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[GDC 2013]女性キャラクターを口説くジゴロモードもあり。グラスホッパー・マニファクチュアの新作「Killer is Dead」について,須田剛一氏にあれこれ聞いてみた
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印刷2013/03/29 10:00

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[GDC 2013]女性キャラクターを口説くジゴロモードもあり。グラスホッパー・マニファクチュアの新作「Killer is Dead」について,須田剛一氏にあれこれ聞いてみた

 角川ゲームスとグラスホッパー・マニファクチュアの共同プロジェクト第2弾「Killer is Dead」須田剛一氏がエグゼクティブディレクターを務めているということから,「Killer7」「NO MORE HEROES」など,いわゆる“殺し屋シリーズ”を連想する人も少なくないだろう。また,一度見ただけで記憶に残る独特なアートも目を惹くタイトルである。今回は,GDC 2013の開催に合わせて渡米していた須田氏に,さまざまな疑問をぶつけてみた。

画像集#001のサムネイル/[GDC 2013]女性キャラクターを口説くジゴロモードもあり。グラスホッパー・マニファクチュアの新作「Killer is Dead」について,須田剛一氏にあれこれ聞いてみた

 まずは,すでに公開されているものも合わせて,本作の情報をまとめておこう。主人公のモンド・ザッパは,殺し屋ではなく処刑人だ。彼は政府の組織であるブライアン処刑事務所に勤める役人で,テロリストの処刑を請け負い,生計を立てている。ここでいうテロリストというのは人間でなく,裏の世界に生きる異形の者達で,そんな奴らを依頼に応じて片っ端から殺しまくっていくのだ。

 三人称視点のアクションゲームになっており,プレイヤーはモンドを動かして戦っていく。右手に持っているメインウェポンで,になっている左腕がサブウェポンという扱いになっている。基本的には刀でバッサバッサと敵を斬っていくのだが,ときおり銃をぶっ放して間合いをとったりしながら攻撃していく。今回紹介してもらったステージは近未来的なハイテクビルで,その最上階にボスが待ち構えていた。

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 ボス戦でも基本は刀での攻撃になるが,サブウェポンである銃での攻撃が,いわゆる“崩し”になっており,うまく使い分けながら戦っていく。また,右のアナログスティックが緊急回避になっており,時と場合によってはうまくこれを使い,ヒットアンドアウェーで敵を追い詰めていくのだ。ある程度のダメージを与えると“処刑アクション”と呼ばれるモードに移り,やりたい放題に斬りまくれ,とどめを刺せる。処刑アクションはいわゆるザコ敵に対しても使えるので,ボス戦以外でもかなり気持ちよく,そして格好よく敵を倒していけるのだ。

 Killer is Deadは,依頼人が事務所に現れて処刑を依頼。ザコを倒しつつボスを目指してガシガシ進み,ボスを倒せば一つの章が終わるという流れになっている。また,各章には導入とタイトルバックが用意されているなど,かなりテレビドラマを意識した作りになっているのも特徴だ。

 こういった基礎情報を踏まえて,以下に掲載したインタビューを読み進めてほしい。 

「KILLER IS DEAD」公式サイト

Game Developers Conference公式サイト(英語)


4Gamer:
 一つの章はどれくらいのボリュームになるのでしょうか。

グラスホッパー・マニファクチュア CEO 須田剛一氏
画像集#005のサムネイル/[GDC 2013]女性キャラクターを口説くジゴロモードもあり。グラスホッパー・マニファクチュアの新作「Killer is Dead」について,須田剛一氏にあれこれ聞いてみた
須田剛一氏(以下,須田氏):
 まだはっきりとお伝えできないのですが,あまりにも少ないということはないです。ボス戦にたどり着くまでにザコを何十体か倒しますし,それにプラスしてボス戦があるので,一つのお話として十分楽しめるボリュームがあります。

4Gamer:
 現在公開されているボスであるヴィクター以外にも,ボスキャラはいますか?

須田氏:
 もちろんです。ボスバトルはグラスホッパーのお家芸だと自負していますので,いろいろなボスを用意しています。プレイヤーがびっくりするようなボスが登場するので,そこも注目してほしいポイントです。

4Gamer:
 と言われると,どんなボスがどれくらい出てくるのかを聞きたくなりますが……。

須田氏:
 ごめんなさい,そこはまだ言えなくて……。月並みですが,続報をお待ちください。

4Gamer:
 では,ちょっと聞き方を変えます。ヴィクターとの戦いではタイマーが表示されていましたが,ボス戦には制限時間があるということですか?

須田氏:
 制限時間は,対ヴィクター戦だけの要素ですね。ビルが落下しているという設定になっていて,制限時間を設けましたが,ほかのボス戦にはありません。

4Gamer:
 なるほど。ボスの戦い方にバリエーションがあるだけでなく,戦いの舞台にも仕掛けが用意されているわけですね。

須田氏:
 ええ,ボスによって戦いの場所そのものが変わります。今回は近未来的な,ハイテクビルをお見せしましたが,そうではない場所,例えば京都を舞台にヤクザと対峙するなんていうシチュエーションもあります。

4Gamer:
 かなりバリエーションがありそうですね。

須田氏:
 公開済みのPVにもいろいろな場所が登場していますが,それぞれの土地で背景を変えています。裏の世界のジェームズ・ボンドというイメージもあるので,モンドはいろいろな土地に行って活躍しますよ。

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4Gamer:
 最初から章立てにするつもりでゲームデザインを考えたのでしょうか。

須田氏:
 そうです。初期コンセプトから章立てを考えていました。テレビドラマの1シーズンのように作ろうというイメージが最初からあったんです。

4Gamer:
 Killer 7も章立てでしたが,章立てに対する思い入れのようなものがあるのでしょうか。

須田氏:
 「シャドウ オブ ザ ダムド」「LOLLIPOP CHAINSAW」と,ワンナイトストーリーが続いたので,いろいろな場所を巡るようなゲームにしたいと思い,Killer is Deadを作りました。それはKiller 7も同じでしたので,いろいろな意味でKiller 7に近いかもしれません。
 あと,これまでに見たことがないアート作りを徹底的に追求するという部分も,Killer 7の遺伝子を継いでいるかもしれませんね。

4Gamer:
 このアートのイメージは最初から頭の中にあり,それに近づけながら作っていったという感じでしょうか。

須田氏:
 そうですね。実はなかなか描きづらい絵になっていて,シンプルそうでありながらも密度があり,絵としての説得力もあるようなものを目指して作りましたが,正直かなり時間がかかりましたね。トゥーンシェーダでやってしまえば簡単だったのですが,そうではないもので勝負がしたくて時間をかけました。
 とくに女性キャラクターを綺麗に描くのは難度が高くて苦労しましたよ。

4Gamer:
 影が濃い女性キャラクターをあまり見かけないのは,綺麗に描きづらいからだったんですね。

須田氏:
 そうだと思います。Killer is Deadでは,綺麗な女性キャラを実現するために,シャドウとスペキュラ(艶のある物体に光を当てたときに光源自身が映り込んでできるハイライト)も入れて対応しました。また,アウトラインのところにスペキュラを意図的に入れるといった工夫を施したので,すごく艶やかに描けたと思っています。あと,化粧もこだわりましたね(笑)。

4Gamer:
 確かに独特の色気がある女性キャラクターになっています。ところで,Killer is Deadには“愛と処刑(コロシ)のファンタジー”というキャッチフレーズがありますが,愛の部分はどこでしょうか。殺戮シーンばかりが脳裏に焼きついていて。

須田氏:
 主人公は処刑人なので,基本的にはひたすら殺しまくります。ただ,そればかりだとプレイヤーが疲れてしまうので息抜きを用意してあり,それがラブ,愛の部分ですね。

4Gamer:
 息抜きと言いますと?

須田氏:
 まさにボンドガールならぬ“モンドガール”という美女達を用意してあり,ちょっとエロティックなシーンなんかもあったりします。さらに,モンドはいわゆるジゴロなんですが,“ジゴロモード”というものもあります。

画像集#006のサムネイル/[GDC 2013]女性キャラクターを口説くジゴロモードもあり。グラスホッパー・マニファクチュアの新作「Killer is Dead」について,須田剛一氏にあれこれ聞いてみた

4Gamer:
 もの凄くストレートな名前のモードですが,具体的には何を?

須田氏:
 ジゴロモードではモンドガール達を口説けます! 殺戮の合間の息抜きとして,プレイヤーの皆さんへのご褒美として用意しました。Killer is Dead,裏のウリですね。

4Gamer:
 てっきり,ちょっと色気のあるムービーシーンがありますといった返答が来ると予想していたんですが,想像を遙かに超えられました。まさかモードとして確立しているとは(笑)。

須田氏:
 ええ,詳細はまだお話できないですが,しっかり口説きますよ。

4Gamer:
 なんかもう期待しないわけにはいかないですね,男して。ところで,ボスを倒すときに「Killer is Dead」とモンドが言っていましたが,あれは決めゼリフなのでしょうか。

須田氏:
 はい,そうです。

4Gamer:
 ゲームのタイトル名を聞いたときに,“Killer”というのは主人公であるモンドのことだと思っていたんですが,違うわけですね。

須田氏:
 敵をまとめてKillerと呼んでいます。Killer is Deadというのは英語として不自然なんですが,その不思議さみたいなものを含めて,このタイトルにしました。もともとワーキングタイトルだったのですが,パブリッシャからも面白いのではないかという意見をもらい,正式に決定しました。

4Gamer:
 ゲーム内でも敵の総称はKillerとなっているのでしょうか。

須田氏:
 モンド達の間で呼び方はとくに決まっていないですね。というのも,モンドはあくまでも仕事として処刑を請け負っているので,敵という見方をしていないんですよ。依頼の対象として見ていて,すごくクールに殺していきます。

4Gamer:
 いわゆるダークヒーローというやつですね。

須田氏:
 ええ,このところちょっとバカキャラの主人公が続いていたので。

4Gamer:
 それはそれで面白かったんですけどね。

須田氏:
 まあ,グラスホッパーは渋いのもちゃんと作れるんだよ,というところをちょっと見せておこうと。

4Gamer:
 なるほど。

須田氏:
 ハードボイルドならぬ,モンドボイルドというのを目指しているんです(笑)。

4Gamer:
 ダジャレ……は,さておいて(笑),モンドは35歳という設定ですが,ゲームの主人公としては珍しい年代ですね。

須田氏:
 そうですね。しかも背広を着ていて腕が銃になっているというのは,かなり異色だと思います。あと,スタイリッシュなアクションゲームで,スタイリッシュな主人公を用意する,そこの美学は徹底的に貫きましたね。

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4Gamer:
 腕が銃になっているというのは,Killer is Deadの世界だと,それほど驚くようなことではないのでしょうか。

須田氏:
 いや,さすがにかなり異質ですね。悪魔に触れてしまい,腕を持っていかれた代償によって銃になったという設定です。
 月の裏側から来たワイヤーズという連中が世の中の裏側に潜み,テロ行為をもくろんでいます。ワイヤーズの世界にその一部を引き込まれているのがモンドであり,だからこそ彼の力でワイヤーズを倒せるのです。

4Gamer:
 それは興味深い設定ですね。もう少し詳しく教えていただけますか?

須田氏:
 Killer is Deadでは,表に出ているテロリスト達は,実は闇の世界の住人である,というファンタジーを作り上げています。どこか現実とリンクしているもう一つの世界というのを,常に描きたいと思っていたので。
 また,Killer 7では政治的なテーマを裏で扱いましたが,今回は紛争とか戦争を表に出すことなく,表現しました。
 戦争ゲームを作るつもりはまったくないですが,テロリズムの中に戦争は潜んでいるわけで,そういった部分をファンタジーとして抽出してダークファンタジーに仕上げたのが,Killer is Deadです。

4Gamer:
 そういった話を聞くと,キャッチコピーどおり大人向けのゲームという印象を受けますね。ただ,ここでいう大人というのは大体どれくらいを想定していますか。

須田氏:
 中学生以上ですかね,っていうのはウソです(笑)。えっと,高校生,高3からですね。高2くらいからちょっとドキドキして,高3ぐらいで背伸びしてこのゲームに手を出す,みたいな。

4Gamer:
 なるほど。

須田氏:
 「俺,ちょっとKiller is Dead買っちゃおうかな」みたいな,そういう高校生達に手に取ってもらいたいですね。

4Gamer:
 あれ,でもCEROは「Z」(18歳以上のみ対象)じゃなかったでしたっけ?

須田氏:
 誕生日が早ければ大丈夫です!

4Gamer:
 ああ,そうですね。ちなみに,今回見せていただいた北米版はかなり血が出ていましたが,日本版でも同じような演出でしょうか。

須田氏:
 海外版と日本版で変えているところはないです。

4Gamer:
 もの凄い量の血が吹き出るシーンがかなり衝撃的でしたが,日本でも大丈夫なんですね。

須田氏:
 Killer is Deadの敵は人ではなく“畏怖なるもの”なので,大丈夫みたいです。なので,いつも以上に血がドバドバと出てます(笑)。もうちょっと出してもいいかなって思ってますが。

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4Gamer:
 このアートだと血の赤が映えるといいますか,かなり印象的に描かれていますよね。

須田氏:
 血の表現はもう,グラスホッパーのお家芸というか伝統芸なので。

4Gamer:
 血の描写については心配しなくてもよさそうですね。

須田氏:
 ええ,たっぷり出させてもらってます。まあ,血の表現に関しては作品を重ねるごとにレベルアップさせていきたいと思っています……って,何を言ってるんですかね,僕は(笑)。

4Gamer:
 ただ量を出せば,それでいいというわけじゃありませんし。

須田氏:
 ゲームですので,現実と同じものではなくて,ハイパーリアリティの世界といいますか,リアルをどれだけ演出的に見せられるのかというところにこだわっています。世の中にあるものを同じように作りあげるのではなく,そうではない世界を描いていきたいと思っています。自分達の中から出てくるクリエイティブで新しい表現を見せるのが,グラスホッパーというスタジオのウリだと思っていますしね。ですので,そういった意味でも凄いものを提供していきたいと頑張っています。

4Gamer:
 なるほど。では最後に,読者へのメッセージをお願いします。

須田氏:
 私が連載している「キネマ51」,リンクは「こちら」もよろしくお願いします! っていうのは冗談です。
 Killer is Deadはテレビドラマ仕立てになっています。みなさん「相棒」は好きだと思いますが,僕も「相棒」マニアとして新しいテレビシリーズをお披露目するような気持ちでKiller is Deadを作っています。これがシーズン2,シーズン3,そして劇場版「Killer is Dead the Movie」といけるように頑張りますので,期待していてください。
 テレビドラマ風にしているとはいえ,大好きな映画のエッセンスも盛り込んでいますし,ちょっと違ったテイストのゲームに仕上がったと思っています。これまでにない絵作りにも注目してほしいですね。ぜひ応援してください。

4Gamer:
 ありがとうございました。

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