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印刷2019/03/22 21:12

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[GDC 2019]カジュアルなモバイルゲームで,物語をなるべく小さくプレイヤーに伝える方法とは

 Activision Blizzard傘下のKingは,カジュアルなスマートフォン向けゲームで知られるスウェーデンのメーカーだ。「Candy Crush」シリーズはPCにも移植されており,「『Candy Crush』のデスクトップアイコンを一度も見たことがない」という人は,どちらかと言えば少数派ではないだろうか。

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 そんなカジュアルゲームの雄であるKingには,ナラティブ部門(ゲームから得られる物語の体験を専門に扱う部署)が存在する。1プレイが短時間で終わり,これといったストーリーパートも持たないCandy Crushシリーズにも関わらず,物語を担当する部門が存在するのだ。
 GDC 2019では,KingでNarrative Designを担当するTracey John氏が登壇し,Candy Crushシリーズにおける物語の描き方を語った。


文字は読みたくないけど,物語はほしい


 John氏はまず,「『私はKingでナラティブデザイナーを担当しています』と自己紹介すると,非常に多くの場合,『Kingでナラティブデザイナー?』と笑われます」と挨拶した。ゲーム業界で働いている人にとってさえ,同社の作品には物語が存在しないか,重視されていないという先入観があるのだ。

左上の写真の右から2番目がTracey John氏
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 しかし,Candy Crushシリーズのプレイヤーは実は物語を求めている。KingのシニアナラティブデザイナーであるStephanie Prue氏2016年に行った講演で具体的な数字が示されており,「ゲーム内においてストーリーを伝える画面をスキップするのは,全プレイヤーの50%」という調査結果が出ている。つまり,プレイヤーの半分は物語を読んでいることになる。
 このことは直近の調査からも垣間見えており,「Candy Crush Friends Sagaを改良するとしたら,どこを改良しますか?」という問いに対して,要望の3位にあたる13%が「キャラクターとその役割を紹介する」,そして12%(同5位)が「もっとストーリー要素を加える」と回答している。合計すると43%のプレイヤーが,作品の世界観やキャラクター性にまつわる要望を持っていることになる。

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 とはいえJohn氏は,「Candy Crushシリーズのプレイヤーは,ゲームに楽しさとリラックスを求める非常にカジュアルな人達であり,『文字を読む』ことはほとんど期待できず,せいぜい『流し見る』のが限界だ」と指摘した。
 実際,プレイヤーに「Candy Crushのキャラクターについて何らか知っていますか?」と聞くと,「はい」と答えたプレイヤーは13〜17%。半分はストーリー画面をスキップしないにもかかわらず,頭には入っていないのだ。同様に,作品にとって重要なキャラクターとなる「Tiffi」の画像を見せて名前を聞くと,せいぜい「Fifiだったっけ?」という反応が返ってくる程度だそうだ。

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 この結果からは,Candy Crushシリーズのプレイヤーは「物語はほしい,でも文字はなるべく読みたくない」という欲求を持っていることが結論づけられる。果たして,この見るからに無理難題に対して,ナラティブデザイナーは何ができるのだろうか?


限られた条件の内側で物語をつむぐ,4つの方針


 これに対し,John氏は「4つの方針がある」と語った。順番に見てみよう。

(1)コンテキスト
 ゲームの向こう側に,世界がちゃんとあるように感じさせること。
 Candy Crushシリーズでは,「ローディング画面でステージについて短いテキストで説明する」ことだけでなく,ゲームの機能に対しても世界観と合致させるような工夫をしている。例えば宝箱を開ける鍵は一定時間で失われてしまうが,これには「鍵を運んでいるキャラクターは甘いものが大好きで,かつ鍵がお菓子でできているから」という設定が用意された。もちろん,時間切れになった場合には,「鍵を運んでいるキャラクターがお腹を減らして,鍵を食べてしまった」という説明の一文が加えられている。

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(2)分かりやすさ
 ゲームの中で起きていることを,プレイヤーに理解されやすいものとする。
 このために有用なのはアニメーションで,ゲームの機能説明ではとくにゲームキャラクターを用いたアニメーション(キャラクターが登場して,「実際に何が起こるか」を見せる)が活用されている。
 カジュアルなモバイルゲームの場合,時間を空けてログインしたり,物語の説明がスキップされることが頻繁に起こる。このため,「1つ前の話をスキップした」場合でも理解できるように,それぞれの会話シーンを独立して楽しめるものにしなくてはならない。

どれか1つしか読まなくても面白い
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(3)一貫性
 すべての物語要素がバラバラになることなく,一貫していなくてはならない。
 テクニック的なことを言えば,物語を記述するさまざまな用語は統一されていなくてはならないし,ローカライズにあたっても,それぞれの言語でそうした統一が維持されなくてはならない。
 とくにカジュアルなモバイルゲームの場合,キャラクターの与える印象は常に同じであることが望ましい。つまり「ちょっとイヤなヤツ」とプレイヤーに認識させたいのであれば,どんな状況でも「ちょっとイヤなヤツ」でなくてはならない。「いつもはイヤなヤツが,今回だけは意外にも……」という展開は物語の基本だが,これをやってしまうと,その展開に最初に触れたプレイヤーや,たまたまそこしか読まなかったプレイヤーが混乱する可能性がある。

ひどい言われようだが,印象には一貫性がある
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(4)魅力
 キャラクターは魅力的でなくてはならない。
 そしてまた,キャラクターの魅力や個性を伝えるのにテキストを使うなら,可能な限り短い文章でそれを表現しなくてはならない。もちろん,魅力や個性を伝えるチャンスは1回ではないが,2回目以降でも,テキストは短くなくてはならない。
 そして,ここでもキャラクターのグラフィックスやアニメーションが重要な役割を果たす。またハロウィンイベントで吸血鬼コスをするなど,シーズンごとのイベントに合わせてキャラクターに特別な衣装を着せる場合,どんな衣装がそのキャラクターにとって適切かをグラフィックスのチームとよく話し合わなくてはならない。
 さらにPR部門との連携も重要で,Candy Crush世界のキャラクターの魅力をSNSを通じて伝えるというプロモーションも考えられている。

(左)セリフは短く。(右)分かりやすさを優先するため,キャラクターの魅力を単純なものにすることもある
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チームワークで表現する物語


 John氏は,「ナラティブデザインはチームワークだ」と指摘する。
 ここまで見てきたように,Candy Crushのようなゲームでキャラクターの魅力を伝えたり,世界を感じさせたりすることは,テキストに書けばなんとかなるというものではない。UIデザインに世界観を加えたり,キャラクターのデザインがどうあるべきか,そしてどんなアニメーションが必要なのかということを,さまざまな部門との間で詰めていかねばならない。

 このためJohn氏は,ナラティブデザイナーにとって
  • なるべくミーティングに顔を出す
  • ゲームが作られていく作業工程を理解する
  • ほかの専門家と協力する
  • 分からないことは聞く
  • といったことが重要だと語った。

 同様に同僚に対しては
  • 自分が今何をしているかを,これから何をするかを説明する
  • どんな仕事をしたかを共有する
  • 人間関係を良好なものとする
  • といった心がけが必要だと指摘する。

複数の部門で複数の専門家によって作られるゲームの要素が,全体として「物語」を伝える
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 ゲームの物語は文字だけで伝えられるものではないが,Candy Crushシリーズのように,文字で語ることに制限が厳しい環境では,「文字で語ることで何ができるのか」「文字以外で語ることで何ができるのか」が見えてきやすい。世界的な流れを見ると,Candy Crushシリーズよりもさらにシンプルでカジュアルなゲームが大きなヒットを飛ばしており,John氏が語った技法が活用できるシーンは今後も増えていくのではないだろうか。

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