インタビュー
リアルとデジタルで同時展開の「ラスト クロニクル」はオンラインが予想以上に好調。開発陣に1周年インタビュー
本作は,リアル版,オンライン版のどちらでも,まったく同じルールで遊べることがウリとなっている,ホビージャパン完全オリジナルのTCGだ。基本ルールや戦略性はかなり練られて作られている印象で,デッキ構築や対戦は面白く,オンライン版はシステム面も充実していて楽しめるというのは,「こちら」のレビューでもお伝えしたとおり。
今回4Gamerでは,本作がどのような経緯で作られたのか,ラスクロ開発陣に1周年記念インタビューを行ってみた。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
まずは,皆さんの自己紹介をお願いできますか。
一戸健史氏(以下,一戸氏):
私はラスクロの総合プロデューサーです。開発そのものには携わっていないのですが,ラスクロ以外にもTCGの事業全般を見ていて,次にどんな商品を出していくかを判断しています。
4Gamer:
では,ラスクロの企画のゴーサインを出したのが一戸さんという形でしょうか。
一戸氏:
ゴーサインというか,もともと「オリジナルのTCGを作りたい」という考えがあって,私が企画に必要な人を集めたという感じです。それと,リアルの大会の運営を担当しているのも私になります。
田中聖樹氏(以下,田中氏):
私はリアル版のラスクロのディレクションをしています。ラスクロのゲームデザインにおけるリーダーの役割ですね。オンラインのほうも,最初の立ち上げ時は関わっていたんですが,今は宇藤に引き継いでいます。
宇藤慶彦氏(以下,宇藤氏):
私はオンライン版のディレクターをやっています。実は私がホビージャパンに入社したのは今年の1月なので,ラスクロには途中参加になるのですが,オンラインの企画や,実装内容をどういった順番で導入していくか,どのようなイベントを展開していくかなどを考えています。最近では,オンラインの広報活動も行っています。
藤田憲一氏(以下,藤田氏):
そして僕が開発現場の管理を行うプロデューサーになります。
4Gamer:
まずは企画の始まった経緯からお聞きします。ホビージャパンさんは,長くTCGに関わってきた会社ですよね。IPも含めて完全にオリジナルのTCGを出してきたのは,ラスクロが初めてのことだと思うのですが,どのように企画が立ち上がったのでしょう?
一戸氏:
もともとの企画は,5〜6年ぐらい前……僕が「ゲームジャパン」「ゲームぎゃざ」の編集長をやっていたころに立ち上がりました。雑誌を作りつつ,いろんなメーカーさんとのやりとりがある中で,自分達でもTCGを作っていきたいと思っていたんです。
4Gamer:
5〜6年前となると,ホビージャパンさんが「ファイナルファンタジー・トレーディングカードゲーム」(以下,FF-TCG)を開発するよりも前のことですよね。
そうですね。以前,ホビージャパンが「マジック:ザ・ギャザリング」(以下,マジック)の販売を行っていたこともあり,必要なノウハウや人脈はあったので,オリジナルで何か作りたいとずっと考えていました。それで,最初は3人ぐらいの小さなチームで話を進めていたんです。そんな中,これは本当に偶然なのですが,同時期にスクウェア・エニックスさんとファイナルファンタジーを題材にしたカードゲームを一緒にやることになりまして。FF-TCGのほうは,コンシューマーゲームとのリリースタイミングにおける連動もありましたので,オリジナルより先にやることになり,開発に着手しました。
4Gamer:
なるほど。
一戸氏:
それで,FF-TCGがひと段落したところで,今度こそオリジナルもやろうということになり,ここで生まれたのがラスクロです。
とはいえ,FF-TCGのチームにラスクロの開発も頼むのは難しかったので,3年前ぐらいに,藤田と田中を引き入れて,ようやく温めていたオリジナルTCGを動かし始めました。
4Gamer:
オリジナルTCGを作るにあたって,最初にあったコンセプトは,どういったものになるんですか?
藤田氏:
最初から決まっていたのは,「子供向けのTCGではなく,ターゲット層は高校生以上」ということですね。それと,僕らが入社する前から,世界観はダークファンタジーというのは決まっていました。
4Gamer:
ラスクロってダークファンタジーでしたっけ?
一戸氏:
当時は「LORD of VERMILION」みたいな雰囲気を目指していたんですよ。
藤田氏:
途中から,これはもうダークじゃないだろと,ファンタジーになりましたが(笑)。ただそれでも,ターゲット層のこともあるし,萌え系のTCGにもしないということは決めていたので,硬派なTCGを作ろうという方向性はずっとブレていません。
4Gamer:
実際,硬派な部類だと思います。イラストのテイストもそうですし,ゲームルールも複雑ですし。個人的には,遊んでいてマジックにハマっていた頃を思い出して,のめり込んでしまっています。
藤田さんは,“フジケン”の愛称で知られたマジックのトッププレイヤーだったわけですが,ラスクロを開発するにあたって,影響を受けている部分はありますか?
藤田氏:
実は,できるだけマジックにならないように努力しています。ラスクロを作っているメンバーは,今日ここにいない人間も含めて,全員マジックの経験者なんですよ。なので,コストの感覚や,ライフが20といったことは似ているかもしれませんが,手札の枚数やユニットのパラメータなど,可能な限り変えるようにしているんです。
4Gamer:
それは,マジックの経験から「ここは変えたい」と思ったみたいな理由があるのでしょうか。私がラスクロを遊んで真っ先に感じたのが,「土地事故(※)をなくしたかったのかな」ということなんですけども。
※マジックで土地ばかり引いてしまい何もできない,あるいは土地がまったく引けずに何もできないといった状態
それはあります。僕は土地事故が嫌だったんですよ。十数年遊んできていまさら何言ってるんだと思われるかもしれませんが,僕がマジックをやらなくなった1番の原因が土地事故だと言ってしまってもいいくらい。
4Gamer:
そこまでですか。
藤田氏:
もうゲームにならないじゃないですか。もちろん,デッキの構築である程度緩和はできますし,確率の範囲内ではあるんですが,それでも運に左右される振れ幅が大きすぎると感じていたんです。なので,ラスクロではそうならないようにという話を最初にしていました。
4Gamer:
それで採用されたのが「ソウルストーン」の仕組みなわけですね。
藤田氏:
振れ幅でいえば,ラスクロには時代という要素があるんですが,これはゲームができなくなるレベルではないと思うんですよね。自分である程度コントロールできますし。
4Gamer:
時代はラスクロの一番の特徴とも言えるシステムですよね。これはどういった発想で生まれたものなんですか?
藤田氏:
もともとの案は,田中が作ってきたサンプルの中にあったものですね。ゲームの進行にしたがって,「カードの効果が変わっていくようにしたい」というのがあったんです。
田中氏:
「シヴィライゼーション」とか「エイジ オブ エンパイア」の影響ですね。
4Gamer:
意外なところからアイデアが。
田中氏:
ストラテジーゲームの流れをTCGで表現したかったんです。それで,カードの塗り分けや時代などで,ビジュアル的に変化を加えるという案が生まれました。ただ,それを実現するためにどうやって時代を上げていくのか,ゲーム全体でどういったルールにしていくかという点を考えるのは,難航しました。
4Gamer:
時代の要素は,ビジュアル面だけでなく,ゲームプレイにおいても独特ですよね。時代発展を早めることに注力するか,あるいは発展を捨てて早期に勝負を仕掛けるかが,デッキの構築だけでなく,どのカードが「CAヤード」に配置されたかで,かなり変わってくるじゃないですか。プレイ中の戦略の立て方が,時代の展開によって同じデッキでも変わってくるのは,ラスクロの面白いところだと思います。
ほかには,ゲームのルールを作っていくうえでこだわった部分はありますか?
田中氏:
プレイヤーに分かりやすく,誤解されないように作っていくことですね。アイデア段階ではいろいろな案があって,どれにしようか迷うんですが,そこから面白そうだけど伝わりにくいものはボツにして,分かりやすいものを採用しています。
4Gamer:
ボツになったアイデアというのも気になるのですが。
田中氏:
例えば,今はクロノチェック時にCB(クロノバースト)が発動していますが,CB以外にもいろいろな効果が発生していました。CA(クロノアチーブメント)の黄色いランプも,ほかの色があって効果が違ったり。あと,1弾を発売する段階でいろいろな要素を詰め込むと混乱してしまうので,後の弾に回したカードやルールもありますね。2弾で登場した「ハーベスト」の能力も,1弾の時点で考えいたものです。
藤田氏:
5弾のロジカの原型なんかも,1番最初からありましたね。
最初は,ややこしいことは全部排除して,とにかくシンプルにすることを心掛けていた覚えがあります。慎重になりすぎて,ちょっと弱くなってしまったカードもあるんですが。
田中氏:
それと,分かりやすさと同時に,「全部のカードに役割を持たせよう」というコンセプトもあります。本気でデッキを組んだとしてもスーパーレアばかりにならず,コモンも普通に入ってくるようなバランスになるよう,心掛けています。
4Gamer:
そこも硬派なTCGらしいところですよね。レアリティの高いカードをたくさんもっていないと勝負にならないということもないですし,上位互換なカードもほとんどありません。
ところで,レアリティの高いカードの排出率って,リアル版とオンライン版で一緒なんですか?
一戸氏:
基本的には一緒ですが,オンライン版はクロノレア(スーパーレアのイラスト違いのカード)の排出率が,ちょっとだけ高いです。いわゆる“フォイル”のカードがリアル版にしかないので,そのぶん,オンライン版はクロノレアを入手しやすくしています。
リアル版とオンライン版の両方に力を入れてこれからも続けていく
4Gamer:
1周年を迎えたラスクロですが,現状のリアル版とオンライン版の調子はいかがでしょうか?
一戸氏:
リアル版は,もうちょっと伸びてくれると嬉しいのですが,堅調に展開できています。新規のTCGというと,すぐに販売が途絶えてしまうケースもありますが,少なくともラスクロに関しては,あと1年でなくなるとか,そういったことはまったくありませんね。
逆に,我々の想定以上にオンライン版が伸びているんですよ。
4Gamer:
当初の予想では,もっとリアル版で人気が出ていて,オンライン版はそうでもないという感じだったんですか?
一戸氏:
ここまで重めのオンラインTCGを日本語でサービスしている例は,現状ではほとんどありませんから,本音を言うと,僕らも分からなかったんですよね。
4Gamer:
しかも完全新作で,人気のIPを利用しているわけでもないですからね。
一戸氏:
オンライン版には,まったく人が集まらないかもしれないという状況も想定していたぐらいです。なので,いろいろなビジネスモデルのパターンを考えてあって,もしオンライン版がダメなら,リアル版に絞って展開していく状況も考えていました。実際,最初はオンライン版も伸び悩んだのですが,宇藤が入ってきていろいろと追加してからプレイヤー数も伸びて,今はかなり好調です。
4Gamer:
リアル版とオンライン版で同時に展開を始めて,現在も続いているオリジナルTCGって,かなり珍しいと思うのですが,ラスクロって,企画の立ち上げ時からもともと両方で展開する予定だったんですか?
一戸氏:
企画当初はリアル版ありきでしたね。リアル版を売るために,アニメやマンガなどのアイデアがあって,その中の1つとしてオンラインでの展開があったんです。聞こえは悪いかもしれませんが,オンライン版のほうは販促ツールとして考えていたんですよ。もちろん,最低限のビジネスモデルが成り立つように課金の仕組みは考えていましたが,あくまでメインはリアルのTCGという形でした。
4Gamer:
マジックの「デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ」シリーズのような展開ですね。手を出しやすいデジタル版を販促ツールにして,リアル版に興味を持ってもらおうという。
プレイヤーとして,その位置付けは納得できるんです。ラスクロのオンライン版って,オンラインゲームとしてみると,最初はかなり遊びにくい仕様だったじゃないですか。課金しないとカードはほとんど手に入らなくて,あくまで「オンラインで遊べるだけ」みたいな形で。でも,途中から大きく変わって,今はきちんとオンラインゲームとして楽しめるようになっていると思います。ホビージャパンさんの中でも,オンライン版の位置付けみたいなものが変わったということでしょうか。
藤田氏:
今はもう,完全に両方ありきのプロジェクトになっていますね。今後も同じように力を入れて展開していきます。
4Gamer:
リアル版とオンライン版を同時に開発するにあたって,同時だからこその苦労もあると思うのですが,いかがでしょうか。
藤田氏:
ありますね。とくに立ち上げ時は地獄のようでした。我々もそうですし,オンライン版を開発しているITTAROさんもそうです。
田中氏:
なにせ,最初の頃はリアル版を我々で開発しながら,そのルールをITTAROさんに伝えないといけなかったので……。
4Gamer:
そうですよね。オンライン版の開発陣は,当然最初はどういったルールのTCGなのか分からないわけですし……。これが,先にリアル版が動いているゲームであれば,調べようもありますが。
藤田氏:
そのぶん,オンライン版は開発期間も短くて,サービス直後は,インタフェースなどを直していくのにも時間が掛かりました。
田中氏:
今はもう,ある程度環境が整って新しい要素を実装する余裕ができましたし,ITTAROさんもルールに精通しているので,開発は進めやすいですね。
藤田氏:
それと,ラスクロはすごい前倒しでカードデータを作っていかないといけないのも大変です。今は,リアル版で新しい弾が発売されてから,10日後ぐらいにはオンライン版にも実装できていますが,これをやるためには,事前にちゃんとカードのデータが揃っていないと開発できませんから。もし,リアル版だけの感覚で開発して,「できたのでオンラインに実装してください」って言ったら,今よりひと月ぐらい実装が遅れてしまいます。
5弾が実装される時点で,すでに7弾までのカードデータはだいたい揃っているぐらいに,前倒しの開発をしています。
田中氏:
もちろん,早めに作りながらも,プレイヤーの動向を見て,修正が必要な点はギリギリまで反映させているので,作りっぱなしで実装しているということもありません。
5弾で導入の「準備」と“超必殺技ゲージ”でさらなる駆け引きが生まれる
4Gamer:
ラスクロのバランス面のお話も聞いてみたいと思います。リアル版,オンライン版問わず,大会を精力的に開催されていますが,ラスクロのプレイ環境において,うまくいっている部分,あるいは問題視している部分などがあれば,教えてください。
藤田氏:
大会,とくにオフラインのほうなんですけど,ほかのTCGに比べてデッキが一極化していないと思うんですよ。普通,大会となると「半分ぐらい同じタイプのデッキ」みたいな状況になりますが,ラスクロはバラエティに富んでいるんです。
もちろん我々も,「このデッキ一択」みたいな環境にならないよう,開発には気を付けているつもりですが,うまくいっているのではないでしょうか。
我々としては,いくつかのデッキタイプを作れるようにカードをデザインしているのですが,理想は,そうして作られたそれぞれのデッキが,けっこうな戦闘力を持って拮抗していることですね。大会を見ると,これは実現できているのではないかと思います。
ただ,大会のたびに,よく使われているカードに対していろいろな意見が出るので,そういう部分のコントロールは大変です。先ほどお話ししたとおり,かなり前倒しでカードデータを作っていますから,今後登場するカードで対応できるようにしようとしても,調整が本当にギリギリなんですよ。
突出したカードに対してアンチカードを作ると,今度はそのアンチカードがほかのカードを殺し始めてしまう可能性もありますから,調整も慎重に行う必要があります。
4Gamer:
新しい弾が登場すると,デッキの流行り廃りがあると思うのですが,開発側からすると,弾を出すたびに環境がどうなって,メタもこう変わるだろうという予想はできているんですか? それとも,プレイヤーが予想を超えて動くことがあるものなのでしょうか。
藤田氏:
ラスクロにおいては,基本的には想定内で収まっていますね。「こういうデッキが出てくるだろう」という予想はできていて,考えているゲームバランスから大きく外れるようなことはありません。
宇藤氏:
オンライン版でも,上位のプレイヤーを見ていると,バランスは取れていると思います。例えば,マンスリートーナメントで,うまい人が“白黒橙”を使ったコントロールデッキを組んで,がっつり上位を占めたことがあったんです。
4Gamer:
4弾環境では強いと言われていた「関羽」「メディア」あたりを絡めたデッキですよね。
ええ。その情報が広がると,中級者も同じタイプのコントロールデッキを組みだして,かなりはやりました。対策もなかなか発見されず,ほかには「ゴズ・オム」デッキぐらいしか,大会で通用するデッキが組めないんじゃないかという意見も出ていました。
4Gamer:
実際,その2つのタイプのデッキはかなり見るようになりましたね。
宇藤氏:
でも実際は,その後のマンスリーの上位を見ると,白黒橙デッキは1人で,ゴズ・オムはゼロだったこともあったんです。結局,うまい人はちゃんとメタゲーム(デッキの分布や相性をめぐるゲーム外のかけひき)を読み切って,流行のデッキを駆逐できるような構築をしていたわけなんですね。
4Gamer:
上級者は,どんな環境もきちんと打開できているんですねぇ。
宇藤氏:
ラスクロって,結局強いデッキが現れても,ちゃんと抜け道があるんですよ。強い人達は,それをひた隠しにして,最後の最後でドーンと見せて,結果を出していくというのが,マンスリーを見ていると実感できました。
4Gamer:
この記事が載るころには,5弾が実装されていますが,これによって環境はどう変わっていくとお考えでしょう?
田中氏:
5弾では新ルールの「準備」が入るので,これをうまく使うことが重要になるかと思います。
準備の能力を持つカードは,最初にカウンターが乗った状態で場に配置されるんですが,条件を達成するとカウンターが減っていって,これがなくなると新たな効果を得られるんです。
例えば「ヴェス」の場合は,「準備3」なので最初は3個のカウンターが乗っていますが,攻撃か防御をすると1つずつ減っていって,なくなった瞬間,下のテキストが有効になります。
4Gamer:
「パワー+2000」「ATK+2」「オーラ」「勇猛」「対戦相手の効果に選ばれない」……って,強い! なるほど,準備の条件を頑張って達成すれば,そのぶん大きな見返りが得られるわけですか。
田中氏:
カウンターが減る条件は,カードによって異なっているので,相手が置いた準備を持つカードによって,戦い方を考える必要があるでしょう。
もう1つ5弾のポイントになるのは,「時代マーカー」です。時代が発展すると,時代ヤードに裏向きのカードが時代マーカーとして置かれますが,これを表向きにすることで,強力な効果が得られるというものになります。
藤田氏:
この仕組みは,イメージとしては格闘ゲームの“超必殺技ゲージ”なんですよ。時代マーカーって,最大4つしか置けないじゃないですか。これを効果のリソースとすることで,1回のゲーム中に使える回数が制限されるので,「いつゲージを使うべきか」という駆け引きになるんです。
田中氏:
準備と時代マーカーの表裏という新要素が追加されることで,これまでにはなかった視点での攻防を楽しめるかと思います。
時代マーカー2枚を消費することでユニットを吹き飛ばしてくれる「ロジカの理力剣士」。まさにゲージを使った超必殺技という雰囲気だ |
相手の時代マーカーが表になっていると強化される「罰理の審問者」。相手にダメージを与えると,強制的に時代マーカーを表にさせる能力まで持っている |
4Gamer:
5弾の環境で,開発陣から見て「このカードがはやる」という予想はありますか?
田中氏:
個人的には青が強いんじゃないかと思いますね。これまでのようにコントロール系のデッキではなく,ビート系のデッキが面白いと思います。
あとは天使のカテゴリのカードが増えるので,「ニルシー」を使った天使系デッキは,さらに強くなるかと思います。ニルシーの能力はかなり強力なので,天使は増やさないようにしていたんですが,5弾になってカードもかなり増え,今なら対処できるかと思いましたので,何枚か新しい天使を入れてみました。
田中氏:
あとは,紫のコントロールも強いかな? とはいえ,5弾はいろいろなタイプのデッキが作られると思います。どのデッキが大会で勝ち残るかは,メタを読み切れるかどうかによるでしょうね。
6弾「聖暦の覇者」は12月12日に発売予定
初期のユニットが尖った性能で再登場
4Gamer:
リアル版,オンライン版を問わず,10月以降の展開でお話いただけることがあれば教えてください。
一戸氏:
少しだけお話すると,次のブースターとなる6弾は,リアル版を12月12日に発売する予定です。サブタイトルは「聖暦の覇者」になります。ラスクロには毎弾ストーリーがあって,ハンドブックやフレーバーテキストでも触れているんですが,6弾ではこのストーリーが大きく変わるのが特徴ですね。
4Gamer:
これまでも,勢力争いをしていると思ったら,災害獣やゴズ・オムが出てきたりして,けっこう波乱のストーリーだったと思うんですが……。6弾ではさらにインパクトのある展開になると。
一戸氏:
それと,新たなストーリー展開に合わせて,これまでアトランティカの世界で,英雄というか,中心として活躍してきた人達が再びクローズアップされます。
藤田氏:
初期に出ていたユニットが,新たなカードになって再登場するという感じです。
4Gamer:
再登場するカードは,これまでとは別カード扱いで,両方3枚ずつデッキに入れられるんですか?
藤田氏:
別ですね,どちらも入れられます。再登場するカードは,性能も相当尖っているので,楽しみにしていてください。
田中氏:
あとは,勢力ごとのコンセプトがかなり明確になっているのも6弾らしい部分ですね。勢力によって「こういうデッキが組めます」という方向性を,相当色濃く出しています。例えば,3弾で出した「アリオン」や「蒼眞勢」は,「同じカテゴリを集めれば強い」という分かりやすさがありましたが,あれとは違った形で導入します。
4Gamer:
どういったデッキが出てくるのか,楽しみにしています。オンライン版の今後のアップデートや,リアルでのイベントの予定などはいかがでしょうか?
オンライン版は,いろいろと実装を考えているものがあります。まずはシールドとドラフトのトーナメントですね。今は構築戦でしかトーナメントを遊べないので,開発を進めているところです。
それと,これはまだ“やってみたい案”レベルなんですが,デッキに制限をかけるトーナメントがあっても面白いかと思って居ます。例えば,1つの弾しか使っちゃいけないとか,レアリティはアンコモンまでとか。
一戸氏:
リアルのほうでは,9月15日から11月24日まで,ツアーの後半戦が行われます。そして11月29日と30日には,5弾の総決算となる大会が行われて,その後にはすぐに6弾のプレリリースが始まるという日程です。
あとは,10月11日に大阪でファンイベント「収穫祭」があるので,ぜひ遊びにきてくれると嬉しいです。名古屋などでもファンイベントができないか検討していますが,日程は未定になります。
4Gamer:
ラスクロって,各地でけっこうな回数のイベントをやっていますよね。
一戸氏:
国内のTCGではかなり多いほうだと思います。ツアーも後半戦だけで17か所,北は札幌から南は福岡までやりますから。前半戦と合わせると32か所で,普通のTCGだったら間違いなく大会をやらないようなところにも行ってます。
4Gamer:
そこまで大会に力を入れているのは,後発のTCGとして知名度を上げる施策ということでしょうか。
一戸氏:
それもありますし,実はFF-TCGでも同じようなことやったところ,ご好評をいただいたんです。そのノウハウを活かして,いろいろと展開している最中なんですよ。もちろん,全国各地のカードショップとコミュニケーションを取りたいというのも,理由の1つですね。
とはいえ,ツアーの前半戦は函館,新居浜,那覇と,ちょっと頑張りすぎました(笑)。
田中氏:
台湾の台北もいきましたよ。
4Gamer:
ラスクロって海外でも展開しているんですか?
一戸氏:
台湾で販売しています。カードは日本語なんですが,台湾には日本語が読める方も多いですし,一応,現地の出版社に手伝ってもらって翻訳したリストも用意してあります。
それと,実は今,ヨーロッパでの展開も考えていて,フランスのJAPAN EXPOでラスクロを出展したところ,けっこう引きがありました。もう英語版のカードはいくつか刷ってあって,英語版スターターも用意してあるので,体験プレイ用に持って行っています。海外は,日本のTCG市場と違って,そこまでTCGが溢れていないので,その中に入っていきたいですね。
4Gamer:
分かりました。
それでは最後に,ラスクロプレイヤーに向けてメッセージをいただけますか。
藤田氏:
今後もラスクロはちゃんと続けていきますよ! ということは,改めてアピールさせてください。最近,展開の終わってしまったほかのTCGを見て,とくにリアル版のプレイヤーから,「ラスクロは大丈夫?」と危惧する声を聞きます。確かに後発のTCGですし,本当に売れているTCGの規模にはまだ及びませんから,心配する気持ちは分かります。でも,リアル版もオンライン版も,終わらせるつもりなんてありません。そこは安心してプレイしていただいて大丈夫です。
ですから,皆さんも一緒にラスクロを盛り上げていただけると助かります。
4Gamer:
ありがとうございました。
1周年を迎え,ブースターは5弾まで展開されてきたラスクロ。リアル版とオンライン版の同時展開という,珍しい立ち上がりを見せながらも,どちらも同じように力を入れて,今後もしっかり続けていくと,開発陣は述べる。12月に発売される6弾はもちろん,来年以降の展開にも期待したいところだ。
とくに好調だというオンライン版は,現在は,筆者がレビューを掲載したときよりも無料でカードを入手できる手段が増え,さらに遊びやすくなっている。TCG好きであれば,ぜひ一度は触ってみてほしいところだ。
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