インタビュー
[E3 2013]「新生FFXIV」のローンチは100%の出来に。吉田直樹プロデューサー兼ディレクター合同インタビュー
・[E3 2013]「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」にPS4版が登場。PC/PS4/PS3の3プラットフォーム体制に
・[E3 2013]「新生FFXIV」の新ジョブ「学者」は,フェアリーと共に戦うヒーラータイプに
そのE3 2013最終日となる北米時間2013年6月13日,嵐のようなE3を過ごしたという本作の吉田直樹プロデューサー兼ディレクターに対する,合同インタビューが行われた。E3で発表となった新情報を中心にいろいろな話を聞けたので,その内容をお届けしよう。
巴術士と派生ジョブが追加された理由とは?
学者が本で相手を殴ることは決まっている
──本日はよろしくお願いします。βテストフェーズ3(以下,β3)開始直前のタイミングで,E3にプレイアブル展示を行ったり,世界に向けて新情報を発信したりしたわけですが,実際に米国で現地プレイヤーの反応を見た感想を聞かせてください。
個人的には,MMORPGのプレイアブル出展には否定的なんです。ここ数年連続してE3に来ていますが,通りすがりに15分くらいMMORPGを触っても「俺,走ってるだけだよな」だとか,ちょっと首を捻りながら遊ぶ感じですからね。PR手法としては微妙だと思っていて,「FINAL FANTASY XIV」(以下,旧FFXIV)の開始直前にE3出展したときも,キャラメイクだけという形でしたし。
──確かに,短時間で面白さが分かるジャンルではないですね。
吉田氏:
ですから今回は,「FFらしさが出せて,みんなで盛り上がれるものなら出展しよう」ということで,開発チーム,北米のコミュニティーチームにもギリギリまで頑張ってもらって,8人で遊べるイフリートバトルを作りました。
その結果「エキサイティングだ」「イフリートはこんなに凄かったんだ」と,多くの方に褒めてもらえました。久々に正統進化のイフリートを見た,という印象だったようですね。
いままでのスクウェア・エニックスは,どちらかといえば“映像で魅せる”という出展が多かったので,ゲーム体験を押し出した出展で,高い評価をもらえたのは素直に嬉しいです。スタッフと「新生FFXIVの最大勢力は北米になるかもね」と話したくらいです。
──北米が最大勢力ですか。一方で,日本での反応はどのように受け止められているのでしょうか。
吉田氏:
もちろん日本でもいい反応をいただけています。ですが,「旧FFXIV」サービス開始時のネガティブインパクトが1番強いのも日本です。やはり新生したとは言え,様子を見る方も多いのではないかと。北米はメディアの方もそうですが,ストレートな意見が多く「作り直すなら見てやろうじゃないか」「頑張ってるなら見てやろうじゃないか」「なんだ,ほんとに良くなったな,Good Job!」という状況なので。
──では,ゲームの好みのようなところで,日米のプレイヤーに違いを感じることはありますか。
吉田氏:
最近のFFシリーズは,海外で「ちょっと幼稚」とか「選択肢がない,決められたものを見せられている」と言われることがあります。「もっとダークさが欲しい」という意見もありますね。いくらファンタジーとはいえ,キャラクターに傷一つ付かないのは,あまりにもリアリティがない,とかですね。
ただその一方で,New York Comic ConやJapan Expoといったイベントでは,FFのコスプレイヤーを多く見かけますし,日本と同様に海外プレイヤーの好みは細分化されてきていると思いますね。
──なるほど。
吉田氏:
ただ,僕はクラシックなFFにダークなアレンジが加わったものが好きで,同じような人は日本にも海外にもいると思っています。ですから,今回はそこをまっすぐ狙って突いたつもりです。そういう意味では,新生FFXIVを待ってくださっている日本と海外のプレイヤーさんに,それほど大きな違いはないと思っています。
それに,「ミコッテはいいキャラクターだね」と言われるのは,日本でも海外でも同じですし(笑)。
──さきほど,「巴術士」から派生する新ジョブの「学者」の詳細が発表されました(関連記事)。巴術士にはもう1つの派生ジョブ「召喚士」もありますが,巴術士クラスと学者,召喚士という2つのジョブをどのような意図で作ったのか教えてください。
吉田氏:
もともと,「旧FFXIV」を作り直すことにした理由の1つに,“ペットクラスが作れない”ということがありました。また,アタッカーがやたら多くて,キャスターやヒーラーが少ないという偏ったクラスバランスやジョブバランスを解決しなくてはいけない状況もあったんです。とくにバッファーやデバッファーが少なくて,そのままではいずれエンドコンテンツの面白さが出し難くなることは分かっていました。こうした問題を一気に解決できる存在として巴術士を入れたということですね。
僕が「旧FFXIV」を引き継いだ時点で,巴術士という名前はすでに発表されていて,入れないわけにもなあ,ということもありましたが(笑)。
──確かにそうですね(笑)。
吉田氏:
そうして,巴術士が決まり,巴術士からの派生ジョブを考えたときに,「最初に実装するペットジョブなら召喚だろう」ということで召喚士,というところまでは,新生開発の早い段階で割と簡単に決まりました。
学者はもともと予定になかったんですが,去年の9月から10月頃に,残りの開発期間から「新生FFXIVの正式サービスまでに,派生ジョブを追加できるんじゃないか」という話になり,一気に仕上げました。
それと同時に,ヒーラー不足を解決したいというバトルチームの申し出があり「実装とバランスは何とかするのでやりましょう!」と。FFらしくて,ヒーラーをやっても違和感がなく,アタックもある程度できるキャラクターということで,学者がいいんじゃないかと。ペットは「シルフがいいのでは」とか,最後まで議論しましたが,最終的にフェアリーになったという感じですね。
──巴術士は「カーバンクル」,召喚士は「召喚獣」,学者は「フェアリー」を呼びだすわけですが,それぞれのペットの特徴を教えてください。
吉田氏:
アクションはバラバラですが,基本はそれぞれが持っているアビリティを自動で発動します。ヘイトを多く稼げるスキルを使って敵をひきつけるタイタン・エギなら,プレイヤーの前で相手と戦い,自分は後ろからサポートする。フェアリーはパーティの回復やバフを行うという感じの使い方になると思います。
──プレイヤーが操作するのではないんですね。
吉田氏:
操作はしませんが,プレイヤーは「攻撃しろ」「攻撃をやめろ」「いったん消えろ」といった指示は出せます。
さらに,パッシブなのかガードなのかという設定もできて,ガードなら敵対する相手に必ず向かっていき,パッシブなら命令されるまで手を出さないという感じになります。
そうしないと,自分は逃げる気だったのにペットだけ戦っている,という状況が生まれてしまいますからね。
──ムービーでは,本に何かを書き込むようなアクションでペットを呼びだす様子が描かれていましたが,ほかのアクションにはどのようなものがあるのでしょうか。
吉田氏:
それは,これからまた新しいムービーでお伝えしていくことになると思います。ただ,本で相手を殴れるのは決まってますね。
担当者は「プレイヤーからは,本で殴りたいという要望が多いけど,それに流されて本のウェポンスキルを作っていいものか……」と悩んでいました。それに殴ろうと思うと,キャスターなのに敵に近寄らなければならないですからね(笑)。
──巴術士は派生ジョブが2つある唯一のクラスですが,ほかのクラスもいずれ派生ジョブがもう1つ増えるという認識でいいでしょうか。
吉田氏:
はい。でも,派生ジョブは1クラスに2つとは限りません。あくまで例えばの話ですが,召喚士と学者のように並行するもう1つのジョブが追加されるかもしれないし,派生ジョブを極めたら,さらに上位のジョブになれることもあるかもしれません。
──ジョブが増えるのはいつごろになりそうですか。
吉田氏:
パッチやレベルキャップ開放のタイミングでもあり得ますが,やはりメインは拡張パックのタイミングということになると思います。ジョブが増えたというのは,分かりやすいアピールになりますから。
──では拡張パックはいつごろになりそうでしょうか。
吉田氏:
ローンチ後の反応で,時期はズレますから確約はできません。ですが,個人的にはローンチから1年半から2年になるのかな,というのがざっくりとした大まかな感覚ですね。パッチのアップデートは,2か月半から3か月に1回ぐらいでいきたいです。
約150万アカウントがβテストフェーズ3に参加
──β3にはかなりの方が当選されているようですが,プレイヤーはどれくらいいるのでしょうか。
吉田氏:
今回から旧FFXIVのクライアントを持っているプレイヤーさんは,全員参加になりました。それだけで約70万人以上です。それにβテストへの応募者が72万人で,まだまだ増え続けているので……という感じです。
どのくらいのログイン率になるかは分かりませんが,まずは楽しんでいただきたいと思います。
──ライトニングがミコッテ衣装を着る「LIGHTNING RETURNS: FINAL FANTASY XIII」とのコラボ(関連記事)について,感想をいただきたいのですが。
吉田氏:
スクウェア・エニックスも変わりつつあると思います。今まで「ファイナルファンタジーXI」と「FFXIV」はオンラインということもあって,シリーズの中でもなんとなく外野というイメージがあったと思います。ですが,昔のゲーム制作にあったようなノリで,いろいろ一緒にやってみようぜ! という雰囲気になってきたのかもしれません。
なにせ,いきなり「作ったので持ってきたぞ!」ですからね。しかもクオリティが高い(笑)。うちとしては本当に嬉しいです。とくにライトニングさんには一定数のファンがいるわけで,その人達に新生FFXIVを知ってもらえるチャンスですし。
もちろん,投げられたボールは全力で打ち返す主義なので,新生FFXIV側でも何かやりたいなと思っています。内容は,日本へ帰る飛行機のなかで考えます(笑)。
──出演声優さんの名前やサンプルボイスなどは,いつごろ発表されそうでしょうか。
吉田氏:
ローンチ直前に「こういう物語です」というストーリーの最後の押しをやらせていただくつもりなので,そのときに全員公表させていただくことになると思います。そうしないと「○○役は誰々」と言ったときに「『○○』って何だよ」ということになりかねないので。
──漁師が釣った魚を使って,ほかの生産職が何かを作る,という仕組みは作られているのでしょうか。
吉田氏:
その仕組みは,旧FFXIVのときに無理矢理入っていたんですよね。何かを作るときに魚の皮が必要だとか・・・・・・。普通,鎧の一部に魚は使わないでしょう,生臭くなるし(笑)。
ゲームには,偏りがあっていいと思っているんです。「このクラスでこれができるなら,このクラスでも同じことができないと不公平になる」と平均化したくなりますけど,それって,実は悪平等,みんな同じになってつまらなくなってしまうんです。
──分かります。
吉田氏:
その平均化のためにいびつな設定を導入した結果,迷惑を被るのはプレイヤーです。「なぜ,このアイテムを制作するために魚が必要になるんだろう。あぁ,『ギャザラーが獲得したものは,すべて等しく価値と意味がある』ってコンセプトってやつかあ」と。でも実際には不自然なゲームになってしまっているし,それをゲームの根幹には据えたくないのです。
漁師はエオルゼアの自然の中で,釣りを楽しみたい人がやるクラスです。釣った魚を市場へ卸す,というものではないです。すべての魚が素材として必要とされていないかといえば,そうではないですが,割合はかなり少ないです。
──なるほど。
吉田氏:
もちろん漁師には,釣り竿やえさの選択といった楽しみを用意していますし,雲海や流砂のようなところに釣り糸を垂らして,そのなかに住む魚(?)を釣るといったしかけも盛り込んでいます。雲海や流砂はゴーサインを出すか最後まで悩んだ末にGoを出しましたが。
──トークンにはヒエラルキーがあると聞きましたが,下位のものを使って装備品と交換しても,後々使わなくなると思います。ラインナップに消費アイテムはないのでしょうか。
吉田氏:
消費アイテムは想定していません。また,永久にそのラインナップのままでもありません。ゲームはどんどん肥大化しますし,敵の強さも,どうしてもインフレになってしまいます。おそらく3年に1回くらいの割合で,誰も見向きしなくなったコンテンツはリニューアルしていくと思います。そのときに下位のトークンで得られる装備の価値を見直すことになるでしょう。
もちろんゲーム序盤のコンテンツに対しても,例えばダンジョンをリニューアルして,上級者に戻ってきてもらうといった施策を予定しています。
PlayStation 4に期待するのは「メモリ」
──PlayStation 4版が発表されたばかりですが,吉田さんは先日の「SQUARE ENIX -THE FUTURE-」(関連記事)などで,PlayStation 3版を強くアピールしていましたよね。その理由を教えてください。
吉田氏:
理由は大きく2つです。そもそもFFXIVのPS3版を出すことは,前体制の頃にお約束していたものですし,私が2010年の12月10日に「FFXIV」を引き継いだときに宣言したのが「PS3版は目処が立つまで延期をしますが,必ず出します」というものでもあります。その約束を守って次に行きたいと言うこと,これが1つめ。
もう1つ,MMORPGの普及のためには,1人でも多くの人にプレイしてもらうため,ハードがたくさん普及している市場や,できるだけスペックは幅広くカバーできていたほうが良いです。ですから,すでに皆さんの家に普及しているPS3版をやめて,その代わりにPS4版というのはプレイ環境を狭めてしまうだけです。新ハードはすぐに普及するわけではありません。実際に,プレイヤーがPS2からPS3へ移行するには,かなり時間がかかりましたよね。
──確かに。PS4がリリースされたからといって,すぐにみんながPS4で遊ぶかどうかは,誰にも予想できません。
吉田氏:
もちろん,ただPS3版を出すのではなくて,「7年前のハードで,ここまでできるのか」と思ってもらうために,この2年半は努力をしてきました。まずはPS3版でプレイしていただいて,「もっと高解像度表示で遊びたい」「キャラクターの表示人数を増やしたい」と思ったら,PCをアップグレードする感覚でPS4版に移行してほしいです。クロスプラットフォーム,クロスサーバーなので,みんな同じサーバーでプレイできますし,PS3版のアカウントをPS4版へ持って行くこともできます。
──では,PS4のどのあたりに期待されていますか。
吉田氏:
メモリです。
──即答ですね。
吉田氏:
海外メディアからの同じ質問にも即答しました。ソーシャル機能とか,PS Vitaとの連携とかありますが,どのデベロッパも本音を言えば100%メモリだと思いますよ(笑)。
とくに新生FFXIVのようなMMORPGの場合,最大表示キャラクター数などは,結局はメモリのスペックに左右されるので,高速で大容量のメモリが1番嬉しいですね。
──β3でPS3版のプレイヤーが参加することになると,これまでにないような要望も出てくるかと思うのですが,そのあたりの対策はあるのでしょうか。
吉田氏:
はい。それを見越して工数に組み込んでいます。ただ,ゲームシステムはPC版のテストプレイヤーのみなさんのおかげで,ほぼできあがっています。PS3版のテストプレイヤーさんにじっくり見ていただきたいのは,例えば街での表示人数だとかのプレイ感ですね。
──PS3タイトルとしては,かなりプレイに必要な情報が多くなると思いますが,初心者が困らないような,ヘルプ機能などは用意されているのでしょうか。
吉田氏:
HowToは,いつでも見られるようにしています。メニュー表示などもできるだけシンプルになるように悩みました。ただ,同時にこれ以上は削れないというところまで,表示は削ったつもりです。これ以上だとMMORPGを長期運営するには,土台がシンプルになりすぎてしまう。なんとか,シンプルに遊んでいただける工夫はしてあるので,PS3版UIのコメンタリー動画を見つつ,「ああ,実は簡単じゃん?」と思ってほしいです。
──先ほど,FFXIと新生FFXIVはシリーズの中でも違う扱いだと話していましたが,吉田さんはやはり同じ“シリーズ作品”という考えですよね。
吉田氏:
自分の中では「FFはFF」で,ナンバリングを背負っているわけですから,「オンラインだから違う」では,プレイしてくださるファンのみなさんに失礼です。逆にみなさんから「XIとXIVはちょっと違うよね」と言われるのも悲しいです。
これから「THEATRHYTHM FINAL FANTASY」や「DISSIDIA FINAL FANTASY」の新作が出るのであれば,新生FFXIVの曲やキャラクターが採用されると思いますし,FFファンコミュニティにも新生FFXIVの運営を通じて,認知度を上げていきたいですね。
──では時間がきたようなので最後の質問です。2年半前,「FFXIV」を引き継いだときに思い浮かべたものに,β3の段階ではどれだけ近づいたでしょうか。
吉田氏:
まだローンチしていないのでなんとも言えませんが,少なくとも2年半前に「新生するうえで,最低限ここまでは」と思っていた物と比べると,140%くらいの出来ですね。この短い期間で,もうこれ以上は不可能だと思います。スタッフにも恵まれて,自分が言うのも変ですが,やはりスクウェア・エニックスはすごいと思いました。
FFをテーマにしたMMORPGという点で見ても,自信を持って8月27日は100%のローンチになると思っています。
──ありがとうございました。
「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」公式サイト
公式コミュニティサイト「The Lodestone」
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