インタビュー
3DS版の発売から2週間というスピード展開のブラウザRPG「ブレイブリーデフォルト」。その開発経緯や見どころを開発スタッフに聞いてみた
読者のなかには,コンシューマ作品のブラウザ版というと,どうしても外伝的なもの,もしくはお祭り的な作品を想像してしまう人もいるだろう。では,「ブレイブリーデフォルト プレイングブレージュ」(以下,ブラウザ版)は,どのような立ち位置の作品となっているのだろうか。
今回,3DS版のプロデューサーを務める浅野智也氏と,ブラウザ版のプロデューサーを務める山中譲児氏に,ブラウザ版投入の経緯や,ブラウザ版の見どころ,今後の展開,そして,3DS版との連携などに関して,いろいろ聞いてみることにした。「ブラウザ版ってどうなの?」と気になっている人は,その内容を確認してほしい。
浅野智也氏 |
山中譲児氏 |
「ブレイブリーデフォルト プレイングブレージュ」公式サイト
「BRAVELY DEFAULT」公式サイト
「ルクセンダルク」という世界にずっと触れていてほしい
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。3DS版「BRAVELY DEFAULT」が発売されてちょうど2週間後となる10月25日にブラウザ版が発表されましたが,どのような経緯で,本作の制作が決まったのでしょうか。
私から,山中にブラウザゲームを作ってほしいとお願いしたのが始まりでした。幸い好評をいただいている「BRAVELY DEFAULT」をシリーズ展開していくうえで,コンシューマ機向けに作ろうとすると,次のタイトルを出すまでに,どうしても2年以上かかってしまいます。
そうすると,せっかくプレイヤーさんに好きになってもらったキャラクターや世界があっても,次に会えるのは2年後になってしまうわけで,なかには忘れてしまう方もいるでしょう。
4Gamer:
確かに2年と考えると長いですね。
浅野氏:
ですが,好きになってくれた人には,「BRAVELY DEFAULT」の舞台であるルクセンダルクに触れ続けていてほしいという思いがあったんです。そこで,オンラインゲームならずっと触れていてもらえますから,できるだけ早くこの世界を用意しようと考えて。
4Gamer:
ブラウザ版をどういうゲームにするかも,浅野さんからの提案だったんですか?
山中譲児氏(以下,山中氏):
ええ。最初に話をもらったときに3DS版のBRAVELY DEFAULTを見せてもらったんですが,まだ声が入っていなくて,バトルシステムと3章くらいまでが遊べる段階でした。ですが,その時点でバトルシステムはかなりしっかりとした豪勢なものだったので,「これをブラウザゲームにするの!?」と思いました(笑)。
浅野氏:
そっくりそのまま再現してもらおうと思っていたわけではないですよ(笑)。やはりコンシューマ機とブラウザゲームでは,面白さの質が異なりますから。
当初は自分で作ってみようとも思ったんですが,やはりブラウザゲームのプロにお願いしたほうが良いものができるだろうということで,お任せした次第です。
山中氏:
そういうことだったので,まずは世界観を合わせましょうということになりました。
4Gamer:
では,どうして「ブラウザ」というプラットフォームを選択したのでしょうか。
浅野氏:
やはり,長く楽しんでもらえるというのが最大の理由ですね。好きなときに,気軽に遊べるというのもありますし。実は3DS版の「村復興」という要素は,同じブラウザゲームの「戦国IXA」を遊んでいて導入を決めたものだったんです。それもあって,ブラウザゲームが意識にありました。
4Gamer:
なんと,そんな裏話があったんですね。では,ブラウザゲーム版のジャンルを3DS版と同様のRPGにしたのは,どういった理由からでしょうか。ブラウザゲームとなると,まったく別のジャンルになることも多いと思うのですが。
山中氏:
いわゆる「村ゲー」は作りたくなかったんですよ。
4Gamer:
いきなり,ぶっちゃけましたね(笑)。
せっかくBRAVELY DEFAULTというベースがあるのだから,ターン制コマンドバトルにしたかったんですよ。それに,ブラウザゲームにはこのジャンルが少なかったというのも,理由の一つです。そして,ファンタジーを題材にしたものがやりたいなというのもあって,今回それがうまく符合したわけです。
4Gamer:
言われてみれば,ブラウザで遊ぶコマンドバトル制のRPGって,あまり多くはないですね。作るのが難しいといったことがあるんでしょうか。
山中氏:
カードバトルならカード同士の能力に従ってぶつけていくだけですが,そこにスキルだ,ジョブチェンジだといった要素が加わってくると,裏で扱うパラメータが劇的に多くなってきます。またカードバトルなら,バトル演出の処理はスキップできますが,ターン制バトルとなると,ターンごとのバトルをしっかりと見せていかなければなりません。
もっともブラウザゲームにおいては,そうしたアクションを見せる時間をお客さんに要求していいものか,その判断が難しいところです。実際に最近の流れでは,そうした時間は要求できないというのが定説になっていて,バトルはさらっと流すものになっています。
4Gamer:
でも,それをあえて見せるような作品にしたのはなぜでしょう。
山中氏:
私自身が,それってどうなんだろう? と思っていたんですよ。ですから,今回試しにサンプルを作ってみましたが,やはりコマンドを入力してバトルするのは面白くて,日本人はこうしたコマンド入力式のシステムに慣れているという感触を得たんです。
4Gamer:
確かにコマンド入力式は,日本だと根強い人気がありますね。
山中氏:
ええ。だから,ターン制コマンドバトルを採用できたのは良かったと思います。慣れ親しんだコマンドバトルなら,遊ぶ側が迷うこともないですし。
4Gamer:
実際のところ,ブラウザ版ではどれくらいまで3DS版のバトルを再現することを目指したのでしょうか。
山中氏:
最初から完全再現は考えていません。浅野がファミコンの「FINAL FANTASY III」に影響を強く受けたという話をしていたこともあって,それと同じくらいのラインを目指すことにしました。
4Gamer:
なるほど。言われてみれば,パーティや敵の配置だったり,戦闘画面の雰囲気が確かに似ています。
山中氏:
ええ,うまく表現できたと思っています。
引き継がれたのは世界観設定だけじゃない。3DS版から続く重厚な雰囲気のストーリーも健在
4Gamer:
では,世界観についても教えてください。本作は,3DS版から200年後の世界が舞台になっていますが,3DS版とストーリーのつながりはないのでしょうか?
いえ,ちゃんとつながっていますし,ブラウザ版でもすごく深いストーリーが展開されていきます。ですが,それをいきなり前面に押し出してしまうと,プレイヤーが置き去りになってしまいます。ですから,なぜ4人の巫女がお互いに争っているのかとか,クリスタルはどうなってしまったのかといったところは,クエストの中で語られていく形にしたんですよ。
4Gamer:
クエストはどんな風に展開するんですか?
山中氏:
ブラウザ版では,3DS版からどのようにつながってくるのか,というところがメインのストーリーになっていますが,クエストは3DS版の「パーティチャット」のようなキャラクター達の会話で話が進み,その中で「なぜ巫女が?」とか「なぜ世界は崩壊し続けているのか?」といった事柄に触れていくことになります。
またクエストの中では,3DS版に登場した大ボス達が再び登場します。それにもきちんと理由が設定されていて,クエストで明らかになっていくはずです。
4Gamer:
単純なコラボではなくて,ストーリー的にも意味があるんですね。クエストには,どんなものが用意されているんですか?
山中氏:
クエストの種類は大まかに分けて3つあります。プレイヤーランクを上げるためのもの,ボス敵を倒す討伐,特定のアイテムを何個か集めてくる納品ですね。納品クエストでは,依頼された物を集めてくると,武器屋をレベルアップさせるチケットがもらえたりします。
4Gamer:
いい武器を手に入れるには,施設のレベルアップも必要なんですね。では,クエストは自由に選べるんでしょうか。
山中氏:
ええ,表示されているクエストは,探索や戦場への出撃を行っていないメンバーが残っていれば,いつでも挑戦できます。敵の討伐やアイテムの収集など,クエストを進めるためには,マップに出て移動可能な地域から1つを選択して,その先でターン制のコマンドバトルで敵を討伐することになります。そうして,クエストをこなしていくと移動できるマップが増えて,また新しいクエストが選択できるといった仕組みです。
4Gamer:
なるほど。ちなみにサービススタート時点では,どれくらいのクエストが用意されるのでしょうか。
山中氏:
一般的なブラウザゲームと同様に,行動力を消費するのでずっとクエストを続けられるわけではないですが,毎日4時間ほど遊んでも,180日以上は遊べるくらいは用意しています。
4Gamer:
それだと,かなり遊べますね。
山中氏:
でも,プレイヤーさんは遊ぶのが速いので,これでもまだ足りないと思っています。ですから,追っかけで随時追加していきます。
ちなみに,3DS版のシナリオはMAGES.の林 直孝さんが,世界観設定については,シリコンスタジオの網代恵一さんが担当していますが,ブラウザ版のストーリーと世界観設定は,どちらも網代さんが担当しています。
山中氏:
時代背景のほかに,年表までしっかり用意されているんですよね。
4Gamer:
おお,それは楽しみです。私自身も,いま3DS版を進めている途中だったので,巫女同士で覇権を争うという展開には驚きましたし。ところで,ブラウザ版のストーリーは,3DS版のネタバレにはなっていない……んですよね?
浅野氏:
ええ,もちろん大丈夫です(笑)。クリスタルが砕け散って,4人の巫女同士が争うという展開は,「どうしてそんなことになっているんだ?」と,3DS版を遊んでくださったプレイヤーにも,興味をもって見ていただけると思います。
安心しました(笑)。それにしてもBRAVELY DEFAULTは,絵柄の可愛さに比べて,かなりヘビーな展開がありますよね。本編もそうですが,サブシナリオもイデアの立場を考えるとなかなかに重い展開がありましたし。
浅野氏:
そうですね。3DS版のサブシナリオに関しては「Dの手帳」も読んでいただけると深く考えさせられると思いますが,シンプルに,「新しいアスタリスクが手に入ったー!」と喜んでいただくだけでも良いと思っています。
4Gamer:
「Dの手帳」は,最初に読めるようになった段階で128ページもあって驚かされました。
浅野氏:
あれは網代さんの力作です(笑)。
4Gamer:
ボリュームもさることながら,「むむ,ここはあそこにつながっていくのかも?」といった感じにストーリーも楽しめるようになっていますよね。
浅野氏:
「Dの手帳」を読み込むほど世界観を楽しんでくださった方には,ぜひブラウザ版も楽しんでほしいですね。ブラウザ版にも,そうした部分が結構ありますから。
4Gamer:
ブラウザ版のストーリーに関して,浅野さんから要望はあったんですか?
浅野氏:
はい,ブラウザ版でこういう話を展開してほしいというのは,自分からお願いしました。それを網代さんと開発チームに具体的にしてもらう形で進めています。
4Gamer:
そういうお話を聞くと,このブラウザ版がしっかりと3DS版の続編なんだと思えますね。
浅野氏:
そう言っていただけると嬉しいですね。続編の定義にもよりますが,しっかりとした関連作品にはなっていると思います。あと,「イデアをクリスタルの巫女に!」とお願いしました。
山中氏:
そのワンダーな設定を聞いたとき,網代さんが「カロリー高い仕事だなー」と天を仰いでましたね。
4Gamer:
ワンダーって(笑)。でも,あの(お転婆な)イデアですし……そうでしょうねぇ。というか,イデアが登場するということに,まず驚きました。
そうですよね(笑)。ブラウザ版から入るプレイヤーが多いとは思うんですが,やはり3DS版からブラウザ版に入ってきてくれる方のために,3DS版で登場したキャラクターは登場させたいと考えていたんです。
それなら,ファンを引っ張ってくれるキャラクターはイデアだろうと。ファンも,もっと彼女の活躍を見たいと考えたんですよ。そこで,ちょっと変わったイデアの姿を見てもらおうと思いました。
4Gamer:
変わったというと,なんとなくイデアの見た目が……。
山中氏:
ええ,3DS版では15歳だったイデアですが,ブラウザ版では少し大人になった姿で登場するんですよ。
4Gamer:
なるほど! これは成長した姿だったんですね。というか,いったい何歳なんだろう……。でも,3DS版の登場人物そのものですし,つながりが分かりやすいですね。3DS版の大ボス達が登場するというのもそうですが,こういった3DS版とのつながりは多いんですか?
浅野氏:
紐付けられるところはつなげています。ですが,ブラウザゲームは長い時間をかけて遊んでいくものですから,スタートの段階では3DS版とのつながりがあっても,以降は独自に展開していくだろうと考えています。
4Gamer:
あとから追加して展開できるのは,オンラインゲームの利点ですね。
浅野氏:
そうなんですよ。いくらでも追加できるのはうらやましいです(笑)。それに,このブラウザ版でBRAVELY DEFAULTの世界に触れて,興味を持っていただいたところで,3DS版を遊んでいただくというのもありだと思います。
体験版もありますから,まずはそれを遊んでいただければ。逆に,3DS版を遊び尽くしてしまったけれど,もっとBRAVELY DEFAULTの世界を味わいたいということであれば,ブラウザ版を遊んでもらえればと思います。
4Gamer:
相互に楽しめると理想的ですね。ところで,もしかして4人の巫女は,みんな3DS版からのキャラクターなんですか。
浅野氏:
いえ,イデアだけで,ほかは新キャラクターです。3DS版とつながる要素は少しずつ入っている感じで,それを知らなければ楽しめないというものにはならないように気をつけました。
4Gamer:
新キャラクターは,例えば誰かの子孫だったりするのでしょうか。
浅野氏:
そういうこともあるかもしれませんね。
4Gamer:
なるほど……でも,まだいろいろ謎がありますよね。この世界は200年後なんですよね? 話を聞いているかぎり,単なるコラボではなく,ちゃんとストーリーが盛り込まれたものみたいですし,なぜ「イデアはこの姿で,そして巫女をしているのか」という疑問が出てきますよね。
浅野氏:
それは,次第に明らかになっていくと思います。
山中氏:
クエストを進めていくと,その情報の片鱗に触れられると思います。
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ブレイブリーデフォルト プレイングブレージュ
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