インタビュー
3D演出を用いたリッチなソーシャルゲーム「戦場のヴァルキュリアDUEL」の運営/開発スタッフにインタビュー
ゲームに詳しい人ほど,ソーシャルゲームと聞くと,どうしても絵を入れ替えただけで中身は同じという印象が拭えないが,本作は3Dを用いた演出を始め,“次のソーシャルゲーム”を見据えた挑戦を散りばめた意欲作となっている。
その結果として,現在は同時接続者数が8500人以上と好評を収めている。しかし,実際の開発にあたっては,担当者自らが「綺麗に進んだプロジェクトではない」と語るほどの紆余曲折があったという。
今回のインタビューでは,その開発の経緯や今後の展望を本作の主要メンバー4名に聞いてきた。
NHN Japan共同開発事業部 プロデュースチーム マネージャー/シニアディレクター 戦場のヴァルキュリアDUELプロデューサー 津屋圭吾氏 |
NHN Japan 共同開発事業部 プロデュースチーム 戦場のヴァルキュリアDUELディレクター 真下聡一氏 |
セガ 戦場のヴァルキュリアシリーズプロデューサー 本山真二氏 |
セガ ネットワーク運営部 南涛祐介氏 |
「戦場のヴァルキュリアDUEL」公式サイト
開発初期は迷走した?
大胆な方向転換のあったプロジェクト
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
今回は戦場のヴァルキュリアDUELに関わる主要スタッフが一堂に介す機会となりましたので,ぜひNHN Japanさんとセガさんが組むことになった経緯から教えてください。
本山氏:
NHNさんが「セガと何か共同開発をやってみたい」というお話をくださったのがきっかけです。僕のところに話が降りてきたのは2010年の11月頃だったのですが,当時は「戦場のヴァルキュリアのソーシャルゲーム」という曖昧なコンセプトがあるだけで,具体的なゲーム内容は決まっていませんでした。
4Gamer:
戦場のヴァルキュリアのソーシャルゲームについて,本山さんはどう思われたんでしょうか。
本山氏:
年が明けて現場の方とお話をしたときに,いろいろとプランを見せていただいたんですが,正直しっくりきませんでしたね。ただ,それは我々の得意とするパッケージビジネスと,NHNさんの十八番であるオンラインサービスの考え方の違いもあったと思っています。結局,NHNさんの「戦場のヴァルキュリアでゲームを作りたい」という思いはよく分かりましたし,餅は餅屋という言葉もありますから,「面白いプランにして,見せてください」という形で,NHNさんとセガのソーシャルゲーム部門担当にお任せすることになりました。
4Gamer:
なるほど。では,プランを任されたNHNさんの側は?
津屋氏:
そこから実際に作り始めます。ただ……。
4Gamer:
……何か気になることがあったんでしょうか。
津屋氏:
私は,ある程度ゲームが形になった段階でプロジェクトに入ったんですけど,正直,その頃はチームが迷走していまして。実物を見せてもらったときの第一印象は「これ,やばいな」でした。そしてたぶん,本山さんも同じように感じたと思います。
本山氏:
うん,やばかった(笑)。
津屋氏:
でも,セガさんが築いていた戦場のヴァルキュリアの資産がすべて使われていたので,パッと見たときの印象はすごく良かったんです。それなのに,実際に触ってみると「うーん……これはスマートフォンでやらなくても,いいんじゃないか?」という疑問が浮かんでくる内容でした。
真下氏:
当時のバージョンは,1回の戦闘に20分かかっていましたからね。
4Gamer:
20分……。それは,コンシューマのシリーズに近いゲームシステムだったんでしょうか。
真下氏:
いえ,そういうわけでもありません。両端に分かれ,横のラインに沿ってカードを配置し,ターンごとにAPを消費してユニットを移動させて,ユニット同士がぶつかると戦闘が始まるという形式でした。
本山氏:
対戦型のタワーオフェンスとでもいえば,イメージはしやすいかもしれませんね。
真下氏:
やりこむと楽しくなってくるシステムなんですが,取っかかりのハードルが高い仕様だったと思います。現場でも,どこかモヤモヤは残っているような感じが続いていました。
4Gamer:
ゲームとしての出来そのものは,悪くなかったんですね。
津屋氏:
現場の人たちは「面白い」と言ってましたけど,私はこのまま無料でリリースしたら,ビジネスとしてもセガさんに対しても,申し訳ない結果になってしまうだろうと思いました。発想を変えて,これを買い切りのアプリとして売ることも考えましたが,残念ながらそれが成功するイメージも浮かびませんでしたね。
4Gamer:
……あの,直球で聞いてしまいますが,もしかして開発は順調に進んでいなかったんでしょうか。
津屋氏:
ええ(笑)。今回の件はお世辞にも綺麗に進んだプロジェクトとは言えません。紆余曲折があって,立ち上げ当初とはスタッフも変わりました。実は,ここにいる4人はみんな途中からプロジェクトに参加した人間なんですよ。
本山氏:
今だから言えますけど,あの頃は一体どうなってしまんだろう? と思いました(笑)。
(一同笑)
たまに評価版(開発途中の進捗を確認するバージョン)が上がってくるんですけど,抱いた感想は津屋さん達とまったく一緒でした。「誰がやるんだろう,これ?」って。ただ僕は,これはNHNさんだけの問題ではなく,ヴァルキュリアをソーシャルにするということに対して,セガの担当者にも迷いがあったからではないかと思っていました。
4Gamer:
それは,ソーシャルゲームで「ヴァルキュリアらしさ」をどう表現するのか,といったことに関してでしょうか。
本山氏:
ええ。コンシューマで展開してきたシリーズですから,“コンシューマらしさ”を「残さないといけないんだ」という,ある種の強迫観念があったんでしょう。ただ,このプロジェクトに対しては,考え方を切り替える必要はあったんじゃないかと思います。ハードが変われば,遊び方や楽しみ方だって変わります。PCのブラウザオンリーで遊ぶならまだしも,スマートフォンを主眼に置いて遊ぶもので1回の戦闘が20分というのは……。
真下氏:
最初は「戦場のヴァルキュリアで開発できるなら,ちゃんとゲーム性のあるゲームにしたい」という話が現場の中にありましたから,開発を進める中で固定観念に結びついてしまったのかもしれません。セガさんの担当の方とお話をしても「ヴァルキュリアらしさを大事に」ということは良く言われていましたし。
4Gamer:
ヴァルキュリアらしさと言われると,どうしても戦闘システムは気にしてしまいますよね。あの斬新さが受け入れられたタイトルでもあるわけですから。
津屋氏:
ただ,私がチームに入ったときにはもう「ゲームシステムを今変えなかったら,これ以降は変えられない」という段階まで来ていたんです。だから思い切って方向転換したんです。
本山氏:
奇しくも,津屋さんがNHN内でそういう思い切った選択をしたのとほぼ同じ時期に,セガも体制を変えたんです。南涛が窓口を担当するようになり,僕自身も前よりダイレクトに意見を言うようにしました。
南涛氏:
すごく意外だったのですが,「こんなに原作をいじっちゃって大丈夫かな?」と思って本山に確認すると「もっとやってくれ」と返ってきたりするんです。なので,NHNさんと「どうしようか」と,今でも毎日話しています。
本山氏:
NHNさんや南涛から見ると,どうしても僕は「原作者」の立場になるので,余計な制約をつけて不安な状態で開発を続けていったら迷走するな,と思ったんです。
4Gamer:
「ここが違う」とダメ出しをするのではなく,むしろ緊張を解きほぐすようなかたちで監修をされたと。
本山氏:
というより,せっかく違うハードで違うプレイヤーに向けてアプローチするのに,コンシューマと同じことをやっていたら意味がないと思ったからです。そして,違う人たちにターゲットを合わせるなら,その人たちに向けたゲームデザインじゃないといけない。極端な話,このゲームに関してはBLiTZ(※)じゃだめなんです。だから自由にやってほしかったんですよ。
※BLiTZ:戦場のヴァルキュリアシリーズの特徴にもなっている戦闘システムのことで,「Battle of Live Tactical Zone」の略称。
津屋氏:
私は「どれだけ少ない情報で,ゲームを理解してもらうか」を突き詰めてゲームデザインをしています。例えば数値が上がっているところは演出を派手にして,「強くなっている」ことを実感してもらう。でも,リザルトボタンを1回押せば,スキップして戦闘はすぐに終了できるようにする,とか。DUELを作り直すときも,この点は意識しました。
4Gamer:
確かに,現在のバージョンでは,戦闘をスキップしても支障なく遊べますね。
津屋氏:
そもそも,3Dの読み込みに時間がかかることがあるので,テンポには気をつけています。
4Gamer:
ちなみに,その大規模な戦闘の仕様変更はいつ行われたんでしょうか。
真下氏:
去年の10月くらいのことですね。
4Gamer:
そうなるとコスト面での負担もあったのでは……。
津屋氏:
2択でしたね。今まで使ったコストもろとも,奈落の底へ落ちていくか,当初の予定よりコストはかかってしまうけど,お互いハッピーになれるよう突き進むか。今回は「NHNとセガの初めての共同開発のプロジェクト」でしたから,成功させないといけないと思ったわけです。
本山氏:
でも,それで軌道修正できるというのは,やはり地力があるからですよ。
津屋氏:
当時のバージョンを見たとき,直感的に「これなら何とかできるな」と思ったんですよ。それはやっぱり,セガさんの作ってきた,キャラクターモデルやデザインを含めたヴァルキュリアの財産が素晴らしかったからでしょうね。何十億円という開発費をかけて,蓄積されてきた素材なんですから。
本山氏:
……いや,さすがにそんなに開発費かかってないけど(笑)。
津屋氏:
あれ(笑)。でも,すでに積み上げられたものを素材として使わせてもらえることは,それだけでかなりのアドバンテージなんですよ。運営のプランだって,格段に建てやすいんです。ゼロから作っていく場合,「次にどういったキャラを入れるか」とか「どっちのキャラが強いか」といったことを決めるのが難しい。先にちゃんと原作の設定が決まっていれば,それを踏襲すればいいんですから。
4Gamer:
そこは,ヴァルキュリアらしさにもつながっているんでしょうか。戦闘はBLiTZではないし,ストーリーが描かれているわけでもないのですが,実際プレイすればヴァルキュリアだと思える作品になっていますよね。
本山氏:
ヴァルキュリアらしさについてはセガ側でもよく議論するんです。キャラクター,ストーリー,戦闘システムという3つの柱がなければ,ヴァルキュリアではないのか,と。究極的に言えば,そのとおりなんですが,それを実現するのはコンシューマ版でいいんです。さっき津屋さんが2択だとおっしゃられたのと同じように,セガの社内でも,当時の担当者を交えて「このままの形で進めるなら,プロジェクトは止めようよ」という話をしていました。
4Gamer:
セガ社内でも,お蔵入りが検討されていたんですね。
本山氏:
中途半端なものを作っても両社のためにならないし,言ってしまえば,ヴァルキュリアというIPを傷つけるだけですからね。作り変えるのはコストがかかりますけど,しょうがない。
津屋氏:
お互い覚悟を決めましたよね。道を変えるために予算も増やしたので,もしすっ転んでいたらどんなことになっていたか(笑)。
作り直すにあたっては,単に元のバージョンから要素をそぎ落としていくだけではなかったわけですよね。
真下氏:
抜本的に作り替えましたが,流用できるところはしています。当時から,やはりオートバトルは作らなきゃいけないという考えはありましたから,それを今回はよりソーシャル寄せて,大幅に路線を変えていった形になりますね。
4Gamer:
仕切り直してから現在のバージョンが完成するまでは,比較的うまくいったんですよね。
真下氏:
ええ。決まってからは,かなり早かったです(笑)。
8500人以上の最高同時接続者数を集め,残留率も高くする工夫
4Gamer:
さて,いろいろと紆余曲折はあったようですが,現在リリースされているものを見ると,スマートフォン向けのアプリとしては,かなりリッチなグラフィックや演出になっていますよね。このこと自体は非常に特徴的だと思うのですが。
津屋氏:
3Dグラフィックスのソーシャルゲームが今年中に出てくることは分かっていたんです。そして,おそらくそれが「次のソーシャルゲーム」の“最初”になるだろうと思ったので,どこよりも早く出したかった。
4Gamer:
次のソーシャルゲームですか。
津屋氏:
ええ。ただ,別にそれがまったく新しいものというわけではありません。今あるPCブラウザゲームの良いところや,日本人が大好きな箱庭育成,あとはカード,そういったシステムというか,ソーシャルゲームそのものに,プレイヤーは慣れてきています。そこに,見た目の華やかさがある3Dを入れたりすると,ちょっとやってみようかなという気持ちになると思うんですよ。
4Gamer:
そういった工夫はうまくいっているんでしょうか。
津屋氏:
最高同時接続者数は現時点で8500人以上と,ハンゲーム内でもTop3に入る数値になっています。一度プレイした方が,ゲームをやめずに残ってくれている「残留率」の数値もとても高く,成功していると思います。
4Gamer:
8500人はすごいですね。むしろ,それでもハンゲーム内では3位なのか……と(笑)。
本山氏:
これはセガ側から見てもすごく良い数字です。最近はセガもオンラインゲームに力を入れていますから,このタイトルで得られる知見はとても貴重だと思っています。
4Gamer:
本山さんとしては,従来のヴァルキュリアファンと,新規プレイヤーの割合は気になるところですよね。
本山氏:
それはもちろん調べました。ゲリラ的に実施したDUELのユーザーテストに参加したプレイヤーの割合は,元々ハンゲームさんのIDを持っていた人達が多数派,ユーザーテストが始まってから新たにIDを取った人達が少数派でした。ちょっと強引な言い方をすれば,ユーザーテストのためにIDを取った方は,従来のヴァルキュリアファンと近しいと考えられるでしょうから,元々IDを持っていた多数派の方の中には,ハンゲームで初めてヴァルキュリアを知った,という人が少なからずいると考えられます。
津屋氏:
年齢層からも,プレイヤー層の違いが少し見えますね。PC版の情報になりますが,今は20代前半が一番多くて,次が20代後半,という感じになっています。コンシューマのヴァルキュリアは30代前半が多いと伺っていますので,少し若いんです。
本山氏:
大体,5歳から10歳くらい若返っている印象があります。
南涛氏:
女性も増えてますよね。
本山氏:
そうそう! コンシューマ版では95%くらいが男性なんですけど(笑)。
津屋氏:
DUELでは全体の15%くらいが女性ですね。
本山氏:
そういう方々がすぐに離れず,継続してプレイしてくださっているというのは,本当にありがたいなと思います。
4Gamer:
その残留率の高さを維持するポイントは,どこにあるんでしょうか。
津屋氏:
拠点を育てていくパートが,間違いなくプレイヤーをつなぎとめる要になっているでしょうね。ハンゲームでサービスしているほかのソーシャルゲーム,例えば「大戦略WEB」でも,拠点を育てるパートは人気です。
4Gamer:
そういう話は各所で聞きますが,日本人はそうやってコツコツ何かするのが,本能的に好きなんですかね。
津屋氏:
そうかもしれませんね。大戦略WEBも,毎日の日課として拠点を育てて,兵器だけを大量に作っている人がたくさんいて,対人戦を積極的にしている人は結構少ないんです。拠点に,兵器をいっぱい作って貯め込んで,「よーし今日も貯めた。明日も貯めるぞ!」みたいな。
4Gamer:
なるほど。拠点を育てていくうえで,ほかの作品と違う点があったりしますか?
津屋氏:
拠点の成長速度が速めになっています。極端な話,それをやっているだけで遊べるくらいです。建設をすることで,戦闘へのフィードバックもあるので,後で闘いたくなったときに有利になりますし。
4Gamer:
確かに,施設の中には,燃料の最大値や回復速度が増したり,援護部隊の能力が上昇するものがありますね。
津屋氏:
拠点の成長と戦闘をリンクさせることで,何をすればいいかが分かりやすくなっているのは良いと思っています。あと,残留率に貢献している要素といえば,イベントを絶やさずにずっと開催しているのは良いのかなと。
4Gamer:
常に何かしらのイベントが行われている状態なんですか。
津屋氏:
ない日は基本的にありません。参加すればイベントアイテムをもらえますから,「起動してちょっと戦闘してやめる」ということもできますし,逆に,長いことやろうと思えば,へとへとになるくらいまでやりこめます(笑)。
4Gamer:
おそらく,トップランカーの方はずっとゲームにログインし続けているんでしょうね。
真下氏:
深夜とか朝方とかになっても,同時接続者数が常時2000くらいはあったりしますからね。
4Gamer:
それはすごい……。
津屋氏:
我々も,勉強のため,ほかのソーシャルゲームで上のランキングを目指してやってきたんです。そのため,DUELでも同じようにやれば上位にいけるだろうと思ったんですけど……全然ダメでした(笑)。
4Gamer:
言われてみると,ソーシャルゲームはイベントの切れ目がプレイの切れ目になってしまいがちですね。イベントを途切れさせない,というのは大事なことかもしれません。
津屋氏:
ただ,途切れさせないけど,プレイヤーが能動的に参加する必要もないんです。例えばボスと戦うだけでイベント用のポイントやチケットがもらえるので,普通に遊んでいるだけで,イベントに参加していることになるんです。
なので,ランキング上位を目指す方々のためのシステムもある一方で,「自分はこのあたりまででいいや」という人達にも,ある程度の目標を持ってもらえるような設計になっています。
4Gamer:
カジュアルにプレイしていてもある程度のプレゼントがもらえますし,その一方で,徹底的にやり込まないと達成できないほどの制圧ポイントが設定されているプレゼントもありますよね。
津屋氏:
ライトユーザー,ミドルユーザー,ヘビーユーザーといろいろなレイヤーがあると思うんですけど,例えばランキングイベントが始まっても,ライトな人が「どうせ上位は無理だし,やっても仕方ない」と思ってしまったら,面白くなくなってしまう。だからレイヤーによって目標を設定しておく,というのもポイントになっているかなと思いますね。
ソーシャルゲームは「予想がつくから遊べる」
4Gamer:
戦場のヴァルキュリアシリーズを統括されている本山さんの立場から,完成した本作をご覧になってみていかがですか?
本山氏:
正直な気持ちを言ってしまうと,よく出来ているなと思う部分と,やっぱり不満のある部分とが共存していますね。ただ,コンシューマと違い,最初にすべての要素を詰め込むと,それを受け入れられない人にとっては壁になっちゃいます。なので,そこは我慢している状態です。
4Gamer:
一種のもどかしさでしょうか。
本山氏:
現在の形に満足しているわけではないんですけど,今回はサービスを展開していく中で徐々にやれることが増えていくというのが,DUELのユーザーさんを大事にすることだと思っていますし,そういう意味では,将来に期待していますよ。実際,追加要素やアップデートのアイデアはたくさん聞いています。
新しい機能を入れるのは比較的難しくありませんし,3Dですからやれることも多いんです。ただ,本山さんもおっしゃったとおり,やれることが増えるというのはリスクにもなり得るんです。これは持論ですが,ソーシャルゲームって「予測がつくから遊べる」んだと思っていて。
4Gamer:
予測ですか。
津屋氏:
大体のプレイ時間や,どれくらいのプレイ内容になるのかといった予測ですね。ちょっとした時間に遊べるのかどうか,とか。コンシューマゲームの場合は,「これからスタートしたら,どれだけの時間,このゲームをやらないといけないのか」という気持ちがどこかで生まれてしまって,時間がない人ほどなかなか遊び始められないんですよ。
4Gamer:
確かにコンシューマゲームの場合は,プレイ開始から一区切りつくところまで何時間かかるか見当がつかないことも多いですね。据え置き機の大作は特に。
津屋氏:
そうですよね。私は,ソーシャルゲームのプレイヤーは,消費する時間やプレイする内容をある程度で予測してプレイしていると思っているんです。例えば「新宿から渋谷までの区間で,どれだけ戦闘ができるか」とか,「どれだけTPを使ってカードを引けるか」とか,「合成が何回できるか」とかね。
4Gamer:
なるほど。
津屋氏:
とりあえず今は,イベントで足りない部分を直すとか,触ってみて違和感のあるところを丁寧に調整するとか,そういうチューニングをしていきたいと思っています。新しい機能をどのタイミングで入れるかは,まだ検討しているところです。
4Gamer:
チューニングといえば,スマートフォン版の動作の安定性はどうでしょう。App StoreやGoogle Playのレビューには「プレイ中にアプリが強制終了してしまう」といった声が少なからず寄せられていますが。
真下氏:
現在,強制終了の現象に限らず,さまざまな問題について順次対応中です。もともと次のソーシャルゲームを意識し,ハイスペック名スマートフォン向けに制作していましたが,特にプレイに支障のある部分に関しては,できる限り早く解決したいと思っています。
津屋氏:
昔のiアプリも,白黒だったところからだんだんスペックが上がって,コストがかかるようになっていったじゃないですか。
4Gamer:
最初は低コストで開発できることが魅力だったのに,結局は何千万円もかかるようになりましたよね。
津屋氏:
ほとんどの方が分かっているとは思いますが,ソーシャルゲームも今はその変化の途上ですね。スマートフォンも,Webベースのソーシャルゲームならばコストは低かったんですけど,今後は3DCGなどが当たり前になっていくでしょうから。
4Gamer:
プレイヤーもいずれ,シンプルなグラフィックスや演出に飽きてしまうでしょう。
津屋氏:
ええ。その頃には今のソーシャルゲームバブルは,はじけるだろうなと思います。
4Gamer:
……あと何年くらいだと思われますか?
津屋氏:
うーん……来年くらいには,はじけるんじゃないかなと。
4Gamer:
来年ですか。確かに,とりあえず出したら人が集まるという時期は過ぎた印象がありますから,今後はDUELのようにリッチ化したタイトルを始めとした,既存のソーシャルゲームから別のジャンルに移ったものでないとダメなのかもしれませんね。
本山氏:
そういうときに生き残れるかどうかは,企業の幹の太さも重要なんですよ。DUELが一度迷走したのに立て直せたのは,セガとNHNさんという会社の芯の強さがあったことも多分にあるでしょう。そうやって生まれたタイトルだからこそ,DUELはソーシャルゲームバブルがはじけたとしても,生き残っていけると思っていますよ。
4Gamer:
本日はどうもありがとうございました。
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