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中国にコンシューマゲームは根付くのか? SIE が語る中国攻略の一手「China Hero Project」とは
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印刷2016/08/10 23:55

インタビュー

中国にコンシューマゲームは根付くのか? SIE が語る中国攻略の一手「China Hero Project」とは

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 2016年7月27日,ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下,SIE)は,中国・上海で「China Hero Project」を発表した。これは,PlayStationプラットフォーム向けのゲームを開発する中国国内のゲーム企業に対し,Unreal Engine 4や各種ミドルウェアのライセンス料をSIEが負担し,日本側のパートナー企業によるサポートも行うというゲーム開発振興プログラムだ。日本国内でのパートナーとしては,エピック・ゲームズ・ジャパン,CRI・ミドルウェアやシリコンスタジオ,ハーツユナイテッドグループ,ウィズ・パートナーズなどが名を連ねている。
 最近まで輸入が制限されていたため,中国ではコンシューマゲーム機でゲームを遊ぶという文化自体が確立されていない。PlayStation 4,Xbox Oneの世代になってようやく国内発売が開始されたわけだが,SIEによる中国国産ゲーム産業への支援にはどのような意図があるのだろうか。SIE ShanghaiのPresidentを務める添田武人氏に話を聞いてみた。

4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まず,どうしてChina Hero Projectを始めることにしたのかから教えてください。

添田氏:
Sony Interactive Entertainment Shanghai President 添田武人氏
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 SIEが中国のビジネスに進出したのは2014年の夏からなのですが,中国の中から市場を見たときに,なにがコンシューマゲーム産業を作るうえでネックになっているのかを探りました。その一つとして,ゲームが常に外から供給されている状況にあるという問題に行き着いたわけです。ゲームというのは文化産業ですから,本来は外から来るものと中のものを組み合わせて作り上げていくものです。
 中国国内を見ると,クオリティの高いコンシューマゲームは少ないのですが,ゲームのマーケット自体は日本を遥かに凌ぎアジア最大の規模であり,今年中にアメリカのマーケットを超えるのではないかという予測がされています。

4Gamer:
 ただ,その市場規模はコンシューマゲーム市場のものではありませんよね。

添田氏:
 はい。PCオンラインゲームとモバイルゲームが大きな比重を占めており,コンシューマゲームというのは政府の規制もあって2014年まで市場自体が存在しませんでした。
 ソニーとMicrosoftがやってきてコンシューマゲーム市場を立ち上げようとなったときに,最大のネックになったのは,中国国内でコンシューマゲームを作れる人が圧倒的に足りないということでした。
 そこでいろいろなところを回ってみたのですが,それで分かったのは,中国にはゲームを作る人材がたくさんいて,素晴らしいアイデアもあるということでした。ただ,人,モノ,技術,お金がすべて点としてで存在している状態なんです。これらを線でつないでいこうということで,立ち上げられたのが今回のプロジェクトになります。

4Gamer:
 ライセンス費を負担ということですが,Unreal Engine 4の場合,無償化されて以降は,売り上げが3000ドルを超えた分の5%ですよね。それほど負担にはならないと思うのですが。

添田氏:
 それでも,中国でUnreal Engine 4を使っているのはほぼ大企業に限られています。中小では,価格の安かったUnityが圧倒的です。ハイエンドゲームで使われるUnreal Engineについては聞いたことはあるんだけど,マスターしていないという人が多く,人材の底上げが必要な状況です。すでに成功しているPCオンラインやモバイルと違って,コンシューマゲームでは二の足を踏んでいるところも多く,支援が必要だと感じました。
 また,日本でSIEが日頃お付き合いさせていただいている会社には,ゲームエンジンを扱っている会社,QAを行う会社,音声や映像のミドルウェアを開発する会社がありますが,それらの会社はまだ中国との接点がほとんどありません。それぞれ素晴らしいものをお持ちなのですが,コスト的に中国では受け入れられにくい状況にあります。
 さらに海外のコンテンツプロバイダ(CP)で働いて中国に戻ってきている人もいます。これらの人は高い技術を備えているのですが,ベンチャーですので資金面で不安があります。

4Gamer:
 いろんな面で支援を必要としている開発者がいると。

添田氏:
 そういうことを考えたときに,技術を提供するグループ,資金を提供するグループ,そしてソニーが一体となって,中国のCPとつなぎ合わせることで,中国発の優れたゲームを作り出し,中国国内と海外のマーケットに供給できる体制を作らなければならないと感じました。今後のマーケットのためにも,そういった仕組みを今から作らなければなりません。これは1年間活動して強く感じたことです。
 それで日本国内のパートナーさんとぜひやりましょうと話を進め,ようやくプロジェクトの中身が固まって先日の発表会でお披露目ができた次第です。

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4Gamer:
 中国独自のエンジンを作ろうという動きはなかったのでしょうか。cocos-2dxなどはかなり頑張っていますが。

※cocos-2dxは中国・Chukong Technologyが開発しているゲームエンジン。2Dグラフィックス処理を得意とする軽量なゲームエンジンだ。名前からは2D専用のように受け取られるが,実は3Dグラフィックスにも対応している。

添田氏:
 cocos-2dxはモバイル向けにはよいのですが,コンシューマゲームにはちょっと向かない面もあります。cocos(Chukong)さんとも2年前から話はしているのですが,方向性が合わない感じです。

4Gamer:
 ChukongさんはかなりVRにご執心のようですよね。ところで,中国でUnreal Engineの技術者が少なくてUnityの技術者が多かったというなら,Unityでやってもよかったのではないかという気がするのですが。

添田氏:
 これはゲームを作る側がなにを使いたいかを見て決めています。現在のPS4のゲームを見ると,Unreal Engineが圧倒していますので。また,SIEとしてもUnityよりはUnreal Engineに関するサポート情報のほうが整っているという事情もあります。


中国でコンシューマゲーム市場は成り立つのか?


4Gamer:
 中国のゲーム業界を見ると,PCオンラインとモバイルに二分され,それぞれが大きなマーケットになっていますが,新しくコンシューマゲームをプレイしようとすると,ゲーム機の購入だけで数万円,VRまで含めると10万円くらいの投資が必要になります。そこまでの投資をしてコンシューマゲームを遊んでもらえるものでしょうか。そこになにか策はありますか。

添田氏:
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 そもそも中国にコンシューマゲームのニーズがあるのかという点ですね。日本では普通に家電量販店にでもいけばゲーム機が置いてありますので,多くの人は任天堂のマシンから入って,ゲーマーの度合が深まっていくにつれて,PS4を買ったりといった感じですね。
 中国では,小さい頃はモバイル,ある程度年を取ってからPCゲームに移行します。つまり,ゲームコントローラに触ったことがない人が非常に多いんです。
 我々が行っている体験会や展示でプレイしている人を見ていると,最初はちょっと難しいようで戸惑いがあるんですが,5分もしないうちに目が夢中になってくるんです。10分ほどの体験を1周回って出てくるお客さんで,がっかりした顔をしている人を一人も見たことはありません。たぶん,それまでそういう体験ってなかったんだと思います。

4Gamer:
 なるほど。

添田氏:
 初めてコントローラに触った人達にそれまで経験したことのなかった体験を提供できることが分かった,それが我々が中国事業を進めている理由の一つです。
 もう一つ,日本でPS4を出したあと,正規に輸出はしていないものの,かなりの数の製品が中国に入ってきていることを我々は確認しています。そういうユーザーに聞くと,実は大学の寮でPS2やPS3で遊んでいたという人が多いんです。
 2014年にようやく中国でPS4が発売になりました。感動的な話では,わざわざ2台め3台めとして中国向けのPS4を買ってもらっている人もいるんです。ソフトでも同じです。同じソフトを3本買ったという人もいました。まず日本版を買って,台湾版を買って,それでも簡体字でプレイしたいからと中国版を購入されているわけです。
 そういったコアなゲーマー層のお客さんと新規のお客さんで現在の中国のコンシューマゲームマーケットは作られているんです。今後,それをもっともっと広げていかなければなりません。

4Gamer:
 市場を広げる具体的な方策はありますか。

添田氏:
 こうなるといつまでも海外のゲームだけでいいのかという問題が出てきます。もちろん,今後も海外にある素晴らしいゲームは引き続き取り入れていきますが,それと並んで中国市場のために作られたゲームというものも必要になります。
 日本の映画市場を例にとってみると,邦画のヒット作が出ると映画業界全体が活性化するんです。もちろん,日本では洋画も人気があるのですが,文化というのはそういう素地を持っているものなのだと思います。

 中国でもまったく同じです。現在,海外のビッグタイトルとして,FFXVをローンチするためにスクエニさんなどとも組んでいろいろやっています。それでも,ローカル発のはっとさせるようなタイトルも作りたいわけです。

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4Gamer:
 それで今回のプロジェクトを進めていくわけですね。

添田氏:
 はい。このプロジェクトでなんとか市場から隠れたダイヤモンドを拾えたらという気持ちです。ゲームを作れる人は中国にも非常にたくさんいます。その中でいいモノはなにか,我々の眼でこれはという原石を見つけ出し,そこにさまざまなサービスを積極的に提供していくことで,確実にダイヤモンドとして磨き上げて商品として世に出したいわけです。
 残念ながら,そういった大作を作るには少なくとも1.5年から2年は時間がかかります。明日明後日のためにも今日からすぐスタートしたいという思いがあります。

4Gamer:
 製品や資金以外に提供されるサービスにはどんなものがありますか。

添田氏:
 中国でも大手ゲーム会社は自社でQA(品質保証)チームを作ってやっているのですが,正直,それではとてもPlayStationのクオリティで出せるものにはなっていなくて。

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4Gamer:
 中国だとモーションで衣服のすり抜けとか,音楽ブツ切れとかで細かいところは気にしないというか,大雑把なものが多いですね。PCオンラインやモバイルだと,ローンチしてから直すなんてことも当たり前ですし。

添田氏:
 実は中国でのやり方のほうが儲かるかもしれないのは事実です。そのレベルのクオリティしか要求されませんので。ただ,海外の本当にクオリティの高いものを持ってくると,全体に産業として進化していくわけです。
 そこへ我々が「こういうサービスもありますよ」ときっかけを作れれば,そこから品質に対する意識も浸透していくのではないかと期待しています。

4Gamer:
 プロジェクトの目指すところは非常によく分かるのですが,このプロジェクトの対象となるのは中小のデベロッパだと考えていいのでしょうか。

添田氏:
 大手の企業の中でも開発スタジオが分かれていることはありますので,必ずしも会社の規模に関係するものではありません。ただ,環境としてそれほど恵まれていないのに,もの凄いモノを持っているようなところを選抜して環境を提供していきたいと考えています。ちょっとムシのいい話かもしれませんが(笑),いいプロジェクトに仕上げていきたいですね。

4Gamer:
 プロジェクトの対象はこれから応募を受け付けるという段階ですよね?

添田氏:
 そうです。ただ,プロジェクト第1弾として発表させていただいた深センの小さなスタジオの例はあります。宇宙でのシューティングゲームなのですが,凄くデキがいいんです。ここまでできるのかと感心しました。そのチームにこういうのをやるんだけどと持ちかけたところ,ぜひにということでプロジェクト第1弾に決まりました。こういったチームがもっとたくさんいると思うので今後も応募でこういったチームを発掘していきたいですね。

4Gamer:
 世の中の流れとしてはゲーム開発はマルチプラットフォームに向かっているわけですが,御社の支援で技術を身につけたところがマルチプラットフォームでゲームを作るといったことについてはどうなのでしょうか。

添田氏:
 まったくエクスクルーシブだというわけではありませんので,マルチプラットフォーム展開でとくに制限はありません。ただ,この形でやってスマホで先に発表するようなのはやめてほしいといったことくらいですね。まず,コンシューマゲームから作ってくださいと。そのあたりの条件は契約の段階で盛り込んでいます。

4Gamer:
 コンシューマゲームを目指す開発者がどれくらいいるかという問題もありますが。

添田氏:
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 先ほども述べたように,海外でコンシューマゲームを作ってましたという人って結構いるんですよ。そういった人は凄いアイデアを持っていたりするんです。そういう人たちには期待しています。
 極論していきますと,別に中国人の開発者じゃなくてもいいという話もあるのですが,やはり中国のカルチャー的なものを取り込んだ,中国人の琴線に触れるものを生み出していきたいです。

4Gamer:
 中国らしさを持った大作ゲームですか。

添田氏:
 もうじき中国のゲーム市場は世界一になろうとしているわけですが,じゃあ中国のゲームで世界に誇れるようなものはなにかというと……なにもないですよね。

4Gamer:
 ないですね。

添田氏:
 マーケットの規模は大きいのですが,中国発の高品質なゲームが少ないのはもの足りないですよね。そのあたりを牽引していくのはコンシューマゲームの役目だと感じています。

4Gamer:
 中国をはじめとした中華文化圏には中国人が作ったタイトルがいいというのは分かるのですが,そこからさらにグローバルを狙った場合にはカルチャライズが障害になるようなことはありませんか。

添田氏:
 中国のカラーに染めすぎてしまうと,そういった懸念も出てきます。ただ,それはそれでヒットする可能性もあるんです。これも映画の例になってしまうのですが,ソニーピクチャーズアジアが作った「Crouching Tiger, Hidden Dragon(邦題:グリーン・デスティニー)」という映画があります。これは,アメリカにいる中国人のアン・リーが監督し,中国のタレントが出演してハリウッド的な映画を作ったわけですが,アカデミー賞の外国語映画賞を取りました。こういうケースもあるわけです。
 また,文化的なものは極力除いて,最大公約数的なファンタジーを作るという手もあります。なんでもいいので,中国発で世界を驚かせるようなタイトルを1本でも2本でも作れればと。今回のプロジェクトはそのきっかけとなるものです。

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4Gamer:
 いままではそういうものを作れる人が外に出ていただけではないでしょうか。たとえば,「風ノ旅ビト」などは中国人による作品ですよね。今回のプロジェクトで,中国でもいろいろ作れることが認知されれば状況は変わってきそうです。そこから問題になりそうなのが,コンテンツの検閲なのですが,実際問題としてどのくらいきついものなのでしょうか。

添田氏:
 外から持ってくるコンテンツに対しては,エンターテインメントという見方はされません。常にイデオロギーの視点で検閲されます。したがってイデオロギー的に望ましくないものは排除されます。また,社会の基本的な道徳感と不一致なものもダメです。たとえば,暴力的なもの,反社会的なものなどですね。反社会的勢力が銀行強盗をするようなものは引っかかります。バトルがあって血が飛んだといった場合,赤い血はダメです。
 どういったものが通るかというと,中国の基準に従ったカジュアル系に近いものは大丈夫です。
 また,内容を完全に中国語にローカライズしなければならないという規制もあります。ですので,スポーツ選手などは中国名を付けなければならないわけですが,そこで本人の版権の問題で個別の承認交渉が必要になったりします。

4Gamer:
 やはりいろいろと面倒なことがあるみたいですね。

添田氏:
 こういったことは中国国内でビジネスをやってみないと分からないものです。我々も1年間いろいろと学び,規制をかける側の人とも接触してどういうものがダメなのか,すり合わせを行ってきました。中国ではまだレーティング制度がありません。これは法律を必要とするので,そこまで進んでいない状況です。
 ただ,映画も10年前はだいたい同じ状況だったんです。映画にもまだレーティングはないのですが,規制はかなり緩やかになってきています。我々としては,今後10年で見通して,もっと緩やかになってくれるのではないかと期待しています。

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4Gamer:
 中国の場合,全体的にはだんだん民衆の望む方向にルールが緩和されている傾向がありますので,同じような展開に期待したいところですね。

添田氏:
 そう期待したいところです。ルールそのもののハードルを下げていく部分と,そもそも制度を作るのかどうかというところで,行政が産業のどこまでを管理をするのかに関してもだんだん緩やかになっていくと期待しています。こればかりは1社の力ではどうにもならないことですので,ユーザーからの声,業界からの声,そのほかの業界からの声によって,だんだん変化してくるんではないですか。

4Gamer:
 では最後にメッセージをお願いします。

添田氏:
 コンシューマゲーム市場は中国で始まったばかりです。海外の数十年の歴史を持つ国々とは違っています。一方で,最大のマーケットとしてダイナミックに動いているのも中国です。そこで新規の赤ん坊をどう育てていくのかという問題には,全プレイヤーの力が必要になります。我々はプラットフォーマーとして自分達の役割を果たしていくのと同時に,できるだけ多くの人に海外から入ってもらって産業を作っていく活動を一緒に繰り広げたいと思っています。よろしくお願いいたします。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。


 China Hero Projectは,SIEジャパンアジア全体の取り組みだが,その最前線ともいうべきSIE上海の代表に聞いた話だけに,「中国でやっていくぞ」という勢いを強く感じるインタビューだった。
 2014年に紆余曲折を経てPS4が中国で発売されて以来,とくに大きな動きはなかったので中国市場へのテコ入れという意味では,ある種当然というか,もっと早くてもよかったプロジェクトなのかもしれない。
 ただ,こういった説明を聞いてなお,多くの人が抱く疑問は,中国でコンシューマゲームが本当に根付くのかというところではないだろうか。取材期間中にいろいろな人に聞いてもあまり肯定的な意見はなかった。ChinaJoy会場には中国国産のコンシューマゲーム機もいくつか出展されていたのだが,あまり話題になることもない。

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中国国産機FuseのTomahalk。Androidベースのゲーム機だ
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こちらはTencentのTGP Box。Windows 10ベースのゲーム機となる

 PS4はPCとモバイルの中間の性能であり,必ずしもハイエンドゲームに適しているわけではない。コンシューマゲーム中心だった日本の国内ゲーム産業がモバイルに流れている状況を見ても,すでにモバイルが普及している市場で大きな成功は望めないのではないかという意見はそれなりに説得力もある。
 実際のところ,添田氏が挙げていた,日本から並行輸入でPS4を買っていた人や,PS4に関心を持つ人自体がごく一部のニッチにすぎないのではないだろうかという懸念は拭いきれない。
 とはいうものの,市場の大きさだけは馬鹿にできない。PS4の普及率が人口比で3%くらいになったとすると,それだけで4000万台規模の市場であり,現在のPS4全世界出荷台数に匹敵する。わずか1%でも日本の数倍の市場が構築されるのだ。プロジェクトの画策どおり,中国にウケるキラーコンテンツが出てきたら,そのインパクトはもの凄いものになるだろう。
 中国のゲーム産業は,コンシューマゲームについては未経験だろうが,ゲームに対する技術がないわけではない。ベンチャーへの資金協力体制などは日本などよりずっと整っているのではないかと思われる。QA体制などはグローバルで通用しないかもしれないが,中国国内で通用するならそれで十分という話もある。このプロジェクトの価値自体がどう受け止められるかも興味深いところだ。

ChnaJoyでのソニーブース
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 中国市場の魅力については,ゲーム業界のみならず数十年前から語られていることであり,進出企業は数知れず,成功を収めたところもあれば手痛い思いをしたところも数多い。SIEはプラットフォーマーという立場なので比較的安全なだろうが,それもずっと安泰かどうか分からないのも中国であったりする。
 中国国内で作ったコンテンツでないと普及が難しいという問題があるため,今回のプロジェクトは対中国施策の一つとしては間違ってはいない。ただ,支援に対してある程度の誠意を前提にしているように思えるところが少し気になる。中国のビジネスの常識は日本とはまったく異なるので,あらゆる部分でリスク回避をすることが必要だが,なんとなく脇が甘さを感じたりもする。野心的な試みが遅れてきた中国熱で終わらないことを願う。
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