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「ハースストーン」のHCT世界選手権をレポート。グランドマスターズに出場する日本人選手へのインタビューも
「爆誕!悪党同盟」のリリースから2週間しか経過しておらず,ゲーム内環境も固まらないなかで開催された本選手権は,プレイングはもちろん,これまで以上にデッキ構築力が求められる戦いとなった。
16選手の使用ヒーローを俯瞰すると,一番人気はローグで16人中15人が採用。続いてウォーロック(13選手),ウォーリア(11選手)の順で多く採用されていた。現在のランクマッチで使用率が高いトークンドルイドが少ないのは意外かもしれないが,全体的に現環境らしいヒーロー構成といえるだろう。
さて,4日間の大会を経てグループステージを通過し,決勝トーナメントの最後まで駒を進めたのは,ノルウェーのHunterace選手とドイツのViper選手。使用ヒーローおよびアーキタイプは,Hunterace選手がドラゴンハンドメイジ/テンポローグ/コントロールシャーマン/コントロールウォリアー【BAN】。Viper選手がミッドレンジハンター/ドラゴンハンドメイジ/ズーウォーロック/ミラクルローグ【BAN】だ。
初戦はテンポローグ(Hunterace選手)対ズーウォーロック(Viper選手)で,のっけから会場内を沸かせる展開に。
Viper選手はHunterace選手をライフ1まで追い詰め,それと合わせて,隠れ身を持つ「ウィッチウッドのインプ」を展開してターンエンド。Hunterace選手は絶体絶命となるが,ここで「ヘンチ・クランの強盗」から,秘策カードの「爆発の罠」を発見する。この秘策が見事に刺さり,Viper選手のミニオン4体が一掃されてしまう。
九死に一生を得たHunterace選手は,逆に悪の手先によるラッシュを繰り出す。そしてライフ1のまま押し切り,半ば強引に一勝をもぎ取った。
低コストのミニオンを並べて盤面を制圧するズー系のデッキは,AoE(範囲攻撃)が刺さりやすいという弱点がある。一方,Hunterace選手のコントロールシャーマンは,「ハガサの計略」をはじめ,何通りかの方法でAoEを繰り出せるため,Hunterace選手にとっては若干有利な組み合わせだ。
ラストマッチが始まり,Viper選手は7ターン目で大悪党ラファームをさっそくプレイ。残り19枚のカードがレジェンドミニオンに置き換わった。
すると,大当たりのミニオンが続々と引き込まれる。「カトリーナ・ムエルテ」で死亡したミニオンを召喚し,「アザリナ・ソウルシーフ」で相手の手札を丸ごとコピーし,「大魔術師ヴァルゴス」で呪文を繰り返し使うという,普通のデッキではありえない展開の連続だ。次第に,Viper選手がターンを迎えてカードを引くたびに,観客席からは大きな歓声が挙がるようになった。
一方のHunterace選手は,呪文カードの大量入手が狙えるキーカード,「魔女ハガサ」がなかなか引き込めない。Viper選手のレジェンドミニオンによる猛攻を凌ぐのに精一杯だ。
その後は盤面のミニオン主体による攻防が続き,大悪党ラファームのプレイ時は17枚あったViper選手の山札も次第に少なくなっていく。そしてお互いにファティーグも見えてきたなか,Viper選手が最後に残された山札から引いたカードは,「ブラッドメイジ・サルノス」。会場内が大きなため息に包まれるなか,最後の最後でツキに見放されたViper選手は,なすすべなくコンシード。こうしてついに,Hunterace選手がHCT世界選手権の覇者となった。
このラストマッチは,悪党同盟を旗揚げしたラファームが大暴れするという,現環境らしい展開の名勝負であった。現在,Twitchの配信アーカイブが視聴できるので,ハースストーンのプレイヤーなら見逃す手はないだろう。
決勝戦のTwitchアーカイブ
※決勝戦・ラストマッチのアーカイブは「こちら」選手権前に公開されたHunterace選手の紹介(ハースストーン 公式サイト)
会場内の様子
今回のHCT世界選手権をもって,ハースストーンのツアーストップ形式によるeスポーツ展開は終了となる。今後はマスターズ形式へと移行し,その最高峰となるグランドマスターズの準備も着々と進んでいる。APAC地域では,5月に韓国・ソウルで初のグランドマスターズが開催予定だ。
このグランドマスターズに,日本からはglory選手とAltemu選手の2名が出場することが決定している。彼らは今回のHCT世界選手権にも視察などの目的で訪れており,会場内で直接話を聞くことができた。グランドマスターズに向けての意気込みなどを中心に聞いたので,以下に紹介しよう。
4Gamer:
「グランドマスターズ」への出場,おめでとうございます。おふたりとも選手として十分な実績がありますが,選ばれたときの感想はいかがですか。
Alutemu選手:
選出されたメールが届いたときは,すごく嬉しくてドキドキしました(笑)。このあと,HCT世界選手権の会場でグランドマスターズに参加するほかの選手に会う予定で,気を引き締めて頑張りたいと思います。
glory選手:
自分は正直言って,(選出の)メールを見たときは実感が沸かなかったです。こうやってHCT世界選手権の会場に来ても,ステージなどの演出に圧倒されてしまうばかりで。
4Gamer:
おふたりの選手としての実績などは公式サイトでも紹介されていますが(外部リンク),あらためて自己紹介と,好きなヒーローなどを教えてください。
Alutemu選手:
自分は今までMachampという選手名で活動してきましたが,今回のグランドマスターズ出場を機に,Alutemuに変更しています。
ワタリガラス年では,1年を通じてランク戦で好成績を納めることができました。獲得ポイント数では日本人1位,APAC5位の成績です。また,そのほかには東京で開催されたツアーストップではベスト4に入賞しています。
今までのデッキでとくに好きだったのはクエストローグです。「妖しの森ウィッチウッド」の頃のクエストローグが,当時猛威を振るっていた挑発ドルイドに対して強かったのが印象に残っていますね。
glory選手:
自分は3年半くらい前にハースストーンを始めました。当時のハースストーンは,ランク戦で好成績を収めるとプレイオフに進出できるというシンプルなルールで,これを目標に頑張り,2018年の夏季選手権でトップ4入りなどの成績を残しています。
自分はラスカル鑑定団というチームに所属していますが,同じチームのb7くん(b787選手)が世界の大舞台で活躍しているのも,見ていて刺激を受けましたね。
好きなきなヒーローはローグです。状況を見ながら,コンボを踏まえてカードを出す順番を考えるのがとくに楽しいですね。
4Gamer:
グランドマスターズではスペシャリスト形式が採用されますが,このルールに対する選手としての感想はいかがですか。
Alutemu選手:
新しい試合形式で楽しみです。現在のカード環境を踏まえると,自分はローグを使う可能性が高いですね。サイドボードの5枚のカードで,さまざまなデッキタイプに対応できる部分も扱いやすいと感じています。
glory選手:
カードバランスの調整次第ですが,自分も今のところローグかな……。現在の環境はローグが頭ひとつ抜けていますが,ウォリアーに対してやや弱い部分もあります。ローグとウォリアー,それとメイジを中心にメタが回ると思います。
4Gamer:
おふたりは今後,選手としてだけでなく,トッププレイヤーとして相応しい振る舞い方などのレクチャーをBlizzardから受けると聞いています。試合とは別の意味で緊張されると思うのですが,そのあたりはいかがでしょう。
Alutemu選手:
自分の場合,実際に試合が始まるとゲームに集中して,周囲が気にならなくなるタイプなんです。でも,こうやってインタビューを受けたり,ゲームの外でスポットを浴びるのはとても緊張しますね。
でも,まずは自分自身が強い選手でいることが大切だと思います。これからもグランドマスターズの開催に向け,ハースストーンの理解をより深めていきたいと思います。
glory選手:
自分は表に出るのは思いっきり緊張するタイプですね(笑)。グランドマスターズは試合回数が多いので,少しずつ慣れていけたらと思っています。
あとは,APACだけで見れば自分の戦績は高いですが,ほかの出場選手には世界大会で優勝しているようなプレイヤーがゴロゴロしています。そういった人達に負けないように,選手として実力を高めていきます。
4Gamer:
最後に,ご自身がハースストーンをプレイしていて一番好きなところ,好きな瞬間について教えてください。
Alutemu選手:
ハースストーンはカードゲームなので,デッキタイプの相性がどうしてもあります。そういったなか,不利なマッチアップを実力で覆して勝ったときが一番気持ちいいですね。
自分はアンチコントロールデッキというかコンボ系のデッキが好きで。たとえばクエストローグでアグロデッキを倒すのが大好物ですね(笑)。
glory選手:
自分は対人ゲームが好きで,目標を立ててそれに向けて努力をするのが好きです。ハースストーンを本気で始めた頃は,プレイオフに進出することを目標にしていました。それを達成した次はプレイオフで,次はシーズン選手権に出場と,順番に達成できています。グランドマスターズでも次の目標に向けて頑張っていきます。
4Gamer:
おふたりのグランドマスターズでの活躍に期待しています。本日はありがとうございました。
アジア太平洋のハースストーン・グランドマスターズの紹介(ハースストーン公式サイト)
「ハースストーン」公式サイト
「ハースストーン」ダウンロードページ
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(C)2017 BLIZZARD ENTERTAINMENT, INC.
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