プレイレポート
「黒い砂漠」リマスタリングが8月22日に実装。グラフィックス,サウンド,そしてゲーム環境はどう変わるのか。先行プレイレポートを掲載
2017年にサンフランシスコで開催された「Game Developers Conference 2017」では,シリコンスタジオが開発するポストエフェクトミドルウェア「YEBIS」の適用試演が実施された(関連記事)。そのときに使われたのが「黒い砂漠」で,リマスタリングしたグラフィックスの映像が公開されている。以後,オフラインイベントなどで,開発元であるPearl Abyssが行うグラフィックスとサウンドのリマスタリング作業の進捗が公開されてきた。
これがいつ実装されるのか気になってたプレイヤーも多いと思うが,8月11日にGlobal LAB(いわゆるテストサーバー)にリマスタリング版が導入され,それから約1週間後となる8月22日,日本でリマスタリング版が実装されることが決まったのだ(関連記事)。
今回,一足先にそのGlobal LABで,リマスタリングされた黒い砂漠(以下,リマスタリング版)に触れることができた。リマスタリング版の詳細は,黒い砂漠公式サイトにあるティザーサイトや最新情報のページを見てもらうとして,本稿では実機によるスクリーンショットを中心に,リマスタリングされた黒い砂漠の内容をお届けしたい。
「黒い砂漠」リマスタリングティザーサイト
「黒い砂漠」公式サイト
現行版とリマスタリング版は画面の品質設定で変更可能。オーディオはリマスタリングされた曲にすべて差し替え
本題に入る前に,システムやゲーム設定の面からリマスタリング版について迫っていこう。
まずクライアント容量についてだが,現在日本で動いている黒い砂漠(以下,現行版)のサイズは約30.2GBなのに対し,リマスタリング版は約30.4GBと,その差はわずか200MB(※テスト用クライアントのため,日本での実装時には異なる可能性がある)。クライアントサイズが少し大きくなった程度なので,HDD容量についてはあまり気にしなくてよさそうだ。
それ以上に気になるのが,グラフィックスの大幅な向上により,PCの必要動作環境が上がるのではないか,という点だろう。
以前からリマスタリング環境をオン/オフできるとのアナウンスがあり,現在プレイできるのであれば,問題ないと伝えられていた。その言葉の通り,リマスタリング環境のオン/オフは,「Settings(ゲーム設定)」の「Display Settings(画面設定)」-「DisplayQuality(品質)」にある「Graphics(画面品質)」で行える。
現行版では画像品質設定は,左上の「Very Low」から下段左の「最適化モード」までの7つだが,リマスタリング版は下段中央が「Highest(Remasterd)」に変更され,さらに下段右に「Ultra」が追加されて9つになっている。まずはグラフィックスの比較として,9つの画像を見てもらいたい。
Very Low(※これを含めてテクスチャーはすべてHigh設定) |
Low |
Medium(現行版:MIDDLE) |
SlightlyHigh(現行版:MIDDLE HIGH) |
High |
Very High |
Lowset/Optimal(現行版:最適化モード) |
Highest(Remastered) |
「Highest(Remastered)」と「Ultra Mode」のグラフィックスの質が,ほかの7つと比べて明らかに違うことが分かるだろう。項目名にもあるとおり「Highest(Remastered)」がリマスタリングされた環境のようで,「Ultra Mode」はその上位版といったところだろうか。この2つのどちらかを設定すればリマスタリングされたグラフィックス環境となり,ほかの7つを設定すれば現行版と同じグラフィックス環境でプレイできる。
同時に気になるfpsも確認してみた。計測場所は,モンスターもNPCもいないフィールドと,人通りの多いハイデルの雑貨商人前とした。参考として筆者のPC環境も掲載するが,公式サイトの動作環境において「HIGH」が動くスペックと同等の環境だ。比較参照用として,現行版の「Very High」「最高仕様モード(β版)」のfpsも掲載する。
OS:64bit版Windows 8.1
CPU:Core i7-4790K(4C8T,定格4.0GHz,最大4.4GHz,共有L3キャッシュ容量8MB)
メインメモリ容量:16GB
GPU:GeForce GTX 970(グラフィックスメモリ容量4GB)
リマスタリング版品質 | fps(フィールド) | fps(ハイデル) |
High | 70〜71 | 64〜65 |
Very High | 68〜69 | 60〜64 |
Highest(Remastered) | 46〜48 | 40〜44 |
Ultra Mode | 23〜24 | 18〜19 |
現行版品質 | fps(フィールド) | fps(ハイデル) |
Very High | 69〜70 | 48〜58 |
最高仕様モード(β版)(※) | 39〜47 | 27〜31 |
※8月22日追記:垂直同期オフ,フルスクリーンで再計測。計測場所は同じだが,天候やNPC/PCの存在など同条件ではない
現行版の「Very High」とリマスタリング版「Highest(Remastered)」がほぼ同じfpsで,リマスタリング版の「Ultra Mode」は現行版の「最高仕様モード(β版)」を少し下回った。現行版の「Very High」で遊べているプレイヤーであれば,リマスタリングされたグラフィックスが楽しめる「Highest(Remastered)」で問題なくプレイできそうだ。また,同じ「Very High」でもリマスタリング版の方がfpsが高く安定していることから,全体的なグラフィックスの最適化も行われたのかもしれない。
もう一方のオーディオリマスタリングだが,こちらはグラフィックスと違ってオン/オフはできず,すべて現行版と差し替えられることになる。
光の演出に力が入ったグラフィックスリマスタリング。雲や川,海などの自然の描写も大きく変化
リマスタリングされたグラフィックスで,もっとも特徴的なのが光の表現だ。ただ明るいだけでなく,レンズフレアやゴーストといった「眩しさ」の表現が多用されている。そのせいか,これまでは太陽を見上げてもぼんやりと明るい部分があるといった感じだったが,リマスタリング版では現実の真夏の太陽を見上げるのと同じぐらい眩しい。
太陽光の眩しさがそのままゲームの明るさの基準となっているのか,リマスタリング版は現行版よりも数段明るい画面となっている。とくに晴れた昼間は,明るすぎるぐらいの印象があるが,その一方で草木の緑や薬草や花などは発色が良くなっており,メリハリが強調されている。色の鮮やかさという点では,リマスタリング版が圧倒していると言っていいだろう。
日中の太陽光はちょっと眩しすぎる気もするが,個人的には明け方や夕方の光の加減に注目したい。これまでも朝焼けや夕焼けはなかなかの美しさだったが,リマスタリング版ではそれに磨きが掛かっているように思えるからだ。ぜひ,お気に入りのスポットで朝夕の太陽がもたらす光の芸術を見てもらいたい。
太陽光が強調されたのと同じぐらい力が入っているのが,金属などに対する反射光の演出だ。これはプレイヤーキャラクターが持つ武器はもちろん,NPCの服飾品などに対しても大きな影響をもたらしている。
光の表現のほかにグラフィックスでの大きな変更点と言えば,雲と水の表現だろう。とくに水は,海と川とでそれぞれ大きな違いがあるので注目だ。
水については,海と川で異なる方向に表現が変化した。
リマスタリング版の川は,水の透明度が大幅にアップ。水面も静かで,水底まで見通せるほどだ。水の奥底まで見通せなかった現行版のほうがややリアルに感じるかもしれない。
渓谷や滝など,地形を流れる水の描写も変化していて,澄んだ水から,水しぶきが混じった白っぽい水へと様変わりしている。
VeryHigh |
Ultra |
海についても,川などと同様に透明度が変化している。現行版の海は,リゾート地のようなエメラルドグリーンに輝く海で,透明度も非常に高かった。だが,リマスタリング版では透明度が下がり,ごく一般的な海に見える表現になっている。波の演出も変更され,よりリアルな波の動きが再現されていた。滝の描写などもそうだが,リマスタリング版は写実的なリアル指向を目指しているのかもしれない。
生演奏の曲が心地よいオーディオリマスタリング。サウンドエフェクトもより強調されたものに
グラフィックスとともに導入されるサウンド面のリマスタリングにも触れておこう。
ヨーロッパ3か国でオーケストラ収録されたというサウンドは,現行版と大きく印象が異なる。現行版の曲に比べてあまり自己主張せず,聞き慣れた曲ではあるがどこか違う,ゆったりとした旋律が心地いい。すべての曲を聞いたわけではないが,いずれも落ち着いた感じで,ゲームをしていなくてもバックグラウンドでいつまでも流しておきたいという曲が多かった。
ただ,乗馬時の曲など,現行版からカットされたものもあるようで,そのあたりは少し残念かもしれない。
オーディオのリマスタリングは曲だけでなく,スキル使用時のエフェクトなどにも及んでいた。ウォリアーが剣を振ると「ギャリン!」と大きな力が作用した金属同士がこすれ合うような音がしたり,ウィッチやウィザードが放つ炎や雷なども現行版以上に派手で硬質的な音が響く。
というわけで,数日間プレイしてみたが,「リマスタリング版は,黒い砂漠の“世界”をより豊かなものにしてくれそうだ」という感想を持った。
光の演出はちょっとやりすぎじゃないかと思うところもあるが,グラフィックスのリマスタリングは,細かな描写や演出に大きく貢献しており,新鮮なプレイ体験ができそうだ。
オーディオのリマスタリングについては,現行版とリマスタリング版のオーケストラのどちらが好みかにもよるので,グラフィックスのように,純粋に向上したとは言いづらいところもある。個人的には文句の付けどころがない……のだが,あるとするならば聞いた範囲内の曲だと少し大人しすぎる,といったところだろうか。テンションが上がりそうな曲はあまり聴けなかったので,そういう曲も増えてほしいと感じた。
さて,このリマスタリングの導入で,何より嬉しいのは必要PCスペックが上がらなかった点だ。繰り返しになるが,リマスタリング版のグラフィックスを楽しむのなら現行版の「VeryHigh」と同等程度,より上位の「Ultra Mode」ならば現行版の「最高仕様モード(β版)」で遊べるくらいのスペックがあれば問題ない。
もちろん,そのクオリティで攻城戦をプレイするとなると,さらに上位のCPUやグラフィックスカードが必要になりそうだが,普通にプレイする分には,あまりハードルが高くないのは大きなポイントと言えるだろう。
今回掲載した画像からは,黒い砂漠をプレイしている人ほど,どれだけグラフィックスが向上したのかがよく分かるはずだ。もうすぐ,その世界で遊べることを楽しみにしつつ,SSでは伝えられないオーディオ/サウンド面がどう変わったのかにも期待してほしい。最後に,ゲームオンがPearl Abyssに行った質問と,その回答を掲載しよう。
●何故リマスターをしようと思ったのか
今までも最高水準のグラフィックスを持っていた「黒い砂漠」ですが,オープンサービス後も,継続して最適化や高スペックモードのβモードを開発するなど,グラフィックス技術が発達するに伴い,ゲームへそれらの技術を反映させるべく努めています。
サウンドやUIも開発に尽力してしましたが,好みによって好き嫌いが多く分かれる部分でした。
また,開発に集中しながらも,それらを補完する必要性を感じていましたが,オープンサービス後にそのような作業をすることは,多くの努力と時間を要し,なかなか進めることができなかったこともあります。
「黒い砂漠」のサービスは,継続的に多くのアップデートをしてきており,そして現在もしておりますが,一般的なアップデートの他にも,「黒い砂漠」をプレイしていただいている方々へ,どのように恩返しできるかを悩み,新しい作品を作ることより,「黒い砂漠」そのもののアップデートをすることに決定しました。
グラフィックス,サウンド,UI等,多彩な部分において進行されたリマスターは「黒い砂漠」への再投資とチャレンジ,そして諦めないという開発会社「Pearl Abyss」の意志を盛り込んでいます。
●グラフィックス・サウンドの次にリマスターをしようと思っている部分があるか
今までもそうでしたが,「黒い砂漠」は持続的に発展し,進化しているゲームです。
これからも,不足していると思う箇所は,必ずしもリマスターのような大規模な形ではなくても,すべての箇所を今後も発展させていきたいと思います。
たぶん数年後の「黒い砂漠」は今とはまた違った姿になっているかもしれません。
●このリマスターで推奨スペックが上がらないのはすごいと思いますが,実現までに一番難しかったのはどこか
既存のレンダリングモードを維持しながらリマスターモードを追加する方式なため,一番難しかったのは,データ修正が既存のレンダリングモードに大きく影響を及ぼす部分の場合,容易に修正できなかったことです。その修正がLiveのサービスに悪影響を及ぼす可能性があるので,慎重に作業する必要がありました。
「黒い砂漠」リマスタリングティザーサイト
「黒い砂漠」公式サイト
- 関連タイトル:
黒い砂漠
- この記事のURL:
(C)PearlAbyss Corp. All Rights Reserved.