連載
徳岡正肇の これをやるしかない!:「SHIELD Tablet」を使った“ごろ寝ストラテジーゲーム環境”の構築を本気で考える
ゲーマー向けタブレットとして,NVIDIAの「SHIELD Tablet」が国内発売になったのは2014年秋のことだが,その時点で,異様なほど本機への食いつきを見せていた人物が,4Gamer関係者に一人いた。それが,ストラテジーゲーマーあるいはストラテジーゲームクリエイターであるライターの徳岡正肇氏だ。
なんでまたそんなに? と,話を聞いてみたところ,SHIELD Tabletは,これまでの常識を打ち破るゲームプレイスタイルを構築できる可能性があるという。なんと3年半ぶりの復活となる不定期連載「徳岡正肇の これをやるしかない!」は,そんな可能性をテーマにお届けしたい。
SHIELD Tabletが持つ最大の特徴は,大きく分けて2つだ。1つは別売りの専用ワイヤレスゲームパッド「SHIELD Wireless Controller」をSHIELD Tabletと組み合わせると,本来であればゲームパッド操作に対応していないAndroid用ゲームタイトルを,アナログスティックとD-Pad(=十字キー),物理ボタンでプレイできるようになることである。
実際,昨今ではスマートフォンおよびタブレット用タイトルであっても,かなりシビアな操作を要求するものが増えている。それに伴い,「スワイプしたつもりなのにタップと判定されて違う動作になった」「気づかないうちにバーチャルゲームパッドから指がずれていた」といった不愉快な思いをするゲーマーもまた,増えているのではないだろうか。そういう問題の解決策として,SHIELD TabletとSHIELD Wireless Controllerのペアはかなり有用だ。
誤解を恐れずに一言でまとめてしまうと,要はリモートデスクトップなのだが,GeForce GTX搭載PCとSHIELD Tabletがあれば,これといった難しい設定なしにすぐストリーミングでゲームをプレイできるというのは,面倒がなくて実によい。
SHIELD Tablet自体の持つスペックの高さと相まって,そこまで重篤な遅延やコマ落ち現象が発生したりしないのも魅力的だ。
とまあ,このあたりまでは,国内発売に合わせて4Gamerが掲載したレビュー記事で微に入り細に入り説明されているから,ぜひそちらを参照してほしい。
問題は,ここからである。
個人的に申し上げれば,自分がスマートフォンやタブレットでゲームをプレイする最大の理由は,「ごろ寝でゲームを遊べるから」だ。それ以上でも以下でもない。ニンテンドー3DSやPlayStation Vitaなどといったゲーム機も,筆者にとってみれば,同じ目的のために提供されているデバイスである。
なので,“SHIELD初号機”――SHIELD Tabletの発売後,「SHIELD Portable」と改名された,ゲームパッド一体型タブレット――は,かなり理想的なマシンだった。「これがあれば,ごろ寝でPCゲームを楽しめるじゃないか!」というわけだ。
人類が抱える構造上の限界に挑む
ところが,ここには問題があった。「SHIELD Portableはいわゆる技適を通過していないから,そもそも国内での利用は違法」という単純な話のほかにも,筆者がプレイするゲームは,ほぼすべてが,マウス,もしくはキーボードとマウスを必要とするというのがあったのだ。
筆者はストラテジーゲームだけでなく,一応はFPSやTPSもプレイする人間だが,「アナログスティックでエイム」というのは,筆者にとっては「あり得ない所業」である。
結局,「PCのゲームをストリーミングでリモートからプレイできます」と言われても,それはあくまで「ゲームパッドに対応したPCゲームが快適に遊べる」という話であって,それだけだと,筆者の欲求にはフィットしないのである。
さて。
つまり,仰向けに寝転んだ状態でタブレットを保持しながらゲームパッドも持つには,最低でも腕が1本足りない。SHIELD Tabletの示す未来へ適応することを考えると,人体の設計にミスがあるのだ。
やはり,「ごろ寝しながらPCゲーム」は,現状の人類にとって見果てぬ夢であり,サイボーグ技術の発達を待つ以外に,打開策はないのだろうか。
……と思っていたのだが,SHIELD Tabletの仕様書をよく読んでいると,「USBホストケーブルに対応」の一言が書いてあるのに気づいた。
ほほう。ということは,SHIELD TabletにはUSB接続型のマウスをつなげられるということではないか。いやそれ以前に,Bluetooth接続でSHIELD Tabletにマウスをつなげることすらも可能ではないか。
そもそもPCゲームのユーザーインタフェース(以下,UI)は,マウスでターゲットを選択して,クリックで確定させるというメカニズムに依存している。そして,PCゲームをタブレット上でリモートプレイする場合に最大の問題となるのは,この「マウスによるUI」が,タッチパネルとうまく噛み合わない点だ。
しかもSHIELD Tabletの“仮想マウスUI”には,もう1つ問題がある。タップ動作=左クリックという割り当てなので,右クリックを使用するゲームだと,非常にプレイしづらいのだ。
しかも,マウスが接続できれば,人間工学上の問題も相当部分まで解消する。完全にマウスのみでプレイできるゲームなら,片手でタブレットを保持しながら,片手でマウスを操作すればいいのだ。
これならば,ごろ寝したまま,PCゲーム(の一部)をプレイできるではないか!
では,
- マウスだけでプレイできる
- 若干の遅延があっても問題ない
- そこまで繊細な動作を要求されない
PCゲームには何があるだろうか。その代表格といえるのが,ターン制,ないしポーズ可能なストラテジーゲームだ。
しかも,タブレットでPCのストラテジーゲームをプレイできるというのは,ストラテジーゲームファンからするととてもありがたい。なにしろ基本的に長時間のゲームプレイを必要とするものが多いので,寝転んでプレイできるというのは,その価値が大きいのである。
と,いうわけで,いくつかのタイトルを選択して,実際にプレイしてみた。
以下,ざっくりとインプレッションをまとめてみよう。
■Hearts of Iron 2
〜十分にプレイ可能。キーボードはほぼ必須だ
第二次世界大戦を扱うストラテジーゲームとして珠玉の一作と言える「Hearts of Iron 2」(以下,HoI2)。同じテーマの作品はいくつも存在するが,今でも最高峰の一角を成しているといっても過言ではない。
そんな傑作だが,SHIELD Tabletとマウスを使ってのプレイ感は,「十分にプレイ可能」といえるものだった。
キーボードさえつながっていれば,[Esc]キー連打で切り抜けられる。キーボードは頭の近くにおいておくと,必要なときにすぐに使えて便利だろう。
また,地図の拡大縮小,ゲームの一時停止も,キーボードから行ったほうが楽だ。このとき,Bluetoothキーボードは一般に小形で,いきおい,[+][−]キーが独立していないケースが多いため,できればUSBホストケーブル経由でフルサイズのキーボードをつないでおくことを勧める。
プレイしていて気づいた最大のハードルは,文字の識別性だ。小さい文字が多いため,しっかり読もうとするとかなり苦しい。とくに外交関係は,「読めなくはないが,読みたくない」レベルである。
数字も決して読みやすいとはいえないが,ゲームの性質上,下1桁まで厳密に把握していなくてはいけない数値は工業力くらいと少ないため,この点はさほど気にならない。
なお,HoI2の完成形ともいえる「Arsenal of Democracy」(以下AoD)だと,マウスのスクロールホイールでマップの拡縮ができるため,いよいよキーボードの必要性が下がる。MODの関係もあるので,一概にAoDにすべきとは言えないが,できるならばAoDを選びたいところだ。
■Hearts of Iron 3
〜文字が読みづらく,かなり厳しい
HoI2の続編としてリリースされた作品で,ゲームの大枠に変更はない「Hearts of Iron 3」(以下,HoI3)だが,HoI2と比べると,「マウスのみでの操作」への最適化が進んでおり,マップの拡大縮小をマウスのスクロールホイール回転から行えるため,UI自体は扱いやすい。また,部隊のコントロールも,原則的に部隊を指揮するAIが行うので,細かな操作が必要ないというのもタブレット向けだ。
が,いかんせん情報量が多く,そのほとんどが数字と文字で提供されているため,SHIELD Tabletの7インチ画面でプレイし続けると,さすがに目が疲れる。
絶対にプレイ不可能とまでは言わないが,目への影響を考えると,あまり積極的にはオススメできない。筆者は数分で目が痛くなってプレイを断念した。
■Crusader Kings 2
〜HoI3以上に難しい
ヨーロッパ中世の泥沼とゴタゴタを実に巧みに表現した,Paradox Interactiveのストラテジーゲーム,「Crusader Kings 2」。ゲームエンジンの骨格はHoI3と同じものが採用されているため,SHIELD Tabletとマウスでの操作も,ことUIに関しては問題ない。
だが本作は,HoI3に輪をかけて文字量が多く,アイコンの数が多く,小さなボタンも多い。あくまで個人的な感想だが,SHIELD Tabletの小さな画面でプレイするのは,人間の限界に挑戦するようなものだと思われる。
ほとんど目をつぶってでもプレイできる(=画面上の文字を読まずにプレイできるレベル),と言えるくらいに習熟しているプレイヤーならともかく,普通はこれを「プレイできる」とは言わないだろう。
■Civilization: Beyond Earth
〜マウスだけで十分快適にプレイ可能
Civilizationシリーズの最新作である「Civilization: Beyond Earth」は,タッチパネルUIをも有しているので,実のところ,マウスを接続することなくプレイできる。素晴らしい。
だが,マウスをつなぐと快適度がよりアップする。というか,一度でもマウスをつないでプレイしたら,タッチ操作オンリーのUIには二度と戻れない。マウスは偉大だ。
逆に,キーボードを接続する必要はまったくない。[Esc]キーが使えるとやや便利だが,どうしても必要というほどではなく,「タブレットを片手で持って,片手でマウス」という環境においては,[Esc]キーはマウスから手を離して押すしかないので,[Esc]キーを押す頻度がCivilization: Beyond Earthくらい低ければ,マウスでキャンセルボタンをクリックしたほうが楽だったりもする。
個人的に気になったのは,HoI2でもそうだったのが,マップを極限まで引いて表示させたとき,ユニットが小さくなりすぎて,戦線に見落としが出ること。こればかりは,7インチ画面を持つタブレットの限界といえる。
10インチからそれ以上の画面サイズを持つタブレットだと,このあたりの問題はかなり解決するのだが,今度は持っている手が疲れてくることを各種リモートデスクトップツールで体験済みなので,ここはやむを得まい。
■FTL: Faster Than Light
〜PCで普通にプレイするか,iOS版を選択するかしたほうがいい
宇宙船と宇宙空間における戦闘を題材とした,ローグライクなRTS,「FTL: Faster Than Light」(以下,FTL)。インディー系のタイトルとして,定評のある作品である。
数字の管理が重要なゲームなので,SHIELD Tabletでは,液晶パネルサイズが原因で,文字の可読性がやや低くなるのは問題となる。瞬時の判断が要求されることも多いので,どうせプレイするならPCでプレイしたほうがストレスは間違いなく少ないだろう。
付け加えると,実に本末転倒な話なのだが,FTLにはiOS版が存在している。「タブレットでFTLをプレイする」なら,それらを購入したほうがいい。GameStreamでは,PCの画面をビデオとしてSHIELD Tabletまで配信する都合上,文字の“にじみ”からは逃れず,それが可読性を下げているわけだが,モバイルOS向けバージョンであれば,そういった問題とは無縁だ。
ただ,PC版では,MODを適用できるという魅力がある。FTLに関して言えば,MODを適用するにしてもPCで直接プレイしたほうがいいという感触だが,「MODが使える」という事実そのものは,非常に大きな意味を持つ。
■XCOM: Enemy Unknown
〜マウスとキーボードがあれば快適
ターン制ストラテジーでは定評のあるXCOMシリーズの1つ,「XCOM: Enemy Unknown」。ゲームの中心は宇宙人との銃撃戦だが,エイリアン技術の解明や新兵器の開発,スポンサー対応など,幅広いマネジメントが問われる好タイトルである。
もともとフルマウス操作でプレイ可能なため,SHIELD Tabletとマウスで十分に楽しめる。ただし,メニューを呼び出すには[Esc]キーの押下が必須となるUIなので,キーボードの利用は必須だ。
ただ,PC版XCOM: Enemy UnknownはMODがなかなか充実しており,MODを使ったほうが,ゲームをより楽しめる。1プレイの長さも適度なため,SHIELD Tabletを持ってプレイしているとき,持っている手が痺れてくる問題も起こりにくいのは魅力だ。
戦闘級のターン制ストラテジーゲームが好きな人であれば,好みのMODを入れて,SHIELD Tabletからリモートでプレイするというのは,余暇の過ごし方としてなかなか優れているように思える。
■Papers, Please
〜マウスだけで快適にプレイ可能
架空の国家アルストツカの入国管理官になって,適切な入国処理を行うゲーム「Papers, Please」。インディー系タイトルとして非常に高い評価を受けており,熱心なファンも多い。
そんなPapers, Pleaseは100%マウスのみでプレイできる。「画面左で受け取ったパスポートを,画面右で詳しく見て,左に戻す」といった操作でマウスを左右に大きく動かすことが多いため,マウスの感度は高めにしておいたほうが,手は疲れにくくなるはずだ。
メニューを[Esc]キーで呼び出すパターンなので,やはりキーボードは必要となる。
文字が多めのゲームながら,もともと8bit時代のドット絵風な表現がなされているため,文字を判読しづらいといったことはなく,プレイに支障はない。
■Ticket to Ride online
〜何の問題もなくプレイ可能だが……
ボードゲーム「Ticket to Ride」のPC移植作となるのが「Ticket to Ride online」だ。鉄道ゲームとしては非常に簡単なルールを持ち,1回のプレイ時間も短い。画面サイズも適度で,文字が読みにくくて困ることもない。もちろん100%,マウス操作だけでプレイできる。
……と,ここまでは理想的なのだが,Ticket to RideにはAndroid版とiOS版が存在しており,しかも,その完成度がどれも非常に高い。どう考えてもリモートでプレイするメリットがないので,こればかりはモバイルアプリ版を強くお勧めしたいところだ。
■Syberia,Syberia 2
〜マウスだけで快適にプレイ可能
ストラテジーゲームではないが,アドベンチャーゲームの傑作であるSyberiaシリーズも取り上げておきたい。
「Syberia」,そしてその続編となる「Syberia II」は,いわゆるMyst系の,画面上をクリックして移動したり,オブジェクトへ干渉したりするタイプのUIを採用するゲームなので,操作は完全にマウスのみで行える。
メニューの呼び出しも右クリックからできるので,キーボードを接続する必要はない。「ムービーをスキップしたいなら[Esc]キーを使えたほうがよい,という程度だ。
アドベンチャーゲームは,スマートフォンやタブレットにとても向いたゲームであるように思う。また,そもそも,Syberia自体が相当に古いタイトルということもあって,画面の解像度が低いため,SHIELD Tabletの7インチ画面でプレイしても「オブジェクトが小さすぎて文字などを判別できない」といった問題は生じない。
画面内に存在するオブジェクトに「気づく」ことや、オブジェクトの存在そのものが謎解きのヒントになることがしばしばなゲームなのだが,プレイにあたって,問題は感じなかった。
Syberiaシリーズでは字幕表示の有効/無効を切り替えられるのだが,字幕を表示させた場合も,まったく問題なく文字を判読できた。
ちなみにSteam版の場合,Syberiaシリーズ第1作であるSyberiaは日本語化されている一方で,Syberia IIは日本語を利用できない。Syberia IIで使われている英語はさほど難しくないが,字幕の補助があればより楽にプレイできるはずなので,字幕の読みやすさが重要になるケースもあるだろう。
最近,Steamではアドベンチャーゲーム(あるいはノベルゲーム)の数が拡大傾向にある。これを機会にタブレットでのリモートプレイを試してみるのも悪くないと思う。
■This War of Mine
〜極めて快適にプレイ可能
最後は,ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争をモデルにした架空の内戦に巻き込まれた一般市民となって,終戦までひたすらサバイバルするゲームである「This War of Mine」だ。キャラクターには身体的能力以外に精神的な状況もパラメータとして用意されており,この点でサバイバル系のゲームの新境地を拓いたとも言えるだろう。これもストラテジーではないが,プッシュしておきたい。
もともとゲームがシンプルに作られており,フルマウスで快適にプレイできる設計でもあるため,SHIELD Tabletとマウスでのプレイに大変向いている。PCでプレイしていると画面上の文字が小さすぎて読みづらいということが起きたりもするのだが,SHIELD Tabletであれば,必要に応じて画面をズームできるので,プレイ環境によってはPCより快適かもしれない(※「文字が小さい」という点ではCrusade Kings 2と同じだが,This War of Mineの場合,文字の出現率・密度とも低いので,プレイしやすさがまるで異なる)。
ゲームデザインからして,iOSやAndroidマシンでのプレイにも期待したい作品なのだが,ゲーム内容的に見ていろいろ難しいのかもしれない。
「自分たちが生き延びるために,他の生存者の家に押し入って食料を盗もうとしたら,もののはずみでその家の生存者を殺してしまい,罪悪感が限界を越えて鬱になってしまったあげく自殺,他のキャラクター――ゲーム開始時には3人のキャラクターがいる――は仲間が非業の死を遂げたことに衝撃を受け,同様に塞ぎこんでしまい,そのまま緩慢な死を迎える」といった展開がごく普通に発生するゲームなので,とくにiOSアプリの審査を通過できるかどうかには,別種の期待すら感じてしまうほどだ。
細かなテクニックや注意などなど
PC本体と「ごろ寝する場所」の距離が十分に近く,ワイヤレスマウスおよびワイヤレスキーボードの無線伝達距離内なのであれば,わざわざSHIELD Tabletにデバイスを機材をつなぎ直さずとも,そのままプレイを楽しめる。
しかも,グラフィックスの品質はもちろんのこと,サウンドの品質も,モバイルのネイティブアプリと比べて,GameStream経由のほうが格段に優れている。モバイルアプリもリッチ化の一途を辿っているが,ゲームPCが再現している品質には,リモートであったとしても,歴然とした違いを感じる。
ここまであえて触れてこなかったが,今回のテストにあたっては,「GeForce GTX 770」と「Core i5-4690K」を組み合わせたハイクラス構成だけでなく,「GeForce GTX 650」と「Core i7-920」を軸とした,お世辞にもハイスペックとはいえないマシンでもテストを行っているのだが,今回テストに用いたタイトルでは,後者のPCでも,プレイしていて性能面からくるストレスはとくに感じていない。
これはもう,「したいんだから,したいんです」としか言いようがない。ただ,こうやって「タブレットでハイエンドなゲームを実際に遊んでみる」ことでしか見えてこない,さまざまなUI設計の妙や,あるいは現状のUIが抱えている問題というものは,あるように思える。
そもそもゲームは,「なにもそんなことをしなくても」「なにもそこまでこだわらなくても」「そんなことを求めてる人は,ほとんどいません」という,壮大だったり,奇妙だったり,些細だったりするこだわりを追求することで,現在のような高度な発展を成し遂げてきた。
「わざわざテレビやディスプレイの前に座ってまでゲームをしたいと思う人が減っている」という分析は大変ごもっともだと思うが,ならばいっそう,「テレビやディスプレイの前に座らない形におけるゲームプレイの可能性」は,追求されるべきではないだろうか。
これまでも,「一手間少ない」ことは,ある一線を越えると,一気にブレイクする要因となってきた。そのことは,真摯に考えるべきであろうと思う。
さて,長々と実証実験をしてきたが,最後にもうひとつの根本的な解決に向けた――そして最初に諦めた――手段について,少し考えてみたい。つまり,「人間が手を2本しか持っていないのが問題」という部分だ。今回はユーザーインタフェースの方向からこれを解決すべく,お猫様の手を借りながら奮闘したが,可能性としてはもう1つ「擬似的に手を1本増やす」手段があるはずである。
そんなことが可能なのか? というと,可能だ。可能なのだ。これを見てほしい。なるほど,解決しているではないか。
筆者としては,こういった実に即物的な「物体」と,デジタルサービスが競合・融和しつつある,そのことこそ本当に注目すべき事案であるようにも思え,また,大きな可能性も秘めているように思える。
このあたりの詳しい話は,いずれ別の機会にお届けしたい。
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