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飯田和敏氏らが「モンケン」の経過を報告。トークライブ「黒川文雄のエンタメ創造記」第2回「インディーズゲームの作り方」の模様をレポート
このイベントでは,メディアコンテンツ研究家の黒川文雄氏と,ブレインストーム 代表取締役 中村隆之氏,ゲームグラフィックスデザイナーの納口龍司氏,ゲーム作家の飯田和敏氏の4人が,現在推進しているインディーズゲーム制作プロジェクト「モンケン」の開発途中報告をベースに,日本におけるインディーズゲーム開発の事例を紹介した。
本稿では,そのプレゼンテーションの模様をレポートしよう。
なお,4Gamerにはこの4氏へ行ったインタビューも掲載されているので,そちらもぜひ読んでみてほしい。
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そこで,人脈をたどって知人やゲーム会社に企画をプレゼンしてみたところ,当時,ソーシャルゲームの中心的存在だったカードゲームにすることを提案されたり,あるいはビジネスの話をされたりと,どうにも新たなチャレンジに結びつくような感触ではなかったそうだ。
それであれば,志をともにする仲間とともに,インディーズでゲーム制作をしてみたらどうかと思い立ち,旧知の飯田氏や中村氏,納口氏に声をかけ,プロジェクトをスタートさせたという。
そして2012年11月に開催された東京ロケテゲームショウへ「モンケン」のプロトタイプを出展。さまざまなゲームがある中,1人の子どもがモンケンを何度も何度も繰り返し遊んでいる様子を見て,黒川氏は「これは行ける」という感触を得たとのことである。また会場では,ユビキタスエンターテインメントの清水 亮氏も「破壊のカタルシスがある」と評価していたそうだ。
黒川氏はプロジェクトのコンセプトを「既存の概念をぶっ壊すこと」と説明。これまで誰もやらなかったゲーム業界の常識や概念を覆すということにチャレンジしたいと意気込みを見せた。
また黒川氏は,クラウドファンディング「CAMPFIRE」にて募っていたモンケンの開発資金が,このイベントの直前に目標額の200万円を達成したと報告。クラウドファンディングによる資金調達は新しいチャレンジであり,今回の事例が,今後のインディーズゲーム開発の参考になればいいと展望を語っていた。
まず長所は,有志が集まったチームであり,上下関係や金銭的なつながりがないフラットな関係であること。コアメンバーの4人はいずれもアクティブに活動しており,今回のイベントのようにプロモーションにも注力している。
短所は長所と表裏一体で,中村氏は,フラットな関係であるがゆえに誰がリーダーシップを取るかが問題になったり,オンライン上で打ち合わせをすると議事録がうまく残せず,情報が全員に共有されなかったりする点を指摘した。営利活動ではないために,本業などでメンバー各自の優先すべきことが生ずると,スケジュールがルーズになってしまう問題もあるという。
クラウドファンディングのメリットについて,中村氏は「モンケン」を遊んでみたいという支援者と直接話ができることや,仲間意識が生まれることを挙げる。さらにクラウドファンディングで目標を達成するためには,さまざまなアピールや活動が必要となるが,それらはいい意味でゲーム的であるとも話していた。
逆にクリアすべき課題としては,資金を何に使うのか,どんなゲームなのかなど,予想以上に多くの情報をオープンにしなければならない点,プロジェクトが資金を募っているという事実を積極的にアピールしていく方法,そして何よりクラウドファンディング自体がまだ世間に浸透していない点を挙げていた。
「モンケン」というゲームについては,ターゲット層を想定せず,メンバーが作りたいものを作っているがゆえに,ゲームだけでなくコミュニティをも作っていく必要があると語る中村氏。従来のゲームでは,たとえばシリーズのファンに向けて作を重ねるなど,ターゲットがよりコアになっていくが,「モンケン」では,それと逆のアプローチにチャレンジするという。
また目標額を達成したとはいえ,クラウドファンディングで調達した200万円だけでは,開発の継続は困難であるため,今後のマネタイズをどうするかも大きな課題となっているとのことである。
続いて登壇した納口氏は,自身がなぜ「モンケン」に関わったのかについて述べた。ゲーム開発において,主に現場作業に携わっていた氏は,このプロジェクトを通じてゲーム開発者やクリエイターとしての“選択肢の幅”を広げたかったという。
たとえば現在,日本でゲーム開発に携わっている人達の中には,「モンケン」が利用するクラウドファンディングやクリエイティブコモンズといった仕組みについて詳しい人は少なく,それが選択の幅を狭めていると納口氏は指摘。氏自身,自分がこのままゲーム業界の現場に携わっていって,果たして10年後に家族を養っていけるのか,幸せな生活を送れているのかに疑問を抱き,「モンケン」のチャレンジを通じて,自分自身で将来の選択肢を増やしたいと考えたとのことである。
名前が認知されることは,より多くのビジネスにつながり,10年後あるいはそれ以降の幸せな生活につながるというわけである。納口氏は「自分の得になる話ばかりで,動機が不純だけれども」と恐縮していたが,組織のマネジメントに興味のないゲーム開発者やクリエイターにとっては参考になる事例ではないだろうか。
クラウドファンディングについては,ゲーム開発の資金調達に新しい手段が加わったと納口氏は語る。これまでの資金調達は,パブリッシャなどから予算を出してもらうか,自己資金でやるかという2種類しかなかったが,前者は基本的にパブリッシャの意に沿う表現しかできないし,後者はリスクが大きい。
納口氏は,自身の純粋な創作意欲が生かせて,しかも対価が保証される可能性が高まるクラウドファンディングの浸透は,多くのクリエイターにとって,ひいてはゲーム業界にとっていい方向に働くのではないかと,展望を述べていた。
最後に登壇した飯田氏は,クラウドファンディングで200万円の資金調達を実現したことを「第1目標突破」と表現。「絶対イェーイ」「epic win」(大成功)と喜びを表すとともに,「感謝の気持ちを言葉で表現するとしょっぱくなるし,野暮だから」と述べ,急遽作ったという「epic winのうた」を披露し,プレゼンを締めくくった。
「モンケン」公式サイト
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