レビュー
これぞ名作アクションRPGシリーズの原点
Fable Anniversary
日本マイクロソフトは,2014年2月6日にXbox 360向けアクションRPG「Fable Anniversary」を発売した。
「Fable Anniversary」公式サイト(※要年齢認証)
本作は,2004年にXboxで発売された初代「Fable」(日本版は2005年発売)をベースにあらゆる部分をブラッシュアップしたリメイク作だ。グラフィックスのフルHD化やロード時間の大幅な短縮をはじめ,PC版「フェイブル:ロスト チャプター」に追加されたコンテンツもすべて実装しており,まさに「Fable」完全版とも言える内容になっている。
本稿では,10年の時を経て再誕した「Fable」の魅力をお伝えしようと思う。
さて,「Fable Anniversary」を語る前に,まずは「Fable」シリーズの概要を説明しよう。
同シリーズは,「ポピュラス」や「ダンジョンキーパー」等の開発者として知られる,ゲーム界の鬼才ピーター・モリニュー(Peter Molyneux)氏が手がけたアクションRPGである。これまでに3作のナンバリングタイトルが発売され,いずれも大ヒットを記録。さらにKinect専用の「Fable: The Journey」やXbox Live アーケード向けの「Fable Heroes」など,外伝的作品も多数登場している。
「Fable」シリーズの作品は,いずれも「アルビオン」と呼ばれる美しく雄大な世界が舞台で,この地に息づく者達の人生をドラマティックに描いている。童話の世界に迷い込んだような,どこか不思議な世界観や人間味溢れるキャラクターは,作り手のこだわりを強く感じさせてくれる。
今回,「Fable Anniversary」をプレイして,ひさしぶりに初代「Fable」の世界に触れたのだが,同シリーズならではの独特な雰囲気は,やはり素晴らしいと感じた。「古い」という感覚はまったくなく,むしろアルビオンの良さを再確認したくらいだ。
プレイしているうちに「ああ,これぞFableだな」と感慨に浸ることもしばしば。「この世界にいること自体が心地いい」と素直に思える――「Fable」とはそんな作品だったことを思い出した。
プレイヤーに委ねられた善悪のモラル
「Fable」最大の特徴と言えば,プレイヤーの行動次第で善悪のモラルが変化していくという,当時のRPGにおける既成概念に挑んだ斬新なシステムだろう。誰かの役に立つ立派な行動を続ければ“英雄”として賞賛され,逆に,暴力を振るったり物を盗んだりといった反社会的な行動ばかり取っていると“悪人”として非難される。
善の道に進むのか,それとも悪の道に進むのか。すべてはプレイヤー次第であり,この圧倒的な自由度こそ「Fable」が支持されている所以(ゆえん)だ。
前述のとおり,「Fable Anniversary」はリメイク作なので,基本的なストーリーはオリジナル版と同じである。主人公(プレイヤー)はオークベール村に住む少年。ある日,突如現れた山賊の襲撃により,父を殺され,姉とも離ればなれになってしまう。主人公も絶体絶命の危機に陥るが,英雄「メイズ」に助けられ一命を取り留める。そして「英雄ギルド」と呼ばれる施設で,英雄候補生として育て上げられ,やがて果てしない冒険へと旅立つことになる。
ここからメインシナリオをクリアすることで,ストーリーが進展していくわけだが,ひたすらサブシナリオに没頭してもかまわない。お金を貯めまくって家を購入するのも,プレゼント攻勢で女の子を口説くのも,すべてはプレイヤーの自由だ。
今振り返ってみても,「Fable」の高い自由度は画期的である。近年の海外産RPGによく見られる傾向ではあるが,「Fable」はその原点の1つだったと言えよう。
フルHDは伊達じゃない!
新作に引けをとらない美麗なグラフィックス
「Fable Anniversary」を語るうえで,フルHD化されたグラフィックスは外せない要素だ。当然と言えば当然なのだが,オリジナル版と比較すればその差は歴然。「本当に同じ作品なのか?」と思わせるほどのインパクトがある。
オリジナル版(左)と「Fable Anniversary」(右)の比較画像。その差は一目瞭然だろう |
とくに背景の描き込みは目を見張るものがあり,森や湖といった自然の空気感まで伝わる美しさだ。エフェクトも派手になり,見応えは十分。キャラクターのモデリングやモーションに関して,いささか古めかしさを感じたものの,HDリメイクされるタイトルの中でも随一の完成度であると断言したい。
グラフィックスはあくまでゲームの一要素とはいえ,美麗なグラフィックスがプレイヤーのモチベーションにつながることを実感した次第だ。コンシューマ機向けの完全新作と比べても,決して引けを取ることはないだろう。
一方,バトルシステムはオリジナル版を踏襲しているため,「Fable Anniversary」においても大きな違いはない。アクションが苦手な人でもすんなりと楽しめる,取っつきやすいシステムになっている。
もちろん,ストーリーが進むにつれて敵が徐々に強くなるため,ガードを多用したり,タイミングを図ったりといった戦略性はある。それでも全体的にアクションのテンポがもっさりとした感じで,やや古くさいという印象は避けられなかった。
このあたりは個人の好みに左右される部分だが,アクション自体にもうちょっとのメリハリがあれば,さらに良くなっていたと思う。
より遊びやすくなった改良点に注目
本作には,より遊びやすくするための改良も施されている。例えば,クエストの途中でもセーブが可能になっているのは,オリジナル版で何度も苦汁を舐めさせられた経験がある筆者にとって,かなり嬉しいポイントだ。そのほかにもロード時間の大幅な短縮,見やすくなったUI,Xbox SmartGlassへの対応などが挙げられ,単なるHD化の移植作に留まっていない。
とくにXbox SmartGlassについては,スマートフォンやタブレットにアプリを導入すれば,オリジナル版と画面を比較したり,ワールドマップを閲覧したり,秘密の場所を発見したりといった,新たな楽しみ方を生み出せる。あくまでサポートツールの域は出ていないものの,10年前にはありえなかった世界の広がりを体験できるはずだ。
今回,10年ぶりのリメイクということで,「Fable Anniversary」の生まれ変わった要素を中心に紹介してきたが,いかがだっただろうか。
「クラシック」と呼んでも差し支えない作品だが,そのオリジナリティは依然として健在だった。本稿を読んで気になったという人はもちろん,従来のRPGに物足りなさを感じている人にも,「Fable Anniversary」は自信を持っておすすめしたい。
それでは,良きアルビオンライフを。
「Fable Anniversary」公式サイト(※要年齢認証)
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