gamescom 2019のビジネスエリアにあるCD PROJEKT REDのビジネスブースで,オープンワールド型アクションRPG新作
「サイバーパンク2077」 (
PC /
PS4 /
Xbox One )の開発者に話を聞かせてもらった。
gamescom 2019では,事前に本作のライブデモも実施されたが,こちらはE3 2019で紹介されたものとほぼ同じ内容だったので,そちらのレポート記事も合わせて参照していただきたい。ただ今回は,デモの探索エリアであるグランド・インペリアル・モール(GIM)に巣食う敵勢力のボス,
サスカッチ (Sasquatch)がプレイヤーキャラをなぎ倒し,さらにハッキングを仕掛けてくるという,E3のデモでは発生しなかった新たな展開も確認できた。
筋肉増強に勤しむ敵ギャング“アニマルズ”のボスであるサスカッチ。電子掲示板をなぎ倒しながら大きなハンマーで襲ってくるが,今回はプレイヤーキャラへのハッキングも試みており,その後しばらくは視界にノイズがかかっていた
今回のミッション途中で,プレイヤーに転向を促すNetWatchのエージェント,ブライス・モズリー。かなりの資金やテクノロジーを持つ勢力なので,あまり敵には回したくないところだが
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2019/06/14 14:38
また,本作におけるスキルシステムについて,新たに分かったこともある。プレイヤーキャラは,舞台となるナイトシティの貧民として生まれ育った
「Street Kid」 ,もとは企業戦士だったが今は解雇されている
「Corporate」 ,外部から流れ着いた
「Nomad」 という3つの背景から好きなものを選び,肉体派の
「Solo」 ,ハッカーの
「Netrunner」 ,そしてまだ具体的に紹介されたことのない
「Techie」 という3つのアーキタイプに沿って育成していく。
主人公には,
「Body」「Intelligence」「Reflex」「Technology」「Cool」 という基本的なステータスがあり,どうやらレベルアップするたびに得られるスキルポイントを振り分ける仕組みになっているようだ。
デモの解説者は,本作のキャラクター成長システムを
「Fluid Skill System」 と呼んでいた。スキルツリーはそれぞれのステータスに合わせて,大きく分けて5本あるが,背景やアーキタイプによって習得できるスキルが制限されることはなく,自由なキャラクター作りを楽しめるようになっている。例えば,最初にSolo系統のキャラクターに成長させたからといって,ハッキング関連の技術を習得できなくなるというわけではないのだ。
CD PROJEKT REDのビジネスブースの待合室は,ゲームの世界観に合わせたバーに改装されている。壁にあるグラフィティは,今回のデモにも登場するヴードゥー・ボーイズのタグのようで,ゲーム中にも似たものが散見できる
待合室にあった未見の最新アート。Kiroshi社の広告モデルは,日系人のアイドルという設定のようだ
細部までこだわりを持って描き込まれた世界観
さて,今回インタビューに応じてくれたのは,CD PROJEKT REDでシニアコンセプトアーティストを務める
マルタ・ヨンカース(Marthe Jonkers)氏 だ。カプコンに5年ほどの在職経験を持ち,窓を開けると大阪城が見えるマンションで暮らしていたという日本通のオランダ人アーティストである。
本作で数多く見られる日本的な要素は,同じチームにいる日本人アーティスト達の手によるものも多いということだが,公開されているナイトシティのアートワークの多くは,彼女が手掛けているようだ。インタビューではアート方面に限らず,さまざまな質問に答えてくれた。
シニアコンセプトアーティストのマルタ・ヨンカース氏。ちなみに「V」のサインはピースサインではなく,本作の主人公である「ヴィー」を示しているとのこと。なるほど!
4Gamer:
E3 2019で
キアヌ・リーブスさん が本作に出演すると発表されたときの,会場の盛り上がりは多くのファンの記憶に残っています。
マルタ・ヨンカース氏(以下,ヨンカース氏):
ええ,私達開発チームも興奮していますよ!
4Gamer:
いつ頃から,リーブスさんの起用が決まっていたのですか?
ヨンカース氏:
1年ちょっと前くらいでしょうか。ゲーム自体は5年以上も開発が進められてきましたが,それほど前のことではないんです。
ジョニー・シルヴァーハンド という本作の重要なキャラクター,つまり原作(テーブルトークRPG「Cyberpunk 2.0.2.0.」)の時代から,この世界観の中で50年以上も“レジェンド”であり続けている存在を考えたとき,すでにジョン・ウィックやネオといった役柄をこなされているキアヌ・リーブスさんが最も妥当だと思ったのです。彼も快く引き受けてくれました。
4Gamer:
彼自身をキャプチャーしているのですか?
ヨンカース氏:
ええ,私自身は担当部署ではないので見ていたわけではありませんが,専用スタジオでリーブスさんのモーションやセリフをしっかりと取り込んでいます。デジタルゴーストという,ある意味限られたスペースの中だけの存在ですが,さすがは著名な俳優だけあって「ここは,こう演技したい」とか,それこそ会話の1つ1つまで,より良いものになるよう多くの助言をいただいたそうです。
4Gamer:
そもそもデジタルゴーストは,ゲーム中では意識のデジタル化ということになるのでしょうか? 今回のデモの最終局面では,原作で初めて意識のデジタル化に成功して,サイバースペースで永遠に生き続けるハッカー,オルト・カニンガムがチラッと登場しましたが。
ヨンカース氏:
そのあたりは,本作のメインストーリーに直結するということだけお話しておきましょう。あとは,発売まで皆さんでいろいろと想像してみてください。
4Gamer:
今回のデモでは,Street Kidの背景を持つキャラクターの会話中の選択肢に,専用のものが用意されていましたが,デモ担当者は必ずしもそれを選んでいない様子でした。
ヨンカース氏:
ええ。ある意味,我々がゲームの特徴をうまく紹介するために選んだパターンの1つですから,意図的に選んでいない場合もあったと思います。キャラクターの背景によって選べる会話オプションが変化するので,特定の局面をほかのキャラクターにはできない会話の進め方で打破できることもありますよ。
ハイチ系ギャングの幹部の1人である,プラシドとの会話シーン。プレイヤーキャラの背景だけでなく,ステータスによっても会話の成功率が変化するようだ
4Gamer:
もう1つ気になるのが,デモでは敵勢力のアニマルズが占拠しているGIMに行ったとき,正面玄関を素通りして裏手にある業務用のパーキングエリアのような場所から潜入していたことです。そうした抜け道があることを,プレイヤーはどうやって知ることができるのでしょうか?
ヨンカース氏:
どのミッションでも,プレイヤーキャラのスキルポイントをスニーク(ステルス)やハッキングに割り振っていれば,少し時間をかけて探索することで,問題を解く方法が1つではないことが分かるようになっています。ナイトシティのあらゆる場所に,何か気になることや発見があるようにデザインしているので,プレイヤーの皆さんには常に少し立ち止まって,周囲を見てみることをお勧めしたいですね。
4Gamer:
道路に散乱しているゴミ一つに至るまで描き込まれているのには,デモやトレイラーを見るたびに驚かされます。
ヨンカース氏:
ええ。新聞や本も読めますし,「サイバーパンク」という世界観を表現するために,ポスターからグラフィティに至るまで,とにかくディテールにこだわっています。単にゲームの中の世界というのではなく,ナイトシティという場所が本当に存在しているように感じていただけると嬉しいです。
驚くほど描き込まれた「サイバーパンク2077」の世界
4Gamer:
アートワークに関しては,E3 2019で公開されたスクリーンショットに,女性の体に男性器が付いているように見える下半身のモデルのポスターがあったことが大きな問題になりました。
ヨンカース氏:
そうでしたね。原作者の
マイク・ポンスミス氏 がコメントしていたように,そうしたトランスジェンダーが見世物のようになっているという世界観を含めて,未来のディストピアをテーマにしたダークファンタジーを表現しているのです。面白いことに,実は本作のキャラクター作成は大きく改良が進められており,現在では男性と女性が混在したようなキャラクターも作れるようになっています。男性なのに声を女性にすることもできます。
4Gamer:
そのあたりのこだわりは,やはり主人公が自分自身であるからということなのでしょうか?
ヨンカース氏:
そのとおりです。「ウィッチャー」シリーズはあくまでゲラルトという人物の物語でしたが,本作では「サイバーパンク」の世界に住む自分自身が主人公です。そのことはゲームデザインの段階から明確にされており,「ウィッチャー」シリーズが三人称視点だったのに対して,本作では一人称視点を採用しているのも,プレイヤーの皆さんに,この世界における“自分”の存在を表現してほしいからなのです。
4Gamer:
なるほど。
ところで,昨年のデモではマンティス・ブレード,今回のデモではデジタルワイヤーという特殊な武器が紹介されていましたが,例えばマンティス・ブレードはSolo用,デジタルワイヤーはNetrunner用といった感じになっているのでしょうか。
ヨンカース氏:
そう言うわけではありません。本作においてFluid Class Systemが採用されているのはデモで見ていただいたとおりですが,プレイヤーキャラの持つ特殊なサイバーウェアも自由に選ぶことができます。もちろん,そうしたさまざまなサイバーウェアの性能を十分に引き出せるかどうかは,プレイヤー自身が選んだスキルによって変わってきますが。
プレイヤーキャラが利用できるYaiba社製の「Kusanagi」。よく見るとエンジン部分に放射線マークが付いているが,けっこう危険な乗り物なのだろうか?
4Gamer:
今回のデモでは,アニマルズのボスであるサスカッチが,プレイヤーキャラをなぎ倒してハッキングしようとしていましたね。
ヨンカース氏:
ええ,サスカッチはマルウェアを仕込んで,プレイヤーキャラを破壊しようと試みていたのです。そのままやられると,ゲームオーバーになってしまうんですよ。「サイバーパンク」の世界観においては,インターネットというものは存在しません。小さなグループやエリア内でサブネット化を行うことによって,情報をプロテクトしているわけです。デモでも紹介していたとおり,プレイヤーキャラがハッキングスキルを持っていれば,相手をハッキングして手榴弾を起動し,そのまま自爆させることもできます。
4Gamer:
本当に練り込まれた世界観ですね。デモでは
“フリーザー” と呼ばれている氷入りの水風呂が何度か登場していますが,あれはどんな意味を持っているのでしょうか。
ヨンカース氏:
本作では,サイバースペースにアクセスするといった究極的な行動を取る場合,プレイヤーキャラに仕込まれたバイオチップが熱暴走してしまうという設定があります。その熱暴走を防ぐために,ある意味ローテクな手段として用いられ続けているのがフリーザーなんです。
4Gamer:
なるほど。今回のデモでフィーチャーされているパシフィカ地区は,ハイチ系移民が多く住んでいるという設定になっていますが,例えば日本人地区のような場所はあるのですか?
ヨンカース氏:
ええ。以前にお見せした場所はワトソン地区というのですが,あのあたりは日本を含めたアジア系の移民が多い地域ですから,日本語などの看板であふれていましたよね。まだ紹介していないワトソン地区の一区画には,もっと日本風な場所もあるのですが,それは発売後のお楽しみにしてください。
4Gamer:
そう言えば,前回のデモではワトソン地区でKiroshi社の看板などをたくさん見かけたように感じましたが,地区によって企業の存在感が違うのでしょうか。
ヨンカース氏:
ナイトシティは6つの地区に分かれており,地域によって企業の勢力が異なるのですが,Kiroshi社だけでなく,本作で重要な役どころになっているArasaka社といった企業群のヘッドクォーターは,すべて“シティセンター”と呼ばれる地区に集結しています。
4Gamer:
発売まであと8か月ですが,そう言えば6地区のうち,まだ2つしか紹介されていないわけですね(笑)。
ヨンカース氏:
ええ。本作については本当にまだまだご紹介していないことが多いのですが,それだけ作り込まれた世界になっています。コンセプトアーティストとして,細部まで描き込まれたナイトシティに魅力を感じていただけると嬉しいですね。
海外では,アートブック「The World of Cyberpunk 2077」も発売予定