インタビュー
[GDC 2023]ブロックチェーンのためのゲームではなく,ゲームのためのブロックチェーンを。NFTゲームプラットフォーム大手・Mythical GamesのCEOにインタビュー
日本ではあまり聞きなれない名前かもしれないが,Mythical Gamesはブロックチェーンゲーム業界大手で,Web3ゲームの展開を推し進めるNFTゲームプラットフォーマーだ。
こちらの記事にもあるとおり,John Linden氏はActivision Blizzardで「Call of Duty」と「Skylanders」シリーズのスタジオ統括やCTOを務め,「MARVEL ストライクフォース」「Magic:The Gathering」のデベロッパであるSeismic Gamesでは社長として活躍した“ゲーム畑”な人物である。そんなJohn Linden氏に,新作や日本での事業展開の展望を聞いた。
よろしくお願いします。Johnさんはこれまでのキャリアで,多くの著名なPC / コンシューマ / モバイルゲームに関わっておられます。どのような考えでWeb3ゲームの道へと進んだのでしょうか。
John Linden氏:(以下,Linden氏)
以前から,これからの時代のゲームとは何か,新しいゲームの形を作るなら何をすべきかを考えていました。それで立ち上げたのがMythical Gamesだったのですが,最初のゲームである「BLANKOS BLOCK PARTY」が,現在のMythical Gamesのあり方にとって重要な存在となりました。
4Gamer:
小さなビニール製のおもちゃのようなキャラクターを動かして遊ぶ,サンドボックス型のゲームですね。
Linden氏:
ええ。ブロックチェーンのゲームとしては,初めてESRBやPEGIといったレーティングをクリアしました。また,Epic GamesやTwitch,Amazon Prime Gameといった大手のゲームストア / プラットフォームにも展開し,約100万人というプレイヤーを抱えるゲームに成長したタイトルです。
BLANKOS BLOCK PARTYの価値は,ビジネスとしての成功だけではありません。ブロックチェーンという新しいテクノロジーに対応したゲームの設計方法を学べ,それがWeb3の時代を迎えるうえでその背景にある経済的な部分を理解する大きな機会となったんです。これにより,私たちが次に目指すべき方向が明確になりました。
4Gamer:
その目指す方向がWeb3ゲームということですね。現在はどのような事業展開をしているのでしょう。
Linden氏:
大きな動きとしては2つのゲームがあります。
1つめが「NFL Rivals」というゲームです。その名のとおりNFLの公式ライセンスを受けた,アメリカンフットボールのゲームで,AppleやGoogleと緊密に連携し,モバイルゲームとしてサービス展開を進めています。現在はメキシコとフィリピンの2か国でソフトローンチ中ですが,すぐにほかの地域でもサービスを始める予定です。
4Gamer:
具体的にどのようなゲームなのでしょうか。
Linden氏:
選手を集めてチームマネジメントをしながら,試合では選手を動かしてアーケードゲームのように遊べるのが特徴ですね。選手はNFTとなっていて,公式サイトのインベントリで自分のコレクションとして楽しめるし,マーケットプレイスにアクセスすれば売買できます。こうして理想のチームを作るんですが,ゲームと完全に同期しているので,選手の入手やトレードがあればすぐにモバイル上のゲームに反映されるんです。
実際に動いているものをお見せしましょう。
「NFL Rivals」公式サイト
4Gamer:
選手をトレードして結果を追うようなゲームをイメージしていたのですが,自分で操作して試合を楽しめるのは良いですね。
Linden氏:
ええ。ゲームとして本当に面白いんですよ。もう1つのモバイルレーシングゲーム「Nitro Nation World Tour」もちゃんとゲームとして遊べます。
「Nitro Nation World Tour」は,Apple Storeで3番目に人気のあるゲーム「Nitro Nation」のWeb3ゲームで,Nitro Nationの制作チームと提携して開発しています。クルマのカスタマイズやレースを楽しめるゲーム性に加えて,NFTの車やワークショップを購入することで,プレイヤーが本当のオーナーである感覚を味わえるのが,Web3ゲームならではの楽しみですね。クルマを貸し出すといったこともできますよ。
「Nitro Nation World Tour」公式サイト
4Gamer:
なるほど。私はWeb3やブロックチェーンのゲームと聞くと,NFTのやり取りがメインでゲーム性が希薄という印象があったんです。それでJohn Lindenさんにインタビューできるとなって,ぜひそのあたりを聞こうと思っていたのですが……。
Linden氏:
今見ていただいたとおりです(笑)。
というのも,私たちはそもそも“ブロックチェーンのためのゲームではなく,ゲームのためのブロックチェーン”を作ることが大前提なんです。ブロックチェーンゲームと呼ばれるタイトルはたくさんありますが,中にはマーケットプレイスが前提にあって,ゲームとしては面白くないものもあります。
ゲームと呼ばれるものならば,本物の開発者,本物のゲームメーカーと提携して,本物のゲームを提供することが重要だと考えています。
4Gamer:
このゲーム自体はまだ日本でのサービスがありませんが,日本への進出は考えているのでしょうか。市場としてどのような印象を持たれているのかも気になります。
Linden氏:
欧米から見ると,いつだって面白く,とても興味深い市場ですね。独自の文化があるので,これまで欧米の企業がそこに参入するのは容易ではなかったこともよく理解しています。
もちろん日本のことは考えていますが,それは自分たちのゲームを持ち込むという形ではありません。技術を提供することで,Web3の世界の土台となるものを作り,日本のパートナーとの協力関係を築きたいと考えています。
4Gamer:
サービスをメーカーに提供するパートナーとしてですか。
Linden氏:
そうですね,具体的には「Mythos Blockchain Ecosystem」というDAO(分散型自律組織)でゲームをサービスする場所を提供する形です。Mythos Blockchain Ecosystemを運営するThe Mythos Foundationには日本の企業もその名を連ねており,また関連企業を通して日本の大手ゲームメーカーと話す機会もあります。
4Gamer:
日本のメーカーの印象を知りたいです。
Linden氏:
Web3という技術を生かしたゲームを作るということに対して,非常に重く,そしてしっかりと考えていると感じます。新しい技術をどう取り入れるのか,それをどうすれば面白くなるのか,新しい体験を作りだせるのかと。実際,すでに自社IPを活用した取り組みをしているメーカーも多いですし,ソーシャルエクスペリエンスも意識されていて,とても進歩的だと感じます。日本の市場やメーカーのそういうところが素晴らしいと思っています。
4Gamer:
最後に,今後について聞かせてください。2つの新しいゲームの展開も気になりますが,ほかに取り組んでいることなどあれば知りたいです。
Linden氏:
まだ具体的な話はできないですが,今まで培った技術をどう新しいゲームに生かせるかは常に考えていますね。1つお話しできることで言えば,Polystream(※)の高い技術力を生かし,よりスピーディに大規模なクラウドストリーミングのゲームの世界にアクセスできるよう,その実現に向けた取り組みを行っています。
※2022年2月にMythical Gamesが買収した,優れたコマンドストリーミング技術を持つイギリスの企業
4Gamer:
日本での今後の動きも楽しみにしています。本日はありがとうございました。
「Mythical Games」公式サイト
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