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[GDC 2014]ピーター・モリニュー氏らインディーズゲーム開発者によるIndependent Games Summitのセッション3本をまとめてレポート
本稿では,2014年のIndependent Games Summitで実施されたセッションのうち,ゲーム業界の大御所であるPeter Molyneux(ピーター・モリニュー)氏,Pocketwatch GamesのAndy Nguyen(アンディ・グエン)氏,Young HorsesのJohn Murphy(ジョン・マーフィー)氏が行った3本のセッションについて,筆者が注目したポイントに絞ってレポートしよう。
Molyneux氏のセッションでは,開発中の最新作「Godus」におけるオンラインモードのコンセプトが公開
ゲーム業界の大御所であるイギリスのゲームデザイナー,Peter Molyneux(ピーター・モリニュー)氏もその一人だ。Microsoft Studios傘下のLionhead Studiosを2012年に離れたMolyneux氏は,現在,独立系開発スタジオの22 Cansで“ゴッドゲーム”の新作「Godus」(PC / iOS)を開発している。
GDCなどのイベントでは,知名度はもちろんそのトークの面白さから,Molyneux氏が登壇するセッションは常に満席となるのが恒例で,今回も非常に多くの来場者が会場に足を運んでいた。
Molyneux氏の講演タイトルは,「From Indie to AAA to Indie: The Rebirth of Design」というもの。これはMolyneux氏が,インディーズゲームからキャリアをスタートしてAAA級のタイトルを制作するようになり,現在は再びインディーズゲームの開発現場に戻ってきたことにちなんだものだろう。
Molyneux氏が来場者に披露したスライドの中で印象的だったのが,氏のオフィスデスクの変遷をつづった写真群だ。
オフィスデスクの写真を撮影して記録を残すのが好きだというMolyneux氏は,「ポピュラス」(1989年)からGodusまで,自分のデスクがどんな状態だったかを披露。
ポピュラス開発当時は,デスクの周囲がモノであふれかえっており,お世辞にも片付いているとは言えない状況だった。しかも,PCのキーボードを灰皿代わりにしており,タバコの灰にまみれたうえに,ところどころが焼けただれているという有り様だ。
しかし,年を経てプロジェクトを重ねていくにつれ,徐々にデスクの状況も変化していき,現在,Molyneux氏のデスクの必需品は,ノートPCと電子タバコになっているそうだ。写真を見るに,デスク上が雑然としているのは相変わらずといった感じだが。
Molyneux氏のセッションでは,Godusのオンラインモードである「Hubworld」のコンセプト紹介が行われた。
プレイヤー同士の交易を念頭においたHubworldは,自分のゲーム世界から船出して新天地(サーバー)に向かい,新しい土地で開拓を行えるというもの。さらに,新天地からさらに新しい土地である「Super Hub Hub World」にアクセスすることで,膨大なプレイヤー同士がつながっていくという仕組みになるそうだ。
Godusは,Kickstarterのバッカー(投資者)や予約購入者を対象に,アーリーアクセス特典としてβ版を配信しており,3月14日に最新版である「v2.0」がリリースされたばかり(関連記事)。とはいえ,Hubworldをはじめ,β版にはまだ実装されていない要素も多い。これからどのような形に進化していくのかが楽しみなタイトルである。
Nguyen氏は,フィードバックを解釈し,自分のビジョンを維持することが重要だと主張
Nguyen氏は,プレイヤーからのフィードバックをどのようにゲームに反映すべきか,2013年にリリースされたステルスアクション「Monaco: What is Yours is Mine」(以下,Monaco)を例に説明を行った。
Monacoで批判の対象になったのは,「Line of Sight」という,プレイヤーキャラクターの視界領域のみがリアルタイムで示される仕組みだ。
“先の状況”が予測しにくい,というのがその大きな理由だったそうだが,Ngyuen氏は,どれだけ批判を受けても変更する意思はなかったと語る。というのも,そこから生まれる偶発性こそが,強盗したあとに逃げ延びることを目的としたMonacoの基本コンセプトだったからである。
なおNgyuen氏は,それと同じ理由で,敵の動きを観察してから安全な経路を考察してプレイする,ゴーストと呼ばれるプレイスタイルも「Monaco」では採用したくなかったと話していた。
続けてNgyuen氏は,いくつかのゲームタイトルにおける似たような“改善例”を紹介した。
たとえば,「World of Warcraft」では,コア層とライト層のレベルが離れすぎるのを回避するため,ログイン時間が長くなるにつれ経験値の獲得量が減るというシステムを採用していた。しかし,ユーザーの評判が悪かったため,通常の経験値獲得量を減らしたうえで,ログアウト時間が長いと経験値獲得量が増えるという,逆転の思考で乗り切ったのだ。
そのほか,モンスターの数が多いと批判を受けた「Borderlands」では,逆にその数を3倍にしたり,ユーザーからフレンドとのチャット機能が欲しいという要望が多かった「The Journey」では,「フレンズ」への招待機能そのものを削除してしまったりしている。 つまり,自分のビジョンを明確に保ち,プレイヤーからのフィードバックをゲームデザインを維持できる形で解釈することが大切というわけだ。
大学生のプロジェクトがPCやPS4で配信されるゲームになるまでの経緯が語られた「Octodad」のセッション
Young HorsesのプロデューサーであるJohn Murphy(ジョン・マーフィー)氏は,Octodadの開発経緯を報告する「Empathy of Octopodes: How OCTODAD Helped Young Horses」というセッションを行った。
開発を行ったYoung Horsesは,同じ大学の同級生だった8人のメンバーが集まり,シカゴを拠点に2011年7月に設立されたスタジオである。
本作は,メンバー達が在籍していた大学で,教授が「コンペに出展できる作品を作ろう」と言い出したことが発端のプロジェクトだったという。
教授のゴリ押しで集められた20人が悪戦苦闘の末に作成したデモは,同年のIndependent Games Festivalで高い評価を得ることができた。大学側はそれ以上の計画を持っていなかったため,卒業後にゲーム業界への就職を希望するメンバーがプロジェクトを譲り受ける形で,開発が継続されたとのこと。
ちなみに,2011年8月には,まだ大きな注目を集める前のKickstarterに「Octdad 2」として登録されているが,その目標資金は2万ドルというささやかなものだった。
「Octodad」にはゲームとして未熟な部分もあるが,このプロジェクトをバネにして,Young Horsesは大人から子供までが楽しめる“ヘンテコゲーム”を今後も開発していくとMarphy氏は述べ,セッションを締めくくった。
Game Developers Conference公式Webサイト
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