそこを良しとしたいなと思っているんです。見たいという欲に勝てるかどうかの,男の戦いですよ!
4Gamer:
つまりこれは,ゲーム側からのプレイヤーに対する挑戦状ということですね。
高木氏:
そういうことですね。
「両奈はきっと天ぷらとして揚げられたい」
という思いつきから,全員の設定が決まる
4Gamer:
本作の演出などに,1980年代後半に人気を博したグルメ漫画的な表現が多く見られる気がするんですが,やはり意識したんでしょうか?
高木氏:
僕もその世代ですからね(笑)。イメージとしてすごく伝わりやすいので,リスペクトしているところはあります。
4Gamer:
美味しさの表現として正しいかどうかはさておき,とくに半蔵のリアクションは,あの作品の影響が見え隠れしていますね。ほかのキャラクターにも,ああいう感じのリアクションはあるんですか?
高木氏:
はい,22キャラクター全員分用意しています。ちょっと無駄にパワーを注ぎ過ぎた気もしていますが。
4Gamer:
そうなると,そこにつながる22人分のシナリオも気になりますね。
高木氏:
SHINOVI VERSUSのアーケードモードのように,シリーズ本編とは別にキャラクター個別のストーリーを用意することは考えていました。
そこに料理をどう結びつけるか悩んだんですが,ある日ふと「両奈ならきっと油で揚げられて天ぷらになりたいに違いない!」と思いついて……。そこからは,あまり時間がかかりませんでした。
4Gamer:
全員を料理していく感じですね。ちなみに高木さんや開発陣の中で好評なのは誰ですか?
高木氏:
日影のたこ焼きなんかは,シンプルで美味しそうですよね。僕個人としては,両奈の天ぷらにある,“何かが出ている”チクワが気に入っているんですが。
4Gamer:
キャラクターのイメージイラストにある料理も,すごく美味しそうですよね。このイラストを発注したときは,どういうイメージで伝えたんでしょうか。
高木氏:
まずはこちらで考えたポーズのラフと料理の設定を,キャラクターデザインの八重樫 南さんにお渡しして,それをアレンジしていただくという手順でした。
基本的にその流れは,1作目から変わっていないんです。
4Gamer:
料理と絡めることについて,八重樫さんから疑問の声などは上がりませんでした? 難しいなぁ,とか。
高木氏:
これまで料理の絵を描く機会があまりなかったので,最初のうちは女の子だけを描いてもらうときの倍以上の時間がかかりました。でも後半はコツをつかんだのか,ペースがどんどん上がっていって,どれもすごく美味しそうなイラストに仕上がりました。
4Gamer:
食べ物と女の子を同時に描いて,両者を魅力的にしなければならないわけで,そこはきっと難しいですよね。しかも食べ物ですから,粗末に扱うと罰が当たりますし。
高木氏:
ええ。食べ物を粗末に扱うことは,人間として絶対にやりたくないことですから,そこは徹底して,汚くならないように可愛く描いていただきました。
長く続けたい希望を胸に抱きつつ,
続かないとも思っていた「閃乱カグラ」シリーズ
4Gamer:
ゲームシステム的な部分について,何かセールスポイント的な要素はありますか?
高木氏:
今回も,ゲームとして特別なことをやっているわけではないんです。これまで同様に分かりやすく。突拍子もないことをやって,理解しにくくなってしまうようなことは避けたかったんです。
基本は女の子たちを愛でるゲームですから,気軽に遊べる感覚は失わないようにしています。シンプルに遊んで,クリアできたら「女体盛り」というご褒美が待っているという,ごく単純なものですね。
4Gamer:
スタンダードなつくりの上に女体盛りのような内容が乗っているから,遊びやすく,かつキャッチーなものになるということですね。
高木氏:
はい,説明書を読まなくても気軽に遊べる内容になっています。
4Gamer:
そこまで気軽ということですと,スマートフォンのようなプラットフォームは選択肢として考えなかったんですか?
高木氏:
僕はコンシューマ機が好きなので,これまで続けてきたPlayStation Vitaやニンテンドー3DSで面白いことをやりたいという気持ちが強かったんです。
4Gamer:
ではPlayStation 4のような,据置機での可能性はいかがですか? ゲームの性質上,移動中などではなく,家の綺麗な画面でやりたいという人もいるかと思うんですが。
高木氏:
すごく興味はあります(笑)。
最近の僕の作品ではちょっとご無沙汰していますが,僕自身,ゲームの花形は据置機だと思っていますから,もしチャンスがあればなるべくやりたいという気持ちはあります。
カメラやらARやら,最新の機能を使ってやれたら楽しそうなことはいくらでもありますからね。
4Gamer:
確かに,いろいろと想像するだけで楽しげです。
ちなみに,閃乱カグラシリーズは今年で3年目となりますが,高木さんご自身として,ここまで続くことは想定していましたか?
高木氏:
企画者として,当初からシリーズを長く続けたいという目標は持っていました。ただ,やはり現実の厳しさも知っていますから,順調に続くと思っていなかったというのも事実です。
先のことは考えず,その都度,全力で取り組んできた結果,ここまでたどり着けたのだと思っています。ここまでシリーズが続いて,さらに先を続けられているというのは,本当にありがたいことですよ。応援してくれている皆さんに感謝です。
4Gamer:
シリーズが続くにつれてプロジェクトの規模が大きくなったりすると,プロデューサーとしてそれをコントロールしづらいと感じるようなことはありませんか?
高木氏:
1作目のときは完全新作で,隅っこで好き勝手にやっていましたけど,関わる人が増えてくれば,好き勝手にやるのは難しくなってくるのも確かです。
ただ幸いなことにマーベラスの場合,今も変わらず放置気味で仕事をさせてもらっています。好き放題していても結果をきっちり出している限り,とくに何も言われません(笑)。
4Gamer:
実際にそれができているのは素晴らしいと思います。
高木氏:
ありがとうございます。開発スタッフも周りの人達の理解も含めて,すごく恵まれた環境だといつも思っています。
明るく,楽しく,笑って終えられる本作
二つのパックはぜひ両方遊んでみてほしい
4Gamer:
今回は,リズムゲームということで,音楽についても聞かせてください。楽曲制作はどのように進められたんですか?
高木氏:
曲はこれまでのシリーズを手掛けてくれた2人の作曲家にお願いしています。キャラクターごとのイメージとアイデアは,発注時にこちらから出しています。
さらに,今回は歌入りが7曲あるんですが,その作詞は僕が担当しました。
4Gamer:
全体的に高木さんが思い描いていたものになっていますか?
高木氏:
なっていると思います。「ふとまきニンニン」とか,タイトルに困惑しつつも,みなさんうまいところに落としてくれました(笑)。
4Gamer:
さすがプロですよね。閃乱カグラシリーズは,熱いストーリーなども魅力ですが,一方,ドラマCDなどでは非常に砕けたノリのものが多いイメージを持っているんですが,今回は後者寄りということで間違いないでしょうか?
高木氏:
ええ。バカに始まってバカに終わるという,ドラマCDでもさらに異端の,明るく,楽しく,笑ってゲームを終えられる作品を目指しています。
前作にあたるSHINOVI VERSUSをやっていれば,さらに笑える仕上がりになっていると思いますよ(笑)。
4Gamer:
本当ですか!? それは楽しみです。
ちなみにこのお話は,閃乱カグラ2に続いたりは……していないですよね?
高木氏:
それはないです。あくまで「番外編スペシャル」と捉えてください。とにかくなんでもありな内容ですので。
4Gamer:
パックAとパックBをずらしてリリースするという販売方法にも驚かされたんですが,あれはやはり両方買うべきでしょうか?
高木氏:
より手軽に手に取っていただけるように二つのパックに分けています。一つプレイして気に入ったらもう一つも……というイメージです。と言いつつも,やはり両方を遊んでほしい気持ちは大きいです。基本的にはそれで一つのゲームになりますからね。
期間限定でセット価格も少し安くしていますし,4月23日までに買っていただくのがおすすめです(笑)。
4Gamer:
ちなみに,パックBが4月24日にリリースされて以降は,デカ盛り 閃乱カグラに関するアップデートなどは打ち止めでしょうか?
高木氏:
いえ,最近のコンシューマゲームも売って終わりではなく,その後にアップデート対応されているものが増えてきていますし,バックBの発売以降もより遊びやすくするための対応をしていきますよ。
4Gamer:
そういえば,SHINOVI VERSUSもずっとアップデートされていますね。
高木氏:
あれも当初から計画していたものではなくて,皆さんに面白いと言っていただけたので,開発スタッフも嬉しくなって,仕事とは違うテンションで勝手に直していたんですよ(笑)。
そういう意味でも,チーム内部もプレイヤーさんとの関係も,非常に良いものができていますよね。
このデカ盛り 閃乱カグラは,SHINOVI VERSUSとは違うチームで作っているんですが,チームのテンションはこれまで同様に非常に高いので,これからのアップデートにご期待ください。
4Gamer:
とはいえ,以前の作品のアップデートをしつつ,同じチームで新作を手掛けるとなると,結果的に仕事は増えていきますよね。
高木氏:
現実的には,一つ終わったら次に新しいものを始めなければいけないので,その合間の作業となってしまいますが,プレイヤーの皆さんが喜んでくれることを思うと,なかなか終われないんですよね。
自分がいちプレイヤーであったときに,こうあってほしいと思っていたものをやるのが,閃乱カグラシリーズの方針の一つではあります。
4Gamer:
そう言いながらも,デカ盛りがメガ盛りになって,特典付きパッケージで発売するなんてことは……?(笑)
高木氏:
その予定は今のところありません。確かに,パッケージという形に残したいという気持ちもゼロではありませんが,今回のA+Bという売り方も新しい提案の一つであり,そこからいろいろな可能性を探りつつ,さらに面白いことに挑戦していきたいですね。
同じことばかりやっていても面白くないですから,常にどこかで攻め続けていきます。
4Gamer:
その提案が,今回たまたまクッキングだったと。
そういうことですね。前回のSHINOVI VERSUSで衣装を全破壊させてしまったので,「それ以上何ができるんだ?」とも言われましたが,僕の中ではその先だっていくらでもやれると思っていたんです。女体盛りなどは,そこへの回答です。
4Gamer:
キリッ。という感じですね(笑)。
高木氏:
ふふ。女体盛りに限らず,「何だそれ!?」と言われるようなネタを,このデカ盛りにはたくさん仕込んでいますので,ぜひ遊んでいただいて,僕らの次の答えを受け止めてもらえれば嬉しいです。
4Gamer:
楽しみにしています!
現在社内で複数のプロジェクトを抱え「1人で作るには限界がある」とつぶやきつつも,本作ではボーカル曲すべての作詞を手掛けるなど,高木氏の閃乱カグラシリーズに対する思い入れは現在も相当強いようだ。
もしかしたらインタビュー冒頭で出た爆乳ピンボールや爆乳ドッジボールまでもを,本当に実現させてしまいそうな勢いすら感じられたのだが,果たしてこの先,閃乱カグラはどんな展開を見せるのだろうか。
まずはこのデカ盛り 閃乱カグラをプレイして,高木氏をはじめとする開発陣の熱意を,ゲラゲラ笑いながら感じてみてほしい。
「デカ盛り 閃乱カグラ」公式サイト
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デカ盛り 閃乱カグラ
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