レビュー
2人の兄弟が父を救う旅に出る!
ブラザーズ:2人の息子の物語(Brothers: a Tale of Two Sons)
本作の開発を手掛けたのは,スウェーデンのデベロッパ,Starbreeze Studios。日本ではスパイク(当時)から発売された「The Darkness」や,海外でリリースされた「Syndicate」,最近では「PAYDAY」シリーズなどの開発で知られる。地味ながらなかなかの良作を生み出しているスタジオという印象があるが,「ブラザーズ:2人の息子の物語(Brothers: a Tale of Two Sons)」はどのような作品なのだろうか,さっそくレビューをお伝えしよう。
「ブラザーズ:2人の息子の物語(Brothers: a Tale of Two Sons)」公式サイト
タイトル名に「2人の息子」とあるように,主人公はとある兄弟。父の病気を治すため,遠い場所にあるという命の水を探す冒険に出発することになる。旅の舞台となる世界は,中世ヨーロッパのような雰囲気で,美しく牧歌的な風景が眼前に広がっている。しかし,リアルな世界を再現しているわけではなく,背中にキノコが生えた巨人や,伝説上の生物であるグリフォンが登場するなど,実際はファンタジー色の濃い世界観だ。この架空世界の作り込みはすばらしく,グラフィックスの質も高い。不思議な世界で冒険する楽しさは抜群で,これを魅力に思う人もいるだろう。
主人公のリトルブラザー(左)とビッグブラザー(右)は,病に倒れた父親を救うために旅に出ることに。出会った人々に,命の水がある場所のヒントが描かれた絵を見せて聞き込みを行う |
崖に建てられた巨大な建造物を探索。どことなく「ICO」に近い雰囲気を感じる |
戦争で力尽きたものと思われる巨人の死体。ちょっとだけだがゴア表現も |
この世界の美しさは大きな魅力だ。雪原や山岳部など,バラエティも豊か |
船やハンググライダーといった乗り物で移動するシーンも登場する |
ちなみにローカライズはテキストのみ。しかし,本作の音声は「ほんのちょっとだけ英語っぽい(たぶん)架空の言語」のため,会話の内容を理解できなくても問題はない。というより,登場キャラクターがしゃべることはほとんどなく,ジェスチャーを多用するスタイルなので心配する必要もなく,この不思議な言語を含め,異世界の雰囲気にどっぷり浸れるようになっている。
ふたりの兄弟を別々に動かす独特の操作
本作の大きな特徴は操作方法にある。左スティックで兄「ビッグブラザー」を操作し,左トリガーでアクションを行う。右スティックは弟「リトルブラザー」の操作で,兄と同様に右トリガーはアクションだ。左右のスティックを使用し,兄弟を別々に操作するという,かなり特殊な操作方法を採用しているのだ。
ゲームの冒頭で,父親をリヤカーに乗せて医者のもとまで運んでいくシーンが登場する。リヤカーの先頭に弟が,後ろには兄が立って,アクション(左右のトリガー)を引くとリヤカーを持ち上げる。トリガーを引いた状態のままで,左右のスティックを同時に操作してリヤカーを運ぶというわけだ。この場合,兄弟は同一方向に移動する――つまり左右のスティックを操作する方向は同じで,わりと苦労せずにキャラクターを操れる。
左右のスティックを同時に操作して,リヤカーを運んでいく。このように兄弟の力を合わせて,冒険を進めていく |
だがゲームを進めていくと,兄弟を別々に操作しなくてはならないシーンも出てくる。2人のキャラクターを同時に,しかも異なる方向に操作するのは思った以上に難しい。兄の動きにいつの間にか弟がつられてしまったり,兄弟の位置が入れ替わって頭が混乱したりと,思い通りに動かせないことが頻繁に起きる。
とはいえ,この操作性のもどかしさは欠点ではなく,魅力の1つ。「ままならない」操作が意外に新鮮で,「脳トレ」ゲームのような楽しさが感じられる。敵に襲われたり,制限時間が迫ったりといったことでプレイヤーが急かされる場面は少なく,うまく操作できないからといってストレスを感じることは,ほとんどないことも付け加えておきたい。
崖を登るシーンでは,1人ずつ操作すればいいため,焦って混乱することはない |
「弟だけが進める場所でアクションを行う」という,協力プレイの定番といえるシチュエーションも |
冒険の途中には,さまざまな仕掛けや謎が兄弟の行く手に立ちふさがる。要するに,パズル要素が散りばめられているわけだが,独特の操作と組み合わさることで,本作の大きな魅力になっている。
例えば,大きな壁を登るシーンでは,2人の身体がロープでつながれている。どちらか1人が壁にしがみついた状態で,もう1人がそこからぶら下がって,振り子運動の要領で遠くにある突起物に飛びつくのだ。プレイヤーは壁にしがみついているキャラクターのトリガーを引きつつ,別のキャラクターはスティックを操作して反動をつけ,トリガーで壁に飛びつくというアクションが求められる。先述の「ままならない」楽しさに加えて,失敗すればゲームオーバーという緊張感も味わえる。
ロープを利用して大きな壁に挑む。普段は非力な弟だが,このときの怪力っぷりは「火事場の馬鹿力」といったところか |
このシーンでは1人がオブジェクトを動かし,もう1人がハンドルの操作を担当するという仕掛け |
ただし,パズル自体の難度は全体的に低く,筆者が「う〜ん……」と頭を悩ませたのは2か所だけ。またアクション要素もさほど高くなく,敵と戦うシーンは片手で数えられるほどしかなかった。ライトユーザーにはちょうどいいかもしれないが,筆者としてはもう少し歯応えを感じられるバランスのほうが好みだ。
個々の要素は魅力的だがボリューム不足感は拭えない
火事で家族を亡くし,自殺を試みる男を発見。ゲームのクリアには関係ないが,彼を救うためには…… |
少々やんちゃな一面を持つ弟だが,心優しい巨人を助けたり,悲しみに暮れている人を慰めたりと,兄弟間以外でも心温まるシーンが描かれていて印象的だった。
そんな2人の冒険は,衝撃の結末を迎えるのだが……やはりそれはぜひ自分の目で確かめてほしい。ちなみに,筆者はなんともやりきれない気持ちを味わうことになってしまった。
不満を感じたポイントがなかったわけではない。主人公達が行動できる範囲がさほど広くなく,もっとこの世界を探索する楽しさを味わっていたかった。そして何よりも,3〜4時間でクリアできてしまうというボリュームの少なさだ。仕掛けや謎は,1度クリアすれば満足してしまうことからリプレイ性も低い。それでいて「1500円」という価格設定なので,割高感は否めない。
1回クリアしたチャプターはメニュー画面で選択可能。これで実績の全解除を目指すのだ |
緻密なファンタジー観で作り込まれた世界は美しく,さらに独特の操作も新鮮に感じられるはず。この異世界の雰囲気に魅力を感じた人や,ちょっと変わったアクションゲームを探している人におすすめしたい1本だ。
「ブラザーズ:2人の息子の物語(Brothers: a Tale of Two Sons)」公式サイト
- 関連タイトル:
ブラザーズ:2人の息子の物語(Brothers: a Tale of Two Sons)
- この記事のURL:
キーワード
505 Games and the 505 Games logo are trademarks and registered trademarks of 505 Games (U.S.) or its affiliates in the U.S. and other countries.
(c) 2013 Starbreeze Studios