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500円でこんなに遊べちゃっていいの? ゲームフリークが贈る新作「ソリティ馬」のファーストインプレッションを掲載
「ソリティ馬」公式サイト
「ポケットモンスター」シリーズの開発元として知られるゲームフリークの新作タイトルだけに,ゲーム性はどうなっているのか? そもそも,なんでソリティアと競馬? という部分から気になって仕方がない本作なのだが,配信直前となるタイミングで,実際にプレイする機会を得た。開発者の説明を聞きながら,しばらく遊んでみたのだが……500円で販売されるものとは思えないほど,丁寧に作り込まれたゲームであることが判明した。
これは,かなり良く出来たゲームなのではないか?
4Gamer編集部では,さっそくゲームフリークから評価用のROMを借りてみることにした。というわけで,ここでは,本作の遊び心地を書き連ねたファーストインプレッションをお届けしてみたい。
ソリティアをしているだけなのに妙に楽しい
ソリティ馬は,プレイヤーが騎手となって馬を操り,レースに勝利することが目的のゲームだ――こう書くと,普通の競馬ゲームに思えるのだが,本作最大の特徴は,タイトルからも分かるように,トランプゲームの定番「ソリティア」を基にしたゲームシステムを採用していることだ。
基本的なゲームの流れとしては,ひたすらレース(ソリティア)を繰り返しながら馬を育てていき,どこまで上位のレースで活躍できるかを目指すというものになる。一回のプレイ時間(レース)は10分ほどで,1頭の馬が育ち切るまでがだいたい1〜2時間程度。
1頭の馬の成長や活躍に一喜一憂するという意味では,どことなく,「実況パワフルプロ野球」の「サクセスモード」にも近いプレイ感覚がある。大きなレースで活躍できる,良い感じの馬を育成してレースに勝った時の嬉しさはひとしおだ。
レースは,「ソリティアフェーズ」と「コントロールフェーズ」という,2つの流れを繰り返して進めていく。「ソリティアフェーズ」でソリティアを遊び,うまくプレイすると馬との「折り合い」が良くなり,馬の力を引き出せるようになっていく。その後は,「コントロールフェーズ」で馬の進路を決めたり,「気合」を溜めて最後の直線コースで使うパワーを蓄えるのだ。レース終盤の直線コースでは,レース中に溜めた「気合」によって,馬の「本気度」が変わる。本気度が高いほど,直線でスピードが出せるようになるので,道中でどれだけ気合を溜められるかによって,勝負の明暗が分かれるわけだ。
文章で説明すると小難しくみえるかもしれないが,実際の流れとしてはひたすらソリティアをやって,それに馬のコントロールといった要素が加えられるというだけの話で,ルールを把握してしまえば非常にシンプルなものだ。
そもそも,筆者がソリティアを遊んだのは,昔のWindowsに付いていたものをポチポチとプレイした時以来なわけだが,懐かしさも手伝ってか,妙に楽しく感じてしまった。
いや,懐かしさだけではない。本作では,ソリティアと,それ以外の要素の組み合わせが非常に巧みで,それがついつい熱中してしまう大きな要因にもなっている。
リスクとリターンのトレードオフ。ソリティ馬独自の駆け引きが熱い
では,それ以外の部分……本作独自の要素はどういうものなのか? という点なのだが,これに関しては,なんというか,とにかく“色々と考えさせられる”のが最大の特徴だろう。要するに,「リスクとリターン」の駆け引きがゲーム全体を通して盛り込まれており,また,その案配が非常に秀逸なのだ。
代表的なのは,本作の「気合ゾーン」の仕組みだ。「気合ゾーン」とは,レースのコントロールフェーズ中に表示される範囲のことで,この範囲内にいると「気合」が高まっていく。
気合ゾーンには3段階の「気合ゾーンLv」というものがあり,レベルが高いゾーンほど,気合が溜まりやすくなるのだが,その一方で,気合ゾーンLvが高いほど「ソリティアの難度」が上がってしまうというリスクを伴う。必ずしも高レベルの気合ゾーンにいればいいというわけではなく,常にリスクを計算しながら立ち回る必要があるのだ。
つまり,位置取りとして有利な場所をとると,それだけソリティア自体が難しくなるので,ソリティアでしくじると,逆に不利な状況に追い込まれてしまうリスクを伴う。良いポジションをキープし続ける難しさを,システム的に表現しているとも言え,なかなかユニークな仕組みだろう。
さらに言うと,馬によって「脚質」や「特性」が違うので,当然ながら得意なポジションも異なる。気合ゾーンと内側,外側,そして馬の特性まで考慮するのは大変だが,GIレースはそれらにも気を配らなければ勝ち抜くことはできないだろう。
もちろん,リスクをとったときの“リターン”もしっかりと用意されていて,気合Lv3のゾーンでソリティアをパーフェクトクリアすると,「人馬一体」というモードに突入して,一気にレースが有利になる。人馬一体モードになると,どこにいても気合が溜まりやすくなるうえに,ほかのライバル馬を強引に吹き飛ばして突破口を開けるなど,まさに形勢が逆転するほどのメリットが得られるのだ。
想定通りの進路で気合ゾーンLv3に収めたときの満足感や,ここぞというタイミングでパーフェクトを決めて,人馬一体となったときの爽快感は素晴らしいの一言。思わずガッツポーズをとりたくなるほどの手応えが得られるはずだ。
馬の育成はサクサク。仔馬を生産してさらなるやり込みも
全力で挑まないと勝利を掴めないレース中にアイテムのことまで考える余裕は,正直なところあまりないので,この選択もまた悩ましい要素のひとつ。さらに,レース終了時に馬の余力を残しておくと成長しやすくなるので,常にムチを振るって全力全開で走るよりも,勝てるギリギリのラインを見極めながら勝利した方がおいしいなど,これもまた悩ましい……。
ともあれ,このようにゲーム全体を通してあらゆる箇所に「トレードオフ」の概念が練り込まれたゲームデザインは,本作の大きな特徴だと言えよう。
4歳を迎えた馬は「古馬」となり,成長は見込めなくなる。古馬は,「古馬モード」という専用のモードでレースに出場することができるが,能力が伸びなくてレースに勝てないと思ったら「引退」させて牧場に送ることもできる。
牧場に送られた馬は,繁殖馬として活躍させることでより強い仔馬を生産できるようになる。こうして新たに生まれた仔馬を若駒モードで再び育てて……といった具合に,どんどん上を目指して育成していくと,フルプライス並みのプレイボリュームになるわけだ。しかも,ゲームを進めていくと“馬じゃない”ものにも乗れるようになるらしい。何に乗れるかは,実際にプレイして確かめてみよう。
金額に“見合わない”贅沢感! 止め時を見失うほど熱中度高し
さて。勢いに任せて筆者が感じた要素をお伝えしてみたわけだが,「500円のゲームでこれほど遊び込めるとは」というのが率直な感想だ。要素のひとつひとつが洗練されていて,触るたびに「なるほど」と思わせられる作り込み具合には,「さすがはゲームフリーク!」と唸る思いであった。
ダウンロードゲームというと,どうしても“値段なりの物”という印象を抱いてしまいがちだが,本作に関して言えば,むしろ,この土台をそのまま活かして,しっかり肉付けすればフルプライスのゲームとして成立するほどのクオリティである。余計なお世話であることは重々承知だが,この値段設定で元がとれるのだろうか?と,心配になってしまうほどだ。
ともあれ,ゲームフリーク初の自社パブリッシングとなる「ソリティ馬」は,トランプゲームの手軽さと育成ゲーのやり込み要素を兼ね備えた,サクっと時間を潰せるお手軽ゲームを求める人にも,しっかりとゲームらしいやりごたえを求める人にもオススメできる希有な作品だ。純粋に“一本のゲーム”という視点で見ても,手触り感やゲームの作りはしっかりしたものになっているので,本稿で興味が沸いたという人は,ぜひプレイしてみるといいだろう。
またゲームフリークは,今後もこのようなオリジナルゲームを次々と発表していくとのことで,そちらの動向にも注目していきたい。
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