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[GDC 2016]「Unity」で本格的なCG映像作品の制作が可能に? 映像制作用途をアピールしたUnityブースレポート
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印刷2016/03/19 23:21

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[GDC 2016]「Unity」で本格的なCG映像作品の制作が可能に? 映像制作用途をアピールしたUnityブースレポート

 GPUの性能が劇的に向上し,現実の反射率および反射特性で材質表現を再現する「物理ベースレンダリング」がリアルタイムで利用できるようになった今では,映像制作で利用されるオフラインレンダリング(プリレンダリング)に近い表現が,リアルタイムレンダリングでも可能になってきた。
 そこで,現在,制作期間の短かったり,予算が少なかったりといった制約のある映像制作において,リアルタイムレンダリング技術を応用しようという動きが出てきており,そのフロントエンドツールとして,ゲームエンジンが注目を集めている。

MarzaがUnreal Engine 4を使って制作した短編映像作品「Happy Forest」
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 その一例として,日本の映像制作会社であるマーザ・アニメーションプラネット(以下,Marza)が,「Unreal Engine 4」を使って短編のCG映像作品を制作した事例を,筆者の連載で紹介したことがある。興味深い内容だったので,覚えている人もいるだろう(関連記事)。

展示会場のUnityブース
画像集 No.003のサムネイル画像 / [GDC 2016]「Unity」で本格的なCG映像作品の制作が可能に? 映像制作用途をアピールしたUnityブースレポート
 そんな映像制作側の動きを受けて,ゲームエンジン側でも,映像制作ユーザーの要望を積極的に取り入れようとする動きが強まってきている。ただ,ゲームエンジンの雄である「Unity」は,映像制作者からの要望への対応という面において,やや出遅れていた感があった。
 ところが,今回のGDC 2016でUnityは,この部分を一気にキャッチアップしてきた。GDC 2016展示会場のUnityブースで見た,映像制作用途に向けたUnityの取り組みをレポートしたい。


MarzaがUnityで制作した短編ファンタジー「THE GIFT」


 まず紹介したいのは,先述したMarzaが,今度はUnityで制作した新作の短編映像作品「THE GIFT」がUnityブースでお披露目されたことだ。筆者の連載記事中で,予告していたものである。


 THE GIFTは,ほのぼのとしたファンタジー作品で,両親の夫婦げんかを目の当たりにした少女が,宝物のぬいぐるみ人形とともに夢の世界を冒険するという筋書きのお話だ。

Unityブースの入口の大画面LEDディスプレイでも,THE GIFTの予告編が流れているなど,大きく扱われていた
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 この作品の開発目的は,あくまでも技術デモであるが,コンセプトアート制作からキャラクター制作まで,普通の映画制作と同等の手順を踏むことになったという。そのため,制作期間は約1年ほどかかっている。

THE GIFTの制作は,普通の映画制作と同じような手順で行った
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 制作にあたっては,映像制作用途に不足している要素を,Unity Technologiesと共同開発して補ったとのこと。そのなかでも重要なものは,映像制作現場でデファクトスタンダードとなっているアニメーション情報付きの3Dデータ「Alembicキャッシュ」(ジオメトリキャッシュ)を,Unity側と出し入れできるフレームワークを実現したことにある。
 THE GIFTでは,DCCツールで制作したアニメーションをUnity側で利用するためにこの機能を活用しているそうだが,Unity側で作ったアニメーションをAlembicキャッシュでエクスポートして,DCCツール側に取り込む逆方向の利用もできるとのこと。

 「THE GIFTでは,すべてのアニメーションやシミュレーションを使い慣れているDCCツール側で制作している」と,UnityブースにいたMarzaの担当者は説明していた。Unity側で実行したのは,ライティングとシェーディングを含めたレンダリングのみだという。つまり,Unityをレンダラーとして利用したということだ。また,スキンシェーダや眼球シェーダ,植物の質感シェーダなどは,THE GIFTのために書き下ろしているという。

ゲームエンジンを使った映像制作への取り組みはMarzaの公式Webサイトもチェックしてみてほしい
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 技術的観点で見たTHE GIFTの見どころは,予告編映像にも出てくるカラーボールの津波シーンだ。Marzaの担当者によると,総ポリゴン数は10億を超えているそうで,Unity史上最多ポリゴン数ではないかとのこと。オフラインレンダリングでは何時間かかるか分からないこのシーンも,毎秒数フレーム程度で描画できるというから,リアルタイムレンダリング技術は,映像制作時間の短縮に大きく貢献するといえよう。

 なお,THE GIFTの映像全編は,4月4〜5日に東京のお台場で開催されるUnityの開発者向けイベント「Unite 2016 Tokyo」で公開となる予定だ。4日には,THE GIFTのメイキングセッションも行われるとのことなので,興味がある人は足を運んでみるといいだろう。


Unity製の映像作品「ADAM」予告編も公開

作品のプロジェクトファイルは公開を検討中


 Unityブースでは,もうひとつ,ゲームエンジンで作られた映像作品の展示が注目を集めていた。
 「ADAM」というその作品は,シリアスなSFサスペンスといった内容の作品だ(関連リンク)。
 もともとは人間だった記憶のある主人公。しかし,得体のしれない施設内で目覚めてみれば,自分の身体はロボットになっていた。事態を理解できないまま施設の外に出てみると,そこには自分と同じような境遇のロボットで溢れかえっていた……。


 この作品の制作を担当したのは,Unityのデモ開発チームである。最新のUnity 5.4(ベータ版)と,現在開発中の「シネマティックシーケンサー」(タイムラインエディター)を用いて制作されたそうだ。
 制作の過程で開発されたさまざまな機能群は,Unity本体の新機能として実装したり,あるいはライブラリ化したりしたうえで,Unityのアセットストアで公開されている。たとえば,「面積のある光源によるライティング効果」(エリアライティング)がその代表格で,ADAMにおけるフォトリアルなビジュアルの形成に大きく貢献しているとのことだった。
 また,ADAMで使われた以下のポストエフェクトも,「シネマティックイメージエフェクト」としてアセットストアで無料公開中だ。

  • 床や壁に対するリアルな鏡面反射の映り込み表現を実現した「Screen Space Reflection」(SSR)
  • 映画のフィルム的な色あいを作り出すカラーグレーディング
  • カメラがパンすると,映像がチラチラして見えるリアルタイムレンダリング特有のエリアシングを低減させる「時間方向アンチエリアシング」(SMAA)
  • 被写界深度表現

 これらのポストエフェクトについては,Unity公式blogで日本語の解説が公開されているので,興味のある人は参照してみるといい。

 ちなみに,ADAMに登場するキャラクタの動きや,キャラクタとの接触で動く背景物の動きは,物理ベースのアニメーションツール「CaronteFX」で制作しているそうだ(関連リンク)。

 ADAMは,PC上でリアルタイム動作できるように設計されているのが,MarzaのTHE GIFTと大きくことなる点だ。具体的には,「GeForce GTX 980」搭載グラフィックスカードを使い,2560×1440ドット,30fpsのリアルタイム動作が可能だという。
 会場に設置されていたADAMの実演デモPCで試してみたところ,カメラ座標は変えられなかったものの,カメラの向きをマウス操作でリアルタイムに変更できた。

Unityブース入口の大画面LEDディスプレイでは,「ADAM」の映像も披露していた
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 GDC 2016で公開となった予告編は,主人公が施設から出たところで終わってしまうが,その後の展開を描いた正式版は,2016年5月31日からオランダのアムステルダムで開催予定の開発者向けイベント「Unity Europe」に合わせて公開の予定だ。正式版の公開後には,本作のプロジェクトファイルを公開することを検討中というから楽しみだ。

Unity 日本語公式Webサイト

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