インタビュー
「FFXIV:暁月のフィナーレ」吉田直樹氏への合同インタビュー。新ジョブに“リーパー”を選んだ経緯や,その基本仕様を聞いた
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──新ジョブ“リーパー”について聞かせてください。まだ「FFXIV」に実装されていないFFシリーズのジョブはたくさんありますが,それらではなくオリジナルのジョブになった決め手はなんだったのでしょうか。
吉田氏:
35年続いているシリーズなので,まだたくさんジョブは存在していますが,僕らはMMORPGというジャンルのゲームとしてこれから更にコンテンツを発展させていく時に,トリッキーなジョブはMMO向けにアレンジしすぎると元のジョブの良さが消えてしまうと思っています。
もちろん,FFシリーズのジョブを実装してほしいという声もありますが,“ゲーム体験として面白いかどうか”を第一に考えたとき,みなさんの思い出の中にある感触と違うものを実装してしまったら「FFXIV」としても良くないし,オリジナルのジョブに対しても失礼だと思っているので,今回はというか,これからはオリジナルジョブのほうが多くなっていくだろうなと思っています。
――リーパーの特徴や,他のジョブとの違いを教えてください。
吉田氏:
ファンの皆さんから,特に欧米で「巨大な鎌を振り回すジョブを実装してほしい」という声を3〜4年前からいただいていました。それを「FFXIV」ならではのジョブとして作っていくにはどうしたらいいだろうと考えていった時に,単純に近接で殴るだけというよりは,もう1つ捻りがあって,何かしらのゲージが上がっていって,バトルを続けることでテンションが上がるようにしたかった。それを体現するアイデアが出てきたので,システムとして成立するかどうか検証して,意外とすんなりいったので満場一致で「これだ」と決まりましたね。
――鎌を使うということで,「FFXI」のギロティンやリーパーつながりでクロスリーパーなど,「FFXI」ファンが喜ぶような演出はないでしょうか。
吉田氏:
「FFXI」出身のメンバーもいるので,当然リスペクトするところはあります。これまでも同じような形態のジョブだったり,武器だったり,アクションなどをリスペクトしながらアレンジしてきたと思うので,それは今回も変わらずやっている部分ではあります。中途半端になりそうなものに関しては,ガッカリされないようにオリジナルに振り切ったりしているので,そのバランスの妙は楽しみにしてほしいです。発売前にはメディアツアーに該当するものを今回もやるので,そこで既存ジョブも含めて全容をお伝えできればと思っています。
――リーパーの説明の際に「ゲージが上がっていって」とおっしゃっていましたが……
吉田氏:
いま詳しく言ってしまうと「最終実装が違う」という話になってしまうので,言及は避けたいのですが,基本的には攻撃していくとゲージが上がっていって,ゲージがMAXになったら自分でアヴァターを憑依させるタイミングを図って……みたいなイメージではあります。ただ,その通りに実装するかは検証中なので,今はまだイメージとして捉えてください。
――召喚士のようにペットとしてアヴァターを動かすイメージなのか,それとも機工士のようにロボットが出てくるイメージなのか,あるいはそれらと全く異なるものになるのでしょうか。
吉田氏:
異なります。リーパーはペットジョブではないです。「FFXIV」はジョブごとにゲーム体験を変えるのがポリシーなので,そういう意味では召喚士とも機工士とも異なります。
――リーパーのアヴァターには種類があるのでしょうか。
吉田氏:
いいえ,さすがにグラフィックスのレギュレーションがあるので1種類だけです。1キャラクターに収められるテクスチャ容量もポリゴン数も厳密に決められていますし。あれだけダイナミックに動けるようにしたうえに,アヴァター用のモデルとテクスチャを限界まで詰め込んでいるので,「あれが5種類あります」というような発注をしたらデザイナーから怒られてしまいます(苦笑)。
アヴァターが1体しかいないからこそ,アヴァターと融合した時のダイナミックさは凄く気持ちよくなるように作っているので,そこに期待してもらえると嬉しいです。融合したとき全員同じ見た目にならないように,各種族ごとの個性が消えないように対応しているので,そちらにも期待してほしいです。
――リーパーはピュアDPSか,シナジーDPSか決まっていますか。
吉田氏:
おおよそ定まっていますが,いま言うことで議論になることは避けたいので,またバトルを紹介する機会に改めて聞いていただければと。
――ヴィエラの男性はこれまで見たことがない気がするのですが,「FFXIV」チームのオリジナルデザインでしょうか。
吉田氏:
はい,そうです。今日話した通り,パッチ5.0に実装したヴィエラの女性とロスガルの男性で新種族の追加は止めるつもりでした。なぜなら,あらゆる装備や報酬などをその種族用に作らなくてはいけないので,膨大なリソースが掛け算で増えてしまい,パッチの開発に影響が出てしまうのです。ただ,実装してみたら世界中から「ミコッテとも違う獣人系の男性バージョンをFFXIVチームなら作れるのでは?」という声もいただきました。
グラフィックスチームが「もし吉田さんがやりたいと言ってくれるなら,1つの拡張で2種族はさすがに無理ですけど,なんとかチャレンジしてみますよ」と言ってくれたので,まずは僕らも見たことが無いヴィエラをどうやって構築するか手探りで検証からはじめました。「FFXII」に思入れがある人は「これがそうなのか」という風に見られると思うので,ヴィエラの女性をベースにしつつ,どうあるべきか議論を重ね,ものすごい数のアートワークを作り,実際に大元の設定に沿った形でミコッテとの差別化もしました。
本当はロスガルの女性と同時実装すべきだとは思っています。前回発表した時もジェンダーということを言われた方はいらしたので,次の拡張もやる覚悟ではいますが,そこまで引っ張ったとしても作業量はそんなに変わらないので,「ロスガルの女性も必ず実装します」と宣言したうえで,ヴィエラの男性だけでも先にスタートしたほうが長い目でみたら「FFXIV」プレイヤーの皆さんのためになるのかなと思って決断しました。グラフィックスチームが作ってくれた,正真正銘の「FFXIV」チームで作ったヴィエラなので,実装されたらぜひ使ってほしいです。
――ヴィエラの男性は設定では希少な存在だったと思いますが,今後NPCとしても登場するのでしょうか。
吉田氏:
もちろん,可能性がゼロだとは言いません。ただ,希少だからこそ今まで皆さんが目にすることはなかったというところは,設定としてちゃんと作ってきたものなので,大繁殖して“ヴィエラの男性の里”みたいなのがあるかと言われると,それはないと思います。ちゃんと設定に則った形で,「FFXIV」の世界に登場できるようにしていきます。
――「暁月のフィナーレ」はボリュームが凄いと聞いていますが,メインストーリーのプレイ時間はどれぐらいになりますか。
吉田氏:
いま丁度,開発中期なので言及しづらいですが,作っている感じからすると確実に長いだろうなと思います。拡張パッケージとしてはカットシーンやボイスのボリュームも過去最大級ですし。今回ハイデリン・ゾディアーク編をプレイヤーの皆さんが納得できる形でお届けしようとした時に,削れないところが多くて,それなら削らずに作り切ろうという決断をしました。当初目標にしていた時期はもっと前だったのですが,これはプレイヤーの皆さんに理由を説明してでもちゃんとスケジュールをとって,完璧な状態で公開しようということで今の日程になっています。
開発側の話なのですが,パッチ5.0でフェイスシステムを実装したことによって,ダンジョンに行く時にプレイヤーがどのロールであっても必ずパーティが成立するように「暁の血盟」のメンバーを近くに置かないといけなくなりました。実は,これは想定していなかったことで,今までは「じゃあ俺たちはこっちで調査してくるよ」という感じで,NPCとはバラバラに行動して,ダンジョンはプレイヤー1人で攻略していたと思います。彼らがその裏で何をしていたかは後で報告はされますけど,丁寧には描かなくて良かった部分だったのです。ただ,「漆黒のヴィランズ」以降はみんな付いてくるようになったので,結果なにが起きたかというと,途中のカットシーンでも登場人物がすごく多くなったのです。カットシーンでキャラクターに演技させる数が多くなり,同じカットシーン数であったとしても,テキストボリュームと演出コストは肥大化しているので,今回の拡張パッケージはそこがかなり大きいです。
――トレイラーに七大天竜のヴリトラが登場して驚きました。パッチ5.5でティアマットが開放されて,まだ登場していないのはアジュダヤだけだと思いますが,「暁月のフィナーレ」ではこういった部分も語られていくのでしょうか。
吉田氏:
総決算だからといって,今まで登場していなかったものを無理やり配置しようとは思っていません。今日,神木隆之介さんとも話していましたが,賑やかしのために連れてきたなとか,ポッと出したなというのはバレると思うのです。「蒼天のイシュガルド」で人と竜の意思や,重い歴史があった中での絆を提示しましたが,今回も同じように人と竜の存在が欠かせないので,それを語るのであれば七大天竜に一翼を担ってもらうべきだろうという想いから構築されていっているので,必要かどうかという部分が大きいです。
――では,ヴリトラは必然として登場するということでしょうか。
吉田氏:
そうですね。皆さんが予想のつかない形になると思いますが,ヴリトラのストーリーもたっぷりありますので,楽しみにお待ちいただきたいです。
――ストーリーについて,「完結する」という言葉を意図的に多く使っているイメージがあります。完結させなくても6.0以降のストーリーは展開できると思いますが,完結させることに込めた意味はなんなのでしょうか。
吉田氏:
ちょっと個人的な話になりますが,僕は作り手であると同時に消費者でもあって,いろんな作品に影響を受けてここまで育ってきました。しかも,若干オタク気質なので,深くハマっていくタイプなのです。「ここでまとめてくれればよかったのに!」という作品をこれまでに多く見てきました。もちろん,事情があるのは分かっているのですが,オタクだからその事情も深掘りするのです。「まあ,そうか……」みたいな。でも,やっぱり僕自身が消費者としていろんな作品に影響を受けさせてもらった時に「あそこでいったんクライマックスを迎えてくれれば,どれだけ良かったのだろう」と思うことがありました。
実は,パッチ7.0でハイデリン・ゾディアーク編を完結するぐらいのペースで最初は考えていたのですが,「漆黒のヴィランズ」でこれまで張ってきた伏線の8割をぶちまけた時に,僕が消費者として感じていたあのテンションに皆さんがなってくれたので「ああ,これはヒートアップした気持ちをクールダウンさせる必要はないだろう」と思いました。であれば,1回目のクライマックスをここで見せていいだろうと。
なぜ僕が意図的にハイデリン・ゾディアーク編完結と言っているかというと,あまり続きの話をすると「どうせ続くからなぁ」という気持ちになってしまう。それよりかは,いったんハイデリンとゾディアークにまつわる話をこれで全部終わらりにしようと。歴代FFシリーズが,だいたい物語の8割が終わったら,残り2割がクライマックスですから。大地が浮き上がったり,異常な世界になって「もう世界は終わりだ」とか,そのあたりがクライマックスじゃないですか。そのクライマックス部分だけで1本にしようとしているのが「暁月のフィナーレ」なので,それもまたゲームというエンタメの中で1つのチャレンジだと思いますし,ストーリードリブンのMMOにしかできないことでもあるので,思い切りやってみようというのがコンセプトになっています。プレイヤーの皆さんにも「ちゃんと続くから,今は1回ラストを見てほしい」という言い方をしています。
――パッチ6.1以降はどういうストーリーになるのでしょうか。
吉田氏:
新しい物語です。当然ですが,主人公はプレイヤーの皆さん,光の戦士になります。
――それは「暁月のフィナーレ」として描かれるのでしょうか。
吉田氏:
いいえ,それは違います。
――では,パッチ6.1からタイトルが変わるのでしょうか。
吉田氏:
さあ,それはどうでしょう(笑)。本音を言ってしまうと,まだ考えてません。もちろん,パッチ6.1以降にどんな物語を描いていくか,どんなキャラクターが中心になって光の戦士と冒険していくか,そういった構成はできています。ただ,それをどういう形で皆さんにお届けしていくかは「暁月のフィナーレ」のテンション次第かなと思っています。「ゲームを遊んだ時にきっとこういう感情になっているはずだから,パッチ6.1からの物語はこういう届け方をするべきかな」というのは,僕もまだ経験していないので,もう少し開発が進んだら何かしらアイディアが出てきて決めると思います。
――無人島開拓について,ギャザラー・クラフターをしていなくても遊べると聞きましたが,開放すらしていなくても遊べるのでしょうか。
吉田氏:
開放していなくても大丈夫です。モンスターとガチガチの戦いをするだけではなく,物を愛でたり,エオルゼア中から動物たちを連れてきて,それを眺めているだけでも楽しいと思います。ついでにちょっとクラフターとかギャザラーのライフ系のコンテンツもやってみようかなと思ってもらった時に,それがよりラクに接触できる導線は引くつもりです。
「開放だけはしといてね」とかになると途端にやらなくなる人が出てくると思うので,それとは切り離して楽しめるようになっています。そのコンテンツの中に一部クラフターやギャザラーがプラスになる部分はあるかもしれないですが,競い合うようなものはできるだけ排除してあるので,自分のペースで好きなように,好きな物を集めてきて癒されてください。
――思いのほか無人島開拓には反響があったと聞きましたが,開発側ではどれぐらいの反響を想定されていたのでしょうか。
吉田氏:
「ああ。なるほどねー」ぐらいの想定でした(笑)。日本のプレイヤーはコツコツ集めたり,育てたりするのが好きだと思います。でも,欧米はアクションベースだったり,結果ができるだけ早くほしいコンテンツを好まれる人が多いので,この手のコンテンツを訴求していくのは難しいという思いがありました。だからといってやらないのも違うと思っていて,「FFXIV」の世界をより豊かにするために新しい遊びとして用意していこうと,開発チームもモチベーション高く作っています。
今回は,北米や欧州からの反響が大きくて,メディアのインタビューでも「無人島開拓を楽しみにしています」「どんなコンテンツなのか教えてほしい」などたくさん聞かれました。企画自体はけっこう前から進めているのですが,やっぱり「どうぶつの森」のように,パンデミックの中でもみんなでつながっていけるゲームが改めて評価されている風潮があるからこその反応なのかなと思っています。
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