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  • 発売日:2018/03/27
  • 価格:4100円(税込)
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「Richard Garriottが作る,新しいクラシカルRPG」はどういう作品に仕上がるのか,氏に直接聞いてみよう――Shroud of the Avatarとはどんなゲームなのか
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印刷2013/03/27 00:00

インタビュー

「Richard Garriottが作る,新しいクラシカルRPG」はどういう作品に仕上がるのか,氏に直接聞いてみよう――Shroud of the Avatarとはどんなゲームなのか

 ついぞ先日の3月11日のこと,Richard Garriott(リチャード・ギャリオット)氏の新作RPG「Shroud of the Avatar:Forsaken Virtues」が突如発表されたのは,4Gamer読者なら記憶に新しいところだろう。

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 古くから4Gamerを読んでくれているような読者であれば,その名を知らぬ者はないであろうRichard Garriott。19歳で最初のコンピュータRPG「Akalabeth」を作り,1981年に初代「Ultima」を発売。同年に発売されたWizardryと並び,後続のあらゆるコンピュータRPGに影響を与え,その礎を築いたと断言しても,異論はないだろう。
 そこから15年以上経った1997年には,事実上世界初のMMORPGである「Ultima Online」を作り上げてサービスを開始し,その2年後に登場した「EverQuest」と共に,MMORPGの礎も築き上げた。

 しかし紆余曲折あって,1999年に発売した「Ultima IX:Ascension」のあとで,自ら設立したOriginから事実上追い出される形で退社,その後しばらく表舞台へと出ることはなかったが,2001年にはNCsoftへと入社して,MMORPG「Tabura Rasa」を開発。しかしその後,2008年10月には国際宇宙ステーションへと旅立ち,同年にはNCsoftを退職。またもやゲーム業界の表舞台から姿を隠してしまった。

 2009年には,オンラインソーシャルゲームを作る目的で設立された「Portalarium」に参加しているが,依然として表舞台に立つことはなく,もしかしてこのまま業界から姿を消してしまうのでは……と心配した矢先,突如としてRPG「Shroud of the Avatar:Forsaken Virtues」の制作を発表,しかも資金はKickstarterで集めるというサプライズ付きだった。
 氏が最後に手がけたシングルRPGである「Ultima IX:Ascension」から14年もの歳月が流れているが,氏のネームバリューはいまだ強く,Kickstarterでの公開からわずか3日ほどで目標額(100万ドル)の2/3を集め(本稿執筆時点ではすでに116万ドルが集まっている),氏のファンの健在ぶりと共に,「コンピュータRPG」の色褪せない人気を強く印象づけることとなった。

画像集#001のサムネイル/「Richard Garriottが作る,新しいクラシカルRPG」はどういう作品に仕上がるのか,氏に直接聞いてみよう――Shroud of the Avatarとはどんなゲームなのか
Skype中に良い写真が撮れなかったので,もらった写真で。1961年生まれの51歳で,業界の中では重鎮どころの話ではないが,ゲームを作る情熱はまだまだ失われていない。余談だが,彼は通称「リチャード・ワールド」と呼ばれる独特の(=マイペースな)時空の中で仕事をするので,周りの人は相当大変だと聞いたことがある
 さてGarriott氏が業界に戻ってきたとあらば,ぜひ話を聞いてみたい。とはいえ業界はGDC直前で混乱していて,さすがに氏も忙しいだろう……と思いつつも打診してみたら,なんと出張先のニューヨークからSkypeで対応してくれるとのこと。遠慮なく予定に割り込ませてもらったのが,以下のインタビューだ。ただ回線状態が非常に悪く,事実上ビデオを使っての会話が不可能だったので,まったく写真がないことをご容赦いただきたい。
 先方が夜10時からという時間帯だったので,さすがに30分という限られた時間でのインタビューとなったが,氏が健在であること,ゲーム開発への情熱が失われていないこと,何か新しいものを作り上げようとしてることは十分に理解できた。インタビュー中にKickstarterの目標額が達成されるという,なかなかにドラマチックなハプニングにも恵まれたインタビューを,ぜひお読みいただきたい。

 まずはファーストコンタクトということで,今回はゲームの概要に終始した話となったが,ゲームシステムの細かい部分についても追って聞いてみたいと思っているので,そちらも期待しておいてほしい。

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3月26日時点で,1万6400人から116万ドルを集めているShroud of the AvatarのKickstarter

「Shroud of the Avatar: Forsaken Virtues」Kickstarterページ

「Shroud of the Avatar: Forsaken Virtues」公式サイト


4Gamer:
 こんな夜中に(注:ニューヨークは夜10時)お時間をありがとうございます。自分の記事を見直してみたら,あなたに最後にお会いしたのはTabula Rasaのインタビューのときで,2008年3月でした。

Richard Garriott氏(以下,Garriott氏):
 ええ,覚えてますよ。あのときは確か日本でした。こうやって日本のプレイヤーの皆さんに自分の作品をアピールできるのは,とても光栄だと思っています。私の今までのゲーム開発者としての歴史の中で,幸いなことに多くの日本のプレイヤーが作品を楽しんでくれているし,そのコミュニティの強力さからいっても,とても大きな位置を占めてますからね。

4Gamer:
 しかしShroud of the Avatarの動画で久しぶりに姿を見ましたが,ちょっとふっくらしましたね。もしかして,とても健康になりました?(笑)

Garriott氏:
 ハハハ(笑),その感想はたぶん正しいですね。なにせあの宇宙への旅のために,体重を落とさないといけなくて手術までしたんですから。そのリカバリーにずいぶん時間がかかったけど。あのインタビューのときは,確か旅の準備の真っ最中でした。

4Gamer:
 宇宙旅行もそうですが,なにより2009年以降,あなたの名前をゲーム業界の表舞台で見ることがなくなり,古くからのファンはとても寂しい気持ちになったものです。今まで,どこでどんなことをしていたんでしょうか。

Garriott氏:
 実はあの宇宙への旅のあと数年間は,そのときの印象的な体験を,みんなに話すことばかりをしていました。いたるところに旅行しましたよ,そのために。2年前くらいにやっとそれも落ち着いて「またゲームを作りたいな」と思うようになって,私の人生の最大の案件であるゲーム制作の舞台に戻ってきたというわけです。

4Gamer:
 あなたのようなクリエイターであっても,宇宙旅行というものはそれほど強い印象を与えるものなんですね。僕も死ぬまでに一度は宇宙に行ってみたいと思ってるんですが,あえてこの場で宇宙旅行を「ひと言」で表すと,なんという言葉が一番適切ですか?

まったくもって回線が悪い状態だったにも関わらず,30分以上も筆者の相手をしてくれたGarriott氏に感謝
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Garriott氏:
 ちょっと待ってください。ひと言はあまりにも短い!(笑)

4Gamer:
 じゃあ一文でお願いします(笑)。

Garriott氏:
 一文……ならだいぶ楽かな。やはり「人生を根本から変える経験」というのが一番適切だと思います。……2つめの文章も言っていいですか?

4Gamer:
 ぜひお願いします。

Garriott氏:
 やはり宇宙に行ってもっとも強く思ったのは,「環境についてもっと気をつけなくてはいけない」ということでした。私は元々そういう問題に対しての問題意識は高かったんですが,宇宙から地球を見たときに,環境問題がどれほど重要なことであるのか,本当に心から再認識したんです。

4Gamer:
 環境問題は僕も個人的にとても強い関心を持っているんですが,ぜひあなたの名前で何かの活動をしてほしいですね。

Garriott氏:
 いいですね! このShroud of the Avatarにもそういうメッセージを取り入れていきたいと思っているし,完成したら日本にもお披露目に行きたいと思ってるんですけど,そのときは作品の紹介だけでなく,宇宙や環境問題についての話もぜひしてみたいね。4Gamerにも協力してもらって。

4Gamer:
 ぜひお願いします。ゲーム業界は,多くの人に楽しさや喜びを与えていて,それが我々業界人の誇りでもあるわけですが,成長した業界が成すべき社会貢献という部分はもっとクローズアップされてもよいのでは,と思うのです。あなたのようなビッグネームに率先してやってもらえると,本当に嬉しく思います。

Garriott氏:
 そうですね。ゲームというものを,単なる楽しみのためのツールとしてだけ使うのは,本当にもったいないと思います。ゲームから導かれる何かによって,もっと人生や世界を向上させるようなものになるのが理想の形ですよね。

4Gamer:
 期待しています! ……本当は宇宙の話をもっと聞きたいところなんですが,今日は時間も限られているので先に進みます。
 そんな重要なインパクトを与えた宇宙旅行を経て,もしかしたらあなたのゲームに対する興味は失われてしまったのかな,という心配もありました。ご自分でいまおっしゃっていたように,きっと宇宙旅行は,人生そのものを大きく変えるインパクトがあることは,行ったことのない僕でも容易に想像が付くからです。

Garriott氏:
 なるほど。

4Gamer:
 しかもあなたが次に動いたときには,ソーシャルゲームの会社に入ってましたし。「あぁ,もうGarriottは『ゲーム』には戻ってこないのかな」とみんな考えたと思うんです。

Garriott氏:
 それを口にしたのは,あなたで何人目でしょうか(笑)。じゃあその件について,私に影響を与えた3つの「時代」について話すことにしましょう。

4Gamer:
 ぜひお願いします。

Garriott氏:
 まず1つ目の時代はシングルゲーム。私が作ったUltimaシリーズがそうですが,1980年代や90年代などに作られていたシングルRPGにおいては,そこでユーザーのインタラクションについての進化があったわけです。
 そして2つ目は,いわゆるMMOというもの。Ultima Onlineがその最たるものだと思いますが,シングルゲームからMMOの時代になって,プレイヤー数は10倍にふくれあがりました。
 そしてそれが3つ目のソーシャルゲームの時代になって,プレイヤー数はさらに10倍になりました。MMOの時代と大きく違うのは,MMOは「知らない人同士が知り合う」ことがメインだったのに対して,ソーシャルゲームの時代は「知っている人同士が,より深く知り合って一緒にプレイする」という経験を提供するということです。

4Gamer:
 はい,分かります。

Garriott氏:
 そして今回のShroud of the Avatarは,想像どおりこの3つの要素を組み合わせたものになります。ストーリーラインを楽しむシングルゲームと,マルチプレイヤー要素,それにマルチプレイヤー要素で知り合った人同士がもっと深く関われる要素と,その3つが複合された形で入っていて,すべてを体験できるようにデザインしてあります。もちろん,コアゲーマーが多いPC向けに作ってますよ!

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4Gamer:
 ええとつまり,シングルのUltimaシリーズでPCゲーム黎明期を生きて,MMOの時代を自ら作り,新しいジェネレーションのMMOを作り,そしてソーシャルゲームをも目にしてきたあなたが「もっとも良い形」であると思うのが,Shroud of the Avatarというわけですね。

Garriott氏:
 Yes,そのとおりです。でもちゃんと説明しておきたいんですけど,Shourd of Avatarのオンライン要素は,いままでとは全然違うものです。完全なシングルプレイモードでも遊べるし,まるでMMORPGのような楽しみ方もできます。「マルチプレイヤーゲーム」としてかつてないユニークで新しい設計思想を取り入れていると思いますよ。

4Gamer:
 確かにすごいことに聞こえますが,素直な疑問として,シングルプレイとマルチプレイの両方を楽しむモチベーションはどこにあるんでしょうか。

Garriott氏:
 おそらくほとんどの人がOpen MultiPlayer Mode(注:ほぼ既存のMMOに近い形だが,誰が表示されるかなどを細かく選択することができる)で遊ぶことになるんじゃないかと思います。とくにUOで遊んでくれているような人なら,一番抵抗なく受け入れられるモードでしょうしね。でもオフラインで遊べるようなモードもちゃんと作りたかったので,そのためにまた専用のアーキテクチャを設計することにしたんです。
 いままで何人もの人から「シングルプレイ以外には興味ない」と言われているので,最初から最後までシングルプレイで楽しめるようなデザインにもしてありますよ。

4Gamer:
 なるほど。あなたのデザインするRPGである以上,やはり濃厚なストーリーラインを期待しているプレイヤーも多いと思うんですが,それはシングルプレイモードのほうがより深く楽しめる感じでしょうか。

Garriott氏:
 聞きたいことはよく分かります。シングルのUltimaにはあった濃厚なストーリーは,なにしろUltima Onlineにはほとんどなかったですからね。でも大丈夫,Shroud of the Avatarは,両方の要素を持ちつつストーリーラインを強化していますから,オンラインモードでも十分楽しめますよ。なにせゲーム自体がストーリードリブンですし。

4Gamer:
 ということは,マルチプレイヤーモードでも,クエストなどで楽しむ感じですか?

Garriott氏:
 答えを先に述べるなら「Yes」です。私自身――たぶんあなたもそうだと思いますけど――は,マルチプレイヤーモードを遊ばない理由はどこにもないんですけど,でも世の中にはシャイな人もいるんです。

4Gamer:
 そこは理解できるんですが,プレイヤーの行動によってゲーム内の世界に生じる変更は,マルチプレイヤーモードでも反映されるんでしょうか。

Garriott氏:
 それも答えは「Yes」です。根本的にこのゲームは「オンラインゲーム」ですからね。プレイスタイルについて,見知らぬみんなと共に遊ぶタイプなのか,仲間内だけで遊びたいのか,それとも自分一人の世界に籠もりたいのか,そういうものを設定できるというだけの話なんです。

4Gamer:
 なるほど。初見のイメージや,ましてやあなたの名前からして,「正統派の重厚長大なシングルRPGの性格が強い」と思いがちですが,じゃあその認識は改めたほうがよいですね。

Garriott氏:
 私の名前で「正統派のシングルRPG」を想像するのは,相当古いゲーマーですよ(笑)。知ってると思いますが,Ultima Onlineは,全世界のプレイヤーの1/3が日本からだったんです。あとの1/3はアメリカ,もう1/3はヨーロッパです。だから日本のプレイヤーの多くは,Lord Britishを「MMOゲームの人」だと思ってると思いますよ(笑)。

4Gamer:
 確かに……。ではあなたが自分の作品にキャッチコピーを付けるとしたらどんな感じになりますか? 「Richard Garriottが放つ新作RPG」もなんかちょっとうまく表現できていない気がしますし,「あのGarriottが作った新作オンラインRPG」と言い切るのも,話を聞く限りなんだかちょっと違うな,と。要するに,この作品を示す適切な言葉が見当たらないなぁ,という話なのですが。

Garriott氏:
 そうですね……あえて言うなら「Richard Garriottが作る,まったく新しい形のクラシカルRPG」でしょうか。それに伴って新しい用語を作る必要があると思うんですが,私個人としては「Selective Multiplayer Game」というワードを考えています。

4Gamer:
 なるほど,Selective,ですか。

Garriott氏:
 Ultimaの時代のシングルRPGの良さと,Ultima Onlineの時代のMMORPGの良さと,その両方を兼ね備えつつ,まったく新しいものを作り出そうとしているので,確かに示す言葉は難しいですね。気分によって,またはインフラの状態によって――自宅にいるのか,例えば移動中でカフェにいるのか――,プレイスタイルを自在に変えられる作品なんです。「どれくらいオンラインで遊びたいのか」も自由に設定できますからね。
 でも完全なるオフラインモードをゲームの最初で選択してしまうと,マルチプレイヤーモードには出来ないので,そこだけは注意してください。

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4Gamer:
 あれ? シングルプレイモードとマルチプレイヤーモードはどっちもプレイできるんですよね?

Garriott氏:
 いや,それは出来ません。マルチプレイヤーモードをオフラインで一人で遊ぶことは出来ますけど。例えば飛行機の中だったり,例えば回線がない場所だったり,そういう場所ではオフラインモードで遊ぶことは出来ますよ。

4Gamer:
 ……あ,そうか。分かった。「オフラインモード」とか「シングルプレイモード」とか,用語の解釈を僕がちょっと間違えていた気がします。

Garriott氏:
 そうかもしれないですね。たぶんあなたが言う「シングルプレイモード」は,私が言う「オフラインモード」かな。オンラインなんだけど一人で遊ぶモードです。私が言う「シングルプレイモード」――完全なるオフラインモード――は,最初から最後まで完全に一人でシングルで楽しむもので,いわゆる既存のコンピュータRPGそのものです。そしてゲームの最初にそれを選んでしまうと,データ管理の都合上,オンラインモードには出来ないんです。

4Gamer:
 理解しました。Shroud of the Avatarのマルチプレイモードは,一人でオフラインで遊べるモードも内包しているというのは理解しましたが,つまりそれって,オフラインのモードとオンラインのモードが,シームレスにリンクしているということですか?

Garriott氏:
 そのとおりです。

4Gamer:
 なるほど。ということは,やはりMMORPGというよりは「MO」に近い感じですね。

Garriott氏:
 そういうことになりますね。でもそれもまたちょっと違うイメージを与えてしまうし,「MMO」という言葉は,あまりにも示すものが大きすぎる。なので,何か新しいターム(用語)が必要だと思っていて,それで「Selective」という言葉を選んでみたんです。

4Gamer:
 確かにちょっと話を聞いただけでは理解が難しい,新しいアプローチをしている作品ですし,僕みたいに勘違いする人も出そうなので,何か新しいタームは必要ですね。

Garriott氏:
 その難しい部分――とくにアーキテクチャ――について,もうちょっと話してもいいですか?

4Gamer:
 ぜひともお願いします。

Garriott氏:
 OK,じゃあまず既存のMMORPGを考えてみてください。あなたのPCは,グラフィックスを処理するだけのものであって,その処理のほとんどすべてをセントラルサーバーがまかなっていて,実質的にサーバーでゲームが動いているといってもよいですよね。

4Gamer:
 はい。

Garriott氏:
 つまり逆転の発想で,例えばMMORPGを「オフラインで遊びたい」と思ったら,要はあなたのPCの中にサーバーを立てればいいわけです。つまり,あなたのPCの中には,サーバーとクライアントの両方がある状態になります。
 要はShroud of the Avatarというのは,これをやってるわけです。
 例えばあなたがオンラインモードになって,ゲーム内の世界に降り立ったとしましょう。それで街へ入ると,そこではあなた自身がこの街のマップの「サーバー」になるわけです。あとから来た人は,そこに対してJoinできるんですが,そのときにその人は「クライアント」になります。

4Gamer:
 何かプレイヤーが意識しなくてはならないことはありますか?

Garriott氏:
 あとから来た人の画面には,「この人のゲームにJoinしますか?」という確認画面が出ることになるくらいでしょうか。そこでYesを選択すると,初めて「世界」を共有することになります。

4Gamer:
 ん,ちょっと待ってください。その例で言うと,その「街」の本体はどこにあるんでしょうか。もしかしてみんなそれぞれがPCの中に持っているということなんでしょうか。

Garriott氏:
 そのとおりです。あえて言うなら「街やダンジョンに一番最初にアクセスした人が本体」という感じだと思います。

4Gamer:
 ではその場合に,それぞれのプレイヤーが持つ世界に生じている違い――例えばNPCがいたりいなかったり,クエストのストーリーラインが進んでいたりいなかったり――というのは,どのように整合性が図られるんでしょうか。

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Garriott氏:
 いい質問ですね。世界に生じる変更を一気に吸収するシステムは,まさに今,完全なる解決に向けて検証中です。
 例えばあなたが新しい家を買ったり,新しいお店を始めたり,またはあなたが街を侵略者から救ったり,そういったすべての変化は,セントラルサーバーに保存されています。そしてほかのプレイヤーが,街だったりダンジョンだったりの新しいマップを開いたら,セントラルサーバーからすべてのあなたのデータをダウンロードして,自動的にシンクロされるという感じになります。

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4Gamer:
 では,オンラインモードではあるけれどシングルで――オフラインモードで――遊んでいたときのデータも,すべてつつがなくシンクロされる?

Garriott氏:
 もちろんです。そのときは,街に戻ったときにすべての情報がシンクロされることになりますよ。

4Gamer:
 それはUltima Onlineのときの,データをサーバーで一元管理する方式からきた反省からでしょうか。

Garriott氏:
 もちろんそれもあるにはあります。あのときは本当に大変でした(笑)。

4Gamer:
 日本人はなんでもかんでもモノを溜め込みますからねえ。僕もですが。

Garriott氏:
 でも本当のところは,もっと違うピュアな問題意識から来ている設計で,それは,オンラインとオフラインのプレイを完全にシームレスに効率良くプレイヤーに提供したい,というものなんですけどね。

4Gamer:
 おっしゃることはよく分かるのですが,そこまで自由度の高い――オフラインで一人でさえ遊べるような――オンラインモードを持っているのであれば,わざわざ完全なるオフラインモードを付けるという必然性をあまり感じないんですが……。

Garriott氏:
 決してオンラインになることない,完全なオフラインバージョンというものは,「オンラインゲームというのものは怖い場所だ」と思っている人達に向けた解決策なんです。確かにネットというのは場合によっては怖いところだし,他人がいることで全然快適じゃないと思う人達だっていますからね。そういう人達に向けて,完全なる安心感を提供するために,このモードは存在するというわけです。

4Gamer:
 ということは,「オンラインでほかの人と遊べること」以外には,その2つのモードのゲーム内容的な違いはほとんどない?

Garriott氏:
 ええ。唯一の違いは,いつも自分が見ている既存の光景しか見ることがない,ということだけです。ほかの人のプレイの結果がゲームに反映されることもないし,ほかの人に気を遣ってゲームを進める必要もありません。ほかのプレイヤーから攻撃されることもないし,プレイヤーが作るタウンについても,その人だけが関与している状態なので,進捗はすべて管理できます。

4Gamer:
 完全なシングルプレイモードでは,体験できないクエストがあったり,行けないゾーンがあったり,そういうものもないということでしょうか。

Garriott氏:
 一般的な言い方をするならば,完全なシングルプレイモードでも,ゲームのすべてのフィーチャーを体験できるのは間違いありません。我々は,そういう風にデザインしています。でも例えば,入るために二人のプレイヤーが必要だったり,そういうものもごく一部あるにはありますけど。

Shroud of the AvatarのKickstarterでは,投資額に応じて称号がもらえるのだが(むろんゲーム内で使える),「Founder」という称号に引かれて60ドルを投資。Garriottの作品のFounder(設立者)になれるなんて!
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4Gamer:
 となると,実質重要な違いが出る大きなフィーチャーは「タウン」ですね,きっと。タウンって,具体的にはどういうものなんでしょうか。

Garriott氏:
 タウンはその名のとおり,プレイヤーの家があったりプレイヤーのお店があったり,そういうものがある場所で,プレイヤーがオンラインでないときは,プレイヤーのキャラクターがNPCとなって自動で活動してくれるというものです。ミッションが発生したりもするし,モンスターの軍勢が攻め込んでくることもあります。……家が焼かれたり街が燃えたりとか。

4Gamer:
 うわ,家が焼かれたりもするんですね……。それだけの凝ったフィーチャーだということは,タウンは,主にギルドなどの特定のプレイヤーコミュニティが持つことを想定してますか?

Garriott氏:
 いや,そういうわけじゃないですよ。ゲーム側で用意するタウンには誰でも参加できます。もちろん,プレイヤーギルドによって運営されるタウンというものも登場するでしょうけどね。大きいタウンは設備もだいぶ違うので,それはそれで,きっと面白い体験ができると思います。

4Gamer:
 一番大きいタウンっていうのはどれくらいのプレイヤーが参加できるんですか?

Garriott氏:
 とても多くのプレイヤーを受け入れることが出来るんですが,表示できる限界はたぶん50〜100人くらいになると思います。実際にはもっと多くのプレイヤーがそこにいることになるんだけど,その「上限」みたいなものはいまのところはまだ決まってません。
 ……って,Kickstarterを見てください! いま100万ドルを達成しました!

4Gamer:
 おー,おめでとうございます!
 ……ってすみません,30分だけという約束で時間をもらったのに少しオーバーしてしまいました。今回は出張先でまで時間を作っていただきありがとうございました。最後に,あなたの作品を楽しみにしている4Gamer読者に何か伝えたいことはありますか。


――2013年3月19日収録

「Shroud of the Avatar: Forsaken Virtues」Kickstarterページ

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    Shroud of the Avatar: Forsaken Virtues

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