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スチームパンクなメカで隠された秘宝を暴き出せ。戦う“カタン風”ボードゲーム「天空都市ヴィラコチャ」レビューを掲載
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印刷2013/04/17 16:20

レビュー

スチームパンクなメカで隠された秘宝を暴き出す,戦う“カタン風”ボードゲーム

天空都市ヴィラコチャ

Text by 朱鷺田祐介

六角形の地形タイルをランダムに配置する様子が,有名なボードゲーム「カタンの開拓者たち」(日本語版はジーピーより発売中)に似ていることから,「戦うカタン」と呼ばれることもある
画像集#001のサムネイル/スチームパンクなメカで隠された秘宝を暴き出せ。戦う“カタン風”ボードゲーム「天空都市ヴィラコチャ」レビューを掲載
 「スチームパンク」というジャンルがある。サイバーパンクから派生した言葉で,19世紀から20世紀初頭にかけてのイギリス,あるいは日本の明治・大正などの時代を背景に,蒸気機関によって世界が変革されていった架空の歴史をベースにした,SFや冒険活劇のことである。いわゆる「レトロフューチャー」な雰囲気の,蒸気機関や歯車に超科学テクノロジーが融合した架空の機械が登場するのが特徴的で,分かりやすいところで言えば,例えばゲームの「サクラ大戦」シリーズや,映画「ワイルド・ワイルド・ウエスト」,最近の映画版「シャーロック・ホームズ」などをイメージしてもらうといいだろうか。

 「天空都市ヴィラコチャ」(以下,ヴィラコチャ)は,20世紀初頭を舞台にした,スチームパンク冒険活劇風ボードゲームである。プレイヤーは,大英帝国の女帝ヴィクトリア2世の命により,南米ヴィラコチャ渓谷に隠された秘宝の探索に赴くことになる。以下,ゲームの進め方について解説していこう。

2013年1月にアークライトから発売されたボードゲーム「天空都市ヴィラコチャ 完全日本語版」(4725円,税込)は,ベルギーのゲームメーカーSit Down!の「Wiraqucha」を日本語化したタイトルだ。プレイ人数は2〜4人で,平均的なプレイ時間は1時間程度となっている。ちなみにデザイナーはフランスのHenri Kermarrec氏。日本語版のパッケージアートは,「カードファイト!! ヴァンガード」「進撃のバハムート」などで活躍中のタカヤマトシアキ氏が手がけている
画像集#002のサムネイル/スチームパンクなメカで隠された秘宝を暴き出せ。戦う“カタン風”ボードゲーム「天空都市ヴィラコチャ」レビューを掲載

「天空都市ヴィラコチャ 完全日本語版」公式サイト



スチームパンク世界で戦え!


 秘宝を求め,ヴィラコチャ渓谷に降り立つこととなったプレイヤー達。大英帝国における「財団」のリーダーである彼らは,配下の飛行船や探検家のコマ(本作ではディスクという)を,ヴィラコチャの各所に派遣することで探索を進めていく。
 自分のコマを送り込んで占拠した地形タイルからは,資源や秘宝の手がかりなどが入手できるのだが,もちろんほかのプレイヤーに先を越されるなどもってのほかだ。自分以外のプレイヤーが占拠している地形タイルがあったら,攻め込んで奪い取ってしまうこともできる。こうして有利な場所を求め,毎ターンのように激しい土地の奪い合いが発生するのが本作の特徴だ。
 ただし行ける地形タイルがどこになるかは,自分のターンに振るダイス(サイコロ)の出目によって左右されるので,思うように進めるとは限らない。手持ちの資源や超科学の秘密メカ,そしてプレイヤーの頭を使ってほかのプレイヤーを出し抜き,競争に打ち勝つ必要があるのだ。

 ゲームに勝つ方法は,以下の3つ。いずれかの条件を達成したプレイヤーが勝利する。自分が勝つことを目指す一方で,対戦相手がどの道すじで勝とうとしているのかを見極め,それをいかに邪魔していくかがポイントとなる。

勝利条件その1)ヴィラコチャの秘宝

 古代の秘宝への手がかりとなる聖遺物4つを,すべて獲得すること。そのためには,聖遺物のある地形タイルに探検隊を送り込む必要がある。

聖遺物トークン(ドクロのマーク)のある神殿タイルと,探検隊のディスク
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勝利条件その2)ソムニウム鉱石

 ヴィラコチャ渓谷でのみ産出される神秘のエネルギー源,ソムニウム鉱石。採掘に時間がかかるこの貴重な資源を,一定個数集めること。効率よく採掘するためには,ソムニウム鉱山を占拠する必要がある。

ソムニウム鉱石を効率よく採掘するには,3つしかない鉱山タイルをドリルで押さえる必要がある。ドリルがないと採掘効率が半減するため,容易ではない
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勝利条件その3)リバイアサン建造

 リバイアサンとは,大英帝国が建造を計画している究極兵器である。建造するためには,ヴィラコチャ渓谷で採掘された資源やソムニウム鉱石を使ってメカを造り,その技術を結集させる必要がある。
 つまり,資源やソムニウム鉱石を使って「メカカード」を買い,所有しているメカカードのコストの合計が勝利条件に達すればよい。

ゲーム中に資源を使って購入できるメカカードは,空中要塞や地中侵攻機,強化外骨格といった夢の超兵器だ。いろいろと有利な効果を発生させることができるが,建造物以外のメカは,ベースキャンプに攻め込まれると,ほかのプレイヤーに奪われる可能性もある
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ダイスでヴィラコチャ渓谷を制圧せよ!


 ゲームを始める前に,まず地形タイルをランダムに並べてヴィラコチャ渓谷を作る。地形には,資源が採れるジャングルや,使えるダイスの数を増やしてくれる村,秘宝の手がかりを入手できる神殿などがあり,それぞれにダイス目や数字が書いてある。
 そしてゲームを開始したら,各プレイヤーの手番で3個(+支配している村タイルの数)のダイスを振り,出目に合った地形タイルに攻め込む。

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「・」「・」のようにダイス目が表示されているタイルには,その通りの目が出ないと攻め込めない。「5」のように数字が表示されているタイルは,「2」と「3」や「1」と「2」と「2」のように,ダイス目の合計がその値になればよいので,比較的攻めこみやすい
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振れるダイスの数は,3個+支配している村タイルの数。ソムニウム鉱石を1個使えば,手番中に1度だけ,ダイスを1個追加できる。また「資源キューブ」2個を使うごとに,ダイス目を1増減できる

 未使用のダイスがある限り,次々とタイルに攻め込み続けることができ,余ったダイスは防御ダイスとして,支配地域に1個ずつ割り振ることができる。

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出目が1・1・5なら,1・1のタイルと,5のタイルに順に攻め込むことができる
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先の例で5へ攻め込まずに,1・1のタイルの守りとして,5の目を防御ダイスとして配置することもできる。もちろん自分が支配しているなら,ほかのタイルでもいい

 基本的に,出目が合っていれば距離に関係なく移動できるが,移動にはいくつかの制限がある。「ヴィラコチャ」というゲームを独特のものたらしめているのは,まさにこの移動ルールだ。ダイス目に制限されつつも盤面を縦横無尽に移動できるので,対戦相手が次にどう行動するかの予測がつきにくく,毎ターンごとに劇的な展開になりやすい。

その1:まずベースキャンプを置く

 各プレイヤーのディスク(円盤状のコマ)は,ベースキャンプ1個飛空船2個探検家2個ドリル2個の計7個しかない。
 そのうち,本拠地となるベースキャンプについては,これを最初に置かなければならない。ゲームスタート時には,まず3個のダイスを振り,その出目で行ける好きな地形タイルにベースキャンプのディスクを配置しよう。ベースキャンプは強い防御力を持つので,ここを拠点にヴィラコチャ渓谷を探索していくのだ。

ベースキャンプには,防御ダイスとして5の目があらかじめ書かれている。ここに攻め込むには,もともとの地形タイルの出目に加えて,6の目が必要になる
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その2:新たなディスクは,既にあるディスクの隣接タイルにしか配置できない

 ダイスを振り,その出目の地形タイルにディスクを配置するときは,以下の条件に従わなくてはならない。
 まず,盤面にすでに配置されているディスクは,地形タイルの条件を満たすダイスさえあれば,何処へでも移動させられる。しかし,手元にあるディスクを新たに盤面に配置する場合には,「配置済みのディスクが置かれたタイルと隣接する地形タイル」にしか置くことができない。
 ゲーム開始直後は,盤面にベースキャンプだけがある状態なので,この周囲の地形タイルになら,新たなディスクを配置できる(ダイス目が許すならだが)。もしくはベースキャンプ自体を,離れた場所に移動させることもできる。有利な地形へとベースを移すことで,より強固なベースキャンプを築くのも悪くない。

その3:山岳タイルには飛空船が必要

 地形タイルにはフチが茶色い渓谷タイルと,白い山岳タイルがあり,後者には飛空船でしか侵入することができない。飛空船以外のディスクを山岳タイルに送り込みたいなら,まず飛空船ディスクを送って占拠した後,その飛空船と,手元もしくは盤上にある他のディスクとを交換する必要がある。

飛空船でしか攻撃できない山岳タイル
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その4:防御ダイスがあると,それに勝つダイスが余分に必要

 通常はその地形の出目を出せば,ディスクをその地形に移動,ないし配置して,先に置かれていた他人のディスクを破壊し,支配権を奪うことができる。
 しかし,そこに防御ダイスがあった場合,支配のためのダイスに加え,その防御ダイスよりも大きな目を持つダイスを使う必要がある。

破壊されたディスクは「機械の墓場」と呼ばれるタイルへ移動させる。その後,資源を3消費することで,1手番に1個だけ取り戻すことができる
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1・1のタイルに,防御ダイス5が置かれていた場合,ここを支配するためには1・1・6の出目が必要
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上記で防御ダイスが6だった場合,1・1・6に加えて,「資源キューブ」を2個使って,攻撃用ダイスの目を7にまで強化しなければならない


ここが「ヴィラコチャ」のツボ!


 このように,それぞれが己の勝利条件を目指して土地の支配権を奪い合う本作だが,とくに勝敗を分けるポイント,逆転を狙うコツをお教えしよう。これらを押さえておけば,ヴィラコチャをもっと楽しく遊べることうけあいだ。

その1:難攻不落のベースキャンプ

 ダイス目の場所に移動することになるため,確率的に攻めやすい場所と攻めにくい場所がある。攻めにくい場所にベースキャンプがあれば,その分防御が楽になり,活動しやすくなるわけだ。
 とくに勝敗を左右するのは,6・6の出目に対応した村である。対戦相手がこの場所にベースキャンプを築いた場合,6・6・6以上のダイス目が出なければ攻められない。これを打開する唯一と言っていい手段が,メカカード「死の光線」――対象のタイル上のすべてを破壊する恐るべき究極兵器だ。1ゲームに一度きりの必殺技だが,ためらうことなく焼き払うのをお勧めする。

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6・6に配置されたベースキャンプは,難攻不落の拠点となる
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「死の光線」は,敵の勝利の鍵となる地形タイルを問答無用に撃破し,不毛の地に変える。そこにあったベースキャンプはプレイヤーの手元に戻り,それ以外のディスクは,ゲームから除外されてしまう


その2:たくさんのダイスを振りまくれ

 勝利条件は3つあるが,特定の1つにこだわると邪魔されやすくなるため,序盤は受けを広く構えて,資源の取れるジャングルか,ダイスの増える村の地形タイルを押さえたい。確かにソムニウム鉱山は勝利に欠かせないが,資源があればダイス目の操作ができるし,ダイスが増えれば,プレイの選択肢が広がるからだ。ダイスを6,7個まとめて振れれば,次から次へと相手の拠点を落とし,1ターンで大逆転することすらできてしまう。

ジャングルのうち,7のタイルは資源が2個出るので,序盤には重宝する。ただし7の目はダイス2個だけでも「1・6」「2・5」「3・4」とさまざまな組み合わせで作れるため,攻められやすい。防御はしっかり固めよう
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その3:メカカードでコンボ!

 資源を支払って買ったメカカードは,手元に置いておいて好きなときに使える。さまざまな効果を持ち,1枚だけでも十分役に立つが,カード同士を組み合わせると強力コンボになることも。
 そもそも,手番を越えて持ち越せる資源の最大数は3個しかない。なので資源が2個以上出るようになったら,ダイス目の操作が必要ないかぎり,積極的にメカカードを買っていこう。

「精神探査器」と「地中侵攻機」のコンボは,事実上,ベースキャンプの防御を無効化できる。最終段階で敵のベースキャンプに奇襲をかけ,メカカードを強奪して勝つことも可能だ
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自由度と煩雑さのせめぎ合い


「天空都市ヴィラコチャ拡張セット:有翼蛇(ケツァルコアトル)の道」
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 「ヴィラコチャ」の基本構造は,ダイスを振って出目で地形タイルに攻撃するというシンプルなものだが,各フェイズにできる行動のバリエーションが広いため,やや煩雑に感じる部分がある
 また,自由度のわりにマップがかなり狭く,最大人数の4人でプレイした場合,支配地域の叩き合いとなって膠着状態に陥り,1回のプレイが長引きやすいという欠点もある。最大プレイ人数の4人ではなく,2〜3人でプレイすると,このカツカツ度合いが緩和され,戦術もいろいろと試行錯誤できる。本作を遊んでみるときには,ぜひ参考にしてほしい。

 上記のような気になる点はあるものの,「ヴィラコチャ」は優れた冒険物ゲームといえる。ダイスを振って次々と地形タイルを攻めていき,手番ごとに戦況が大きく変化するのは痛快だし,ダイスで行動が決まるとはいってもダイス操作やダイスの追加もできるので,自由度は高い。スチームパンク風の素材も面白いし,それでいてトークンも把握できないほど多いわけではない。
 カタン式の可変マップが採用されているので,地形の配置を変えて何度かプレイすることもでき,プレイ時間も1ゲームあたり約1時間ととっつきやすい。スチームパンクというモチーフにビビっと来た人は,ボードゲームコレクションの一つに加えて損のないタイトルだ。

 なおアークライトによれば,本作の拡張セット「天空都市ヴィラコチャ拡張セット:有翼蛇(ケツァルコアトル)の道」が,まもなく発売予定とのことである。追加のタイルなどもあり,とくに終盤のゲームバランスが大きく改善されるという。今春の発売を予定しているそうなので,こちらも楽しみにしておこう。

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「天空都市ヴィラコチャ 完全日本語版」公式サイト

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