企画記事
幽霊刑事が殺人鬼を追う異色のアクションアドベンチャー
MURDERED 魂の呼ぶ声
本作は,連続殺人の犯人によって殺されてしまった主人公の刑事がゴースト(幽霊)となって,その殺人鬼を追っていくという,異色のストーリーが展開されるアクションアドベンチャーだ。ゴーストならではの特殊な能力による,これまでの推理アドベンチャーとはひと味違った捜査方法や,独自のゲームシステムなど,本作の魅力を紹介したい。
なお,記事執筆にあたりネタバレはできるだけ避けるよう心がけているが,ゲームを説明するうえでどうしてもストーリーに触れなければならない部分もあるため,その点についてはあらかじめご了承いただきたい。また今回はPlayStation 4版のサンプルROMをプレイしたので,文中の操作系表記はすべてPS4のものに準じている。スクリーンショットもPS4のSHARE機能にて撮影したものだ。
この世とあの世の狭間「ダスク」で悪戦苦闘
物語の舞台は,アメリカ・マサチューセッツ州に実在する都市セイラム。主人公の刑事ロナン・オコナーは,追っていた事件の犯人に4階の窓から地面へ投げ落とされる。アクション映画のヒーローのようにすぐさま立ち上がり,再び犯人を追おうとするロナンだったが,気付くとその後ろには自分の体が転がっていた。
幽体離脱をしてしまったことに驚くロナンはすぐに自分の体に戻ろうとするが,下りてきた犯人がロナンの体に7発の銃弾を浴びせ,とどめを刺されてしまうのだった。セイラム市警のロナン・オコナー刑事の命運はここで尽き,胸に7発の弾痕が生々しく光るゴースト刑事ロナンが誕生するのである。
ゴーストとなったロナンの魂は,現世とあの世の狭間にある世界「ダスク」に存在していて,彼はここから抜け出すために事件の真相を追っていくこととなる。
主人公がゴーストということで,一体どの程度自由に行動ができるのか気になる人もいるだろう。ロナンがいるダスクは,一見するとセイラムの街中なのだが,よく見ると現世には存在しない,過去の事件などにまつわる建造物や障害物などのオブジェクトなどが点在し,さらにはロナンと同じようなゴーストもいる。
ロナンは現世のセイラムにあるオブジェクトは無視して移動できるが,ダスクの青白く光ったオブジェクトは通り抜けられない。また,街中にある建物には魔除けが施されているため,ロナンはその壁を通り抜けられず,住人がドアから出入りするときなどを狙って侵入するということになる。
こうした移動の制限は,ゴーストであることのメリットとデメリットがゲームシステムにうまく取り入れられているところと言っていいだろう。また,街に人間以外のゴースト的なものが存在することで,霊現象の不気味さをうまく演出しているようにも思えた。
本作のマップはこれらの仕組みに基づいて構成され,ロナンがゴーストだからこそ成立する迷路のようになっている。後述する「霊的能力」を駆使しないと進めないところもあり,捜査の足かせというほどでもないが,壁を通り抜けられる力を持っているのにまっすぐ進めないもどかしさが,すんなりとはクリアできないゲームとしての面白さにもつながっているのである。
ゴーストだからこそ使える力で捜査を進める
ゴーストとなって思わぬ不便さを味わうこととなったが,死ぬ直前までは現役の刑事だったロナンは,独自のやり方で捜査を進めていく。現場での捜査は,周囲にある証拠物件などからの「情報収集」(特定の場所で[□]ボタン)と,証拠をいくつか集めたあとに行える「推理」(捜査現場で[△]ボタン)の2種類あり,それによって正しい答えが導き出されると,次のシーンへと進めるという仕組みだ。その場所で集めるべき情報の数が画面に表示されており,捜査範囲は場所ごとに決まっているので,探すためにあちこち移動する必要はない。
またロナンには,ゲームを進めることで「霊的能力」が備わっていく。捜査で最も使うことになるであろう能力が「憑依」だ。ロナンは現世の人間に憑依(対象に向かって[R2]ボタン)でき,憑依中の相手にいくつかのアクションを行える。ほとんどの人物で可能となっている「思考を読む」は,その人間が考えていることが分かるだけだが,特定の人物にのみ行える「思念操作」で,その人物の行動を選択したり,「のぞき見」によって対象が見ているものを覗いたりすれば,捜査に必要な情報も集まってくるはずだ。
憑依したのなら,その人間を自由自在に動かしたい気分にもなってしまうが,そこまでできるとゲームとして破綻してしまう気もするので,バランスとしてはこのぐらい制限があるほうがいいのだろう。
そのほかにも「記憶の残滓の可視化」「瞬間移動」「ポルターガイスト」といった霊的能力を得ていくことで,行えることが増え,アクションアドベンチャーとしての面白さも増していく。
寄り道でさらに深い物語が楽しめる
さて,前述したように,セイラムの街にはロナン以外にもたくさんのゴーストが存在し,その多くは悩みを抱えている。彼らに話しかければその悩みを聞き,解決してあげることもできるのだ。
これはいわゆるサブクエスト的な要素で,事件捜査と同じ手順(情報収集と推理)で進行するものだが,無視して本編を進めてしまってもかまわない。ゲーム本編の進行としては,一刻も早い事件の解決が望まれているわけだが,困っているゴーストを助けずにはいられないお節介やきのロナンを体験してみるのも一興だろう。
こうした寄り道要素では,ロナンより先に亡くなってしまった妻との思い出や犯人の情報などが手に入る。こちらもゲームクリアに必要な要素ではなく,集めていくことで物語に深みが出るものだが,その中でも個人的に面白いと思ったのが「怪談集」である。
これはロナンが赴くいくつかの建物の中にあるオブジェクトを探し出して可視化し,コンプリートすると,その建物にまつわる怪談話を聞くことができるというもの。「世界一怪奇現象の多い街」(という設定)のセイラムにうまくマッチしていて,どちらかと言えばサスペンス性重視である本編の合間に,ゾクッとするような怖さを味わうには最適のものだろう。
ゴースト刑事と,霊能少女の異色コンビが魅力的
本作のストーリー語るうえで欠かせないのが,主人公であるロナンの人間的魅力だろう。若い頃のロナンはゴロツキのような生活を送り,過去に何度も逮捕された経験があるアウトローだった(その犯罪歴は父親の手によって体中に刻まれたタトゥーが物語っている)。そんなロナンを幸せに導いてくれたのが最愛の夫人ジュリアだったのだが,そのジュリアとも死別。そして自身も殺人鬼の手にかかり,ゴーストとなって犯人を追っているということで,同情を禁じ得ない。
悲しい運命を背負ったロナンだが,ゴーストなのにほかのゴーストに出会って驚いたり,高いところを怖がったりと,コミカルな一面も見せてくれる。筆者がプレイした国内版では,声を当てている山寺宏一さんの演技がその魅力をさらに引き立てていると感じられた。
本編でロナンとともに事件を追うことになるのが,霊能者の少女ジョイ・フォスターである。彼女はゴーストの姿を見ることができ,会話もできるという存在で,さらにロナンが殺された事件の目撃者でもある。ロナンにとっては最重要人物なのだが,ジョイにとってロナンは街中にいるゴーストの1人に過ぎず,彼と話しているとほかのゴーストが彼女に話を聞いてもらおうと寄ってきてしまうため,その存在をあまり好意的には思っていないようだ。
そんな2人は互いの目的のために協力することになるのだが,ゴーストと霊能者という奇妙なコンビは,推理サスペンスの展開にひと味違うテイストを演出している。例えば現世のものに触れられないロナンは,ジョイの力を借りて証拠物件などをさらに深く調べることができる。一方ジョイは,ロナンの霊的能力や刑事としての判断力を頼りに,普通では立入れない場所へ侵入するといった具合だ。出会った頃は微妙な間柄であった2人が,少しずつ信頼関係を築いていくのも見どころだろう。
そしてもう1人の重要な登場人物が,ロナンを殺した猟奇殺人犯「ベル・キラー」だ。現場に鐘のマークを残すことからこの名前で呼ばれる殺人鬼は,フードを被った巨漢で,ストリート育ちで腕に自信のあったロナンをも軽々とあしらい殺害している。ロナンのように本来の殺害対象ではない人物を殺すなど,衝動的な殺人を起こしている割には現場に残す証拠が少なく,警察の捜査も手詰まり気味という,かなり手ごわい相手である。その正体が何者なのか,目的は何か,物語のクライマックスで明らかになるが,もちろんそれはプレイヤー自身で確かめてほしい。
また,ゲーム中にはベル・キラー以外にもロナンの敵が登場する。ゴースト達の魂を喰らう「悪霊」である。セイラムの街中にいる人間やゴースト達と違い,彼らはロナンに対して明確な敵意をもって襲いかかってくる。悪霊が出現するシーンでは,そこに点在する「魂の残滓」(退避オブジェクト)に身を隠しつつ,敵の背後から接近して浄化するという,アクションゲーム的な内容が展開される。難度自体はさほど高くないが,どこへ身を隠すかという多少の判断力と,浄化時に発生するQTEに対応する瞬間的判断力が必要で,それまでのシーンから一転した緊張感と恐怖を味わうことになるだろう。なおここでゲームオーバーになると,チェックポイントまで戻されてしまうので,悪霊には確実に対処しておきたい。
サスペンスとホラー,双方向からの恐怖を存分に楽しめる
筆者にとっては久しぶりのアクションアドベンチャーをプレイする機会だったのだが,これまでプレイしたタイトルとは似て非なる感触だった。その理由はやはりロナンというキャラクターの独自性にあるのだろう。幽霊が主人公という作品は映画やマンガ,ゲームなどでもいくつか見た記憶があるが,それが推理サスペンスと融合した作品は,筆者が知る限りでは少ないような気がする。
壁や障害物を自由にすり抜けられる身軽さと,人間に憑依して心を読むといった特別な力を持つ一方で,現世のものには触ることもできず,頼れる人間はジョイしかいないという,ゴーストである不便さやもどかしさを味わいながら捜査を進めていくという体験はこれまでになかったものだ。さらに,追うべき犯人は自分を殺した人間というシチュエーションも斬新で,プレイ意欲をかき立ててくれる。
もう1つ個人的に気に入ったのは,幽霊がごく普通に存在する世界で物語が進んでいくというところだ。主人公がゴーストで,敵として悪霊が登場するという点以外は,どちらかといえば捜査や推理などに重点が置かれた本作ではあるが,街中に何体も霊が見える街は,あらためて考えてみるとかなり怖い。物語が終始夜のシーンということも,さらにそれを強調している。
映画「シックス・センス」などでも描かれた,ゴーストが日常にいる世界観を,自身の住んでいる都市などに置き換えて想像してみると,この季節にはちょうどいい涼しさを体感できるのではないだろうか。
ゲームを実際にプレイしてみて,操作性やロード時間などに不満な点はなく,エンディングまで快適にプレイできた。少し気になったのはセーブ周りで,プレイヤー任意のセーブができず,セーブデータも複数持てないところは少々不便に感じた。悪霊にやられてしまったときに,思わぬところまで戻されてしまったことが何度かあった。そこも含めてゲームの難度として捉えていたのだが,寝る前にゲームを止めようと思ったときなども困ってしまう。要所でオートセーブはされるのだが,そのチェックポイントがもう少し小まめであれば良かった。
なお,今回プレイしたPS4版の操作系は[×]ボタンで決定,[○]ボタンでキャンセルとなっていた。海外タイトルで主流の仕様が,日本語版でも適用されるそうである。
細かい不満はあるものの,サスペンスとホラーの双方向から恐怖を体験できる本作。いよいよ暑くなるこれからの季節に冷や汗をかきながらプレイできる1本としてオススメしたい。
「MURDERED 魂の呼ぶ声」公式サイト
4Gamer.net「Xbox One」特設ページ
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