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[GDC 2013]他人の物を奪うのは人間の自然な感情だ。過酷なサバイバルが体験できる「DayZ」開発意図を,制作者Dean Hall氏が語る
ゲームの詳細については,2012年9月15日に掲載したレビュー記事を参照してほしいが,そんなDayZの制作者であるDean Hall氏が,Game Developers Conference 2013で「Designing DayZ: Lessons from Cherno」(DayZの設計:Chernoからの教訓)と題したレクチャーを行った。
DayZはもともと,そんなHall氏がゲームを通じて兵士の訓練をするために制作したものだという。といっても,銃を撃つとか立ち回りを覚えるといった実技レベルの話ではなく,兵士が戦場でどのような感情を持つのかを体験/訓練するのが目的だったそうだ。そのために必要なのは正確性(Authenticity)であり,リアルさではない。
しかし,軍は彼のプログラムに興味を示さず,そのため彼は「ゾンビ」という新たな要素を加えて,独自にゲームを制作することにしたという。
Hall氏はサバイバルトレーニングの経験から,DayZではプレイヤーがどのように感じるかが重要であり,何をするかではないと述べた。さらに,重要なのは状況であり,ゲームフィーチャーではないとのこと。彼のDayZは,プレイヤーに状況だけを提供するゲームであり,プレイヤーはそれをただ体験するだけなのである。問題とその解決のための道具を与え,プレイした人に達成感を覚えてもらおうという普通のゲームとは,基本的に異なるアプローチなのだ。
感情に訴える方法として,Hall氏は「物の喪失」を挙げた。DayZでは,プレイヤーが死ぬと,持っていた物すべてを失う。ゲームの舞台となる架空の国は極端に物資が少なく,それらの価値は非常に高い。そのため,物の喪失はプレイヤーの感情に強く訴えるというわけだ。さらに,せっぱ詰まったときに他人の物を奪いたくなることや,物を独占したくなるのは人間の持って生まれた感情であり,プレイヤーはそのことをよく知っているからこそ,さらに緊張感が高まる。感情は理屈を上回ると,Hall氏は述べた。
Hall氏は続けて,ゲームはしばしば,プレイのしやすさのために複雑な部分を省略することがあるが,DayZではそういったことをしていないと語った。複雑さは複雑なまま,プレイヤーの元に届けられる。
しかし,基本となっているのは誰でも知っていること――例えば食事や水を摂らなければ死ぬ,寒い夜は風邪をひきやすい,出血したときは包帯を巻く,といった常識がベースになっている。だからといって,DayZが“リアル”ではないのは上記のとおり。モルヒネは本来,骨折の治療に効果はないが,DayZの中では特効薬として設定されている。重要なのは「骨折したら治療が必要である」というプロセスであり,リアリティを追求するつもりはないとHall氏は言う。
英語圏の掲示板である4chanを読んだHall氏は,彼自身よりもプレイヤーのほうがDayZのことを知り尽くしているのが分かって驚いたという。Hall氏は,プレイヤーがゲームの中でさまざまな感情的経験をし,自分自身の物語を体験していると語り,書き込みをいくつか紹介した。ある人は他人を見つけ次第殺すようになり,ある人は自分のやったことを後悔しているというのである。
DayZの今後については,プレイヤーの体験を増幅するようにはするが,干渉はしないという姿勢だ。これは彼らのゲームであり,DayZはその状況を提供しているだけなのだ。プレイヤーからの意見には,バランスを考えて対応するが,もともとのビジョンを失うようなことはしたくないとも語った。
一見すると,ARMA2のシンプルなマルチプレイMOD,しかもありふれたゾンビ物かという雰囲気のDayZだが,その背後には十分な計算があることが分かる講演だった。もっとも,Hall氏自身は偶然うまくいったところもあると言っていたが。
ただし,同作にはインストールの難しさなど,いくつかの問題が残されているのは,Hall氏も認めているところ。開発中のスタンドアロン版「DayZ」の情報にも今後,注目していきたいところだ。
「DayZ」公式サイト
Game Developers Conference公式サイト(英語)
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DayZ
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キーワード
(C)DayZ 2012-2013