インタビュー
ロングヒットの秘訣は“攻め”の姿勢――「戦国炎舞 -KIZNA-」×「釣り★スタ」プロデューサー対談
市場の動向を見ると,リリース直後こそ爆発的にヒットしてもその勢いを維持できないタイトルが大多数を占めるが,両タイトルはサービス開始から5年以上を経てもアプリストアのランキング上位に名を連ねている。
今回,そんな両タイトルのプロデューサーに“長期運営”をテーマとした対談を行ってもらった。2018年に「戦国炎舞 -KIZNA-」は5周年,「釣り★スタ」は11周年を迎えているが,それでも変わらずプレイヤーに愛され続ける秘訣はどこにあるのか,厳しいモバイルゲーム市場でどのような戦略を考えているのか話を聞いた。
「戦国炎舞 -KIZNA-」公式サイト
「釣り★スタ」公式サイト
5年&11年を迎えた長期運営タイトル
攻めの姿勢を崩さず挑戦していく
4Gamer:
本日はよろしくお願いいたします。まずは,お2人が関わっているタイトルでの立ち位置について教えてください。
2013年にサイバーエージェントへ入社しました。そして「戦国炎舞 -KIZNA-」のiOS版がその年の4月にリリースされて,5月からプロジェクトに参加しました。
プロジェクトマネージャーとして1年,その後プロデューサーとして1年携わり,そこから別の新規プロジェクトに移った時期もあったんですが,昨年の冬にまた「戦国炎舞 -KIZNA-」に戻り,プロデューサーを務めています。
「釣り★スタ」プロデューサー大久保吉哉氏(以下,大久保氏):
私も2013年に中途でグリーに入社して,そこから「釣り★スタ」のプランナーとしてやってきました。プランナーリーダーを経て,2017年1月からプロデューサーを務めています。
4Gamer:
2018年9月には「戦国炎舞 -KIZNA-」と「釣り★スタ」のコラボレーションキャンペーンが開催されましたが,お2人は今回の対談前に直接的な面識はあったのでしょうか?
大森氏:
ないですね。
大久保氏:
竹内さん(「戦国炎舞 -KIZNA-」前プロデューサー・竹内恒平氏)とはありましたが。
4Gamer:
スタッフ同士の交流はどうでしょう。
大久保氏:
交流自体は若干あって,高松(「釣り★スタ」前プロデューサー・高松亘平氏)と竹内さんが1年ほど前に対談をしていて,そこからお付き合いが始まったんです。ちょうど我々が11年目のときに“絆”というキーワードを掲げていたので,まさにタイトルが“-KIZNA-”である「戦国炎舞 -KIZNA-」とのコラボが実現しました。
4Gamer:
対談から生まれたコラボだったんですね。
大森氏:
今日も意気投合したらぜひ飲みにいきたいですね(笑)。
大久保氏:
ぜひぜひ!
4Gamer:
では,今日が初対面ということで……まずは,お互いのタイトルへの印象をお聞かせください。大森さんにとって「釣り★スタ」といえば長期運営の大先輩となりますが。
大森氏:
2017年11月にプロデューサーへ復帰して,最初の頃はずっと「釣り★スタ」の運用を見ていました。長期運営を行っていく中でどう突破口を見出すべきなのか。「戦国炎舞 -KIZNA-」も運営が長いとはいえ,「釣り★スタ」はその2倍以上ですからね。そうやって運用を見ていた中で,すごく印象に残ったのは“ダムの命名権”でした。
4Gamer:
10周年を記念したオフラインイベント「ありが10th祭(ありがとうさい)」のときに発表されたものですね。宮城県にある南川ダムの命名権を獲得して「釣りスタ南川ダム」と名付けて,ゲーム内イベントも行われたとか。
【釣りスタ南川ダム通信】
— 釣り★スタ公式アカウント (@tsuri_star) 2018年8月28日
釣りスタダムも酷暑で少し干上がってきていますが、どうにか耐えています!
残暑厳しい毎日ですが、熱中症にはくれぐれも気を付けて頂き、釣りスタダムのように適宜水分を管理、補給して、釣り★スタをお楽しみください!
−運営一同− pic.twitter.com/UVP2Vv0bfQ
大森氏:
そうです。「何それ!?」ってなるじゃないですか(笑)。
4Gamer:
あれはインパクトがありましたね(笑)。
大森氏:
やはり長く運営を続けていると,同じことばかりしてはお客様が退屈してしまいます。なので,あの手この手を使いながら新たなことにチャレンジするという部分では,「釣り★スタ」もきっと同じような悩みを持っているんじゃないだろうか,と思っていました。
なるほど。では,大久保さんは「戦国炎舞 -KIZNA-」をどのように捉えていらっしゃいましたか?
大久保氏:
ストアランキングの上位にいて,今も勢いの衰えないタイトルという印象ですね。去年,竹内さんとお話しした際に,新日(新日本プロレスリング)とコラボすると聞いて,我々では手を出せない領域にチャレンジされているなと。「もうやっちゃいますよ!」みたいな感じで,勢いをもって運営していらっしゃる,“攻め”に行く印象がすごくありました。
4Gamer:
選手がゲーム内に登場するだけでなく,謎のレスラー「プロレスラー戦国炎舞」が試合に出場されたことでも話題となりましたね。
さて,サービス開始から短期間で運営を終了するゲームが少なくないなか,両タイトルともに長期運営を成功させているタイトルとして注目を集めています。率直に,ロングヒットに結びついた要因はどこにあるとお考えですか?
大森氏:
“唯一無二”ですね。僕はとてもゲームが好きなのでたくさん遊んでいますけど,GvG(ギルドVS.ギルド)というジャンルの中でも,カードバトルで我々の“合戦GvG”のようにテンポが良くスピード感のある,かつお客様同士でコミュニケーションを取りながら勝利を目指せる,こんな体験ができるゲームはほかでは見たことがありません。RTSや時間をかけて陣取りするタイトルはもちろんありますけど,そういったタイプのものと「戦国炎舞 -KIZNA-」はまた違いますし。
4Gamer:
確かに戦国テーマのゲームは色々とありますが,GvGでここまで目立ったタイトルはなかなかありませんね。大久保さんはいかがでしょうか?
大久保氏:
カジュアルに遊べるという基本を残しつつ,時代の潮流に乗ってさまざまな取り組みをしたことが一番大きいと思います。最初は図鑑を埋めていくところから始まって,レイドモデルが流行すればそれを導入し,時期を見ていろいろなIPともコラボさせていただいたりとか。今はWebの枠からネイティブ化にシフトチェンジするタイミングになっているかと思うので,そういうことにも挑戦しています。
「皆さんに楽しんでもらえるのは何だろう?」と考えながら新しい機能を組み込んで,時代に合わせて変わっていくことが重要かもしれません。
4Gamer:
新しい挑戦といえば「釣り★スタVR」もありましたね。
大森氏:
実際,VRってどうなんですか?
大久保氏:
ちょうど10周年のタイミングで,何かしら爪痕を残したいと考えたんです。面白くて,皆さんに楽しんでもらえるのは何だろうと考えたとき,今のデバイスだけじゃなく,もっと枠を広げてやってみてもいいんじゃないかと。
話題作りになるというのも大きくて,そのフックとしてまず4月1日のエイプリルフールに「ガラケーでVR作れます!」と打ち出してから,あとのタイミイングで「実は本当にVRやります!」と告知したんです。こうした話題で爪痕を残していくことが今後必要になってくると考え,VR化の施策を実施しました。
4Gamer:
ゲーム性はもちろんですが,そういった施策でインパクトを与え記憶に残すというのも,運営を続けていくうえでは欠かせないんですね。思い出に残るとタイトルへの愛着にも繋がるような気もします。
大森氏:
「爪痕を残す」ってめちゃくちゃカッコイイです……!
大久保氏:
もともとの意味はあまり良いイメージではないんですけどね(笑)。
大森氏:
僕も「爪痕を残す」ような新しい取り組みでお客様を「おおっ」と言わせたいと常々思ってますよ。まだ起こせていないですけど。
(一同:笑)
大森氏:
それぐらい何かを起こさないとタイトルが盛り上がらないと思っていて。
大久保氏:
確かに。
4Gamer:
「戦国炎舞 -KIZNA-」はリリース2000日を迎えていますから,そういったタイミングもよさそうですね。これだけ長く運営されているとさまざまな苦労もあったかと思いますが,今だからお話しできるエピソードはありますか。
大森氏:
ゲームリリース直後に始まった新イベントのことはよく覚えてますね。まだネイティブでのソーシャルゲームの運用を経験したことがないタイミングで,ゲーム内に不具合がかなり出たんです。お客様が求める対応スピードも分かりませんし,どれくらいで対応ができるのかも分からずで……苦労したのをよく覚えています。
4Gamer:
リリース直後の対応はタイトルのイメージにも繋がりますからね。
大森氏:
もう「どうにかするしかなかった」という感じです。入社してからまだ1年目だったのもあって何をしたらいいのかも分からず……ネイティブアプリだからこそ,対応に時間がかかってしまうジレンマもあって。
大久保氏:
お客様の熱量が高そうですもんね。私はプロデューサーとしては7代目にあたるんですが,各プロデューサーでそれぞれ大変な時期はあったと思います。私がプロデューサーになってからは,遊んでくれるお客様が大幅に減ってしまった時期がありました。7周年というタイミングでお客様が減った影響でKPI(key performance indicator)が悪化していて,改善しなければいけない状況が続きました。
4Gamer:
その原因はなんだったのでしょう?
大久保氏:
理由は色々あるんですけど,グリーという巨大なプラットフォームに依存するだけでは戦いにくくなったのが大きな要因の1つでした。自分たちもネイティブ市場で戦えるコンテンツに変わっていかなければならない,ということに気付いたタイミングでもありました。課題を1つ1つクリアにしてネイティブ化を推進していきました。これもまだ力を入れている段階で完全に終わってはいないんですけど,全体的にネイティブ化していこうと計画しています。
4Gamer:
なるほど。
大久保氏:
あとはプロモーションでどう話題を作るかも意識していて,IPコラボで動画を作ったり,最近は芸能人など話題を作れそうな方を呼んで周年のプレス発表を行ったりしています。広告出稿にも力を入れて,新規へのアプローチもしているんですよ。
そのおかげか,やっと今は減衰から成長に転じてDAU(Daily Active User)も増えました。
大森氏:
ちゃんと増えてるんですね,すごい。
大久保氏:
外部やグリーのプラットフォームとか,色々なところからお客様を引っ張ってDAUを積み上げようとしました。話題作りにしても,我々が抱えているお客様の層であればどこを目指すべきなのかも考えてます。テレビは主婦層が多いですし,新聞や週刊誌なども意識しつつプロモーションを行っています。
4Gamer:
しっかりとユーザー層に合わせたアプローチを考えないと,刺さるべきところに刺さりませんよね。
大久保氏:
「結局やった意味あったんだっけ?」ってなっちゃいますからね。
新規と古参プレイヤーへのアプローチ手法
スタッフが変わっても熱量を維持し続けられる理由とは
4Gamer:
これだけ長期にわたった運営ですと,新たに始めたプレイヤーと古くから遊んでいるプレイヤーとの間でどうバランス取るかも重要な課題になってくるかと思います。どのような対策を考えられているのでしょうか?
大森氏:
答えとしては「全部やる」となってしまいますが,「このタイミングは長く遊んでくれているお客様に楽しんでもらおう」「ここでは新規のお客様に楽しんでもらおう」という,運用の波を作っています。
新規の勢いが弱まってくると,古参のお客様から「新規が増えてない」という意見も出てきます。とはいえ新規のお客様向けの施策ばかりでは長く遊んでいるお客様が楽しめませんから,プロジェクトとして信念を持って「こうです!」とお伝えするのが大事だと思います。やはりすべてのお客様を同時に満足させるのはなかなか難しいので,部分最適をたくさん積み上げていく考えで運営しています。こればかりは正解がなくていつも悩む部分なんですけどね。
4Gamer:
これといった正解がない課題ですよね。
とくにゲームジャンルがGvGなので,新規のお客様が古参のお客様に「強いですね」とコメントを送るなど,実力を認め合いながら交流していただくのが理想だと思っているんですが,実際はその理想とギャップがあるんです。ゲーム内でそもそも接点がないし,すでにコミュニティが出来上がっているので,どう理想に近づけていこうかというのを最近よく考えています。
4Gamer:
どういった対策を考えられたのでしょう?
大森氏:
今年の6月に,遊び続けてくださったお客様を表彰する「KIZNAアワード」を開催しました。これは一番合戦に参加した人や,一番ダメージを与えた人などを表彰するものです。合戦回数が最も多い方は5196回だったんですけど,すごい数字ですよね。長く遊んでいるお客様の中にある“強いこだわり”を大々的に見せられる場を作る取り組みは,とても良かったという自負があります。この施策を機に,古参のお客様が盛り上がるといいなと。
4Gamer:
あらためて表彰されると嬉しいですよね。新規の方も「こんなにすごい人がいるんだ」と分かりますし。「もしかしたら自分もいつか表彰されるかも」とモチベーションが高くなる人もいるかと思います。
大森氏:
1人で遊ぶコンシューマゲームではなく多くの人と遊ぶソーシャルゲームですから,人と人との関係値が如実に見えるようにしたほうが我々らしいと思うんです。
次回のアワードも年末に行う予定で,チーム内でもアイデアを出し合っています。現在「いぬカードが出るまで引き放題!SSR確定無料10連ガチャ」を実施していて,特定の「いぬカード」が出現するまで引き放題なんですが「いぬカード」が1枚でも出現するとガチャは終了となります。これはお客様としては「いぬ」が出たら残念なんですけど,これを切り口として誰にでもチャンスがあるような表彰をしてみようと考えたんです。「犬の割合高いで賞」みたいな。当然,この案自体はお蔵入りになりました(笑)。
4Gamer:
誰にでもチャンスがある部門もあると,最近遊び始めたプレイヤーにとっても嬉しいですね。やはりソーシャルゲームですと,TwitterなどSNSでのプレイヤー同士の盛り上がりも気になるところでしょうか。
大森氏:
SNSもよく見るようにしているのですが,「引退します」というコメントを見かけるとつらいですね。カムバックできるタイミングを作った頃に「戻った!」というツイートが流れればいいなと思っています。
4Gamer:
もちろんずっと遊んでもらうのが理想ですけれど,長期運営を考えると「一度離れても好きなタイミングで戻ってきやすい土壌」というのもポイントになりそうですが。
大森氏:
とはいえ変に固執しても……と思うところもあります。僕たちのゲームを遊ぶのが人生における正義ではありませんから。あくまでもエンターテイメントなので。
4Gamer:
ゲームとして,エンターテイメントとして純粋に楽しめるという空気を大切にされているんですね。では,大久保さんはいかがですか?
大森さんと一緒ですね。ここに対するアプローチが難しい,という認識はあります。10年以上運営していると,新規のお客様と古くから遊んでいるお客様の間には埋められない溝が当然ありますから。強いていうなら10周年で開催した感謝祭の一環で,プレイ年数に応じてガチャ券をプレゼントしたら古くから遊んでいるお客様も,新しく入った方も喜んでくれたので,そこはうまくバランスがとれたと感じています。
どうしても古参のお客様へのアプローチを考えてしまいがちなのでそこは切り分けて,新規向けにはイベントというより「どれだけ継続してもらえるか」を意識しています。最近はチュートリアルを簡略化して,スキップ機能を入れたら継続率が大きく上がりました。釣りに関してはカジュアルで誰でも遊べるので,そんなにチュートリアルをやり込まなくてもいいよねと。新規向けのミッションを設定して,終わったころにはガチャを引けて,アイテムがもらえて,イベントに参戦できるとか。色々と試行錯誤しながら継続率を上げています。
4Gamer:
継続率というのも大事な視点ですね。
やはり長期運営となるとスタッフの入れ替わりも避けられないことかと思います。そうした中で熱量を維持し続けるために,どのような対策を行っているんですか?
大森氏:
これしかないだろうと思っているのが「ガチでゲームをやる」ということです。いちユーザーの感覚を持つためにしっかりゲームを触ろうという文化が大切で,これがあると,たとえスタッフが変わってもいちユーザーとしての体験は語れますし,人が変わってもチームが成り立つ要因だと思います。すごくお金をかけている上位スタッフもいれば,合戦はそれほど遊ばずカードを集めるのを楽しんでいるスタッフもいて,幅広いですよ。
我々はプロダクトとして目指す共通認識をしっかり持つことを意識していて,7代続いている「釣り★スタ」のプロデューサーそれぞれから受け継がれてきた意志もあります。
アバターサービスにしても「ハコニワ」「ドリランド」「クリノッペ」を含む,長期運用プロダクト全体が共通の目標として持っているのは「末永く愛されるプロダクトであり続けること」ということです。これはどの場でも出てくる言葉であり,永遠のミッションですね。
大森氏:
受け継がれる意志……かっこいい!!
大久保氏:
とくにプロデューサーがそれを強く意識しているんです。各プロダクトでそれぞれアプローチの方法は違うんですけど,我々の「釣り★スタ」はグリーを代表するゲームの1つですし,世界初のモバイルソーシャルゲームと言われているので,その歴史を次世代に繋いでいくことを意識して取り組んでいます。「世界初」とか「歴史」も1つのモチベーションになりますしね。
末永く続けていく,そのために何をすべきかという意識を持つため,週1のミーティングや月1の締め会などを通じて,Webゲームの部署全体でそういった話をできているのもポイントかと思います。
大森氏:
確かにそうですね。
4Gamer:
個々のタイトルは勿論ですが,グリー全体としての意識づけも強いんですね。とくに世界初という冠や積み重ねられた歴史というのは,あとから追いかけようと思っても追いつけるものではないですからね。ちなみにプロデューサーというのは,一度離れてから戻るということもあるんでしょうか?
大久保氏:
完全に代替わりしていますね。
大森氏:
プロデューサーが変わると,何が変わるんでしょうか。進め方の方針とか,かなり色々変わると思うんですけど。
大久保氏:
それぞれ得意分野が違うプロデューサーが多いんです。6代以前まではエンジニア出身のプロデューサーばかりで,そこで私が初めてプランナーからプロデューサーになったんです。なので,そこから違いますね。
大森氏:
そうだったんですね。
大久保氏:
どちらかというと今まではエンジニアが強くて色んな機能をどんどん作っていく方針だったんですけど,私はプランナー寄りなので,プランニング重視なところはあるかもしれません。それぞれ得意なことも不得意なこともあるので,その中でチームとしてバランスを取りながらやっていくのが重要かと思います。
4Gamer:
なるほど。後々振り返ってみたときに「あのプロデューサーのときはこんな感じだったな」と,そのときどきのカラーを感じられることもあるのかもしれませんね。
少し話は変わりますが,それぞれ「戦国武将」や「魚」というある程度固定された枠組みの中で運営するとなると,カードやアイテムの追加で苦労される面もありそうな印象があります。新規の追加がある際はどのように考えられているのでしょうか?
大森氏:
男性の武将はゲーム内でも必ず男性にするという決まりがあるわけではないので,史実で男性とされている武将を女性として登場させることもあります。きちんと史実に沿ってキャクターを構築しつつも,そうしたバリエーションをどれだけ作れるかを意識しているんです。
例えば,上杉謙信であれば生涯独身であったという環境を女性に置き換えたとき「男性に慣れていないため恥じらいがある」という設定にしてみるとか。また,豊臣秀吉であれば羽柴のときと豊臣のときがあるので,それぞれの逸話をもとに描き方を変えるとか,そうした工夫をひたすら積み重ねています。
僕たちはまだやりやすいほうだと思っているんですけど……だって見た目の格好良いフグとか,フグのバックグラウンドを考えるとか,やりにくくありませんか(笑)?
大久保氏:
そちらのほうが大変かと思いましたよ。有名な武将も限られてしまうでしょうし。
大森氏:
確かに,それはありますね。
大久保氏:
魚って,かなり狭い世界かと思っていたんですけど,実はそんなことなかったんですよ。モチーフを考えるのにはかなり苦労しますけど。イベントに合わせたユニークな架空魚を描くことも多くて,バリエーションはどんどん出せるんですけど,モチーフは本当に大変です。
例えば,そのときに流行しているようなものに対して「これいいね!」と思っても,制作が終わる頃にはもうブームが去っている。そう考えると先取りしなければいけないんですが,それが流行するか分からずなかなか手が出せない……。なので,基本的には過去から変わらず人気があるもの,季節に合わせたものなどがモチーフの中心となりますね。このあたりを意識しながら早めに制作するように心がけていますし,週1でモチーフミーティングも行ってストックを確保しつつ,今年は無理でも来年使おうみたいな判断もあります。
ユーザーと触れ合うオフラインイベント
コラボレーション選定へのこだわりも
4Gamer:
「釣り★スタ」は2017年11月に10周年を記念した「ありが10th祭(ありがとうさい)」を,「戦国炎舞 -KIZNA-」は2018年1月に「KIZNA祭2018 〜新春の祝宴〜」というオフラインイベントを開催されました。振り返ってみていかがですか?
大森氏:
プロデューサーに戻ったのが昨年の冬だったので,最近のお客様との接点が一切なかったものですから,このイベントで会場のユーザーさんと色々とお話しさせていただきました。お客様と話すの好きなんですよ。そこで「こんな人が今こんなふうに思っているんだ」と肌で感じられたのは,僕個人としてもすごくためになりました。
4Gamer:
ゲームを遊んでいる人と直接交流できる貴重な機会ですよね。
大森氏:
リアルイベントは,お客様に今までゲームを遊んでくれてありがとうという気持ち込みで,オフラインだからこその体験を提供するものだと思います。以前実施したリアルイベントでは,冒頭30分でオープニングアクトとしてライブパフォーマンスをしていたんですけど,すごく長くて「いつまで続くんだ……?」という感じになったんですが,結果としてこれはこれで特別な体験にできたと感じています。こうしたことをひとつずつやって「まだまだ盛り上げようとしているんだ」「これからも伸ばそうとしているんだ」とか,運営の意気込みを伝える場としても良かったと思います。
先ほどお話しした「KIZNAアワード」では,表彰されるお客様を特別招待したんです。宿泊施設をすべて手配して,料理も「戦国炎舞 -KIZNA-」の焼き印を付けたものを提供し,特別な体験をご用意しました。新規向けの施策が目立っていた中で,「上位だからこそこういう体験が得られたのだ」と伝えるという点でも,とても意味があったと思います。今後も同じようにやっていきたいですね。
「戦国炎舞 -KIZNA-」と漫画「BASTARD!!」がコラボ。新情報が盛り沢山だったイベント「KIZNA祭2018 〜新春の祝宴〜」の模様をレポート
2018年1月14日,サムザップは,スマホアプリ「戦国炎舞〜KIZUNA〜」において,過去最大規模となるリアルイベント「KIZUNA祭2018〜新春の祝宴〜」を,渋谷ヒカリエで開催した。本稿では,ゲームの新情報が発表されたステージイベント「情報局」を中心にお伝えしよう。
大久保氏:
我々もリアルイベントを実施したときはお客様の反応がかなり良くて,終了後のアンケートでも満足度が非常に高かったです。不具合が起きたときにお客様からいただくお問い合わせの文言が「ありが10th祭,ありがとうございました」から始まっていることもあって,嬉しかったですね。
イベントでは,運営とお客様の接点を多めに設けるような形をとっていました。お客様と直接会話をするなかで「ありがとう」と言われると,「もっと良いサービスを届けていかないと!」という気持ちが強くなります。
4Gamer:
そういった交流はやはりいい刺激になるんですね。
大久保氏:
4年前にもリアルイベントを開催したんですが,至らない部分や課題もあり,次回実施する際は改善したいと強く感じました。
そこで「ありが10th祭」では「お客様をおもてなししよう」というコンセプトのもとで進めました。直筆のお手紙を書いて,それぞれの卓にスタッフがついて料理の取り分けも行い,専用のグッズも制作して……。「釣り★スタ」は和のイメージもあるので,豪華賞品が当たる「かるた大会」をやったら最後の最後まで楽しんでもらえたようで,お客様から「ありがとう」という言葉をたくさんいただけて,本当に実施してよかったなと。
大森氏:
料理の配膳とか,現場を巻き込むのって難度高くありませんでしたか?
大久保氏:
ぶっつけ本番だったんですけど,皆上手くやってくれました。ある程度のマニュアルは用意しましたけど上手くやらなきゃという意識ではなく,お客様をおもてなししようという気持ちで,コミュニケーションは現場判断に任せました。困ったことがあったら上の人間に聞けばいいということで。
「ウルトラマン」コラボに,ソーシャルゲーム史上初“ダムの命名権獲得”!? 話題に事欠かない「釣り★スタ」の10周年記念リアルイベントをレポート
2017年11月19日,グリーは,ソーシャルゲーム「釣り★スタ」の10周年記念リアルイベント,「ありが10th祭」を開催した。当日はチーム対抗戦をはじめ,釣り★スタに関する3つのサプライズが発表された。プレイヤーによる熱量を感じた会場の模様をレポートしよう。
大森氏:
なるほど,今後のいいヒントになりました(笑)。
4Gamer:
大森さんも以前,イベントでお手紙を直筆で書かれたと聞きましたが。
大森氏:
そうですね……やっぱり書きたい,書かなきゃダメだって思うじゃないですか。だから大久保さんの話,すごく分かります。
大久保氏:
どうやったら伝わるんだろうと考えたときに,やっぱり手作りだなって思うんですよ。自分で書くのがいいんじゃないかなって直感的に思ったんです。
大森氏:
いやー,すごい分かります。何を書こうかはすごく悩んで……あと自分の字が汚いのも嫌になりました(笑)。
大久保氏:
そうですね,何を書くかはすごく悩むだろうなって思いました。なので,イベント応募のときにお客様からいただいた一言へお返事するという形を取り入れました。
大森氏:
それいいですね! でも実際,厳しい一言とかもあったんじゃないですか?
大久保氏:
まったくなかったわけではありませんが,お叱りの言葉にも真摯に答えさせていただきました。
4Gamer:
ファンの方も嬉しいですよね。
話は変わりますけど,両タイトルとも多彩なIPとコラボレーションされていますが,これらはどのように決定しているのでしょうか? とくに反響がよかったものもお聞かせいただければと思います。
大森氏:
2018年9月に実施した「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」のコラボは反響がよかったですね。もともと大きなIPで,東京ゲームショウの事前盛り上げなども功を奏したんじゃないかと思います。ゲストに鈴木奈々さんをお招きしたり,ステージを100人の志々雄真実が埋め尽くしたり……実はそのうちの3人がダチョウ倶楽部の皆さんで会場が爆笑に包まれて,お客様に喜んでいただけたなと手応えも感じました。
4Gamer:
100人の志々雄真実はすごかったですね(笑)。
大森氏:
コラボ先の選定は,まずお客様が求めているものであること。それと,これはプロデューサーの考え方次第だと思いますが,描いたビジョンにマッチするものであることです。基本はまずお客様ですね。遊び続けてくれているお客様がよく知っていて,喜んでくれるものは何だろうと考えるんです。
「戦国炎舞 -KIZNA-」という枠の中で,僕たちのタイトルらしい体験をしてもらうことを気にしているつもりです。
4Gamer:
それぞれの良さを引き出すのがコラボの難しい部分でもありますね。
大久保氏:
今はプロモーションのしやすさとか,「釣り★スタ」に落とし込んだときにどれだけ面白くて話題になりそうかという部分を重視しています。以前は大森さんが仰っていたような,お客様が楽しめるようなものという意識でやっていました。でもプロモーションに繋げたときに新規のお客様の獲得が難しくて,アプローチするなら動画配信とか話題性のあるものをと考えました。
過去に反響があったものは,キャラクターを魚化する“人面魚”を初めて導入した「北斗の拳 イチゴ味」コラボです。根強いファンの多い「Dr.スランプアラレちゃん」「シン・ゴジラ」も,お客様がかなりプレイしてくれました。
大森氏:
アラレちゃん,いいですね。
大久保氏:
そのときはゲーム内で「うんちくん」を探すイベントもやったんです。新規のお客様にページを回遊してほしい狙いがあったんですが,これは思い描いたとおりに上手くいきました。個別に出し分けはしていなかったので,お客様の間で「うんちくんここにいましたよ!」と情報が飛び交うんです(笑)。
4Gamer:
長期運営という視点では,プロモーションのしやすさを重視するというのも大事なんですね。
大久保氏:
新規のお客様を獲得していきたいし,ネイティブ層を狙っていきたいとなると,年齢層はおのずと下になります。我々はそこの部分に弱いので高めの年齢層に合わせると,対象となるIPが懐かしの作品になるんですが,リメイクで話題になっても若い人にはあまりマッチしなかったり,当時タイムリーだった世代は「ちょっと違う」となってしまったりというギャップが生まれてしまうんです。どこをターゲットにするかというと,やはり話題性に行きつくかなという感じです。
大森氏:
悩みますよね,このあたりは。
4Gamer:
とても参考になります。そろそろお時間ですので,対談の締めとして最後に一言ずつお願いできますでしょうか。
大森氏:
あと2倍の期間運営を続けて,やっと今の「釣り★スタ」に追いつけます。まだまだ先は長いですが,これからもより盛り上げていきたいです。GvGの白熱した合戦という体験は,僕たちのタイトル以上に熱中できるものはないという自負があります。これがきちんと理解してもらえるような市場にしていきたいですね。皆さんが楽しんでくれればよりゲームが盛り上がって,さらに楽しみやすい状況になっていくので,これは4〜5年かけて環境を構築していけたらと思っています。
いずれは「釣り★スタ」と50周年記念とかできたらいいですね。50年前の対談を振り返る……みたいな(笑)。
大久保氏:
それは結構なヨボヨボになってると思いますけど(笑)。
大森氏:
あとは,11月に行う「リリース2000日記念キャンペーン」は,過去にないほどの大盤振る舞いをします。ガチャ券を最大5億枚配るとか……こちらをぜひお楽しみいただければと思います。
大久保氏:
我々はこれまでお話ししたとおり,これから先もさまざまなことに取り組んでいきたいと思っています。11年目のテーマが「絆」で,「戦国炎舞 -KIZNA-」とコラボさせていただいたんですけど,12年目は“革命”をテーマとしています。まだ言えないことも,もう少ししたら公開できると思うのでお待ちください。
11月18日には「中間管理録トネガワ」とのコラボも始まります。いろんな場で資料を作ってプッシュし続けて,やっときたかという感じです。これまであまり「これがやりたい!」というのは言わないようにしていたんですが……ついに渾身のコラボが始まります。楽しみにしてください。
4Gamer:
念願のトネガワコラボ,気になりますね。
大久保氏:
10年も続けていると技術の進歩に伴って,以前はできなかったことが実現できるようになるので,現状に甘えず改善をしていきたいです。“革命”というのは戦争のようなものではなく,産業革命とかIT革命というイメージで,進歩していく過程というものを意識してやっていこうと思っています。
大森氏:
“革命”となったらもうコラボはやらせてもらえないんですかね……?
大久保氏:
いやいや,やりましょう(笑)。毎年この時期にやっている……みたいな恒例コラボもいいですよね。
大森氏:
ぜひ“革命”でもよろしくお願いします!
4Gamer:
両タイトルのファンもますます今後に期待できそうですね。本日はどうもありがとうございました。
――2018年10月23日実施
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