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印刷2014/02/15 00:00

インタビュー

コロプラとACCESSPORTが「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」を中国で展開。スマホアプリの中国パブリッシング事業について,ACCESSPORTのキーパーソンに聞いてみた

画像集#001のサムネイル/コロプラとACCESSPORTが「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」を中国で展開。スマホアプリの中国パブリッシング事業について,ACCESSPORTのキーパーソンに聞いてみた
 コロプラとACCESSPORTは,既報のとおり,コロプラが開発したスマートフォンアプリ「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」iPhone / Android)を,2014年3月より中国の主要Androidアプリ配信チャネルにて,配信を開始する。日本でも人気のコロプラが,成長の期待される中国市場に進出することについては「ふーん」と納得する人が多いと思うのだが,そこに介在するACCESSPORTという会社については社名も聞いたことがないという人も多いのではないだろうか。

 ACCESSPORTは,PCブラウザゲームプラットフォーム「aima」運営のほか,Android向けアプリの開発,海外のPC/スマホゲームの日本向けパブリッシングなどを展開しており,中国市場においては,日本製スマホアプリのパブリッシング事業を展開する。その中でも今回のコロプラとの取り組みは,日本におけるヒットタイトルが,中国市場でどのような動向を見せるのかという点で,注目が集まるところだろう。

 そこで今回,4Gamerでは,ACCESSPORT ゲーム・動画事業部 中国事業開発チーム マネージャー 横田冬子氏に,今回の「魔法使いと黒猫のウィズ」の事例を含めた,同社の中国展開に関する話を聞いてみた。

 中国における,モバイルゲーム市場規模は急速に拡大しており,2013年の成長率は前年比371.1%,2013年上半期のモバイルオンラインゲームプレイヤー数は,1.71億人に到達した。この傾向は継続し,2014年には日本円にして2856億円の市場規模となる見込みで,横田氏によれば,今や中国市場におけるスマホネイティブアプリ1タイトルあたりの売上高は,日本と同等かそれ以上となっており,日本のゲーム関連企業からの関心が非常に高まっているという。

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 しかし,過去に何度も指摘されてきたとおり,外資企業による中国のゲーム市場への参入には課題が多い。
 とくにオンラインゲーム事業においては,中国政府による外資参入規制が設けられており,事実上,100%中国内資企業でないと,オンラインゲーム運営に必要なライセンスを取得できなくなっていると横田氏は語る。すなわち,日本の企業が中国でオンラインゲーム事業を展開する場合には,中国系の企業との提携が必須となるわけだ。

 「ライセンス取得もそうですが,中国でのオンラインゲーム運営に必要な中華人民共和国文化部への登録や,商標登録などの点で,中国語でのコミュニケーションや,日中のビジネス文化の違いをリスクと捉える日本の企業さんも多いようです。そうしたケースでも,ACCESSPORTでは,日本語できちんとした説明,対応が可能です」(横田氏)

 またAndroidアプリに関しては,中国ではGoogle Playが利用できないため,数百の“サードマーケット”が存在する。一方,iOSアプリにも,公式のApp Storeだけでなく,非公認のジェイルブレイクストアが複数存在する。横田氏は,主要な配信チャネルだけに絞ったとしても,それぞれに対するSDK実装コストの捻出と,プロモーション交渉は困難だろうと話す。

ACCESSPORT ゲーム・動画事業部 中国事業開発チーム マネージャー 横田冬子氏
画像集#004のサムネイル/コロプラとACCESSPORTが「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」を中国で展開。スマホアプリの中国パブリッシング事業について,ACCESSPORTのキーパーソンに聞いてみた
 「中国市場の主流はAndroidマーケットです。日本だと,Androidアプリの配信元はGoogle Playに集約されますよね。しかし,中国ではGoogle Playが使えないため,大手企業が横並びでアプリを配信しています。その中でも360 Mobile Assistant,Baidu,91.comが,現在の3強となっていますが,ACCESSPORTは,この3社と良好な関係を築いています。
 『魔法使いと黒猫のウィズ』の中国展開では,どこか1社から独占先行配信するのではなく,大手チャネルの同時先行配信という形で,各社のプロモーションソースを利用し,実際にゲームをプレイしたいというモチベーションを持ったプレイヤーを獲得していこうと考えています」
(横田氏)

 加えて,中国における,いまだ2G回線が主流という通信環境の悪さや,安価だが低スペックなAndroid端末の普及率とその種類の多さ(1100種以上!)も大きな課題となる。つまり,日本製スマホアプリをそのまま同じ仕様で中国で展開しようとすると,大半の端末で動作しない可能性が高いのだ。
 さらには,ローカライズ/カルチャライズという課題もある。とくに中国では,対価を支払って強さを誇示することや,プレイ報酬に対する欲求が高く,それらを満たしていない内容では,即,離脱につながるという。

 「今回の取り組みでは,パートナーの中国Beijing Moyo Century Technology側で,主要な端末での動作を検証し,確認しています。MoyoはUnityを使ったPC/Android/iOSでの開発を得意とする企業ですが,もともとはPCオンラインゲーム出身で開発ノウハウの蓄積があり,またかつてGREEでブラウザゲームを展開していたため,日本のビジネスを理解しています。
 またMoyoからは,クイズゲームであっても,プレイヤーが課金できる仕組みをどんどん追加していくべきだという,中国市場の傾向を踏まえたアドバイスを受けています」
(横田氏)

 そして,中国市場での海賊版ビジネスにどう対処するかというのも,大きな課題である。中国市場は,日本の著名IPを使った海賊版が大きな売り上げを出していたり,ヒットしたゲームのシステムがわずか数か月で模倣されたりという状況だ。横田氏によれば,すでに「魔法使いと黒猫のウィズ」のシステムをコピーしたタイトルも出回っているとのこと。今はまだクオリティ面で劣っているが,仮に大手が本腰を入れてコピーし,本家「魔法使いと黒猫のウィズ」が中国に進出する前に大きく展開するようなことがあれば,手遅れになっていたかもしれないそうだ。

 上記のとおり,今回の取り組みでは中国Moyoを現地のパートナーとしているが,ローカライズ/カルチャライズにあたってはACCESSPORTのスタッフも全面的に企画に参加し,「魔法使いと黒猫のウィズ」の世界観を重視しているという。またクイズ部分に関しても,日本と同じというわけにはいかない。そこで,クオリティ重視のため,Tencentプラットフォームで人気クイズゲームを開発していた会社の提供する問題を使用するとのことだ。

画像集#005のサムネイル/コロプラとACCESSPORTが「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」を中国で展開。スマホアプリの中国パブリッシング事業について,ACCESSPORTのキーパーソンに聞いてみた
 「ACCESSPORTとしても『魔法使いと黒猫のウィズ』の世界観を崩したくないという思いがあります。実は,今の私のチームは,私を除いた残りの全員が中国人なのですが,皆,日本のゲームが好きで,なぜ日本でそう作られているのかを理解したうえで,中国向けのローカライズを施しています。そうしたIPを大事にする部分も,弊社の大きな特徴だと考えています」(横田氏)

 一筋縄ではいかない中国市場に対する同社の強みは,中国内の配信企業や現地パートナーとの良好な関係にある。また,横田氏自身も,前職で中国進出を目指して手痛い思いをしており,そのときの知見が大いに役立っているようだ。

 また,中国のモバイルゲームプレイヤーは,もともとPCオンラインゲームを遊んでいた層と,スマートフォンで初めてゲームに触れた層に大きく分けられるが,今回の取り組みでは,後者に含まれる90后(1990年代以降生まれ),00后(2000年代以降生まれ)の若年層や,ここ1年でとくに急増している女性プレイヤーもターゲットにしているという。

 「『魔法使いと黒猫のウィズ』は,日本での大ヒットタイトルとなり,中国の大手パブリッシャ各社も目を付けていたようです。しかし,クイズのカルチャライズの難しさや,クイズ+RPGの事例がまだ中国にないため,二の足を踏んでいたところも多かったようです。ACCESSPORTでは,そこを逆にチャンスと捉えて獲得に踏み切りました。現在は結果につながるよう,面白いプロモーションなどを各チャネルと企画している段階です」(横田氏)


 今回の「魔法使いと黒猫のウィズ」の取り組みを皮切りに,今後も日本の高クオリティなコンテンツを中国で展開していきたいと横田氏。実際に,水面下では何タイトルか中国展開の話が動いているという。今回の事例が成功することで,日本のスマホアプリが広大な中国市場で続々とヒットするような状況になることに期待したい。
 最後に,中国展開を考えるゲーム関連企業に向けて,横田氏があらためて語った同社の強みを掲載して,本稿の締めとしよう。

 「日本の企業が中国でゲームビジネスを始めようとすると,お話ししてきたように,いくつもの課題に突き当たります。しかし,弊社と協業していただくことで,中国市場へ最適化したローカライズ,カルチャライズ開発,配信,マーケティングを行うことができ,パートナー企業様の中国での集客・収益 最大化のサポートを提供していきたいと考えています。その際に,弊社が日本企業であることが,安心材料となっていただけるのではないかと思います」(横田氏)

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