インタビュー
「閃乱カグラ Burst」とは!? “爆乳引力”に導かれて出会ったプロデューサー 高木謙一郎氏と脚本家 北島行徳氏に前作のことから今後の野望までまとめて聞く
オープニングアニメに込められた
さまざまなネタバレとは……?
4Gamer:
蛇女視点のストーリーを描くとなると,前作を遊んだ人が不自然に感じないようにするのが難しそうな気がするんですが,そのあたりはいかがですか?
前作では,蛇女側のキャラクターが考えていることなんかは,プレイヤーが想像で補完しなければならなかったんですよね。でも今回,執筆にあたって,そこの空いているピースを埋めていく作業から進めていますから,凄く難しかったというわけでもないですし,何より皆さんに納得していただけるものになっていると思いますよ。
高木氏:
密度も濃いんですよね。
北島氏:
うん。だから前作と比べて,一人一人のエピソードはかなり濃くなっているはずです。ふざけるにしても,マジメをやるにしてもギューッと。もちろん,半蔵編で出番が少なかった人も,がっつりフォローしています。
4Gamer:
つまり,Burstではかなり満足のいくシナリオが書けたということでしょうか。
北島氏:
ええ。「蛇女編が書きたい!」と思っていた中でのオファーだったので,モチベーションがすごい高かったこともありますし。
それに,あえて残したものを除いて,ほとんどの伏線はBurstで回収できましたから。
4Gamer:
おお,それは楽しみです。
北島氏:
半蔵編をプレイした人が疑問に思っていたことは,ほとんど解明できているはずですよ。それもあって期間は短くてもガーッと一気に書き上げられました。ボリュームとしては,半蔵編以上なんですけど。
ただ唯一,半蔵編をプレイしてないと訳が分からなくなるんじゃないかと心配だったんですが,「大丈夫です。前作がまるまる1本入りますから」と聞かされて(笑)。
公式ブログにも書いたんですけど,カグラを遊んだことがない人をどうフォローするかはかなり悩んだんですが,こういう解決方法があったんです(笑)。
4Gamer:
そういえば,Burstに入っている前作パートのシナリオには,何か変更はあるんでしょうか?
北島氏:
いえ,シナリオには手を加えていません。
高木氏:
ゲーム部分では,Burstで新たに搭載したアクションなどは反映しています。Burstで新たに用意した衣装も半蔵編で使えますし,ノベルパートではBGMのフェードイン/アウトをきちんとしたりと,細かい部分は磨いています。
あとは,戦っている最中に「いくよ焔ちゃん!」「私は負けない!」みたいに,キャラクター同士の掛け合いボイスも入っているので,そこにも注目してほしいですね。
4Gamer:
シナリオはそのままで,ゲームの細部をパワーアップさせているということですね。
ところで,Burstで描かれているのは,前作の反対側の視点というわけではないんですよね?
北島氏:
うーん,説明が難しいね。そもそもどの時間軸なんだっていう。
高木氏:
難しいですね(笑)。
でも確実にいえるのは“前作の裏っ側”ではないということ。単純に蛇女視点で話が進んで,同じ結末を迎えることはありません。そういった意味で,パラレルワールドではありますね。
北島氏:
僕的には“プレイヤーが蛇女側に感情移入したら,こうなっちゃうよ”みたいなお話になっているのかなと。だって,蛇女が負けないんですから(笑)。
高木氏:
前回の物語のままだと,プレイヤーはどうやっても半蔵の生徒達に勝てないですからね。
4Gamer:
必ずバッドエンドになるゲームになってしまいます。
北島氏:
そうなんですよ。
ただ……。
高木氏:
詳しくは言えませんが,Burstのラストの展開がどう受け取られるのかは,気がかりですね(笑)。
北島氏:
ラストシーンの演出はまだ見てないけど,あそこが決まっていたら最高なんじゃないの?
高木氏:
そう思ってもらえるといいんですけど。
ただ,実はオープニングアニメにヒントが満載なんですよね。
北島氏:
そうそう! ちゃんと見ると,ネタバレたっぷりで。
高木氏:
実は半蔵編でもそうだったんですけど,なかなか気付いてもらえなくて。
高木氏:
このように,本編での重要なシーンが映像化されていますので,発売前からいろいろと深読みしてほしいなと。春花と雲雀のドンケツシーンはお遊びですけどね(笑)。
北島氏:
ドンケツでお互いの服まで破れてしまうという。
高木氏:
あれがいいんですよ! ってこういうことを言ってると「また高木は雲雀を贔屓してる!」みたいに叩かれるんですよ……。
北島氏:
でも,プロットからも高木さんが雲雀好きなのは伝わってきますよ。
高木氏:
まぁ……可愛いですよね。
(一同笑い)
テレビゲームに支えられたから
テレビゲームの仕事をしたかったという北島氏
4Gamer:
せっかく北島さんともお話出来たので,カグラ以外のこともお聞きしていいですか? 実は,「無敵のハンディキャップ―障害者が『プロレスラー』になった日」の頃からファンなんです。
そんな北島さんが,いつの間にかゲームの脚本を数多く手がけられるようになって,何だか不思議な気持ちで見ていたんですよ。
北島氏:
ああ,そうなんですね。ありがとうございます。
高木氏:
そういえば,北島さんとゲームの出会いって聞いたことなかったですね。
北島氏:
プレイヤーとしての出会いは,かなり早いです。任天堂の「テレビゲーム15」やゲーセンのゲームを遊んでいましたし,小学生のときにインベーダーブームも経験していますしね。ゲームへの親しみは深かったです。
それに一時期,ゲームハードを買い集めていて,バンダイの「インテレビジョン」なんかも持っていました。
高木氏:
え! あれってめちゃくちゃ高かったですよね?
北島氏:
毎週のように量販店に通っていると,たまにもの凄いバーゲンに出くわすんですよ。「光速船」もそれで買いましたから。
4Gamer:
かなりのマニアですねぇ。
自著にも書いたことがあるんですが,高校を中退して1年くらい引き籠もっていたんですよ。当然,やることがなくてひたすらテレビゲームばかりをやって過ごしていました。いわば,つらい時期にテレビゲームが支えてくれたんですよね。
その後いろいろとあって文字を書くことが職業になりましたけど,そういう経験があったので,いずれは何かしらゲームに関わる仕事をしたいと,ずっと思っていたんです。
4Gamer:
そういう思いが「3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!」で形になって,今に至るわけですね。
高木さんにお聞きしたいんですが,カグラについて北島さんと打ち合わせをするときの様子は,どんな感じでしたか?
高木氏:
実は顔を付き合わせている時間は短いんですよ。僕が“非同期コミュニケーション”の仕事が好きなもので,基本的にメールでやりとりしているんです。僕がありったけの想いをメールに書き込んで……。
北島氏:
それを僕が受け止めて形にすると(笑)。
まあ,プロットを読むと「この部分にこだわりたい」っていうのが,だいたい分かるんですよね。
高木氏:
北島さんもキャラクターデザインの八重樫 南さんもそうなんですけど,僕としては「この人にお願いしたい」と思っていますから,途中でゴチャゴチャ口を挟んだりしないで,想いを伝えたらあとは信用して下駄を預けています。
北島氏:
そうやって任せてもらえると,きちんと応えたいと思いますよね。ですから凄くやりやすいですし,短い期間でも納得のいく仕事ができています。
高木氏:
だから,シナリオが面白くなかったら僕のプロットのせいなんですよ。逆に,面白ければ北島さんが膨らませてくれたおかげで。
4Gamer:
なるほど。とても良い関係で仕事が進んでいるんですね。
いや,「何度か意見がぶつかって,河原で殴り合ったことも」みたいなエピソードを少し期待していたんですが。
北島氏:
ああ(笑)。そういった意味だと,Burstの最初は開発会社さんが作ったプロットがあって,それを元に僕が第一稿を書いたんですよ。でも上がったものが複雑すぎるということで,それは白紙撤回して,高木さんのプロットを待って書き直したんですね。それがあったからこそ,より“やりたいこと”が分かった部分はありますね。
そうでした! 実は僕がプロットを「書く」「書く」といいながら書かなくて,でもプロジェクトは動いてしまっているから開発スタッフがしびれを切らして用意してくれたんです。なのに,「これは違う」ってリテイクを出してるんだから……各方面にひどいことをしてしまいました。
北島氏:
でも,あれこれ盛り込みすぎると話が複雑になりすぎてバランスを崩してしまうのも確かなんですよ。最初の“全部入り”だったプロットと比べて,高木さんが書いてくれたものはアクション部分との食い合わせも良かったんです。それを見たら,「じゃあ,この素直な骨を崩さないように,肉付けをしよう」という気持ちになれましたね。
「閃乱カグラ」で打ち止めじゃない?
爆乳プロデューサーの真の野望とは!?
4Gamer:
そうそう,北島さんはゲーム本編以外にも関わっているんですよね?
高木氏:
Burstの公式サイトで,北島さん書き下ろしショートノベルを公開しています。さらに前作同様,先着購入特典のドラマCDも,北島さんにシナリオを書き起こしていただきました。
北島氏:
これもいわくつきで,僕が暴走しすぎちゃったんです。
高木氏:
ノリノリで書いてくださったんですけど,ちょっと“はみ出した”エッチな表現があって(笑)。
北島氏:
本編ではそんなこともなかったのに,リテイクを繰り返して,第3稿,第4稿ぐらいまでいってしまいました(笑)。捉え方によってはそう聞こえるかな? みたいな仕掛けだったんですけど。
高木氏:
多方面に気を配らないといけないご時世ですから,やはりプロデューサーとしてNGを出さざるを得ないラインがありまして。
ちなみにドラマCDのタイトルは「ハローじっちゃんのデカメロンパーティーと秘密の地下室」なんですが,これが内容のすべてを表しています。
4Gamer:
何となく想像が付きました。
高木氏:
少しだけネタばらしすると,修学旅行の就寝前って布団に入りながら「誰が好き」みたいな話をするじゃないですか。その中心にいたいな,という僕の願望を北島さんに書いていただきました。前回ノリでやった立体音響ネタもまたありますので,できればヘッドホンでお楽しみください(笑)。
4Gamer:
高木さんは仕事を通じて,いろんな願望を実現しているんですねぇ。
高木氏:
そこはマジメに「そうです」と答えるしかないですね。余計なことをせず,ストレートに願望を実現していこうということを,かなり意識していますから。ニンテンドー3DSが発表されたときにも,おそらく全国で500人くらいは「爆乳が立体視できるゲームならウケる!」と思ったはずなんですよ。
4Gamer:
やるかやらないかは別として。
高木氏:
で,やったのは僕らしかいなかったという(笑)。実現まではいろんな高いハードルはあったんですけど,リビドーに正直に突き進んだら,こういうことになりました。
4Gamer:
多くの会社の場合,ちょっとOKを出しにくいコンセプトでしょうし。
高木氏:
あ,その点,マーベラスAQLはいい会社で,企画のプレゼンを終えたら「面白い!」って即答でしたからね。強面の役員ですら下を向いて「プッ」と笑いそうになってましたから。
4Gamer:
「一騎当千」シリーズの実績があったからというのも大きいんでしょうけど,懐の広い会社なんですね。ところで,タイトルの“Burst”ってやっぱり“バスト”からですよね?
ですね(あっさり)。前作ですでに「バーストガールズ」というコスチュームを仕込んでおいたのが実ったというか。
やっぱりサブタイトルにはこだわりを持ちたいんですよ。一騎当千シリーズでも 「Shining Dragon」「Eloquent Fist」「XROSS IMPACT」と,縦読み厳禁になってます(笑)。本当はもう一つ,「Y」が最初に来るサブタイトルの一騎当千があれば,まだ良かったんですけど,Xで止まってしまって。
4Gamer:
なんてことだ……。
高木氏:
真面目な話をすると,コンテンツ過多で移り変わりの早いこの現代に,いかに記憶に残るかって,非常に大事なことだと思うんですよ。
Burstを前作から約1年後に発売するというのも,忘れられないうちに次から次へと動かないといけないという考えがあって,ですし。
北島氏:
短期間でシナリオを仕上げたという話もそうなんですけど,キャラクターや物語を忘れられないためには,これくらいのペースで出さないといけないというのは,痛感していますね。
高木氏:
自分でもちょっと早いかな? とは思っているんですけど,少しの油断であっという間に“古い”という烙印を押されてしまいますから。
ただ,今年から来年でシリーズの認知度が定着してくれれば,次は,さらに手間や時間をかけた高い場所を目指すことも考えていけると思っています。
4Gamer:
ということは,Burstやアニメだけでなく,その次の展開のためにも,閃乱カグラというブランド名を認知させるタイミングが,今であるという認識なんですね。
高木氏:
ええ。アニメ以外にも話題が途切れないよう,さまざまな展開を用意していますので,どうぞご期待ください。ファンの皆さんの想像を斜め上に超えていく,楽しい仕掛けを提供していきたいですね。
4Gamer:
期待しています!
高木氏:
それと最後にもう一つ言わせてください。
将来的には一騎当千や閃乱カグラだけではなく,新たな「爆乳ハイパーバトル」シリーズの新ブランドを,世に送り出したいという野望があります。そして各シリーズのキャラクターが一堂に会するゲームを制作したいんです。
4Gamer:
そ,それはまさか……!!
高木氏:
タイトルは「マーベラスAQL パイパイワールド」です(極めて真剣な表情で)。
4Gamer:
お後がよろしいようで。
「閃乱カグラ Burst -紅蓮の少女達-」公式サイト
- 関連タイトル:
閃乱カグラ Burst -紅蓮の少女達-
- 関連タイトル:
閃乱カグラ -少女達の真影-
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