インタビュー
「デモンゲイズ」はエクスペリエンス史上最高のダンジョンRPGに? 2013年の「DRPG PROGRESS」の展開にも言及した千頭 元氏インタビュー
角川ゲームスから2013年1月24日に発売される,PlayStation Vita用ソフト「デモンゲイズ」。同タイトルは,角川ゲームスとエクスペリエンスによるプロジェクト「DRPG PROGRESS」の第2弾にあたる作品で,ベースとなるシステムは,より優れたアイテムを求めて,ひたすら敵と戦うハック&スラッシュタイプのダンジョンRPGである。また,記憶を失った主人公と共に戦う半機械生命体「デモン」は,ストーリー展開とシステム面の双方における大きなキーとなっている。
今回,4Gamerでは,「デモンゲイズ」の開発を手がけるエクスペリエンスの代表取締役社長 千頭 元氏に,同タイトルの概要と今後の「DRPG PROGRESS」の展望などを聞いた。
「デモンゲイズ」公式サイト
初心者にはハードルが低くなるよう
マネジメントを意識したパーティ編成
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。「デモンゲイズ」については,まだあまり情報が出ていないので,まずはどんなゲームなのか教えてください。
ひと言で言えば,エクスペリエンスがこれまで作ってきた,ハック&スラッシュ主体のダンジョンRPGです。舞台は,「円卓の生徒」(PC / X360 / PSP)や,以前発表をさせていただいたXbox 360向けの新作「剣(つるぎ)の街の異邦人」と同じ世界で,アルダ大陸から海を越えたはるか西方,ミスリッドと呼ばれる地方の物語です。ストーリーは「円卓の生徒」のその後の世界を描いています。あまり詳しくは言えないのですが,100年から数百年後といったところでしょうか。
4Gamer:
かなりあとの時代が舞台になっているんですね。
千頭氏:
そうですね。でも,長命のエルフもいるファンタジーの世界ですから,ところどころで「円卓の生徒」とリンクする部分も出てきます。もちろん,続編というわけではありませんので,「デモンゲイズ」で初めてエクスペリエンス作品に触れる人でも,きちんと楽しめる内容になっていますよ。知っていればニヤリとできる程度ですし,あとから「円卓の生徒」や「剣の街の異邦人」を遊んでいただいてもいいと思います。
4Gamer:
ゲームシステム面での変化などはどうでしょう?
千頭氏:
「円卓の生徒」よりも多くの人に遊んでいただくため,初心者には分かりにくい部分や,とっつきにくい部分をなくすよう,これまで以上に配慮しました。また,ライトプレイヤーとヘビープレイヤーそれぞれが,楽しさを見出せるようなシステムになっています。
4Gamer:
具体的に,従来の作品とどんな違いがあるのでしょうか?
千頭氏:
これまでの作品では,ゲームを始める前にプレイヤーが6人のキャラクターを作る必要がありましたが,最近では主人公が用意され,ストーリーを進めていく中で操作やゲームの進行方法を学んでいくゲームが主流です。「円卓の生徒」ではその流れに沿って,主人公を最初に決め,徐々に仲間が増えていくという形式を採用しました。しかし,参加メンバーの選択がストーリー進行に縛られてしまうため,従来のユーザーには物足りない部分がありました。
「デモンゲイズ」ではこれを,プレイヤーの好きなタイミングで好きなキャラクターを選び,パーティを編成できるシステムにしています。言ってしまえば,「ドラゴンクエストIII」のようなイメージですね。
4Gamer:
と言うと,酒場のようなところがあって,そこで仲間を選ぶような感じですか。
千頭氏:
はい。その酒場にあたるのが,宿屋「竜姫亭」です(関連記事)。実は「デモンゲイズ」では,さまざまな要素の“マネジメント”に焦点を当てており,ここではパーティのマネジメントを意識しています。
4Gamer:
パーティのマネジメントと言いますと?
千頭氏:
例えば,あまり好き勝手にパーティを組んでしまうと,ゲームに慣れないうちは前衛だけで後衛がいなかったり,逆に前衛が足りなかったりして,苦しい思いをすることがありますよね。でもそれは逆に言うと,RPGの楽しさの一つでもあります。
一方で,例えば「ドラゴンクエストII」のように,一人じゃ厳しいな,と思う頃にもう一人味方が加わる形式もあります。「デモンゲイズ」では,少しずつ新たなキャラクターを登場させることで,そういった段階的にパーティが強くなっていく部分を楽しめて,かつ自由なパーティ編成が行えるように配慮しているんです。
ダンジョンRPGファンの好みを押さえた
主人公とパーティメンバーのキャラメイク
4Gamer:
現在公開されている情報では,「オズ」という男の子が主人公として紹介されていますが,主人公のキャラクターメイクはできないんですか?
いえ,主人公はもちろん,ほかのパーティメンバーもキャラクターメイクは可能です。と言うのは,エクスペリエンス作品や,ほかのダンジョンRPGを好む人にとって,キャラクターメイクは外せない要素だからです。
今回は,主人公としてオズの推奨イラストを用意してはいますが,あえてヒゲづらのドワーフでプレイするなんてこともできます。またパーティメンバーも,システム側でオススメのキャラクターを用意しており,竜姫亭で紹介してもらえます。初心者の方であっても,それに沿っているだけで,比較的スムーズにゲームを進めることができるでしょう。
4Gamer:
なるほど。主人公のクラスを変えることもできますか?
千頭氏:
タイトルになっている“デモンゲイズ”という能力に関わっていますので,主人公のクラスだけは「デモンゲイザー」で固定です。「円卓の生徒」で例えると,先生のような立場と言えばお分かりになるでしょうか。主人公以外のキャラクターなら,クラスや種族を自由に決められますし,名前や見た目もゲーム中,いつでも変更ができます。また,そうやって付け替えた名前であっても,きちんとNPCのセリフに反映されます。
オズ |
アヴィー |
セリナ |
ペペット |
4Gamer:
おお,自分で作った設定に入れ込むタイプのプレイヤーには嬉しいですね。
それではゲームに登場する種族などを教えてください。
千頭氏:
種族は,現在公開しているヒューマン/エルフ/ミグミィ/ネイに加え,ドワーフが存在します。種族によって差が出てしまうのですが,各種族とも,基本的にさまざまな年齢層や前衛/中衛/後衛に合わせたキャラクターイラストを用意しています。ドワーフに関しては男性のみで,ほかの種族より年齢が高めに見えるようになっていますね。選べるイラストの総数は数十種類に上り,約半分は男性です。
4Gamer:
クラスはどうでしょう?
クラスは全7種類ですが,今回は職業にそれほど依存しないシステムになっているので,あまり数字にはこだわらなくていいかもしれません。
4Gamer:
職業に依存しないと言いますと?
千頭氏:
スキルがドロップ制になっており,例えばアーチャーのスキルをナイトが使ったりといったことができるんです。もともとのクラスのスキルはレベルアップに合わせて習得していきますので,自分だけの理想のキャラクターを作ることもできます。
4Gamer:
その場合,何か使用制限はないんですか? ほかのクラスのスキルは限られた数しか習得できないとか。
千頭氏:
ほかのクラスのスキルは「神器」という装備品の扱いになりますので,装備できる数に制限があります。その代わり,所有しているスキルであれば自由に付け替えることができますよ。
少し高めの年齢層を狙ったストーリー
キーワードは“同居生活”と“ラブコメ”
4Gamer:
では次に,ストーリーについて教えてください。「円卓の生徒」のその後の世界とのことですが,今回は“下宿”が舞台という,ちょっと変わった設定ですよね。
千頭氏:
そのためゲームの設定やストーリーのモチーフも,私自身が学生の頃に人気だったものを参考にしています。そこで今回フィーチャーしているのが,「めぞん一刻」や「ラブひな」でも使われた“同居生活”および“ラブコメ”というわけなんです。
4Gamer:
ああ,竜姫亭は,一刻館であり,ひなた荘であると。
千頭氏:
はい。ですから竜姫亭の中では,最初に公開したスクリーンショットのような,女主人とのお決まりのイベントもあるんです(笑)。
とは言え,竜姫亭を一歩出ると,街が滅んでいたりしますから,世界は非常に危険な状態にあります。そうした世界の中,主人公は記憶を失った状態で発見され,竜姫亭にかつぎ込まれることになるんです。
4Gamer:
そして自分が何者であるかを知るために,冒険するんですね。
千頭氏:
そうです。また主人公が記憶喪失という設定は,ストーリー的な部分だけでなく,システム面でも大きな意味を持っています。やはりダンジョンRPGファンは,自分で設定を作るのが好きですから,こういった部分はできるだけ介在できる余地を残しておこうと。メインシナリオはこちらで用意しますが,性格付けなどはプレイヤー各自にお任せするということなんです。
4Gamer:
分かりました。それでは,竜姫亭で主人公と同居することになるキャラクターについて教えてください。そもそも,彼らはなぜ竜姫亭にいるのでしょうか?
千頭氏:
今回,ゲームの中で探索する地域は,かつては一つの国でした。しかし,とある事件により,街が廃墟となってしまうんです。廃墟化した街は危険ですが,数々の財宝が眠っているため,大陸中の冒険者や賞金稼ぎが集まってきます。すると,彼らに武器や道具を売る商人なども集まってくるわけです。竜姫亭は,そうした冒険者や商人に,寝泊りする場所を提供する宿屋です。
4Gamer:
では,ゲームを進めるにつれて,多くのキャラクターが登場するわけですね。
千頭氏:
ええ。ストーリーの進行に沿って,重要な人物や冒険者が姿を現し,さまざまなアクシデントを引き起こします。中にはドタバタした,にぎやかな展開もあります。
4Gamer:
主人公と,個別のキャラクターとのエピソードもありますか?
千頭氏:
お話したとおり,今回はラブコメをフィーチャーしていますので,そこは期待してください。その一方では,メインストーリーはシリアスに展開していきます。
4Gamer:
公開されているスクリーンショットを見ると,主人公と竜姫亭の女主人との関係が気になるところですが。
千頭氏:
女主人だけでなく,竜姫亭では男女問わずにさまざまなイベントが起こります。その過程で主人公は自分自身の過去や,登場人物それぞれの背景を知っていきます。
4Gamer:
ところで,ストーリーは「円卓の生徒」とも関連があるというお話でしたが,共通のキャラクターが出てきたりもするのですか?
千頭氏:
はい。絵描きさんが異なるので多少テイストが異なりますが,まず「円卓の生徒」に登場したモンスターがいます。また「円卓の生徒」に登場した武具も,伝説のアイテムなどとして出てきます。あとは,まだ生きているキャラクターもいますね。サブクエストで,いろいろ関連を匂わせる表現が出てきます。
4Gamer:
となると,エクスペリエンスのファンは,今のうちにPSP版の「円卓の生徒 The Eternal Legend」などで,おさらいしておいたほうがよさそうですね。
探索と戦闘は10タイプの「デモン」を使い分けて進行
“暴走”のマネジメントも重要に
4Gamer:
続いて,ゲームシステムの特徴を教えてください。
「デモンゲイズ」には,大きく2つの特徴を用意しました。一つは,ゲームのタイトルにもある「デモン」です。
ダンジョンRPGの場合,熟練したプレイヤーなら,「サムライは絶対パーティに入れる」といった具合に,それぞれこだわりの形があると思います。しかし,初心者はどんなパーティを組んだらいいのか,よく分かりませんよね。そこでダンジョンRPGを初めてプレイされる方でも,自分独自のパーティの形をイメージしやすいようにと考えて用意したのがデモンです。
デモンはそれぞれ,戦闘向きや探索向きといったように特徴付けがなされており,視覚的にも,今,パーティが何に特化しているのか分かるようになっています。
4Gamer:
デモンは,彼らとの戦闘に勝利すると,仲間として召喚できるようになるんですよね。
千頭氏:
ええ。デモンは基本的に10タイプいて,すべて仲間にできます。デモンは街を滅ぼした張本人で,街(=ダンジョン)ごとに1体ずつ存在します。街を解放すれば,その街のデモンと戦えるようになるので,そこで勝つと仲間となるわけです。
4Gamer:
基本的に……というと,10タイプ以外のデモンもいるんですか?
千頭氏:
まあ,普通にプレイすると10タイプという意味ですよ(笑)。これ以上はちょっと……。
4Gamer:
何か含みのある言い方ですね。
それでは,10タイプのデモンを仲間にする順番は決まっていますか?
千頭氏:
ストーリーの進行に沿って,進入できるエリアがある程度決まっていますので,好きな順序でデモンを仲間にすることはできません。とは言え,例えば最初は2つのエリアに入れるのですが,どちらの街を先に解放してデモンを仲間にしていくかは,プレイヤー次第になります。
4Gamer:
デモンは,ゲーム中でどのように使うのですか?
千頭氏:
先ほど少し触れましたが,それぞれのデモンは基本的に異なる特徴を持っています。まず,一緒に連れて行くだけで,さまざまな効力を発揮するものがあり,ダンジョンやマップの特性に合わせてデモンを選ぶことになります。
もう一つは,任意でスキルを発動するタイプです。こちらは基本的に戦闘用で,戦う敵の特性に合わせて選びます。例えば全体攻撃スキルを持ったデモンや,防御スキルを持ったデモンなどがいます。
4Gamer:
デモンは暴走状態にもなるようですね。
千頭氏:
デモンは召喚中,ずっと専用のゲージを消費しています。ゲージを消費し尽くすと,デモンは暴れ始め,敵味方の区別なく攻撃します。実は敵のボスの中には,暴走状態をうまく使うと倒しやすいものも登場しますよ。
4Gamer:
消費したゲージはどうやって回復するのでしょう?
千頭氏:
それには2つの方法があって,まずパーティで敵に与えたダメージの量に応じて回復していきます。逆に防御ばかりしていると,減っていく一方になりますね。
もう一つは,主人公をはじめパーティメンバーが,ゲージを回復するスキルを習得することです。このスキルは必ず回復に成功するわけではなく,失敗することもありますが。
4Gamer:
なるほど,基本的にデモンをここぞというタイミングで召喚するためには,事前に積極的に戦闘してゲージをためる必要があるわけですね。
千頭氏:
デモンは呼び出したあと,1ターンごとにゲージを消費するんです。その消費量が結構大きいので,一度召喚して戦わせたあとは適宜回復する必要がありますし,そもそもゲーム開始当初は,いつデモンを呼び出すべきか迷うところでしょうね。
ただデモンは,自発的に出てくることもあるんですよ。プレイヤーが指示しなくとも,オートで主人公を回復したり,戦闘を手伝ったりします。
4Gamer:
それは楽しそうですね。
千頭氏:
そうですね。それぞれセリフをしゃべるので,結構にぎやかになります。またエクスペリエンスのゲームは運の要素も大きなポイントなのですが,デモンが出てきて何かしゃべった次の瞬間,セリフとはまったく逆のことをやることもあるんです。颯爽と出てきたのに敵に瞬殺されて,泣きながら帰っていったり(笑)。
4Gamer:
意外とおちゃめなところもあるんですね(笑)。複数のデモンを同時に連れ歩くことはできますか?
千頭氏:
最大で3体のデモンを連れ歩けます。したがって,探索型と攻撃/防御型を組み合わせることなども可能です。ただし初期状態では1体のみしか連れ歩けず,ゲーム内で条件を満たすごとに枠が増えていく形ですね。
4Gamer:
ほかに,今の段階でデモンに関して公開できる情報はありますか?
千頭氏:
うーん……主人公のデモンゲイザーが一定のレベルに到達すると,できることがある,とだけ言っておきましょうか。
4Gamer:
これはまた,含みのある発言ですね。ではデモンと主人公の間に,信頼関係を深める要素はありますか?
千頭氏:
忠誠度があります。これはデモンを連れ歩くだけでも上がるのですが,積極的に使うほど早く上がり,成長してレベルの高いスキルを使えるようになります。もともとデモンは,すべての使用可能スキルを習得しているのですが,忠誠度を高めないと高レベルのものは使えないという設定なんです。ちなみにデモンが成長すると,ヒットポイントなども上昇しますよ。
ドロップアイテムの種類を絞り込む
「トレジャーハンティングサークル」
4Gamer:
では,もう一つの特徴について教えてください。
「トレジャーハンティングサークル」 (関連記事)と言って,「円卓の生徒」にあったトラップエンカウントをさらに進めたシステムです。
ハック&スラッシュ型のゲームというと,アイテム集めが魅力ですが,その一方で運の要素に左右されますから,人によっては望みのアイテムを入手するまでに数百時間がかかってしまうケースもあります。そこで今回,ある程度,プレイヤー側で獲得アイテムをコントロールできるようにしたのが,このシステムです。
4Gamer:
具体的に何をどうするのでしょうか?
千頭氏:
マップ上に用意された“サークル”と呼ばれるポイントに,欲しい種類の武器や防具に対応した「ジェム」というアイテムを入れるんです。例えば剣のジェムを入れたら,そのサークルに出現する敵からは必ず剣が手に入りますし,斧のジェムを入れたら斧が出てきます。
またジェムには,サークルに出現する敵を強くするものもありますので,それを使うと,より強い武器を入手できます。ジェムを使って敵を強くし,デモンを駆使して一攫千金を狙うなんてこともできます。
4Gamer:
サークルは連続して使えるんですか?
千頭氏:
一つのサークルにジェムを入れると,次の瞬間に戦闘に入り,1回戦闘を終えると,竜姫亭に戻るまでそのサークルは使えません。しかし,マップ上にサークルが点在していますし,ほかのエリアにもありますので,移動しながら効率よくアイテム集めができるようになっています。
4Gamer:
ジェムはどのように入手するのでしょう?
千頭氏:
通常戦闘からのドロップで入手することになります。比較的簡単に手に入り,探索していると自然にジェムが溜まっていくので,サークルを見つけて望みのアイテムを狙うという流れですね。また店売りもしていますが,高価なので,最初はなかなか手が出ないでしょう。
4Gamer:
一つのサークルに入れられるジェムの数は決まっていますか?
千頭氏:
基本は最大3つです。アイテムのカテゴリ別のジェムや,敵を強くするジェムのほか,アイテムを強化するためのジェムがありますので,いろいろ組み合わせられます。組み合わせによっては,強化された強い剣を狙うこともできますし,パーティメンバーに必要な鎧や盾などを同時に狙うこともできます。
4Gamer:
ある程度,狙ったアイテムを入手できるのであれば,「オレのROMにはムラマサのデータが入ってないに違いない!」といった,悲しい事態も少なくなりそうですね。
ええ。私だったら刀のジェムや敵のレベルを上げるジェムは,ゲームの終盤まで使わずに溜めておきますね。敵のレベル帯に応じて,入手できるアイテムの強さも変わりますから,ムラマサのような強い武器は終盤まで出ないんですよ。自分のところのゲームなのに,私自身が毎回ムラマサには泣かされてますので(笑),今回は刀のジェムはできるだけ終盤まで取っておいて,一気にサークルで使いたいなと。
ただし,これもマネジメント要素の一つで,すぐに次のエリアに行って強い武器を狙うのか,それともそのエリアに留まって,まずレベルに見合った装備を揃えるのかという選択がプレイヤーに生じます。そのほかに竜姫亭の家賃がありますから,アイテム売却で資金を作る必要もあるでしょう。「デモンゲイズ」では,さまざまな要素を総合的にマネジメントしながらゲームを進めることになります。
ネットワーク機能やオート移動を搭載し
今の時代に合ったダンジョンRPGに
4Gamer:
ところで今回,パーティは最大5人ですよね。これまでのエクスペリエンス作品だと,6人パーティが定番でしたが。
パーティの人数を減らそうという議論は以前からあって,実は「円卓の生徒」でも迷っていた部分なんです。というのも,初心者が最初から6人をマネジメントするのは困難ですから。
その一方で,5人パーティでは物足りないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが,人数が減るとマネジメントが楽になる代わりに,難度が少し上がるんですよ。6人なら前衛3人,中衛1人,後衛2人でバランスが取れていたのに,5人だとそれが崩れます。敵との相性などを見ながら,アレコレ考えたりする部分を楽しんでほしいですね。
4Gamer:
分かりました。それでは,PS Vitaならではの機能や遊びはありますか?
千頭氏:
ネットワーク要素と,タッチパネル操作があります。前者は,「ゲイザーメモ」と呼ばれるメモを,ダンジョン内に残す機能です。自分で書いた攻略情報などを残して,それをほかのプレイヤーと共有できるのですが,それを信じるかどうかはプレイヤー各自の責任になります。これはダンジョンに入るときに通信を行って,自動的にデータを収集します。
4Gamer:
メモはいくつくらい残せるのでしょう?
千頭氏:
ゲーム内で「チョーク」を拾ったり購入したりできますので,その個数分だけ残せます。
また,もう一つのネットワーク要素として,PS Vitaの「near」機能を使って,ほかのプレイヤーのPS Vitaにプレイヤータグを残すこともできます。
4Gamer:
タッチパネル操作はどのように活用するんですか?
千頭氏:
こちらは,主にオート移動で使います。マップ上で,一度行ったことのある目的地をタッチして指定すると,そこまでの最短ルートをたどって自動的に移動するという機能で,非常に便利です。さらに,避けられるスペースがあれば,ルート上の固定敵を避けて進んでくれる優れものの機能です。
4Gamer:
固定敵は避けたとしても,通常のエンカウントはありますよね?
千頭氏:
そうですね。そのときは戦闘になりますが,無事勝利したあと,まだ目的地にたどり着いていなければ,再びオート移動が始まります。
4Gamer:
それは便利ですね。
千頭氏:
便利と言えば,今回は戦闘時のコマンドを記憶しておくことができます。ハック&スラッシュの場合,必然的に同じエリアで戦闘を繰り返すことになりますから,ある程度の戦闘数をこなしてパターンを把握したら,これを使ってボタン一つで全パーティメンバーのコマンドを決定できるんです。これも便利ですね。
4Gamer:
もともとエクスペリエンスの作品は戦闘時間が短いですが,さらに短くなりそうですね。
千頭氏:
ええ,総プレイ時間も短くなるので,開発する側としては少し困りものです(笑)。
「DRPG PROGRESS」は2013年も引き続き展開
未発表タイトルも登場?
4Gamer:
エクスペリエンスと角川ゲームスによるプロジェクト「DRPG PROGRESS」についても,少し聞かせてください。2012年6月に発表され,これまで一緒に取り組んできたわけですが,振り返ってみて,いかがだったでしょうか。
いろいろありましたが,やはり勉強になった部分が多いですね。一番は,エクスペリエンスの弱点だった営業力や,情報を広く伝えることなど,ビジネスとしての部分。その裏返しとして,角川ゲームスという大きな看板を掲げてゲームを作るわけですから,私達に与えられた責任やプレッシャーなどを感じながらの開発となりました。
4Gamer:
実際のところ,「デモンゲイズ」の開発では,両社のどちらがイニシアチブを取っているんですか?
千頭氏:
最初にターゲットを両者で決めて,それをもとにエクスペリエンスで,こうすればリーチできるのではないかという案を提示しました。それに対して,角川ゲームスさんが意見を出して,さらに調整して……という形で進めています。イニシアチブを取るというより,あがった意見に対して両社で揉み合うというスタイルですね。
4Gamer:
その過程で,意見がぶつかり合うということはなかったんですか?
千頭氏:
むしろ,意見がぶつからないと気持ち悪いですよね(笑)。もともとの会社の気質や,ターゲットの解釈が違いますから。そこを議論し,調整しながらまとめているわけです。
4Gamer:
ちなみに「デモンゲイズ」について,ポスターのイラストやスクリーンショットに対する,「いかにも角川グループっぽい“萌え”重視のタイトルになっている」という意見があるようですが,どう受け止めていますか?
千頭氏:
今回はPS Vita初のダンジョンRPGとして,より幅広いユーザーさんの注目を集めるべく「まずはフックを作る」という狙いがありました。そのため従来のファンを中心に,これまでと違った印象を受けた人が多かったのではないかと思います。
今後は順次,ムキムキのオッサンや,シリアスなシーンも公開していきますし,とくにキャラクターデザインに関しては,デモンも含めて非常に注力した部分なので,そのへんの全体像が見えてくれば,だいぶ印象も変わると思いますよ。角川ゲームスさんだけでなく,弊社としても自信を持って世に新たに送り出したビジュアルです。
4Gamer:
では,ゲームとしては,これまでのエクスペリエンス作品と同様のものを期待していいと。
千頭氏:
もちろん,これまで以上になっているという手応えがあります。そこは期待していただいて大丈夫です。
クロノスの通常状態(左)と暴走状態(右) | |
コメットの通常状態(左)と暴走状態(右) |
4Gamer:
それでは,DRPG PROGRESSの今後の取り組みについても教えてもらえますか? まだ「デモンゲイズ」も発売されていないので,少し気の早い話ですが。
千頭氏:
また,将来的なDRPG PROGRESSの取り組みについても,角川ゲームスさんといろいろ話し合っています。まずは一つの大きな区切りとなる,この「デモンゲイズ」の発売を最優先に,具体的な内容については今後,順次発表させていただくことになるかと思いますが,ダンジョンRPGジャンルを盛り上げるために,今後はさらに幅広い取り組みにもチャレンジしていきたいですね。
例えば,DRPG PROGRESSを推し進めていくうえで,角川ゲームスさんが引き続き最も大事なパートナーであることに変わりはありませんが,タイトルによってはエクスペリエンスだけで開発・発売するもの,また,常に2社だけの取り組みとせず,時には第三者も含めた取り組みも検討してもいいのではということですね。
そういった意味では第3弾となる「剣の街の異邦人」も含めて,今まで以上に有意義なものとしてDRPG PROGRESSを盛り上げる,最も良い形を角川ゲームスさんと模索していきます。
4Gamer:
なるほど。それでは,「剣の街の異邦人」はいつ頃のリリース予定ですか? 今のところ,イメージイラストと「円卓の生徒」と同じ世界観というくらいしか情報が出ていませんよね。
千頭氏:
ほかのタイトルとの関連があるので,まだ決定はしていないのですが,2013年の晩秋から初冬,ちょうど1年後あたりを考えています。時期的な面では,エクスペリエンス最後のXbox 360用タイトルになるかもしれませんね。
「剣の街の異邦人」は2011年の東日本大震災で一度開発がストップし,その後,再開したプロジェクトなのですが,思うところあって,ゲームの遊び方やターゲットなどを変更しています。外観や設定はそのままなのですが,中身を作り直しているので,少し遅くなっています。
4Gamer:
2013年1月に「デモンゲイズ」,そして11月頃に「剣の街の異邦人」と,少し時期が開きますが,その間,DRPG PROGRESSでのリリースはないんですか?
千頭氏:
もちろん,予定はあります。ただ,まだ情報を公開できる段階ではありません。今は「デモンゲイズ」に全力投球ということで。
4Gamer:
分かりました。それでは最後に,「デモンゲイズ」に期待する人に向けて,メッセージをお願いします。
千頭氏:
エクスペリエンスのタイトルが,角川ゲームスさんの協力を得て,今まで以上の出来になりました。これから発売に向けて,順次情報を公開していきます。ぜひ,楽しみにお待ちください。
4Gamer:
ありがとうございました。
しかし,今回のインタビューを読んだ人なら,同タイトルが萌え路線を狙った作品ではないことがお分かりいただけたのではないだろうか。千頭氏の話にあるとおり,「デモンゲイズ」はダンジョンRPGの遊ばれ方を分析し,ハック&スラッシュの魅力を損なわない形で利便性を高め,かつ初心者へのハードルを下げるという,今の時代に向けたダンジョンRPGだったのである。
今後公開される情報では,そうした面もどんどん明確になっていくと思われるので,エクスペリエンスおよびダンジョンRPGのファンや,本インタビューを読んで「デモンゲイズ」に興味を持ったという人は,ぜひ期待していてほしい。
「デモンゲイズ」公式サイト
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