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「超絶倫人ベラボーマン」から「ワルキューレの伝説」「ワンダーモモ」まで! ナムコの名作をコミックやアニメなどの形で新生させる「ShiftyLook」とは
ShiftyLookは,「バンダイナムコゲームス(旧ナムコ)のレトロゲームキャラクターをさまざまなコンテンツにリバイバルし,新たなポップカルチャーを生み出す」ことを目的とした,Webを中心に展開している無料のコンテンツサービスである。
2012年3月より北米でのサービスがスタートし,現在は「Valkyrie」(ワルキューレの伝説)や「Wonder Momo」(ワンダーモモ),「Galaga」(ギャラガ)など計17タイトルのWebコミックが連載されているほか,「Bravoman」(超絶倫人ベラボーマン)や「Mappy」(マッピー)を題材にした短編アニメも配信されている。
2012年11月には日本向けのサービスも始まり,Webコミックの中でもとくに人気の高い7タイトルと,先述の短編アニメが日本語化(※短編アニメは字幕による対応)を果たしている。
ワルキューレにワンダーモモ,ギャラガにディグダグ……。とまあ,ナムコミュージアム好きには垂涎モノのクラシックタイトルを扱った本プロジェクトであるが,もともと北米を中心に展開されていることもあってか,日本国内での認知度はあまり高くない印象だ。
そこで本稿では,ShiftyLookの紹介も兼ねて,COMIC-CON会場にて収録したShiftyLookのエグゼクティブプロデューサー 池ヶ谷裕太郎氏のインタビューをお届けしよう。本プロジェクトがスタートした経緯やアメリカと日本での反応の違い,今後の展開について話を聞いているので,先述のクラシックタイトルを聞いてピンと来た人は,ShiftyLookのウェブサイトとともに,ぜひご一読いただければ幸いである。
「ShiftyLook」公式サイト(英語)
「ShiftyLook」公式サイト(日本語)
「ShiftyLook」エグゼクティブプロデューサー 池ヶ谷裕太郎氏インタビュー
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まず始めに,「ShiftyLook」の企画が立ち上がった経緯を聞かせてください。
ShiftyLookは,1980年代に人気を博したナムコのクラシックIPを再生しよう,というところから立ち上がったプロジェクトです。まずはアメリカ向けに,クラシックタイトルをアメコミテイストにしたWebコミックを連載するという形でリバイバルしていこう,ということになりました。
そこで人気が出てきた作品を,アニメやゲームといった,よりリッチなコンテンツに成長させていく,というアプローチを取っています。
4Gamer:
ShiftyLookで取り扱っているクラシックタイトルはどれも,もともと日本のゲームですよね。アメリカをメインターゲットに据えたのは,どうしてなのでしょうか。
池ヶ谷氏:
それにはいくつか理由があります。まず,アメリカでは8bitのドット絵であるとか,8bit音源を使ったチップチューンという音楽といった,いわゆるレトロポップがかなり流行っているんです。ShiftyLookの狙いとして,このレトロポップを新たなカルチャーとして発展させていきたい,というのが一つあります。
もう一つは,Webの世界で言うと,英語圏って10億人を超えるユーザーがいるわけじゃないですか。
4Gamer:
世界中で最も多数のユーザーを抱えている言語ですね。
池ヶ谷氏:
やっぱり,やるからにはたくさんの人に見てもらえるところがいいだろう,と。
あと,そもそもこの企画を立ち上げたプロデューサーのロバート・ペレダ氏が,アメリカ人だったというのもありますね。ただ,ShiftyLookは完全にアメリカ在住のアメリカ人向けコンテンツというわけではなくて,企画の舵取りは日本で行っていますし,クリエイターはアメリカだけでなく,シンガポールや日本の方もいます。
4Gamer:
プロジェクトの第1弾として「Webコミック」という形式を選んだのはなぜですか。
池ヶ谷氏:
Webコミックは,日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが,アメリカではサブカルチャーとして一定のファン層がいるんですよ。それと,アニメやゲームを作るためには,どうしてもたくさんのお金がかかります。そこで,なるべくコストを抑える形で,かつ豊富なコンテンツを揃えたいと考えたときに,Webコミックという形式が最適だったんです。
4Gamer:
ネットが主体となった昨今,何が人気になるか分からないですしね。ちなみにアメリカでは,どのタイトルが人気なんですか?
とくに人気が高いのが,「Bravoman」(超絶倫人ベラボーマン)ですね。Webコミックの時点ですでにかなりの人気がありまして,現在はYouTubeで無料視聴できる短編アニメを6話配信しています。
4Gamer:
アニメの制作も海外で行われているのでしょうか。
池ヶ谷氏:
ええ,カナダのスタジオで制作されています。Web向けのアニメということで,Flashベースのカジュアルな作りなんですが,声優陣は非常に豪華で,例えばロブ・ポールセン(※1987年放映の「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」でラファエロ役を務めた)や,ロミ・デイムス(※イタリアの魔法少女アニメ「Winx Club」でMusa役を務める),ディー・ブラッドリー・ベイカー(※「NO MORE HEROES」のヘルター・スケルター役)といった方にお願いしています。また,主題歌はイギリスのArea 11という,欧米のアニメソング界では有名なバンドにお願いしています。
4Gamer:
ああ,「Minecraft Christmas」の!
池ヶ谷氏:
彼らのファンの人達も,ShiftyLookのアニメを見てくれているみたいなんです。
また,ベラボーマンはゲーム化も進行中で,iOS/Android向けのカジュアルなアクションとして,今年の夏頃にワールドワイドでリリースする予定です。
4Gamer:
おお,ほかのタイトルのゲーム化にも期待できそうですね。
池ヶ谷氏:
ほかにも,ディグダグを題材にしたインタラクティブコミック「Dig Dug: Burst of Adventures」や,ナムコのキャラクター達が登場する高校を舞台とした恋愛ゲーム「Namco High」といった,ブラウザベースで遊べるタイトルの配信も予定しています。
4Gamer:
なんと……,「Namco High」は日本でもウケそうな予感がします(笑)。ところで,アメリカで人気の出るものと,日本で人気の出るものって,たぶん結構違うんじゃないかと思うんですが,そのあたりはどうでしょうか。
池ヶ谷氏:
正直,かなり違いますね。例えば,アメリカではアニメ化,ゲーム化まで進んでいるほど人気のベラボーマンなんですが,このWebコミックは完全にアメリカンコメディの文法で作られているんです。だから,アメリカ人にとっては笑いのツボにハマるんだけれど,それをそのまま日本語に訳しても,なかなか難しい部分があるんですよ。
4Gamer:
うーん,なるほど。では,日本で人気のあるタイトルはどれでしょうか。
池ヶ谷氏:
ワンダーモモですね。シナリオも絵もカナダ・トロントのクリエイターが制作していて,絵のテイストは昨今の日本のそれとはちょっと異なるんですが,ドジなヒロインが活躍するという,わりと日本を意識したストーリーでコミカルに進めているためか,日本からの閲覧者がかなり多いんです。
4Gamer:
ワンダーモモ,アメリカではどうですか?
池ヶ谷氏:
これが,アメリカでも人気なんですよ。なぜかというと,アメリカの作品にはセクシーなアクションヒロインものって,実はあんまりないんです。アメリカで大人気のアニメ「Pac-Man and the Ghostly Adventures」のプロデューサー アヴィアラドから,「ワンダーモモは非常に面白い,アメリカでもこういうものがもっと欲しいな」という話が出たくらいです。
アメリカでのPAC-MAN(パックマン)人気
「1980年代に人気を博したナムコのクラシックIPを再生する」というShiftyLookであるが,その中にナムコを代表する作品――,「パックマン」の名前がないことが気になった。その理由について池ヶ谷氏に聞いてみたところ,「パックマンは,アメリカでは日本の方が思う以上に人気があって,子供から大人まで誰でも知っているほどの巨大コンテンツなんです」との答えが返ってきた。言われてみれば,ディズニーの映画「シュガー・ラッシュ」にも出演していたっけ。
そんなアメリカでは,2013年6月よりディズニーXDにて,パックマン30周年を記念したアニメ「Pac-Man and the Ghostly Adventures」の放映が開始されている。映画「スパイダーマン」シリーズを手がけたことでも知られるアヴィアラド氏がエグゼクティブプロデューサーを務め,劇場版「ポケットモンスター」シリーズや「藁の楯」で知られるオー・エル・エム・デジタルなど,豪華メンバーが制作を担当している。
Pac-Man and the Ghostly Adventuresはアメリカでかなりの人気を博しているようで,現時点でセカンドシーズンの制作も決定しているとのこと。残念ながら日本での放映予定は今のところ不明だが,日本発のキャラクターを題材としたアニメ作品がアメリカでスタートして成功を収めるという,なかなかに希有な例といえそうである。
COMIC-CONでは「PAC Is Back! Pac-Man and the Ghostly Adventures」という,アニメやタイアップ作品を紹介するパネルセッションも開催された。セッションにはパックマンシリーズのプロデューサー 小森国人氏(左)と,アニメのプロデューサー アヴィアラド氏(右)が登壇し,パックマンがいかに愛らしいかを語り合っていた
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4Gamer:
「なかったからこそ受け入れられる」ということもある,と。
池ヶ谷氏:
そうみたいです。Webを使ってワールドワイドに展開していく,というのがShiftyLookの狙いの一つではありますが,例に挙げたとおり,コンテンツの受け入れられ方に関しては“地域性”が強く出てくるんですよ。そこをどうしていくかというのは,ShiftyLookに限らず,今後のコンテンツビジネスの課題だと思います。
4Gamer:
具体的な方策はあるのでしょうか。
池ヶ谷氏:
ShiftyLookに関して言えば,最初に話したとおり,日本のゲームを扱っているものの,これまでは北米中心に展開していて,日本向けのコンテンツは人気作品を翻訳版を提供しているのみでした。なので,今後は日本のクリエイターの方と一緒に,日本発のオリジナルコンテンツも進めていきたいと考えています。
4Gamer:
それが実現すれば,日本でもさらに盛り上がりそうですね。
池ヶ谷氏:
ええ,さらにその中で,例えば「ワルキューレの冒険の解釈は,日米でこんなにも違うんだ」と比較しながら楽しむといったように,地域性による違いを利用した仕掛けができれば,とも思っています。
4Gamer:
では最後に,日本の読者に向けてメッセージをお願いします。
池ヶ谷氏:
オリジナルのワンダーモモやベラボーマンを知っている人からすると,まったく違うトーンでびっくりされる方もいるとは思うんですが,まずは新しい解釈のワンダーモモやベラボーマンを,そのままのカタチで一度楽しんでみてもらえると嬉しいです。Webコミック,アニメ,ゲームに留まらず,今後は単行本やフィギュアといった展開も予定していますので,ナムコのレトロゲームファンの皆さん,ぜひ期待していてください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「ShiftyLook」公式サイト(英語)
「ShiftyLook」公式サイト(日本語)
- 関連タイトル:
BRAVOMAN:Binja Bash!
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