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  • カプコン
  • 発売日:2013/09/26
  • 価格:パッケージ版:5990円(税込)
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「ロスト プラネット 3」はなぜ極寒の惑星へ“原点回帰”を遂げたのか――その真意をプロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた
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印刷2013/08/28 00:00

インタビュー

「ロスト プラネット 3」はなぜ極寒の惑星へ“原点回帰”を遂げたのか――その真意をプロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた

画像集#004のサムネイル/「ロスト プラネット 3」はなぜ極寒の惑星へ“原点回帰”を遂げたのか――その真意をプロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた
 カプコンは,2013年8月29日にアクションシューティング「ロスト プラネット 3」PS3/Xbox 360PC版は9月26日発売予定)を発売する。本作は「ロスト プラネット」シリーズの最新作だが,コンセプトとして“原点回帰”を掲げ,物語の時系列としては第1作の「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」PC/PS3/Xbox 360,以下「1」)よりも過去にあたる,惑星「EDN-3rd」の開拓期を描いている。

 2006年にXbox 360版がリリースされた「1」は,雪と氷に覆われたEDN-3rdを舞台に,入植した人間達と原住生物との激闘を描いた本格TPSだった。その後,リリースされた続編「ロスト プラネット 2」PC/PS3/Xbox 360,以下「2」)では年月を経て,温暖化によりEDN-3rdは大きく様変わりしたが,やはり本シリーズのイメージとして強いのは“極寒の惑星”だろう。「ロスト プラネット 3」では,その強烈な印象を残した世界が帰ってくることになったのだ。

 今回,4Gamerでは,「ロスト プラネット 3」における原点回帰の真意を始め,キャンペーンモードのテーマ,そして新たに導入されたゲームとしての遊びの新要素など,さまざまなポイントをプロデューサーを務めるアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた。

画像集#006のサムネイル/「ロスト プラネット 3」はなぜ極寒の惑星へ“原点回帰”を遂げたのか――その真意をプロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた


シリーズ未経験者も楽しめる「ロスト プラネット」の原点


画像集#005のサムネイル/「ロスト プラネット 3」はなぜ極寒の惑星へ“原点回帰”を遂げたのか――その真意をプロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた
「ロスト プラネット 3」プロデューサー
アンドリュー・サマンスキー氏
4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 まずは「ロスト プラネット 3」がどんなゲームなのか,あらためて教えてください。

アンドリュー・サマンスキー氏(以下,サマンスキー氏):
 本作は「ロスト プラネット」シリーズの最新作です。
 キャンペーンモードはシングルプレイ専用で,プレイヤーが主人公のジム・ペイトンに感情移入ができるよう,しっかりとしたストーリーを描いています。
 また,マルチプレイモードには,6つのマップと4つのゲームモードを用意しました。全体的にかなりのボリュームになっています。

4Gamer:
 本作のコンセプトとなっている“原点回帰”について,詳しく説明していただけますか。

サマンスキー氏:
 「ロスト プラネット 3」はナンバリングタイトルとしては3作めですが,時系列では「1」より前のストーリーを描いています。
 それは,シリーズを象徴する極寒の世界を描きたかったということや,人間が初めてEDN-3rdに降り立ちコロニーを作るときにあった苦労や葛藤を表現したいと考えたからです。
 つまり,シリーズの物語すべての原点を描こうとしたんです。

4Gamer:
 なぜ,極寒の世界の描こうと思われたのでしょうか。

サマンスキー氏:
 最初にコンセプトについて話し合ったときから,雪と氷に覆われた世界をもう一度描こうという案が出ました。「1」は2006年のリリースですが,それから7年の時を経て,僕らの技術も高まりましたので,もっと厳しい寒さの表現ができるだろうと。
 また,ディレクターの大黒(健二氏)は「1」の開発を手掛けていた当時から,もっと深くEDN-3rdにおける先人達の苦労などを描きたいと考えていました。
 これらを踏まえて,最新作の世界観やストーリーを設定したということです。

4Gamer:
 これまでのシリーズ作品を遊んだプレイヤーが,「ロスト プラネット 3」を遊んだときに世界観のつながりが分かるような要素はありますか。

画像集#007のサムネイル/「ロスト プラネット 3」はなぜ極寒の惑星へ“原点回帰”を遂げたのか――その真意をプロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた
整備士のゲイル・ホールデン
サマンスキー氏:
 もちろん,ありますよ。例えば,整備士のゲイルは,「1」の主人公だったウェインの父親です。ここで多くを明かしてしまうとネタバレになるので控えますが,「ロスト プラネット 3」をプレイすれば,さまざまな出来事がどのように「1」につながっていくのかが見えてくると思います。
 また,雪賊とNEVECの始まりや,彼らが対立するようになった経緯なども描いていますので,「1」「2」を遊んだプレイヤーなら,より深く世界観を理解することができるでしょう。もちろん,シリーズ未経験で予備知識のない状態でも,「ロスト プラネット 3」は最古の時代を描いているので大丈夫です。

4Gamer:
 なるほど。これからシリーズを遊ぼうという人は,まず「ロスト プラネット 3」から始めて,「1」「2」と遊んでもいいと。

サマンスキー氏:
 そうですね。ストーリーがきれいにつながるはずですよ。


キャンペーンモードの主人公はジム・ペイトン

EDN-3rdを開拓する中で生じる彼の葛藤とは


画像集#008のサムネイル/「ロスト プラネット 3」はなぜ極寒の惑星へ“原点回帰”を遂げたのか――その真意をプロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた
本作の主人公 ジム・ペイトン
4Gamer:
 本作の主人公となるジム・ペイトンは,普通の労働者という設定ですよね。

サマンスキー氏:
 ジムは妻子持ちの32歳です。主人公については,最初から超人的なヒーローや強い軍人といった,現実からかけ離れた設定を避けようと考えました。というのは,より没入感が得られ,感情移入ができるような主人公にしたかったからです。
 ジムは人間味があり,リアリティのあるキャラクターとして描いています。例えば,子供の頃にファミコンで遊び,社会人になった今もゲームに親しんでいるような人にも共感していただけると思います。

4Gamer:
 なるほど。そうしたジムのストーリーには,どんなテーマがあるのでしょうか。

サマンスキー氏:
 大きなテーマは“償い”です。当初,ジムは家族を養うため,EDN-3rdへと出稼ぎにやって来ます。しかしストーリーが進むと,家族だけでなく,もっとほかの人のために何かをしなくては,という意識に変わっていきます。
 また,ほかの登場人物が過去に犯したさまざまな過ちを償っていく様子や,そもそも人類が生存するためにEDN-3rdを利用することは許されるのだろうかといった葛藤などを描いています。

4Gamer:
 EDN-3rdに対する葛藤というのは,原住生物「エイクリッド」(AK)に対してのものですか。

サマンスキー氏:
 AKや「サーマルエナジー」(T-ENG)などに対する葛藤です。T-ENGは,地球の化石燃料に取って代わるエネルギーですが,行き過ぎた採取はEDN-3rdの環境破壊を招きます。人類が生き延びるためとはいえ,ほかの惑星を破壊するのはどうなのか。それを仕方がないという人もいれば,反対の意見の人もいますから,ここで葛藤が生まれるわけです。

画像集#009のサムネイル/「ロスト プラネット 3」はなぜ極寒の惑星へ“原点回帰”を遂げたのか――その真意をプロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた

4Gamer:
 現在,地球が置かれている環境問題のメタファーみたいですね。

サマンスキー氏:
 まあ,そうは言ってもゲームですから,あまり重苦しいものにはしていません。あくまでも,世界観にリアリティを持たせる意味での設定です。
 一番重要なのは,「なぜジムが行動に出るのか?」という部分でしょう。プレイヤーとしては,ただ敵を倒していけばストーリーが進んでいくかもしれませんが,ジムのストーリーにリアリティを持たせるには,誰かに「そこに行け」と言われたから行く,「敵を倒せ」と言われたから倒すのではなく,ジム自身が行かなければと感じるに至った大きな目的が必要だったということです。

4Gamer:
 分かりました。そうしたストーリーは,ミッションを順序に従ってクリアすると進んでいくのでしょうか。それとも,プレイヤーが自由にミッションを選べるのでしょうか。

サマンスキー氏:
 ミッションは,メインミッションとサブミッションの2種類があります。最初にジムが行動できるのは基地の周辺だけですが,メインミッションを受けて洞窟や雪原を開拓すると移動可能範囲が広がります。もちろん,一度行けるようになった場所は,それ以降も移動できます。
 一方,サブミッションはプレイヤーの好きなタイミングで進められるのですが,ほかの開拓者達が残した音声ログやテキストログを探すという要素もあります。
 つまり,メインミッションを進めるだけでもゲームはクリアできますが,任意にサブミッションを受けることで,アイテムを収集したり,ストーリーや世界観をより深く楽しめるわけです。

4Gamer:
 複数のサブミッションを同時に進めることはできますか?

サマンスキー氏:
 基本的にはできません。それは,ミッションをいくつも同時に受けることで,プレイヤーが混乱するのを避けるためです。ただし,「AKの死骸を20体集めろ」といったサブミッションであれば,メインミッションと並行して進められます。


兵器ではない「ユーティリティ・リグ」

機能をいかに活用するのかがカギ


画像集#010のサムネイル/「ロスト プラネット 3」はなぜ極寒の惑星へ“原点回帰”を遂げたのか――その真意をプロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた
ジムが操縦するユーティリティ・リグ
4Gamer:
 本作では「ユーティリティ・リグ」(UR)が登場しますが,これまでのシリーズ作品に登場したバイタルスーツ(VS)とは何が違うのでしょうか。

サマンスキー氏:
 VSは戦闘用兵器でしたが,URはその前身にあたる民間の建設用重機です。したがって,主人公のジムは重機のオペレーターということになります。

4Gamer:
 なるほど。これも「1」以前の時代だからこその設定というわけですね。

サマンスキー氏:
 ええ,それこそ「バイタルスーツ前史」みたいな感じです(笑)。もともとURがあり,それが戦闘に特化してVSへと進化していったという流れです。
 VSは兵器だったのでマシンガンやロケット砲などを搭載していますが,URはクローやドリルといった開拓や建設に必要なアタッチメントが付いています。本来,武器ではないものでどのように敵に対抗するのか。これも,本作ならではの楽しさだと考えています。VSは搭乗中も降りたときも,基本的に銃を撃つという部分は変わりませんでしたが,本作では少し遊び方を変えてみたかったんです。

4Gamer:
 URのアタッチメントは変更できるのでしょうか。

サマンスキー氏:
 変更というより,機能を拡張していくイメージですね。
 左アームのクローをアップグレードすると,ウィンチからワイヤーを射出できるようになり,それをジムが伝って新しいエリアに行けるようになります。また,右アームはドリルとバーナーになっていて,道を塞いでいる氷を取り除くときに活用できます。

4Gamer:
 なるほど。URをカスタマイズしながら,EDN-3rdを開拓していくわけですね。アーム以外のカスタマイズは可能でしょうか。

サマンスキー氏:
 EDN-3rdで入手した「スクラップ」を整備士のゲイルに渡すと,装甲を厚くしたり,URに格闘アクションを覚えさせたりすることが可能です。

画像集#011のサムネイル/「ロスト プラネット 3」はなぜ極寒の惑星へ“原点回帰”を遂げたのか――その真意をプロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた

4Gamer:
 URに乗り込むと一人称視点になりますが,その意図は?

サマンスキー氏:
 視点を変更したのは,URのスケール感を分かりやすく伝えるためです。URは最大で約10メートルの高さがありますから,これを表現するには一人称で見下ろすほうが伝わると考えました。
 また,ストーリー的にもゲーム的にも,URがないと生存不可能な世界なので,そのありがたみを表現しようとする狙いもあります。一人称視点だと,搭乗者のジムが機体に守られている感覚になるんですよね。

4Gamer:
 とてもよく分かります。目の前まで敵が迫ってきても,戦うのはURといった感じですよね。
 URが変形する「プラットフォームモード」が公開されていますが,説明していただけますか。

サマンスキー氏:
 プラットフォームモードは,ゲームの中盤以降で可能になるアップグレードで,URが変形して地中のT-ENGを採掘できます。ロボットですから,やはり変形は必要ですよね(笑)
 ちなみに,プラットフォームモード中のURは動くことができません。ところが採掘中は,その振動によって刺激されたAKが襲い掛かってきます。「ロスト プラネット」シリーズは,基本的に敵を倒しながら前へ前へと進んでいくゲームですが,プラットフォームモードではURを拠点にした防衛戦となるわけです。ほかのエリアではお目にかかれないほど,無数のAKが襲ってきますから,新鮮なプレイ感覚で面白いですよ。

画像集#012のサムネイル/「ロスト プラネット 3」はなぜ極寒の惑星へ“原点回帰”を遂げたのか――その真意をプロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた 画像集#013のサムネイル/「ロスト プラネット 3」はなぜ極寒の惑星へ“原点回帰”を遂げたのか――その真意をプロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた

4Gamer:
 この防衛戦は,いつでも遊べるのでしょうか。

サマンスキー氏:
 プラットフォームモードが可能になったときには,強制的に1回発生します。それ以降は,地中に眠っているT-ENGを発見すれば採掘できます。

4Gamer:
 つまり,T-ENGを得るためにはAKと戦わなくてはならないと。

画像集#023のサムネイル/「ロスト プラネット 3」はなぜ極寒の惑星へ“原点回帰”を遂げたのか――その真意をプロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた
サマンスキー氏:
 そうです。リスクが大きい代わりに,大量のT-ENGを入手できますよ。
 T-ENGは,かつてのゴールドラッシュ当時の金と同じように,非常に価値が高く,これを使ってジムの武器やアップグレードを購入します。また,先ほど説明したスクラップの代わりにT-ENGを使っても,URのアップグレードは可能です。ただし,かなり割高に感じられるように設定しています。

4Gamer:
 メインミッションを進めずに,ひたすらT-ENGを採掘するといったプレイスタイルは可能ですか。

サマンスキー氏:
 ある程度は可能です。ただし,メインミッションを進めないとエリアが広がりませんから,採掘だけというわけにはいかないでしょう。


シューターとして硬派な内容に仕上げつつ

新しいアクションも導入


4Gamer:
 「ロスト プラネット 3」では,ジャンプができなくなりましたが,どのような意図があるのでしょうか。

サマンスキー氏:
 これまでのシリーズ作品にあったからではなく,「ロスト プラネット 3」に本当に必要かと考えたときに,ジャンプはいらないと判断しました。大前提として,本作のキャンペーンモードでは探索の緊張感を強調しているんですね。これは開発者のワガママかもしれませんが,ジムの孤独感や,基地を一歩出たら死と直面するような過酷な環境を表現するには,ジャンプやアンカーでピュンピュンと飛び跳ねるような画はあまりふさわしくないと思っています。
 ただ,アンカーに関してはマルチプレイで存分に使えますし,キャンペーンモードでも立体的に移動するシーン限定で使うことができます。

画像集#021のサムネイル/「ロスト プラネット 3」はなぜ極寒の惑星へ“原点回帰”を遂げたのか――その真意をプロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた
4Gamer:
 それでは,新要素「ストラグルモード」についても教えてください。

サマンスキー氏:
 これはAKの脅威を表現するために導入した近接戦闘モードです。単なるボタンの連打でクリアできるものではなく,狙いを定めて撃つというシューターの要素を応用し,照準を敵の弱点に合わせてナイフで刺すという手順になっています。
 ゲーム中では,強制的にストラグルモードが発生するシーンもありますが,基本はジムの体力が低くなり,身をかがめているときに,AKがチャンス到来とばかりに襲い掛かってくると発生します。したがって,本当にゲームが上手な人は,ほとんどストラグルモードを経験することはないかもしれませんね。
 また,ストラグルモードに成功すると,ジムの体力が一定量回復しますから,プレイヤーにとっても起死回生のチャンスというわけです。

4Gamer:
 話を聞いていると,本作はアクションアドベンチャー風の内容になっているような印象を受けました。

サマンスキー氏:
 ええ,その指摘はある意味で間違っていません。しかしその一方では,狙いを定めて撃つという純粋なシューターの部分も,かなり重視しています。
 「2」はさまざまなアクションを駆使しながら,銃で戦うアクションシューティングと言える作品でしたが,それと比較すると「3」はシューターの要素がより硬派になっていると感じられますよ。

4Gamer:
 それでは,ジムが使う武器にはどのような種類がありますか。

サマンスキー氏:
 まず,ゲームの序盤に登場する武器は,意図的にショットガンやライフルといった古典的な実弾を使うものにしています。とくに猟銃は,一発ずつ撃つボルトアクションの武器で精度が極めて高い。これはジムが地球から持ってきたもので,代々ペイトン家に伝わる猟銃という設定になっています。
 ゲームが進むにつれて,パルスライフルやリベットガンといったSF色の強い武器が登場します。ただし本当に強い武器は,隠し武器となっているので,探さないと入手できません。


あらためて描かれる原住生物「エイクリッド」

人類との関係性とは


4Gamer:
 URや武器が時代設定を反映していることは分かりました。それでは,AKはどうでしょうか。これまでのシリーズ作品から,変わっている部分はありますか。

サマンスキー氏:
 「1」「2」と時代が進むにつれて,EDN-3rdの気候は温暖化していますから,変化に耐え切れず絶滅してしまったAK種がいるはずです。そこで「ロスト プラネット 3」では,絶滅前の種が多数存在したという前提でAKの種類を増やしています。

(上)グンロ,(下)ドンゴ
画像集#016のサムネイル/「ロスト プラネット 3」はなぜ極寒の惑星へ“原点回帰”を遂げたのか――その真意をプロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた
画像集#017のサムネイル/「ロスト プラネット 3」はなぜ極寒の惑星へ“原点回帰”を遂げたのか――その真意をプロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた
4Gamer:
 これまでのAKは昆虫に近いタイプが多かったように思いますが,本作では別のタイプも登場しますね。

サマンスキー氏:
 はい。例えば「グンロ」と呼ばれるAKは狼のような哺乳類タイプです。

4Gamer:
 こうしたAKが温暖化にともなって絶滅してしまったということですか。

サマンスキー氏:
 そのとおりですが,一方では従来の「ドンゴ」なども登場します。
 また,これまでのシリーズでは,最初からAKと人間が敵対関係にありました。しかし本作のAKは,まだ人間の存在をしっかりとは知らないので,ジムを発見しても襲って来ないケースがあります。原住生物のAKは,EDN-3rdの生態系の中で当たり前のように存在しており,共食いをしている場面を目撃することだってあります。むしろ,ジムが彼らの生活にどんどん入り込んでしまうので,仕方なく攻撃するといったニュアンスを出すように配慮しました。

4Gamer:
 人間がEDN-3rdに進出していく過程で,AKも人間を敵として認識するようになっていくわけですか。

サマンスキー氏:
 AKにはそもそも敵対意識のようなものはないんです。これまでの作品では人間の数が増えすぎたので,お互い全面的に戦っているようなイメージになっていました。
 これに対して本作における人間とAKの関係は,人間が蜂の巣を叩いてしまったので,蜂が防衛のために攻撃してきたという感じに近いんです。

4Gamer:
 人間が何もしなければ,AKが攻撃してくることもなかったと。

サマンスキー氏:
 しかし人間の目的はT-ENGであり,T-ENGのあるところにはAKが生息しています。さらにはAKの体内にもT-ENGが流れている。そういった意味では,お互いに戦う運命にあったんですね。

4Gamer:
 ちなみに,こうした設定は「1」のときから存在していたのでしょうか。

サマンスキー氏:
 本作のストーリーや世界観に奥行きを持たせるために,これまでの作品を掘り下げて,新たに設定を作りました。単に敵を倒して先に進んでいくという内容ではなく,本当に惑星の探索を体験できるようにしようと考えたんです。
 僕自身がとくに好きなところは,AKが作っている生態系の描写です。小さいAKは一回り大きいグンロに喰われ,そのグンロはさらに大きなAKに喰われてしまう。この完成した循環の中では,人間は邪魔者に過ぎないんですよ。

画像集#015のサムネイル/「ロスト プラネット 3」はなぜ極寒の惑星へ“原点回帰”を遂げたのか――その真意をプロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた


マルチプレイの目玉は「シナリオバトル」と

成長要素「アビリティ」


4Gamer:
 マルチプレイの4つのゲームモードについて説明をお願いします。

サマンスキー氏:
 「チームデスマッチ」は最大5人対5人に分かれ,より多くの敵を倒したチームが勝ちという,もっともオーソドックスなルールですね。
 「T-ENG争奪戦」は,これまでの「データポスト争奪戦」に近い内容です。これも最大5人対5人で,マップ上のT-ENGが溜まっている場所にデータポストを設置して,より多くのT-ENGを入手したチームの勝ちとなります。

画像集#018のサムネイル/「ロスト プラネット 3」はなぜ極寒の惑星へ“原点回帰”を遂げたのか――その真意をプロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた

4Gamer:
 「エイクリッドサバイバル」は新搭載のゲームモードですね。

サマンスキー氏:
 「エイクリッドサバイバル」は,最大3人対3人で対戦するモードです。まずは第1波,第2波とAKが大量に押し寄せてくるので,3人で力を合わせて倒していきます。最後の第3波では,2チームの間にあった壁が取り払われ,直接対決となります。AKを倒したり,ポイントゾーンを占拠したりして獲得したポイントで勝敗が決まります。

4Gamer:
 これも新搭載の「シナリオバトル」についてはいかがですか。

サマンスキー氏:
 今回の目玉となるモードで,6つのマップにそれぞれ固定のシナリオとルールを用意しています。例えば,FPSやTPSのマルチプレイにはフラッグ戦というルールがありますが,なぜフラッグを取らなければならないのかは説明されません。そこで「シナリオバトル」では一捻り加えて,ルールや目的に一つ一つ理由付けをしています。
 具体的に説明すると,対戦時には司令官が「どこに行け」「敵が攻めてきたので迎撃しろ」といった状況説明を含めた指示を出します。ルール自体はお馴染みのものに近いのですが,「ロスト プラネット 3」ならではの世界観とストーリー性を加えました。フラッグ戦なら,マップの中央にいるAKから高濃度のT-ENGを自陣に持ち帰ると1点。NEVECの戦車が雪賊の基地に攻め込もうとしているマップでは,突破に成功すればNEVECの勝ち,これを阻止すれば雪賊の勝ちといった感じです。

画像集#019のサムネイル/「ロスト プラネット 3」はなぜ極寒の惑星へ“原点回帰”を遂げたのか――その真意をプロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた
4Gamer:
 マルチプレイにおけるプレイヤーの成長要素はありますか。

サマンスキー氏:
 シリーズ初の試みとして,今回は成長要素を導入しています。マルチプレイを遊ぶと,プレイの内容や戦績に応じてクレジットが与えられます。このクレジットを使って,「アイテムスフィア」と呼ばれる球体の表面に配置された,武器や各キャラクターのスキン,アビリティなどの成長要素をアンロックしていきます。
 銃器のほかに,シールドや回復アイテム,自動的に敵を迎撃できる銃座などを置く「設置アイテム」や,回復速度やリロード速度,キャラクターの能力そのものを高める「装備アビリティ」があります。同時に装備できるのは,設置アイテムも装備アビリティもそれぞれ2つまでですが,習得に関してはクレジットを稼げばフルコンプリート可能です。ただし,すでにアンロックされたものに隣接したアイテムやアビリティしか習得できないので,どの装備から手に入れるのか,プレイヤーによって特色が出るはずですよ。


クリアまで20時間を超えるキャンペーンモードをはじめ

ボリューム感のある内容に


画像集#020のサムネイル/「ロスト プラネット 3」はなぜ極寒の惑星へ“原点回帰”を遂げたのか――その真意をプロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた
4Gamer:
 話は変わりますが,サウンド面で留意したポイントを教えてください。

サマンスキー氏:
 今回,サウンドにはかなりこだわりました。本作では,ゲーム中にBGMが流れないシーンが多くあります。例えば,URを降りて探索しているときは,環境音だけで音楽はほとんど流れません。これはジムの孤独感や緊張感を演出するためです。
 そして,昔の映画の演出手法のように,イベントやハプニングが起きると心情や情景に合わせた音楽を流してメリハリをつけています。

4Gamer:
 確かにシーンによっては,サバイバルホラーのような雰囲気もありますね。

サマンスキー氏:
 また,URに乗り込んだときに聴ける,ジムのお気に入りの楽曲を15曲ぐらい用意しました。これはジムの奥さんがビデオレターに添付してきた曲という設定で,ジムがURに乗っている間,プレイヤーが任意に選曲することが可能です。

4Gamer:
 カーステレオなどで自分の好きな曲を聴く感覚ですね。ちなみにジムは,どんな曲が好きなんでしょうか。

サマンスキー氏:
 ジャンルで言うと「エイリアン・カントリー」──ちょっとSF色の入ったカントリーです。すべての曲は「ロスト プラネット 3」のために,作曲家のJack Wall氏(代表作は「Mass Effect」シリーズや「Call of Duty Black Ops II」など)が書き下ろしたものです。
 また,PlayStation 3とXbox 360には,プレイヤーの好きな曲をBGMとして取り込む機能がありますが,これをURの中で再生することもできます。

4Gamer:
 本作は,アメリカの開発スタジオ「Spark Unlimited」とカプコンの共同開発ですが,どのような経緯があったのでしょうか。

画像集#022のサムネイル/「ロスト プラネット 3」はなぜ極寒の惑星へ“原点回帰”を遂げたのか――その真意をプロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏に聞いた
サマンスキー氏:
 ナンバリングタイトルの3作めということで,新しいことに挑戦したい。とくにストーリーを強化したかったので,映像表現やセリフ回しに優れたデベロッパと一緒にやりたいと考えていました。その中でも,ロサンゼルスのSpark Unlimitedは映画やテレビ業界の出身者が多く,頭一つ抜きん出た感がありました。
 これまでのシリーズに関わったスタッフは,ある意味ではやり切ったという感触を得ていましたから,新しい視点を持って開発に取り組むデベロッパと協力したのは,いい刺激になりました。先ほど触れた,URを一人称視点にするというアイデアは,Spark Unlimitedから提案されたものでした。

4Gamer:
 共同開発はどのように進められたのですか。

サマンスキー氏:
 Spark Unlimitedと一緒にやると決めた最初の1年間は,ディレクターの大黒を始め,シリーズのアートディレクターや企画マンを連れて,何度も現地で会議を重ねました。毎回議論して,日本に帰って資料を作っては,また渡米……ということを繰り返しました。そういった意味では,これまでと少しカラーが違いますが,間違いなく「ロスト プラネット」だと言い切れます。

4Gamer:
 海外のデベロッパと組んだことで苦労された点はありましたか。

サマンスキー氏:
 彼らはさまざまなアイデアを出してくれますが,ときに広げた風呂敷が大きくなりすぎるので,それを抑えるのが大変でしたね。僕達は,彼らの素晴らしいアイデアを限られた時間とリソースで実現できるようにアドバイスします。「それは確かに面白そうだけど,いつまで経っても開発が終わらないぞ」って(笑)。
 もちろん,カプコンとしても新しい挑戦は歓迎なのですが,ゲームが出来上がらないと本末転倒ですから。
 それでも,今回は「こんなはずじゃなかった!」というくらいのボリュームになってしまいました(笑)。例えばキャンペーンモードは,サブミッションやアイテム収集まで一通りプレイすると,20時間くらいは遊べます。シューターとしては長めですよね。

4Gamer:
 ええ,本格的なアクションアドベンチャー並みのプレイ時間ですね。
 それでは最後に,4Gamer読者に向けてメッセージをお願いします。

サマンスキー氏:
 「ロスト プラネット 3」は,主人公のジムが持つキャラクター性とシナリオ性を重視したキャンペーンモード,そして充実したマルチプレイモードの両方に全力を注いだ,かなりボリュームたっぷりのゲームです。これまでのシリーズ作品のファンにはもちろん,「ロスト プラネット」は初めてという方でも時系列ではシリーズで一番最初になりますから,予備知識なしで楽しんでいただけます。
 とくにSFのコミックやアニメ,クラシックなSF映画が好きな方には注目してほしいですね。僕らはそれらの作品から多くのインスピレーションを受けましたし,オマージュも詰め込みました。そのあたりも楽しんでいただけると嬉しいです。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

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