2014年3月19日(米国時間),サンフランシスコで開催されていた
「Game Developers Conference 2014」で「
EverQuest Next」(以下,EQ Next)の世界構築に関する講演が行われた。
ゲーム史に残る「
EverQuest」シリーズの新作を作る動きはかなり以前から行われていたようなのだが,一種,Sony Online Entertainmentの看板的なタイトルでもあり,開発は難航していたようだ。EQ Nextの2番めのプロトタイプがボツになったときに,「なにか
“Revolutionary”なことをやろう」ということで始まったプロジェクトが「
EverQuest Next Landmark」(以下,Landmark)なのだという。
講演を行ったSony Online Entertainment Senior Art Director, Rosie Rappaport氏
![画像集#002のサムネイル/[GDC 2014]懐かしのFreeportをVoxelで作るとこうなる。「EverQuest Next Landmark」αテストまでの開発秘話](/games/220/G022055/20140324026/TN/002.jpg) |
その内容は
「革新的なクラフティングの実現」で,ブロックを組み合わせることで,オリジナルデザインのアイテムなどを作成可能にするというものだった。一般的なクラフティングとは違って,アイテムだけではなく,家や地形も同様に作れ,しかも破壊できるという大胆なものだ。
ちなみに,“Revolutionary”と“Evolutionary”ではこれくらい違うという説明がゲームを例に示され,Revolutionalyなゲームとしては「
Ultima Online」「
Asheron's Call」,そして同社のEverQuestが,Evolutionalyなゲームとしては,スライド2枚分の細かい文字でたくさんのオンラインゲームがアルファベット順で挙げられていた。「自分とこのゲームも入ってんぞ?」「Lineage 3って出てないから。アナウンスもされてないから」「ひょっとして最後のへんにあるゲームを入れたかっただけじゃないのか」などと,いろいろ感じるところもあるのだが,ともかくまだ先人が少ないことに挑戦してみようということになったようだ。「誰もやってないこと」ではなく,「3番手くらいまではOK」というあたりが微笑ましい。ちなみに,2011年1月のことだというから,「
Minecraft」のβ版が出てしばらくの頃の話である。
LandmarkではVoxelベースで世界を構築する試みが行われている。分かりやすくいうと,四角いマス目状の空間で世界を表現するということで,だいたいのところではMinecraftを思い浮かべるといい。たとえるなら「LEGO」のようなものだという。名前や番号の付いた基本ブロックがあって,それを組み合わせていろんな形を作って,ブロックで作れないものは特殊パーツとして別途用意する,それとほぼ同等なことをゲーム内で行うのだ。
そんなカクカクの世界で,どうノーラス(EverQuestの舞台)を表現するのかという気がする人もいるだろうが,Minecraftが立方体のLEGOブロックだけを使った世界なのに対し,Landmarkには,斜面を持ったパーツなども使われているというのがポイントとなる。加えて,造形ノウハウの蓄積の結果か,表現力は驚くほど上がっている。
制作の初期段階では,すでにあったイメージアートをもとにGoogle Sketchupでモデリングし,ゲーム内に実装するという手順で行われていたが,できあがったブロックモデルをもとにイメージアートが描き起こされることもあったようだ。下はゲームエンジン内で動作を確認しているところ
![画像集#010のサムネイル/[GDC 2014]懐かしのFreeportをVoxelで作るとこうなる。「EverQuest Next Landmark」αテストまでの開発秘話](/games/220/G022055/20140324026/TN/010.jpg) |
講演では最初の企画資料として,概念図とボツになっていたプロトタイプから建物のデザインを取り出して,グリッドにきっちり収まるように修正された資料なども紹介されていた。
Voxelによる世界の構築過程がノーラスの代表的都市「Freeport」を例に紹介されていたので,その変遷を見てみよう。
Freeportのイメージイラスト
![画像集#017のサムネイル/[GDC 2014]懐かしのFreeportをVoxelで作るとこうなる。「EverQuest Next Landmark」αテストまでの開発秘話](/games/220/G022055/20140324026/TN/017.jpg) |
ブロック化のコンセプトイラスト。なんというか“World of Minecraft”的な……
![画像集#018のサムネイル/[GDC 2014]懐かしのFreeportをVoxelで作るとこうなる。「EverQuest Next Landmark」αテストまでの開発秘話](/games/220/G022055/20140324026/TN/018.jpg) |
まず,Rappaport氏が「忘れられない」と語る記念すべき第1号プロトタイプが以下のスライドである。
Atari 800版だと書いても納得する人がいそうな感じの仕上がりだが,その1週間後の画像が以下のものになる。
素材が少し増やされ,微妙に改善の跡が見える。
さらに,45度の屋根が使えるようになったのが,2012年3月1日版だ。ディテールも整理され,コンセプトアートに少し近づいた。
その1週間後には,3倍のスケールで作り直され,「どこかの村の入り口」ぽい印象から,Freeportの大門ぽい感じになってきた。スケールアップされたことで,ディテールも作り込まれている。
2012年5月になると,ディテール部分や素材感が改善され,ブロック以外の小物(Prop)が加わることで,ずいぶん違った感じになってきた。
6月には,Propがさらに追加され,だんだんとブロックベースではないかのような仕上がりになってきている。
さらに,Voxelベースでの強みの一つとなる破壊の実験も行われている。
そんなこんなで,ポリゴンで作成されていた頃のFreeportとVoxelで作り直されたFreeportの比較が以下のスライドとなる。当初はどうなることかと思われたのだが,かなり落ち着いてきた感じだ。カクカク感は残っていても,そういう味付けのグラフィックスなのだと思えばさほど気にならないかもしれない。
Freeportのような街以外の地形は自動生成でVoxel化されている。Propによる樹木や植生を加えると,一般的なゲームと比べても「ポリポリ感」がない分,リアルな仕上がりといえるくらいだ。2013年8月にはかなり完成段階に近づいた
Landmarkのムービーも公開されている。
このLandmarkは,ユーザーに公開していろんな地形や建物を作ってもらおうというツールである。現在すでにαテストが行われており,さまざまなものが作られている。最後にプレイヤーによる作例を並べておくので,現状のものでどこまでできるのか参考にしてほしい。
SOEではすでにポリゴンモデルからVoxelモデルへの変換ツールなども試作されており,今後はさらに作り込んだものも出てくるだろう。ちなみに,地形などは壊すことができるのがウリでもあるのだが,あまりに壊しまくる奴が出てきたときには,該当プレイヤーのBAN後にオブジェクトを巻き戻したりすることもできるそうだ。
β版の公開もそう遠くはないと思われるので,気になる人は公式サイトで登録をしておくとよいだろう。