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カードゲーム好きならハマる! ドラフトが勝負を分けるボードゲーム「Seasons/十二季節の魔法使い」をレビュー
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印刷2013/11/18 00:00

レビュー

2種類のドラフトが勝利へのカギとなるボードゲーム

十二季節の魔法使い

Text by 朱鷺田祐介

 ホビージャパンから日本語版が発売中の「Seasons/十二季節の魔法使い」(以下,十二季節の魔法使い)は,偉大な魔法使いとなるために「十二季節の魔法試合」に挑むという,ファンタジー世界をテーマにしたボードゲームである。
 季節によって変化する魔力に翻弄されながら,魔法を使ってクリスタルを集めていくことになる本作は,魔法を表す「パワーカード」や,季節ごとの魔力を表すダイスの出目を「ドラフト」という方法で選ぶのが特徴。その高い戦略性で,ボードゲームファンだけでなく,世界中のトレーディングカードゲームプレイヤーからも注目され,オリジナル版が昨年秋に発売されて以来,大人気となっている。

 デザイナーは,不思議なイラストを用いてお題当てをする「ディクシット」や,幻想的な世界観の中で物語を作る「ファブラ」などを手がけたレジ・ボネセー氏だが,想像力を刺激するタイプの過去作品とは違い,本作はかなりゲーム性の高いものに仕上がっている。

100枚ものカード,20個のダイスのほか,独特なアートワークのゲームボードやトークンなどが入っている。2〜4人用で,プレイ時間は60分〜。価格は6300円(税込)
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 プレイヤーは魔法使いとなり,手札から魔法カードやアイテムカードを場に出し,ポイントを稼いで,もっともすぐれた魔法使いを目指す。
 「十二季節」という名の通り,春夏秋冬4つの季節からなる1年を3年ぶん行なって合計12の季節を巡り,最終的に獲得した勝利ポイントを競い合う。
 勝利ポイントの計算方法は以下の通り。

ゲーム中,さまざまな方法で獲得できる「クリスタル」数が,そのまま勝利ポイントになる。左の写真は各人が獲得したクリスタルの数を記録するボード。自分が場に出した「パワーカード」(右の写真)の左上にある数字も勝利ポイントとして加算される
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ドラフト! ドラフト!


 「十二季節の魔法使い」の第一の肝は「ドラフト」である。
 ドラフトは,TCGでよく行なわれる遊び方だ。TCGの場合,4〜8人程度で集まり,全員が新しいカードのパックを開封して,その中から好きなカードを1枚選んで取り,残りを隣の人に回す。次に,隣の人から回ってきたパックからまた1枚取り,残りを回す。これを繰り返し,パックのカードから好みのカードを戦略的に集めていき,デッキを組んでいく。他人がどんなカードを集めているか推測したり,思いもよらぬ強力なカードが回ってきたりと,通常の遊び方とはひと味違う面白さがあるのだ。

 「十二季節の魔法使い」も,ゲーム中に2種類のドラフトを行う
 まずは,ゲームの準備に当たる「序幕」というフェイズで行なわれる,パワーカードのドラフトだ。パワーカードとは,魔法使いが使う魔法のアイテムと使い魔を表すカードである。

パワーカードには「魔法のアイテム」「使い魔」の2種類がある。左は場に出た時に召喚ゲージを増やす「風のアミュレット」,右は全員の場にあるアイテムカードを戻し,計算を狂わせる「首長のアムサグ」。首長のアムサグを使うと自分のアイテムも戻す必要があるが,場に出た時に有利な効果を持つものを戻せば,出し直せて2度おいしい
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 まずは,プレイヤー全員に9枚のパワーカードが渡される。プレイヤーはその中から自分の欲しいカードを1枚取り,残りを隣の人に回す。次に,隣から回ってきた8枚の中からまた1枚取って隣に回す。これを繰り返して,自分の使うパワーカード9枚が決まればドラフトは終了だ。

配られたカードから一番強そうな1枚を選んで取り,隣へ回す
画像集#007のサムネイル/カードゲーム好きならハマる! ドラフトが勝負を分けるボードゲーム「Seasons/十二季節の魔法使い」をレビュー

 だが,初めてプレイするときは,どのパワーカードが強くてどれが弱いのかさっぱりわからないだろう。そんなときはルールブックに書かれた「入門用のサンプルデッキ」の使用をオススメする。この場合,あらかじめ決められた使いやすい9枚のパワーカードが手元にある状態でゲームを始められるので,ドラフトは省略してよい。

 9枚のパワーカードを集めたら,次にそのパワーカードを3枚ずつ,1年目,2年目,3年目の束に分けるのだ。1年目は最初の3枚だけを手札とし,2年目に進むと次の3枚が手札に加わる。3年目には最後の3枚も使えるようになる。

 こちらも初回プレイのときなどはどうやってカードを振り分けるかがよく分からないだろうが,こちらにはサンプルがないので,手探りで遊んでみるしかない。一度通してプレイすれば,序盤に欲しいカードや後半で強力なカードなどがわかってくるはずだ。そのあたりは,TCGの新規セット発売直後に,1枚ずつカードを確認していく楽しみに近いかもしれない。


出目をドラフトせよ!


 こうして自分の使うパワーカードが決まったら,いよいよゲームが始まるのだが,本作ではゲームの進行もドラフトによって行うことになる。今度は毎ターン,季節ダイスを振り,その出目をドラフトするのだ。
 冒頭で説明したように,本作には春夏秋冬に対応した専用ダイスが各5個ずつ,合計20個用意されているのだが,同じ季節のダイスであっても,それぞれの目が微妙に異なっている。
 毎ラウンド,スタートプレイヤーが(プレイヤー数+1)個の季節ダイスを振って,その中から好きな出目のダイスを1つ選び,残ったダイスの中から,次のプレイヤーが1つ選んで取り……と繰り返し,最後の1つが残るまでドラフトしていく。

季節ダイスを振って,出た目の中から1つ選ぶ
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 ダイスの出目には,以下のような意味がある。

  • 対応した魔力を得る。獲得した魔力は「魔力トークン」という形で手元のボードにためておく
  • 数字の分だけクリスタルを獲得する
  • 追加のパワーカードをランダムに引く
  • 召喚ゲージを増やし,より多くのパワーカードを場に出せるようにする
  • 任意で,持っている魔力トークンをクリスタルに「変転」(詳細は後述)できる

ダイスの目に対応した色・数の魔力トークンを得られる。左のダイスは羽根のような模様が2つ描かれているので,その魔力トークンを2つ獲得できる。中央のダイスには炎,右のダイスには木の模様がそれぞれ1つあるので,対応する魔力トークンを1個獲得
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自分のボードには,魔力トークンを最高7つまでためておける
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ダイス目に★がついていれば,召喚ゲージが増やせ,パワーカードをより多く場に出せるようになる。さらに周囲が円で囲まれていれば,手持ちの魔力トークンのうち,余ったものをクリスタルに「変転」できる
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数字が付いていれば,その分だけクリスタルを得られる。カードのシルエットの出目を選べば,パワーカードを追加で1枚引ける
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 パワーカードを召喚する(場に出す)には,決められた種類・数の魔力がコストとして必要なので,魔力の出目はなるべく優先して選びたいところ。
 しかしそれよりも重要なのが,召喚ゲージである。この数が,自分が場に出せるパワーカードの上限枚数を示しているのだが,ゲームスタート時は0なので,まずはゲージを増やさないと何もできないのだ。序盤は積極的に★の入ったダイスを選んで取り,召喚ゲージを増やしていこう。

 ダイスのドラフトには,もう1つ意味がある。それがゲーム時間の進行だ。それぞれのダイス目には下に小さいマルの記号が1〜3個並んでおり,「誰にも選ばれなかったダイス」にあるマルの数だけ時間を進ませるのだ(マル1つが1か月を表す)。本作で設定されている時間は3年(36か月)であるが,残ったダイスがマルの多いものばかりなら,予想以上に短いターンでゲームが終わることになる。
 じっくりと進めたいのに,季節が飛ぶように進んでしまったり,先行して逃げ切りたいのに,なかなか時間が進まなかったり……。こういった時間の流れに翻弄されつつ最善手を模索することもまた,本作の魅力と言ってよいだろう。

季節ホイールは中央部が年数,端の部分が月を表しており,ゲーム内の時間はそれぞれに置く黒い目印で確認できる。この写真なら2年目の10月だ。残ったダイスがマル3つなので,次のターンにはコマが3つ進み,3年目の1月となる。季節は1〜3月は冬,以降3か月ごとに春,夏,秋となる
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時間を強制的に進めたり,巻き戻したりするカード「時のブーツ」を使い,ほかのプレイヤーを出し抜くことも可能
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 中盤以降はパワーカードをどんどん場に出し,クリスタルを増やしたり,相手の邪魔をしたりするのがメインとなる。
 中盤では余った魔力トークンをクリスタルに変える「変転」が大事になってくる。魔力トークンは,8個以上になると手元のボードからあふれてしまい,無駄となるので,どんどんクリスタルに変転しよう。その際には,変転する魔力の種類と,そのときの季節によってレートが決定するので,タイミングを見計らう必要がある。

 パワーカードを並べることばかりに夢中になりがちだが,もちろん,その数が勝利ポイントとなるクリスタルを集めることも忘れてはならない。また,「運命の手」のように,場に出す際にクリスタルの支払いが必要となるカードもあるので,最初にパワーカードをドラフトした段階で,クリスタルをどんなペースで稼いでいくかを気にかけておくといいだろう。

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カードの下部に書いてあるのが,場に出す時に必要なコスト。「運命の手」の場合は3種類の魔力トークンに加えてクリスタル3個が必要となる。右の「エオリスのルーン方体」を場に出すにはクリスタルが20個も必要だが,そのぶん,場に出したとき勝利ポイントに加算されるカード左上の数字も大きい

 終盤戦は,残り時間をにらみながら,いかに効率よくポイントを稼ぐかという,パズルのような様相となってくる。最終的に使い切れず手札に残ってしまったパワーカードは1枚あたり勝利ポイントが5点マイナスされるので,全部使い切るように考えて進めなければならない。

 ゲームに慣れてくると,最後のラウンドに,相手のパワーカードを手札に戻させるようなカードを使って邪魔したり,ためこんだ手札を一挙につなげてコンボを作り,大逆転を狙ったりできる。こういった要素が決まるととても面白いため,ついついもう一回遊びたくなってしまう。また,各人のプレイスタイルが大きく違っても,最終的には僅差の勝負ということが多く,最後の最後まで誰が勝つかわからないスリルがある。


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第一エキスパンション「魅ノ国」


 「十二季節の魔法使い」は発売以来大好評で,新たなカードや便利なゲームツールが追加されるエキスパンション「魅ノ国」がすでに発売されている。
 追加のパワーカードは,かなり強力なものから,他プレイヤーの邪魔をする非常に危険なものまで多彩。カードドラフトに変更を加えたり,召喚コストを上昇させたりと,ゲーム全体に影響する「エンチャントカード」も追加されている。

 また,最初にドラフトして各自が1つずつ得る「特殊能力トークン」は,勝利への手助けとなるものが多い。序盤に追加の魔力トークンやパワーカードを入手して他人より先んじられるものや,特定の行動を行なうと勝利ポイントが少しだけ増えるものから,ペナルティをなくすものまであるので,狙った戦略を進めやすくなるだろう。




決して初心者向けではないが,挑戦に値するゲームだ


 「十二季節の魔法使い」は,やや難度の高いゲームである。カードとダイスをドラフトしながら,ポイントと場の制圧を考えていくゲームなので,常に思考し続けていかなくてはならない。とくに,いきなりカードのドラフトをした上,そのカードを3年ぶんに分けるのはハードルが高いだろう。

 筆者はTCGの経験があったので感覚をつかむことができたが,普通のボードゲームファンであれば,そもそも,「ドラフトって何?」となり,この段階で挫折することになりかねない。前述したように,初回はサンプルのデッキを使用するのがいいだろう。
 いったん勘をつかんでしまえば,難度の高さが面白さに変わる。デッキ構築型カードゲームに近い「場を作り上げていく」感覚があり,コンボを探す楽しみもある一方で,毎回,振られるダイスによる状況の変化があるので,定石だけで勝てるとは限らないのだ。

 プレイ時間は60分となっているが,最初のうちは90分〜120分を見ておくのがいいだろう。1対1の2人戦でもバランスが崩壊することはなく,十分に楽しめる。

 あなたがカードゲーム好きで,挑戦しがいのある面白いゲームを探しているのであれば,「十二季節の魔法使い」はプレイに値するはずだ。

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「Seasons/十二季節の魔法使い」公式サイト

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