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シンプルで懐かしい。だが,それだけでは終わらせない大暴れ系アクションゲーム,「ファイナル エグザム」をレビュー
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印刷2014/03/13 12:00

レビュー

ド派手な大技が炸裂する横スクロールアクション

ファイナル エグザム

Text by 津雲回転


 週末の夜,なんとなくテレビを見ていたら知らない映画が始まり,これが意外と面白く,ついつい最後まで見てしまった……という経験のある人は筆者だけではないだろう。タイトルや監督の名前は聞いたことがないし,出てくる役者さんも知らない人ばかり。じゃあつまらないのか? といえばそんなことはなく,映画の楽しさは知名度だけで決まるわけじゃないことを再確認できたりする。

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 ズーが2014年3月4日に配信を開始した,PlayStation 3向けのダウンロード専用ゲーム「ファイナル エグザム」は,まさにそんな“深夜映画”のような作品だ。
 個性豊かな……というより“ぶっ飛んだ”4人のキャラクターの中から1人を選び,異形の……というかこちらも,いかにもB級ホラー映画に出てきそうなモンスター達を鈍器や銃器で次々なぎ倒していく,最近では少し懐かしくなった単純明快な横スクロールアクションゲームになっている。無料の体験版をダウンロードしたのち,1800円の解除キーを購入すると製品版としてプレイすることが可能というリーズナブルさも魅力だ。

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 北米では2013年11月8日に配信が開始された本作だが,今回新たにリリースされたのは日本語字幕版だ。筆者はこの日本語版をプレイする機会を得たので,ゲームの概要とプレイフィールをお届けしたい。

「ファイナル エグザム」公式サイト



古典的な横スクロールアクションだが
戦闘がすべてではない


 冒頭でも書いたとおり,本作の基本は極めてスタンダードな横スクロールのアクションで,ステージにはいかにも奥へ進めそうな背景があるが,実際には奥行きの概念はない。プレイヤーは,ソロあるいは最大4人のCo-op(協力プレイ)で,チュートリアルを除く全8ステージを,主として力ずくで突き進んでいく。

 攻撃方法は近接(鈍器,刃物),遠距離(銃器),グレネード(爆弾)が標準で装備されており,後述するように,ポイントを溜めてアンロックできるスキルや特殊技が存在する。最初は近接攻撃を使う場面が多くなるだろうが,キャラクターの特徴や敵の弱点,さらにはタイミングや距離を考慮して武器を適切に使い分けていくことが攻略のコツだ。

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 メインは戦闘だが,それだけでは先に進めず,道中さまざまなタスクを1人,あるいは仲間と協力しながらクリアしていく必要がある。タスクとしては例えば,「発電機を動かすために,ガソリンタンクを担いで持ってくる」とか「乗り物の修理/補強のために,金属製の看板をゲットしてくる」とか,そういう感じだ。

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 一つのタスクをクリアすると,新たなタスクが登場する。ステージクリアまでこれを繰り返す必要があるが,目的地はきちんとガイドされるので,迷うことはあまりない。

 タスクをこなしている間も,戦闘は容赦なく発生する。戦いながら進められるタスクもあるものの,ガソリンタンクや木箱といった大型のオブジェクトは両手で担ぐ必要があるため,攻撃手段がほぼなくなり,走ることもできなくなる。さらに,爆弾ケースのように,持っているときに攻撃を食らうと爆発してしまうものもあり,しかもそれを敵のど真ん中を突き抜けて運ぶ必要があったりするので,なかなか大変だ。

ニトロの箱を運んでいる様子。ダメージを食らうと,ドカン! と爆発してしまうだけでなく,最初から運び直し
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 これらのタスクは戦闘一辺倒からくるマンネリ感を防ぐ役割を果たしており,また危険物なら「素早くクリアするため,リスクを承知で逃げながら持っていく」のか「安全のために,いったん置いて敵の殲滅を優先する」のかという,戦略的な判断を迫られて面白い。
 さらにCo-opなら,「みんなで協力して運ぶ」か「手分けして一気にクリアを目指す」かという,進め方自体の違いにもつながっていく。タスクによっては少々面倒に感じることもあるのだが,基本的には本作の良いスパイスになっているという印象だ。

 また,ステージを進めていると突如ラッシュが発生することがあり,普段以上に敵が大挙して出てくる。これがまた絶妙のタイミングで発生することが多く,例えば「あと一息で爆発物を運び終わる!」というところでラッシュが襲ってきたりするのだ。タスクとうまく組み合わせられた,なかなか憎い演出と言えるだろう。

両手がふさがっているときに限って,敵のラッシュが発生する。運搬を続けるのは諦めて,まず敵を片付けよう
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んじゃ,イカれたメンバーを紹介するぜ!
「脳筋」「ガンマニア」「オタク」「ダンサー」以上だ!


 本作で選択可能なキャラクターは4人で,見るからに筋肉の塊というアメフト野郎「ジョー」,銃器をこよなく愛するガンマニア「ショーン」,機械いじりと爆発物が大好きな「ネイサン」,紅一点でストリートダンサーの「キャシー」となっている。ある意味,これも古典的なステレオタイプのキャラクター達だが,それゆえに彼らの特徴もすぐに分かる。

ジョー ショーン
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銃器の扱いはまったくダメだが,体力自慢で近接攻撃力が高い「ジョー」。初心者でも安心して扱えるキャラだ
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とくに銃器の扱いに長け,近接攻撃もそれなりに得意で,体力も高めなのが「ショーン」。バランスが良い

ネイサン キャシー
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体力と爆発物の取り扱い能力だけが異常に高い「ネイサン」。グレネードは出現数と所持可能数が少ないため,扱いづらいトリッキーなキャラ
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プレイ可能な唯一の女性キャラクターである「キャシー」。バランスタイプなのだが,戦闘では決め手に欠けることが多く,火力も若干物足りない

 キャラクターは趣味で選んでまったく構わないのだが,オススメとしては,使用頻度が高い近接攻撃に優れ,体力の伸びしろも大きいジョーか,グレネード以外はおおむね得意なショーンが良さそうだ。ネイサンとキャシーは,ゲームに慣れないうちは苦戦すると思われるので,最初に選ぶキャラとしてはちょっと厳しい。

 本作には探索要素も導入されており,ステージの中に2個隠されている緑色のコンテナを破壊することで新しい武器が取得でき,武器を2つ集めるとキャラクターのステータス(身体特性)を1ポイント上げられる。また,探索中に光る缶を発見することもあるが,これをステージにある7つすべて集めると,こちらもまた1ポイント,ステータスをアップできる。つまり1ステージで2ポイントの底上げが可能になるわけだが,面倒なら,とりあえずコンテナだけは探しておきたいところ。

緑の武器コンテナと光る缶。前半は探しやすい場所にあるが,ゲームが進むにつれて,だんだん見つけにくくなる
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緑のコンテナを見つけると使える武器が増えるので,なるべく見つけておきたい
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身体特性(ステータス)を上げるときは「ライフと特技をのばす」ことが重要だ。弱点をカバーしてもメリットは少ない
 プレイヤーキャラクターのパワーアップ手段は武器だけではなく,ゲームを進めることで溜まるスキルポイント(SP)で「キャラクタースキル」をアンロックすることもできる。
 スキルのカテゴリーには,素手での戦闘技を増やす「格闘」,ライフの回復量などを増やす「パッシブ」,そしてキャラクター固有の大技を繰り出せる「特殊」がある。目玉スキルともいえる「特殊」は,例えばジョーなら一定時間攻撃力アップや無敵,ショーンなら弾薬無限で貫通弾や爆裂弾がいくらでも連射できるといった,強力無比な技が繰り出せるものだ。
 発動するには敵を倒して左上のスキルゲージを溜める必要があるが,強力な技で敵をまとめてなぎ倒したときの爽快感は抜群なので,積極的に取得して使っていきたい。
 なお,スキルポイントはステージクリア時のスコアによってもらえる量が決まる。コンボを多く決めたり,素早くクリアしたりするとスコアが増えるので,確実に狙っていきたい。

ショーンの爆裂弾乱れ撃ち。弾が無限になるので,いくらでも撃てるし,効果も高い。おまけに見た目も派手だ
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ツリー形式で解除していくキャラクタースキル。ステージを高いスコアでクリアするほど,たくさんのスキルポイントが取得できる
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ため攻撃のスキルを取得すると,武器ごとに技を発動できる。写真は複数の敵を一直線に斬りつけ,スリップダメージを与えるというもの

 キャラクターの紹介ついでに,ここでストーリーについても簡単に触れておきたい。
 同窓会に向かうために車で移動する上記の4人の前に,正体不明のモンスターが登場する。驚いて慌ててハンドルを切るも避けきれず,車は大破。同窓会どころでなくなった彼らは,モンスターから生き延びるため,武器を手にそこからの脱出を試みる,といった感じだ。
 ……と,どうもいろいろと唐突すぎる感はあるが,このへんもB級映画感覚でいい感じだ。もっとも,本作の基本はあくまで次々とわいてくる敵を片っ端から叩きのめすことにあり,ストーリーはぶっちゃけ,添え物。愛と感動の壮大な物語など期待してもしょうがないし,むしろジャマ。時折挿入されるカットシーンは,あくまで箸休めタイムと割り切っていいだろう。

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本作を彩る個性豊かな(?)登場人物達。全体的にふくよかな人達が多い
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簡単操作で敵を粉砕!
攻略のキモになる“ドッジ”を使いこなせ!


基本操作はこんな感じ
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 ゲーム操作に関しては,移動はほぼすべてを[左スティック]の左右移動と[×]ボタンのジャンプのみで行う。あとは[□]ボタンで近接攻撃(連打でコンボ),[△]ボタンでドッジ(回避動作),[○]ボタンで階段/ハシゴの利用やオブジェクトへのアクション,[R1ボタン]で射撃攻撃,そして[R2トリガー]でグレネードといった感じだ。
 以上,だいたいすべてのボタンを使うものの,1ボタン1アクションとシンプルにまとまっているので,チュートリアルステージをしっかりやっておけば,覚えるのはそう難しくない。

チュートリアルステージでは,しっかり操作が学べる
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 コンボはボタンを連打するだけで出るし,射撃も初期設定では自動照準なので,連射できる銃は[L1ボタン]を押し続けるだけで撃ち続けられる。このように,細かいコマンドを覚える必要もなく敵を次々バラバラにできるのは少し懐かしく,アクションゲームが本来持っている爽快感を思い出させてくれる。

 戦闘をこなすうえでとくに重要だと感じたのが,[△]ボタンの「ドッジ」だ。本作はコンボで点数を稼ぐシステムになっている関係から,敵の耐久力はかなり高く,1回の戦闘は自然と長くなる。また,体力が低いうちは相手の攻撃がかなり痛く,さらに次々出てくる敵に遠距離や背後から狙われることが頻繁に起こるため,まともに食らっては命がいくつあっても足りない。見た目や操作の単純さに反して,攻撃だけでクリアできるほど大味な出来ではないのだ。

 そこでドッジの出番となる。ドッジを発動すると,瞬時に進行方向に高速移動し,その間はほとんどの敵の攻撃を無効にできる。これは回避だけでなく,一気に敵との距離を詰めたり,背後に回って一方的に攻撃できるポジションを確保したりと,使いどころが非常に多い。まさに攻防一体となった,ある意味,本作の戦闘の要と言えるものかもしれない。

ドッジ性能を向上させる「素早いドッジ」。画面の説明では分かりにくいが,あれば戦闘の幅が広がる
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 ちなみに,キャラクタースキルの中には,ドッジの速度を向上させ,さらに空中でも発動(≒空中ダッシュ)できるようになる「素早いドッジ」というスキルが存在する。見かけは地味なのだが,ゲーム開始直後から取得できるので,早めに取っておくと,後々楽になるだろう。


協力プレイでアツくなり
タイムアタックで孤独にヒートアップせよ


 本作はソロプレイのほか,オフラインでは2人同時,ネットワークを使えば最大4人のCo-opが楽しめる。ソロより2人プレイ,2人プレイより4人プレイという具合にハチャメチャさが上がり,味方が増えると敵もさらに増えるため,画面内は混沌としてくる。
 4人のプレイヤーが同じ画面内で暴れると,正直何が起こっているのかさっぱり分からないほどで,エフェクトが多すぎてダメージを食らっていることにすら気づかず,いつの間にか死にかけていた,などということも起きる。

4人で協力バトル……はいいのだが,自分がどこにいるのかすらよく分からなくなる
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 だが,それがいい。
 味方の攻撃がオーバーキル気味に炸裂するのは,マルチプレイならではの醍醐味だ。本作をプレイするなら,ぜひ一度はこの4人同時プレイを体験してほしいと思う。マッチングのしづらさを若干感じるが,コミュニケーションはそれほど重要でないゲームなので,一期一会で見知らぬ人と存分に暴れ回れる。もちろん,気心が知れた仲間達となら,笑いながら楽しめるだろう。

 本作では,一度クリアすると「タイムアタックモード」に挑戦できる。これは自分一人りで敵の猛攻を7分間しのぎ,どれだけのスコアを残せるかを試すものだ。時間が経つほど敵は強力になり,数も増える。難度は結構高いようで,恥ずかしながら筆者はスコアどころか最後までたどり着けなかった。まずはキャラクターをしっかり育てたうえで,自分の腕も磨く必要がありそうだ。

タイムアタック中の画面。まずは右上のタイマーが0になるまで耐えられないと話にならない
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中身はしっかりと作られたアクションゲーム
大作ではないが,気軽に熱中できる


近年のゲームの定番である「乗り物に乗って大暴れ!」というシーンも用意されている。武器がオーバーヒートするのが早いのが玉にキズ
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 本作をプレイして感じたことは,“いかにも洋ゲー”といったグラフィックスや大味なゲームシステムという第一印象に反して,プレイするにつれて,しっかり作られているゲームであることが分かったということだ。
 武器にはそれぞれ長所と短所があり,「強力な武器でとにかく突っ込めばOK」的なプレイは意外と難しいし,銃器はノックバックが少なめでリロードの隙もあることから「遠くを適当に撃ってりゃクリアできる」という感じでもない。たとえ順調に自分のステータスを上げても,敵も相応に強くなっていくため,最後までそこそこ手応えのあるバランスが続いて作業感がない。

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 一方で,それなりに気になる部分もある。各キャラ固有の特殊スキルを除けば戦闘技は全員ほぼ同じものだし,使用できる武器も共通で新鮮さに欠ける。また,キャラクターごとに武器の得意,不得意があるのに,ステージごとの武器の配置が同じなのも,あまり気が利いていない点だろう。中盤以降は,マップの使い回しが続く印象だ。

 とはいえ,価格を考えれば,そのクオリティとボリュームはなかなかのもの。小粒なタイトルという立場を逆手に取り,レトロゲームや映画のオマージュを違和感なく随所に入れ込んでいるのも,個人的にニヤリとさせられた部分だ。若干キツめの表現や海外ゲーム特有のテイストに抵抗感がなく,少し懐かしい横スクロールアクションにピンと来る人なら楽しい時間を過ごせるはずだ。まずは,体験版から試してみてはいかがだろうか。

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「ファイナル エグザム」公式サイト

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